ハンドメイド作家さんには、「作品を売るのが怖い…」と感じてしまうときがあります。
普通に会社員として働いているときは、会社の看板があります。批判や責任は会社が受けるものであり、自分の身には降りかかりません。
しかし作家デビューすると、自分=社長=会社。誰もあなたの身を守ってはくれません。そんなむき身の状態で、市場に飛び込むことに怖さを感じているのでしょう。
初めてプールの飛び込み台から飛び込むみたいな、尻込みしちゃう気持ちね
めっちゃわかるよ
この現象は、未知に対する防衛本能みたいなもの。あなたがごく普通の感覚を持った人間であることの証拠です。
巷でよく言われる克服方法は、「モノを売るのは悪いことじゃない!罪悪感から解き放たれよう!」みたいな感じですよね?
これだけで納得するなら、この記事には辿り着かないと思います。もう少し具体的な処方箋をお求めではありませんか?
きっと、あなたの感じている怖さは、次の5パターンのどれかじゃないでしょうか?
- 自分なんかがお金をもらって良いのか?
- 出品して全く売れないのが怖い
- クレームが怖い
- パクりと言われるのが怖い
- 自分を売り込むのが怖い
もし当てはまらない場合は、コメントで教えてね!
どれも大した問題ではありません。あなたが感じている「売ることへの怖さ」は、これまでに何万人もの先輩が通過してきた道。対処方法もわかっています。
ちょっとした心構えだけで克服できます。
【共通】怖さの正体は「現状維持バイアス」にある
「売るのが怖い」と感じる正体は、「現状維持バイアス」にあります。程度に差はあれど、およそ全ての人間が共通して持っています。
現状維持バイアスとは、その名の通り、現状維持に甘んじようとする心理傾向を指します。裏返せば、新しい挑戦を避けようとする心理傾向とも言えますね。
ピンと来なかった人は、ぜひ1万年前の祖先(日本だと縄文人ですかね)の気持ちになってみてください。
なんで昔の人の気持ちで考える必要があるの?
現代人と1万年前の祖先の思考回路が同じだからだよ
あなたの思考回路は、1万年以上前の原始人のそれを引き継いでいます。生物の進化は〇〇万年のスパンで起こるもの。脳も例外ではありません。
あなたの思考回路には、まだ狩猟採集をしながら移住生活をしていた遠い祖先の時代に、最適だった行動パターンがプログラムされています。
あなたは、関東平野で平和に暮らしていたとしましょう。
突然、集落の長から「明日から山を超えて西に行くぞ!」と言われたらどう思いますか?
地図もなければ、山の向こうがどうなっているかもわからない。パラダイスかもしれないが、地獄が待っているかもしれない。
未知の世界へ行くのは怖いですね。
いま平和に暮らしている場所を捨てて、なぜそんな賭けに出なきゃいけないのか?今のままで良くない?
この思考回路が、現状維持バイアスです。
怖いと感じるのは錯覚?
あなたは作家活動などしなくても、あなたは暖かい家で、温かいご飯を食べられています。本業や家族の収入によって、とりあえず平和に暮らせています。
「なぜ、未知の世界へチャレンジしなきゃいけないのか?」
こういうマインドブロックがかかってしまうんですね。脳にそうプログラムされているので、致し方ないことです。
どう?怖さの正体がわかると、少しホッとしない?
うん!怖いと感じるのは、生理現象みたいなものなんだんね
しかし実際には、作家活動を始めたところで、あなたの生活が傾くことはないし、ましてや命なんて取られません。
ただ、防衛本能が過剰に働いてしまっているだけ。誤解を恐れずに言えば、「錯覚」です。
実際には、沼の深さは10cmしかないのに、その事実を知らないがために、底なし沼に足を踏み入れるかのような恐怖を感じてしまっているのです。
この前提に立って、ケース別の処方箋を出していきましょう。あなたが未知に感じている沼の深さが、たった10cmしかないことを論理立てて解説していきます。
処方箋①:自分なんかがお金をもらって良いのか?
あなたにプロフェッショナルな経験がないと、自分の技術や作品に自信が持てないかもしれません。
- 「わたしなんかが、お金をを払ってもらって良いのだろうか?」
- 「わたしなんかが、こんな値段で売っていいのだろうか?」
と、売ることへの怖さや、値上げすることへの怖さを感じてしまいます。
あるいは、趣味で作っていたものの延長に、お金をもらうことへの罪悪感があるのかもしれません。主婦の手料理に、お金を払ってもらうみたいな感覚でしょうか。
欲しい人が欲しいものにお金を払っているだけ
しかし冷静に考えてみてください。
世の中には、同じ職業でもさまざまなレベルの人が混在しています。
大谷翔平のような世界No.1の野球選手もいれば、日本の地方リーグの選手もいれば、地元で小学生に教えているコーチもいます。
プロの写真家に撮影を依頼する人もいれば、素人がスマホで撮影した画像素材を求める人もいます。
お客さんは、必ずしも高いレベルを求めているわけではありません。相応のレベルの人に、相応のお金を払うだけです。
もしあなたが、経歴や技術を偽り、実際よりも高いレベルを装って売ろうとすれば、確かに問題があるでしょう。
しかし、等身大のあなたが嘘偽りなく、「これがわたしの作品です!」と出品して、誰かが欲しいと思って買ったのなら、それで取引は成立です。
あなたは売りたい値段で売り、お客さんは買いたい値段で買った。ただそれだけのこと。もしお客さんがいらないと思っているのなら、そもそもお金は払いません。
お金をもらうのに、何ら恐怖心を抱く必要はない!
処方箋②:クレームが怖い
売った後でクレームを言われるのが怖い。売る前からクレームのことを考えているとは、なかなかの臆病者、もとい慎重派ですね。ボクと同じです。
クレームの怖さは、そのクレームの大きさによります。
ときに、「若者の迷惑行為」がSNSで話題ですね。あのバカ達のように、大企業から損害賠償とか言われたら、「人生終わった」と感じますね。これはヤバいです。
しかし、ハンドメイドのクレームなんて、どう転んでも大した話にはなりません。
クレーム処理は返金すれば終わり
ハンドメイドのクレームは、最悪でも返金で済みます。滅多にない最悪の最悪ケースでも、作品が戻ってこなくて、返金させられるくらいですね。
懐が痛んだとしても、せいぜい「作品代+送料」くらいの持ち出しにしかなりません。怖がるほどの金額ではないでしょう?
ケースとしてはかなり稀です。1件来たら、交通事故だと思って即返金に応じればOKです。正義感とかは捨てて、機械のように処理しましょう。
お金の話ではなく、ヤバい奴に粘着されるのが怖いという人もいもいるかもしれませんね。数千円の持ち出しよりは、こっちの方が怖いです。
しかし返金すれば、基本的にクレームはクローズ(終了)です。ヤバい奴なら、ブロック機能で、次回は購入不可とすれば良いだけ。
クレームの底が知れれば、怖さもなくなるね!
クレームを未然に防ぐには?
クレームが来たときの対処法だけでなく、そもそもクレームが来ないようにする方法も知っておきたいですよね。
- 民度の高いプラットフォームを選ぶ
- 価格帯を上げる
- デメリットをしっかり語る
といった対策を講じましょう。
実際のところ、デメリットまでキッチリ伝えた上で、クレームが来ることは相当レアケースです。
それでもクレームが来るなら、客層の民度に問題があるかもしれません。お客さんの民度を上げるには、売る場所を変えるか、高く売るかしかありません。
処方箋③:作っても全く売れないのが怖い
一生懸命作った作品を、誰も買ってくれないのが怖いという人もいると思います。いや、実はこれが1番多いんじゃないでしょうか?
よくわかります。ボクも一生懸命書いたこの記事を、誰も読んでくれなかったら悲しいです(あなたが読んでくれているから大丈夫だけど)。
実害はないけど、「誰にも認められない」のが怖いということだね
この気持ちの正体は、「承認欲求」です。
誰にも相手にされないことで、否定されている気持ちになっているわけです。「逆いいね」を押されまくっているかのような。
承認欲求の正体を理解しよう
再び、1万年前の祖先の気持ちになって想像してみてください。
1万年前の祖先は、50人くらいの血縁関係で結ばれた集団で暮らしていました。親戚みんなで一緒に暮らしているイメージです。
全員が顔見知りの中で、あなたの意見を誰も受け入れてくれないとしたら、どう感じるでしょう?
多分、メッチャ嫌われてることになりますよね。嫌われているということは、集団の役にも立っていないし、何かあれば真っ先に切られる存在です。
自然と共に生きていた祖先にとって、「村八分(コミュニティから追い出されること)=死」みたいなもの。
誰にも認められない状況は、何としても避けなければならない。そう脳にプログラムされているわけです。
だから、「いいね」や「ありがとう」のような、他人からの「承認」を得て安心したいわけです。逆に「否認」されることは、恐怖以外の何物でもありません。
あー、そうか。承認欲求が強い人って、寂しがりやと言うとか、いつも誰かと一緒にいないと落ち着かない人だよね
SNSで大バッシングを受けた人が、自ら命を絶ってしまったニュースを見たことがあると思います。
実際には、ネットの向こうにいる知らない奴の誹謗中傷など、人生には何の影響もありません。しかし脳は、ネットの向こうにいるかどうかを厳密には区別できません。
1万年前はネットなんてないので、「人=全員知り合い=集落の仲間」です。すべてのバッシングを、仲間から受けているかのように錯覚してしまうんですね。
ハンドメイド作品を、誰も買ってくれない状況にも通じるところがあります。
実際に非難を受けているわけではないのに、暗黙のうちに大量の非難を受けているかのような錯覚に陥ってしまうのでしょう。
しかし、1万年前と現代は違います。ネットの向こうでみんなが無反応であっても、あなたの生命には何の影響もありません。
誰にも認められない状況を怖がる感情は、祖先が残した置き土産
錯覚みたいなもんだから、気にする必要はないよ
批判を歓迎しよう
無反応ならまだしも、「この作家のセンス嫌いだわ」と批判を受けるのはもっと怖いですね。
これも承認欲求が過剰に反応して、恐怖を感じているだけ。無視すればOKです。
とはいえ、いざアンチコメントが来ると、ものすごくショックを受けます。無視すれば良いとわかっていても、グサッと来てしまうんですね。
ここであなたに、「批判を歓迎しよう!」というアドバイスを送りたいと思います。
批判って、ダメ出しでしょ?どう受け取れば、歓迎できるんだ?
誰の批判も浴びない作品って、どんな作品かな?
もし誰の批判も浴びないとしたら、その作品にはこれといった特徴がなく、平凡で、誰の興味も惹かない作品ということになりますね。
あなたが創造性を発揮して、尖った作品を作ろうとするほど、あなたの作品は批判を浴びることにでしょう。それと同時に、強烈に惹きつけられるファンも生み出します。
ローランドさんや、ホリエモンさん、本田圭佑さん、勝間和代さんは、強烈なアンチがいる一方で、熱心な信者を獲得しています。あなたもそれで良いのです。
昔の人は、「八歩美人」という素晴らしい言葉を残してくれたね
この言葉のニュアンスを噛み締めて欲しい!
あなたが意見や美意識を強く主張して、批判を浴びるのは、むしろ素晴らしいことです。「よくやった!」と歓迎すべきでしょう。
あなたのお客さんは、あなたを批判するアンチではなく、あなたを熱心に好いてくれるファンの方。99%の部外者は無視して、1%のファンへ向けて作品を届けてください。
処方箋④:パクりと言われるのが怖い
パクりに関しては、パクった内容によって、その後の深刻度が大きく変わってきます。
大きく分けると、
- 他人のブランドロゴやキャラクターをパクった場合
- 他人のハンドメイド作品の作風をパクった場合
のどちらかになるでしょう。
ブランドロゴやキャラクターをパクった場合
まず、前者の「他人のブランドやキャラクター」ですが、こちらはパクったら著作権侵害です。大抵の場合、商標権侵害もセットです。
犯罪なので、販売停止はもちろんのこと、悪質であれば損害賠償請求や逮捕という事態になります。
たまたま似ることはないでしょうから、確信犯のパクリです。もしこのパターンで怖がっているなら、そもそものスタンスを改めた方が良いでしょう。
ハンドメイド販売は、自分の創造した作品を売ることです。他人の著作物の影響力にタダ乗りして、偽物を売ることではありません。
他人のハンドメイド作品の作風をパクった場合
実は、ハンドメイド作品は、ほとんどの場合で著作権保護の対象になりません。他の知的財産権の保護対象にもなりません。
仮に丸パクりしたとしても、法的責任を負うことはほとんどありません。
え!?そうなの?
ただ違法じゃないからパクって良いわけではありません。SNSで「パクり作家」のレッテルを貼られれば、売上も大きく下がるでしょうから。
ただあなたが心配しているのは、丸パクりではなく、「部分的に似てしまうこと」の方ですね?「有名作家の〇〇さんに似ていませんか?」と言われるのが怖いんですよね。
しかし、作風が似てしまうのは致し方ないことです。
もしかしたらあなたは、「どうすれば誰の作品にも似ない、完全オリジナルなデザインな作品を作れるか?」と思っているかもしれません。
でも、完全なオリジナルなんて不可能です。どんな天才であっても、例外なく、過去の誰かの作品の影響を受けています。
もし似ていると言われなくないなら、色んな人の作品をたくさん見ることです。
1人の作家を参考にすると、「どうやって似ないようにするか?」というよくわからない思考になっていきます。全くクリエイティブではないですね。
色んな作家や過去のアート作品を参考にすれば、「どこを参考にして、私らしい作品に仕上げようか?」という、本来のクリエイティブな思考で制作に取り組めるでしょう。
そういう意味でも、日頃から美術館に行ったりして、良い作品を鑑賞するのがオススメ!
処方箋⑤:自分を売り込むのが怖い
自分の作品を、他人に売り込むのが怖いというイメージを持っている人もいるかもしれません。
営業ってガツガツしたイメージですし、そんなの自分にはできないって思いますよね。ボクは元々営業マンでしたが、売り込みって大っ嫌いでした。
そして気づいたんですが、売り込みって別に必要じゃないんですよね。
元営業マンが言ってるんですから、信憑性あるでしょう?
売り込みは必要ない
作品を売るために不可欠なのは、
- 欲しがる人の目に触れさせること
- 作品の情報を「良い」「悪い」に関わらず、全て伝えること
だけです。
究極的には、欲しそうな人を集めて、説明するだけです。ほとんどの場合は、面と向かってではなく、ネット上の文章によって説明するわけですが。
あとは、「欲しい人がいたら買ってね♪」というスタンスでOK。あなたから「買ってください!お願いします!」なんて、言う必要はありません。
確かに売るためのトークテクもありますが、別になくても大丈夫。売れっ子ハンドメイド作家も、そんな熟練の営業マンみたいなテクは使っていません。
というより、そういった売り込みを不要にするのがマーケティングです。本サイトを隅々まで読んでもらえば、売り込みに気を揉む必要は一切ありません。
まとめ
怖いのは最初だけで、売り始めたらいつしか消し飛んじゃうんだけどね
「売るのが怖い」という感情は、祖先からの置き土産
現代人の環境には当てはまらないので、あまり気にしない方が良いよ!
この記事をまとめます。
「売るのが怖い」という感情の正体
- 現状維持バイアスが、新しい挑戦を「怖い」と錯覚させる
- 何はともあれ、いま暖かい家で温かいご飯が食べれているのに、「なぜ未知の世界に飛び込もうとするのか?」というマインドブロックがかかる
売るのが怖い人への処方箋
- 自分なんかがお金をもらって良いのか?
お客さんは、必要なレベルの品に、妥当な金額を払うだけ。あなたが未熟であろうと、お客さんが欲しいと思ってお金を払ったなら、それで取引は成立 - クレームが怖い
ハンドメイドのクレームは、基本的に返金すればおしまい。負ってもかすり傷程度なので、怖がるほどではない - 作っても全く売れないのが怖い
「売れない=役に立たない人間」と過剰反応してしまう本能が原因。これも祖先からの置き土産で、現代環境には当てはまらない。気にしなくてOK - パクりと言われるのが怖い
ブランドロゴやキャラクターのパクリは言語道断だが、ハンドメイドのパクリは違法ではない。もちろん丸パクリは避けるべきだが、部分的に似てしまうのは仕方がない - 自分を売り込むのが怖い
売り込みは必要ない。欲しそうな人に、作品を良いところも悪いところも包み隠さず説明するだけでOK
未知の世界を「怖い!」と思ってしまうのは、本能から来る感情です。脳がそうできているので、挑戦を怖がる感情を避けることはできないでしょう。
しかし、脳が勝手にそう思ってしまうと知っていれば、「あぁ、また来たぞ。またわたしの挑戦を邪魔しようとしているな!」と、自分をメタ認知できます。
メタ認知とは、自分の感情を、第3者の視点で冷静に観察することです。そうすることで、暴れ回る感情をコントロールできるようになります。
あなたの脳は、今でも1万年前の環境を前提に、日々の意思決定を下しています。しかし、何もかもが未知だった当時とは違い、現代はそれほど危険に満ちた環境ではありません。
実のところ、あなたの挑戦の先に、あなたの生活が傾くようなリスクはありません。悪くても、自分の自由時間がいくらか取られるだけ。
怖がる感情は、現代人においては錯覚でしかないのです。マインドブロックを乗り越えて、ぜひあなたの夢へ挑戦してみてください!
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