現役専業ハンドメイド作家の奥さんのマーケティングやってます♪
ハンドメイド作家であるあなたは、おそらく、人一倍「色」には関心があるはずです。
「色のこと、ちゃんと学ばないとな」と、思ったこと。1度や2度はありますよね。
しかし、重い腰を上げて勉強するには至らず、何となく雰囲気で色選びをしている。というのが、現状ではないでしょうか?
うぉ!心読まれた!
そろそろ、「色」についても学んで良い頃合いでしょう!
色選びの理論さえ知っていれば、いちいち「どの色がいいんだろう…」と悩むこともなくなります。
与えたいイメージが決まれば、選ぶ色は自動的に決まってくるからです。
- 作品のカラーリング
- ブランドカラー
- パッケージカラー
- 名刺カラー
などなど、使えるシーンは数多くありますね。
この記事を読み終えたあなたは、
- なぜ色に対して、特定のイメージを思い浮かべるのか?
- 色よって、見た人の心や体にどんな変化が起こるか?
- どの色を使えば、効果的なイメージを植え付けられるか?
を理解できるようになります。
ハンドメイド作家は、「ここまで知っておけばOK!」という内容を厳選しました。逆に言えば、やや小難しい話も挟んでいますが、ここまでは知っておくべき内容です。
明確な基準を持って色を選べるのは、ハンドメイド作家にとって間違いなく武器になります。ぜひこの記事を読んで、「色」を味方につけてください!
また「色」と言うと、「赤は情熱」とか「青は冷静」とか、そういうイメージ論で終わってしまう話が多い印象です。
この記事では、「なぜその色を見ると、その感情が宿るのか?」という心理まで深掘りして解説しています。
仮説ベースの話もあるんだけど、「ああ、そうだったのか!」と膝を打ってもらえる内容になっていると思うよ!
【根本的な話】なぜ色が見えるのか?
そもそも、あなたの目に、なぜ色が見えるのかを知っていますか?
まずは、物理学的に、人間の目が色を識別する仕組みから解説していきます。
「いや、そう見えるんだから、もうそれで良くない?」と思われたかもしれませんね。確かに、その通りです。
しかし、色の持つ「波長の長さ」という概念が、色の持つ意味に密接に絡んできます。ここが理解できると、色への理解度が桁違いに上がります。
そして、その波長の話は、「そもそも、どうやって色が見えるのか?」という話から始めないと、理解できないのです。
ちょっとお勉強くさくなるけど、騙されたと思ってついて来てほしい!
リンゴは赤くない?
なぜ、「リンゴ」は、赤く見えるんだと思いますか?
実は、「リンゴ」自体は赤くありません。
おいおい、どういうことだってばよ?
順を追って説明しよう!
色の始まりは、「光」にあります。ここはわかりやすく太陽光をイメージしてください。
まず太陽から放射される光は、厳密には「電磁波」です。「波」とつく通り、半円をウネウネ繰り返すような形をした波です。
そして、波の長さを「波長(そのままですが)」と呼びます。波長の長さは様々あり、長さによって呼び名が変わってきます。
その波長のうち、人間の目に見えるのはごく一部。その目に見える波長の範囲の電磁波を、「可視光線」と呼びます。
逆に目に見えない波長の電磁波には、「赤外線」や「紫外線」などがあるよ
さて、その目に見える可視光線ですが、波長の長さによって、違う色に見えます。
波長が長い順に、
- ◻︎赤
- ◻︎橙
- ◻︎黄
- ◻︎緑
- ◻︎青
- ◻︎藍
- ◻︎紫
の虹の7色になっています(厳密には、7色のグラデーションになっているので、無数の中間色の連続ですが)。
ちなみに「赤外線」は、目に見える最長波長の「◻︎赤」より、さらに波長が長い電磁波です。
「紫外線」は、目に見える最短波長の「◻︎紫」より、さらに波長が短い電磁波です。
ここで、やっとリンゴの話に戻ります。
リンゴが赤く見えるのは、可視光線のうち、「赤以外」の全ての色を吸収し、「◻︎赤」だけを反射しているからです。
直感的には理解しづらいのですが、リンゴ自体に色の概念はなく、ただ赤い可視光線を反射する性質を持っているだけなのです。
暗い部屋で色を判別できなくなるのは、光がなくて反射する色がないからなんだ
はぇー、そういうことなんだぁ!
「波長の長さ」と「色」の持つ意味
「小難しい話は抜きにして、”リンゴは赤い”でいいじゃないか!」と非難されることを覚悟して、こんなけったいな話をしたのには理由があります。
各色が持っている「波長の長さ」から、色の持つ様々な特性を理解できるからです。
可視光線は、「空気(大気)」を通ってあなたの目に届きます。厳密に言えば、空気は窒素や酸素の「粒」でできているため、可視光線は空気の粒にぶつかることになります。
波長の長い波は、障害物を回り込む性質を持っています。そのため、空気の粒をスルスルとすり抜けて、あなたの目に真っ直ぐ届きます。
反対に波長の短い波は、直進性が強く、障害物を回り込めません。そのため、空気の粒にぶつかってしまい、散逸してしまいます。
そのため、波長の長い「◻︎赤」や「◻︎オレンジ」は目にストレートに届きやすく、波長の短い「◻︎青」や「◻︎紫」はモヤっと奥まって見えるのです。
空はなぜ青いのか?
空が青く見えるのは、青い可視光線が空気の粒にぶつかって、あちこちまで散らばっているからです。そのため、光源の太陽の周りだけでなく、空全体が青く見えるわけっです。
なお、青より波長の短い紫は、もっと上空で散逸してしまって、地上にいる我々の目には届きません。
ちなみに朝焼けや夕焼けで空が赤くなるのは、太陽光が差し込む角度が変わるからです。
昼間は真上方向から太陽光が差し込みます。この時に光が経由する空気の層の厚さは8kmほど。このくらいの距離だと、青い光は散らばりながらも、失わずに地上まで届きます。
しかし、太陽光が横から差し込む朝や夕方は、数百kmもの距離の空気を伝って光がやってきます。そうすると、青い光は途中で失われてしまい、波長の長いオレンジや赤色が見えるようになるです。
また夕焼けや朝焼けの赤やオレンジは、空全体には染まらず、太陽の周りだけまばらに染まっています。これは、赤やオレンジの可視光線の波長が長いために、空気の粒にぶつからず、あちこちに散らばっていかないためです。
「白」と「黒」はどうして見える?
なお、「全ての色(の可視光線)を反射」したら、あるいは「全ての色(の可視光線)を吸収」したら、その物体は何色に見えるのでしょうか?
何となく、「見えなくなるのかな?」と思ってしまいますが、そうはなりません。物体に色がなければ、目に映りませんからね。
答えを言ってしまうと、
- 全ての色を反射したら、「◻︎白」に見えます。
- 全ての色を吸収したら、「◻︎黒」に見えます。
そのためか、白いモノは大きく見え、黒いモノは小さく見えます。実は、碁石の実際の大きさは、白黒で同じではなく、黒がやや大きめに作られています。
また「黒」は全てを飲み込む色であり、「混沌」とした印象を受けるでしょう。逆に「白」は、全てを跳ね返す色であり、「清潔」や「純粋」といった印象を受けます。
色の波長を理解すると、色の持つ様々な側面が見えてくるね!
小難しい物理学の話はここまでとしよう
この話を前提として、後の章を読んでいってね!
【先天的】1万年前から変わらない色へのイメージ
ほぼ全ての人間は、ある色を見て、皆一様に同じ感情を抱きます。
例えば、多くの人は、
- 「◻︎赤いもの」を見ると、アドレナリンが湧いて興奮したり、食欲が増したりします。
- 「◻︎青いもの」を見ると、心が落ち着きます。
当たり前のようで、これは不思議に感じても良いところ。好きな色は、10人いれば十人十色。人によって、違いがあります。考え方にしたって、人によって違いますよね。
しかし、ほぼ全ての人が、「◻︎赤」を見ると、一様に興奮したり、食欲が増したりします。多少の個人「差」はあっても、同じ反応を示すのです。
気にしたことなかったけど、確かにちょっと不思議かも?
皆が同じ反応をするということは、それは人間の生まれ持っての性質であるということ。先天的に持っている色へイメージがあるということになります。
色の捉え方は進化の産物
全ての生物(動物も植物も)の起源は、約40億年前に誕生した単細胞生物です。そこから枝分かれし、現在のような多様な生態に進化してきました。
ご存知の通り、人間は約60兆個(一説では37兆個とも)の細胞でできています。
あなたの遠い遠い祖先の単細胞生物は、1つの細胞が体の全てでした。そこから進化した人間の持つ細胞は、各役割に特化するように変化してきました。
- ある細胞は、皮膚になり
- ある細胞は、骨になり
- ある細胞は、爪になり
- ある細胞は、肺になり
- ある細胞は、眼になり
- ある細胞は、網膜になり
- ある細胞は、脳になったのです。
「進化」というと、首が伸びたり、二足歩行になったりするイメージがありますが、「脳」もまた進化の産物。
そして、脳の「思考回路」もまた、進化の産物なのです。
もし、ある「色」を見て、みんなが共通の感情を覚えるとしたら、それは「進化の過程でそうなる必然性があった」と考えるのが自然でしょう。
「◻︎赤」を見て、興奮したり、食欲が増したりするのは、進化の過程で、脳にそう反応するようプログラムされているからです。
ちょうど、羽虫が灯りに群がるのと同じです。あれを個体差とは言いませんよね。脳にプログラムされているとは、こういうことです。
「心理学」は、進化の過程で備わった、人類共通の思考回路のプログラムを読み解く学問。「色の心理」も同じことが言えるよ
なんか壮大な話になってきたな…
1万年前の祖先の気持ちなろう
進化は、何千、何万という世代を経て、少しづつ変化していくもの。何十万年、何百万年の単位ですから、100年や1000年では、何も変わりません。
どんなに少なく見積もっても、現代人は、1万年前の祖先と何一つ変わりません。人間の脳は、少なくとも1万年以上前にチューニングされた思考回路を引き継いでいます。
色を見て感じる感情も、1万年以上前にチューニングされたもの。だから、色の心理を読み解くには、遠い祖先の気持ちになって、当時の風景を想像しなければ掴めません。
1万年前と言えば、日本で言えば縄文時代です。まだ農業も始まっておらず、木の実をとったり、鹿を狩ったり、魚や貝を採ったりして暮らしていた時代です。
まだ人間が自然の中で生きていた頃に、色への先天的なイメージが形成されたということ。つまり、色の心理は、自然界の色へのイメージを濃く反映しているわけです。
1万年前の祖先の気持ちになって、そこにあったであろう自然の色を想像しよう。その印象が、いまのボク達にも引き継がれているんだ
【後天的】環境によって形成される色へのイメージ
しかし、色へのイメージは、必ずしも先天的なものとは限りません。
- 生まれ育った環境
- 文化
- 宗教
などの社会的な要素によって、後天的に色へのイメージが形成されるケースも、往々にしてあります。
例えば、日本人であれば、「◻︎朱色」に対して神聖なイメージを思い浮かべるでしょう。
これは、朱色が、神社の屋根や柱や鳥居に使われる色だからです。神社の神聖なイメージが、朱色という色のイメージに乗り移っているのです。
これは間違いなくあるね!
この現象は、心理学の「連合」という現象によく似ています。2つのモノが結びついたときに、片一方へのイメージが、もう片一方にも乗り移る現象のことです。
「ワイルド」な俳優さんが、新モデルの自動車の横に立っていれば、その車にも「ワイルド」なイメージが乗り移ります。CMで好感度が高い人を使うのは、商品にもその好感度を乗り移らせたいからです。
育った環境によって、「色」へのイメージが変わる
この「連合」は、あくまで環境によって左右されるので、生まれながらに持っているイメージではありません。
そのため、生まれ育った土地や文化圏が異なれば、同じ色にも関わらず、全く違うイメーを思い浮かべることもあります。
日本人は「◻︎朱色」に神聖なイメージを感じても、フランス人やブラジル人は同じようには思いません。
日本や中国では、「◻︎黄色」は天皇や皇帝が身につけた高貴な色ですが、キリスト教圏では、ユダが着用した色ということで、裏切りを連想させます。
ただ中には、後天的であるにもかかわらず、世界的に共通のイメージもあります。
聖職者は白い装束を身につけることが多いため、「_白」は共通して神聖なイメージを持たれます。
信号の「◻︎緑」と「◻︎赤」は、世界中どこにいっても大体同じです。そのため、「赤は危険」、「緑は安全」というイメージも、世界的に見て共通です。
というわけで、色を選ぶ場合は、お客さんのお国柄を意識すると良いでしょう。
「日本人」がお客さんということであれば、日本の文化圏で通じる色のイメージを使えばOKだ!
色彩は3要素で把握しよう!
ほとんどの人は、色を呼ぶときに「◻︎赤」とか「◻︎紫」とか呼びます。
しかし、◻︎も赤ですし、◻︎も、◻︎も赤です。
実は、色を構成している変数は3つあります。全てを特定しないと、一意の色を表現できません。
色彩の3要素
- 色相(Hue)
色味を表す - 彩度(Saturation)
色の鮮やかさを表す - 明度(Brightness)
色の明るさを表す
単に「◻︎赤」とか「◻︎紫」とか呼んだ場合、「色相」だけを表現していて、「彩度」と「明度」には触れていません。
ちなみに、「彩度」と「明度」を合わせて、「(色の)トーン」と表現するよ
みんな「色相」だけを言って、「トーン」を指定しないから、厳密に何色かを表現できないんだね
色の3点は、座標の3点に似ている?
色を3つの変数で指定するのは、座標を3地点で指定するのによく似ています。
例えば、「明日のデートは、六本木ヒルズで11時に待ち合わせね!」と言っても、おそらく2人は出会えないでしょう。
六本木ヒルズと言っても広いので、2次元の面で捉えて、「縦」と「横」の位置を指定しなければ、どこへ行けば良いかわかりません。加えて、「高さ」も指定しておかないと、何階へ行けば良いか分かりません。
多くの人は、あまり気にせず、「蜘蛛のモニュメントの前で!」と伝えるかもしれません。それで待ち合わせが成立するのは、「縦」「横」「高さ」の3点が伝わっているからです。
色も同じです。3点が交わる色彩で考えないと、あなたが本当に伝えたいイメージを、色で表現できません。
色相(Hue)
「色相(Hue)」とは、色合い、あるいは色味のこと。いわゆる、「◻︎赤」とか「◻︎青」とか「◻︎紫」といったものです。
この色相をグルッと円環に配置したものが、「色相環(Hue circle)」です。
なおこの色相環上で、隣り合う色相は、「類似色」と呼ばれています。類似色を組み合わせると、調和の取れた配色になります。
対角線上にある色相は「補色」と呼ばれています。
組み合わせるとメリハリのある配色になります。メインカラーとアクセントカラーを、補色同士で組むのは、1つのセオリーです。
彩度(Saturation)
「彩度(Saturation)」は、色の鮮やかさを表しています。
- 彩度が高いほど、鮮明(vivid)な色になります。
- 反対に彩度が低いと、くすんだ色になります。
そして、その色相の中で、もっとも彩度が高い色を「純色」と呼びます。
なお、「◻︎白」「◻︎黒」「◻︎グレー」は、彩度が「0」になるので、「無彩色」と呼ばれています。
明度(Brightness)
「明度(Brightness)」は、色の明るさを表しています。
明度がもっとも高い色は「◻︎白」で、もっとも低い色は「◻︎黒」です。
- 白っぽければ「明度が高い=明るい」
- 黒っぽければ「明度が低い=暗い」
となります。
色彩による心理効果
ときに、色彩によって、実物とは違った印象を与えることがあります。実物より大きく見えたり、あったかく見えたり、重く見えたりします。
そんな現象も考慮に入れておくと、より迷わずに色を選べるようになるでしょう。
寒色と暖色
寒色と暖色は、とっても有名ですね。きっとあなたもご存知ではないでしょうか?
文字通り、「寒色」は冷たく感じ、「暖色」はあったかく感じます。その心理的な温度差は、2〜3度と言われています。
- 寒色
◻︎青系 - 暖色
◻︎赤系(◻︎オレンジ、◻︎黄色も含む)
なお、どちらにも属さない「◻︎緑」や「◻︎紫」や「無彩色(◻︎白◻︎黒◻︎グレー)」は、「中性色」と呼ばれていて、体感温度への変化はありません。
コタツは赤外線であっためるわけですが、赤外線は可視光線の外側にあるので、目には見えません。「◻︎オレンジ」の光はフェイクで、温かく見せる演出なのです。
え?あのオレンジの光があったかいんじゃないんだ!?
「冷たい」や「温かい」は、単に温度を言い表すだけではありません。人の性格やテンションの比喩としても使われています。
そのため、「寒色」を使えばクールな印象になり、「暖色」を使えば温もりのある印象になることも押さえておきましょう。
時間の流れる速さ
衝撃的な話ですが、色によって、時間の流れる速さの感じ方が変わってきます。
- 「寒色」は、時間を短く感じさせます
- 「暖色」は、時間を長く感じさせます
この特性をどう料理するかは、ビジネス次第!
病院やレストランの待合スペースは、早く時間が過ぎ去って欲しいもの。ならば、寒色系の色を使うのが良いでしょう。暖色系では、イライラしてしまいます。
レストランの中に入ったあとなら、暖色系の色で長く寛いだ気持ちになってもらうのが良いでしょう。満足感が上がるだけでなく、席の回転率を上げる効果も期待できます。
インテリアを売るなら、置く場所に寄って色を変えても良いかもしれません。仕事場は時間が早くすぎるよう寒色系、リビングはゆったり過ごせるよう暖色系が良いですね。
誘目性
「誘目性」とは、その色がどれだけ目を引くかという度合いのこと。誘目性が高ければ、それだけ目立つということです。
まず、「寒色系」よりは、「暖色系」の方が目立ちます。
これはおそらく、可視光線の波長の長さによるものでしょう。「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」の順の通り、暖色系ほど波長が長く、真っ直ぐ届きやすくなるからです。
プレゼン資料でも、値引きのシールでも、目立たせるシーンは「◻︎赤」が多いですね。これは、たまたまではなく、合理的な理由でそうなっているのです。
また、「彩度(鮮やかさ)」と「明度(明るさ)」が高いほど、誘目性も高くなります。この観点では、「◻︎黄色」がもっとも目立つ色になります。
総合すると、
- ◻︎赤
- ◻︎オレンジ
- ◻︎黄色
あたりが、目立つ色ということになります。
だから、マクドナルドの看板は「赤」で、吉野家の看板は「オレンジ」なんだよ
注意書きとか危険サインも、「赤」とか「黄色」だしね!
ただ、目立つ色は、それだけ脳への刺激が強く、疲れる色とも言えます。国道沿いのお店の看板が、全て真っ赤だったらどうでしょう?頭が痛くなりそうですね。
お客さんの目を引くことよりも、リラックスした印象を与えることを優先するならば、寒色系にするか、トーンを抑えた色彩を選ぶことをオススメします。
進出色と後退色
- 進出色
前に飛び出して見える色 - 後退色
後ろに下がって見える色
となっています。
色彩による違いは、誘目性とほぼ同じ法則です。
- 「暖色系」で、彩度と明度が高いほど、「進出色」で前にせり出して見えます。
- 「寒色系」で、彩度と明度が低いほど、「後退色」で後ろに引っ込んで見えます。
あまり見ませんが、カーテンや壁紙が「◻︎赤」などの「進出色」だと、部屋に圧迫感が出てしまいます。逆に「◻︎青」っぽい色だと、広々とした印象に感じます。
また、配色の組み合わせとしても使えます。「後退色」のネイビーを背景にして、「進出色」のオレンジで文字を書けば、浮き出ているように見えるでしょう?
おぉ!ホントに浮き出て見えるね!
重さ
「明度(明るさ)」が低いほど、つまり暗い色ほど、その色の物体は重く見えます。
- もっとも明度が高い「◻︎白」は、もっとも軽く
- もっとも明度が低い「◻︎黒」は、もっとも重く
感じます。
とある実験では、白を「100」とすると、体感では次のような重さになりました。
色 | 体感重量 |
---|---|
◻︎白 | 100 |
◻︎黄色 | 113 |
◻︎黄緑 | 132 |
◻︎水色 | 152 |
◻︎灰色 | 155 |
◻︎赤 | 176 |
◻︎紫 | 184 |
◻︎黒 | 187 |
え?「黒」だと、「白」の倍近く重いってこと?
この数字は「ホンマかいな」って思うけど、黒っぽいほど重く見えるのはホントだよね
明度による重さの印象は、自然界のそれを引き継いでいるからと思われます。
雲や雪や綿花のような「◻︎白」いものは、ふわふわして軽いですね。反対に、金属などは「◻︎黒」っぽくて重たいです。
世界中かつ歴史的により普遍的なのは、石の重さでしょう。主に陸にある花崗岩は、白っぽくて軽い一方で、海の方にある玄武岩は、黒っぽくて重いです。
そんなわけで、引っ越し屋さんの段ボールは白いことが多いですね。荷物が少しでも軽く見えれば、スタッフの負担も減りますから。
また「重い」ということは、中身が詰まっているということでもあり、それだけ価値が高いという印象になります。白い綿花より、黒い金属の方が高そうに見えるでしょう?
そのため、高級感を出したいなら、黒っぽい色を使うことをオススメします。
膨張色と収縮色
「明度(明るさ)」が高いほど、つまり、明るい色ほど、その色は膨らんで見えます。これを「膨張色」と呼びます。
反対に、暗い色は、「収縮色」であり、実際よりも縮んで見えます。
そのため、碁石の大きさは、「◻︎黒」の方がやや大きめに作られています。もし白と黒の石が同じ大きさだと、パッと見で白の面積の方が大きく見えてしまうからです。
また、「◻️白い」服を着ると、少し体が大きく見えます。もし痩せて見えるようにしたいなら、暗い色の服を着てみてください。実際よりもシャープに映るので。
各色相の持つイメージ
ここからは、各色(正確には色相)が持つイメージを解説していきます。
色相 | イメージ |
---|---|
◻︎赤 | エネルギー、行動力、大胆、ダイナミック、刺激的、正義感、力、情熱、怒り、興奮、熱い、セクシー |
◻︎オレンジ | 元気、活発、健康的、行動的、社交的、暖かい、楽しい、賑やか、親しみ、落ち着き(深いオレンジ) |
◻︎黄色 | 喜び、楽しい、ユーモア、好奇心、幸運、無邪気、子供っぽい、カジュアル、注意、危険 |
◻︎緑 | 癒し、安らぎ、リラックス、調和、安全、安心、自然、ナチュラル、やさしい、健康的、若々しい、生命力、繁栄、永遠 |
◻︎青 | 自由、知的、進歩的、誠実、落ち着いた、大人っぽい、静かな、冷静、冷たい、悲しみ、信頼(深い青)、保守的(深い青) |
◻︎紫 | 不安定、幻想的、神秘的、怪しい、不思議、個性的、上品、高貴、豪華、優雅、妖艶、セクシー、異国情緒 |
◻︎茶色 | 落ち着き、温もり、自然、ナチュラル、癒し、安心感、安定感、歴史がある |
◻︎白 | 純粋、清潔、無垢、何色にも染まらない、始まり、神聖、完璧、完全無欠、明るい、若々しい、軽やか、シンプル |
◻︎黒 | 不安、孤独、混沌静寂、恐怖、威厳、意志が強い、重厚感、高級感、シャープ、モダン、洗練、シンプル |
◻︎グレー | 不安、迷い、曖昧、控えめ、虚無、無機質、ニュートラル(中立)、都会的、モダン、洗練 |
時にボクは、世の中の色のイメージに対する説明に不満があります。
「可視光線」や、「寒色」や「暖色」といった心理効果については論理的に説明してくれるのですが、そこから急に「緑は安心します」と、雰囲気論を展開するからです。
「いや、なんで緑は安心するんだよ?その理由は?」という疑問には、なぜか誰も答えてくれないんですね。
そこでこの記事では、「なぜその色に、そのイメージが宿るのか?」という深層心理まで分け入っていきます。仮説ベースが多いのですが、当たらずとも遠からずかと。
深層心理が分かれば、より一層色を自在に操れるようになるぞ!
お客さんに持ってもらいたいイメージから逆算して、色相を選ぼう!
赤(Red)
「◻︎赤」のイメージ
- エネルギー
- 行動力
- 大胆
- ダイナミック
- 刺激的
- 正義感
- 力
- 情熱
- 怒り
- 興奮
- 熱い
- セクシー
食欲の赤
「◻︎赤」は食欲を掻き立てる色でもあります。
- 「マクドナルド」
- 「コカコーラ」
- 「赤提灯」
など、飲食系では赤がしばしば使われていますね。
なぜ、赤から食欲が湧くのでしょうか?それは、狩猟採集をしていた祖先の気持ちになれば分かるはずです。
果物や野菜は、食べ頃になると赤く熟します。かつ、放っておけば腐ってしまうか、他の動物に食べられてしまいます。
あるいは、新鮮な獣の肉が赤いというのもあるでしょう。鮮度が下がれば、黒ずんでしまいますからね。
そんなわけで、「赤=今すぐ食べろ!」と、脳にプログラムされているのです。
マジか!1万年前の祖先の気持ちになれって、そういうことか!
そう!この後もこういう話がいっぱい出てくるよ!
力や興奮の赤
「◼️赤」は「力」や「エネルギー」を連想させます。また、見るだけで興奮する色でもあります。
仮説の域は出ませんが、これには思い当たる節があります。
食べ物以外で、自然界にある「赤」は何でしょうか?
あー、何だろう?遠い祖先の気持ちになってと…
しかも、およそ全ての人類に共通する赤いものだよ
それは「血」ですね。自分の血かもしれませんし、仲間の血かもしれませんし、狩りをしている獣の血かもしれません。
いずれにしても、血で視界が赤く染まるシーンは、多分一大事です。ぼちぼち命の危機に瀕しています。じゃあどうするか?
死ぬ気で、戦うなり逃げるなりするしかありません。だから、アドレナリンを出して、底力を発揮して、痛みを感じづらくするのです。
それが、「◻︎赤」の持つもう1つの先天的なイメージです。
情熱の赤
昔から言われすぎて、もはや古臭さすら感じる「情熱の赤」には、どんな背景があるのでしょうか?
1つには、「◻︎赤」は波長が長い可視光線であるため、もっともストレートに目に入ってくる色です。ぼやけず、まっすぐ伝わる様が、「情熱」のイメージと重なります。
また、赤には、性的なイメージを想起させる効果もあります。
要するに、「エロい」ということです。実際に、背景や衣装を赤にした女性の写真は、そうでない写真よりも、男性から魅力的に見えたという実験結果もあります。
これは、男女のアレやこれやで興奮すると、体のいろんなところが充血して、紅潮するからかもしれません。ちなみに、猿はお尻が赤い方がモテるそうですよ。
橙(Orange)
「◻︎オレンジ」のイメージ
- 元気、活発
- 健康的
- 行動的
- 社交的
- 暖かい
- 楽しい
- 賑やか
- 親しみ
- 落ち着き(深いオレンジ)
使いやすい目立つ色
「◻︎オレンジ」は、赤の次に波長が長いので、誘目性が高い色です。要するに、オレンジは、赤の次に目立つ色ということです。
ただ目立たせるだけなら「◻︎赤」で良いのですが、赤には良くも悪くも強烈なイメージが付きまといます。
赤 | オレンジ |
---|---|
熱い | 暖かい |
情熱的 | 行動的 |
力強い | 元気 |
赤って、イメージが強い分、好き嫌いが分かれるよね
一方の「◻︎オレンジ」は、「◻︎赤」と比較すると穏やかなイメージ。こちらに迫ってくるような暑苦しさがありません。赤に比べると、万人向けな色と言えるでしょう。
「目立たせたいけど、赤じゃちょっと強すぎる」というシーンには、オレンジがピッタリですね。
ビタミンカラーのオレンジ
自然界にある「◻︎オレンジ」は、
- みかんなどの柑橘系の果物
- 柿
- かぼちゃ
- ニンジン
など、果物や野菜に多く見られます。
野菜であれば、「緑黄色野菜」と言われるように、栄養豊富な証でもあります。
そんなわけで、オレンジには「元気」「活発」「健康的」といった、ポジティブなイメージが紐づいています。
お客さんを元気にさせたいなら、オレンジは打ってつけの色だ!
深いオレンジは落ち着く
自然界には、もう1つ、代表的な「オレンジ色」があります。それは、「夕日」と「炎」です。こちらは、ビビッドではなく、「◻︎深みのあるオレンジ」ですね。
オレンジ色の夕日が差せば、これから夜になり、もうすぐ眠りに着く頃。そのため人間は、オレンジ色の灯りを見ると、眠気を催すメラトニンというホルモンを分泌します。
また、炎を見ていると落ち着くという話も有名ですね。「1/fのゆらぎ」と呼ばれる振動のリズムによるところが大きいと言われていますが、色にもそのイメージは宿っていると考えられます。
遠い祖先が火を見ていたシーンを想像してみましょう。
時間は夜。狩りやら採集やらで忙しく働いた昼を過ぎて、ゆったりした時間が流れます。家族で火を囲む夕飯の時間。火は灯りであり、同時に料理する火でもあります。
世界は闇に覆われて、見えるのはオレンジ色に光る炎と、それを囲む家族の顔。あたりは静まり返り、聞こえてくるのは、家族の話し声と、パチパチという焚き火の音。
いやぁ。落ち着きますよね。心に染み渡る、心地の良い落ち着きです。
同じ火を囲んでいるのは、心許した親しい人達でしょう。そこから、「親しみ」というイメージも出てきます。また火を囲んで宴が盛り上がった様から、「賑やか」や「社交的」というイメージも連想させます。
これが、人間の深層心理にある「◻︎深いオレンジ色」へのイメージではないでしょうか。
ウチはやらないけどさ、キャンプってこういう感じなんだろうね
ねぇ〜。キャンプ用品ブランドは、オレンジをブランドカラーにすると刺さりそうだね
黄(Yellow)
「◻︎黄色」のイメージ
- 喜び
- 楽しい
- ユーモア
- 好奇心
- 幸運
- 無邪気、子供っぽい
- カジュアル
- 注意
- 危険
黄色が目立つ理由
波長の長さで言えば、より長い「◻︎赤」や「◻︎オレンジ」の方が、目立つ色と言えるでしょう。
しかし、「◻︎黄色」は、また別の次元で目立つ色になっています。
というのも、各純色の中で、黄色は「彩度(鮮やかさ)」と「明度(明るさ)」がもっとも高い色だからです。
明度だけで言えば、もっとも明るいのは「白」です。真っ白もまずまず目立つのですが、白は彩度が「0」なので、すごく目立ちはしません。
彩度と明度を合わせた総合点で言えば、黄色が優勝となります。ゆえに、黄色はとっても目立つ色になっているのです。
そういった背景から、「元気」や「楽しい」や「幸運」といった、ポジティブなイメージが湧いてくるわけですね。
危険を連想させる黄色
踏切や工事現場などで、黄色と黒の組み合わせをよく目にしますね。
これは、彩度と明度がもっとも高い「黄色」と、彩度と明度がもっとも低い「黒」は、コントラストがもっともハッキリする色の組み合わせだからです。
しばしば「注意喚起」の意味で黄色が使われるために、「注意」や「危険」というイメージが、後天的に紐づいていると考えられます。
スズメバチカラーだからシンプルに恐怖を感じる…
緑(Green)
「◻︎緑」のイメージ
- 癒し、安らぎ
- リラックス
- 調和
- 安全、安心
- 自然、ナチュラル
- やさしい
- 健康的
- 若々しい
- 生命力
- 繁栄
- 永遠
癒しの緑
「◻︎緑」には自律神経のバランスを調整し、リラックスさせる効果があることが知られています。まぁ、そんなの言われるまでもないですよね。
なぜ、「緑」を見ると安心するのでしょうか?
なぜ、心が癒されるのでしょうか?
それはやはり、「植物の緑」「葉っぱの緑」から来ていると思います。
遠い祖先の気持ちになってください。緑に囲まれているということは、そこに食べ物がたくさんあるということです。そこにいれば、飢えずに生きていけるということです。
- 頑張らなくてもいい。
- ここで穏やかに時を過ごせばいい。
- 大丈夫。ここにいれば何の問題もない。
これが、「◻︎緑」の持つ先天的なイメージです。
間違いなくそれだ!完全に納得したわ!
逆にこれが、緑のない砂漠や岩山だったらどうでしょう?
大変です!いますぐに、食べ物が豊富な場所を探さなければいけません!来る日も来る日も歩き続け、地平線の彼方に「緑」が見えたらどう思うでしょうか?
「あぁ、助かった。あそこまで辿り着けば、生きていけるぞ(涙)」という、安心の感情が湧き上がったはずです。これもまた、「緑」の持つ先天的なイメージでしょうね。
安全の緑
「◻︎緑」の持つ「安全」のイメージは、先ほどの安心感から来ている部分も大きいでしょう。
しかし、世界共通で使われている「信号の緑」も、「安全」のイメージを加速させている大きな要因です。「非常口マーク」も、やはり緑が使用されていますよね。
そのためか、WEBデザイン業界では、1つの都市伝説があります。
それは、「緑色のボタンはクリック率が上がる」という説です。そのため、「購入ボタン」や「資料請求ボタン」は、しばしば緑色が使われています。
確かに、そのボタンを押した先に、「安全」な未来を連想させるので、理屈としてはあり得ます。ただ、まだ仮説の域を出ず、定説とまではなっていません。
重要なのはコントラスト比だけで、目立ってれば良いって言う人もいる。ボクは色のイメージも関係している気がするけど
青(Blue)
「◻︎青」のイメージ
- 自由
- 知的
- 進歩的
- 誠実
- 落ち着いた
- 大人っぽい
- 静かな
- 冷静
- 冷たい
- 悲しみ
- 信頼(深い青)
- 保守的(深い青)
世界で1番愛されている色
「好きな色は何ですか?」とアンケートを取ると、だいたいどの国でも「◻︎青」が1番になります。青は、世界共通で愛されている色なのです。
理由はカンタン。人間にとって、もっと見慣れている「空」と「海」の色だからです。
どちらも普遍的ですが、海なし地域もあるので、世界共通のイメージは空の方ですかね。空に対するイメージが、「◻︎青」という色へのイメージの根幹を成しているはずです。
空の色は、青系であることは共通ですが、地域によってトーンが微妙に異なります。
- 澄んだ青色をしている地域
- 水色っぽい地域
- 曇りがちの地域では、低彩度のくすんだ青色
をしています。
その地域の空の色によって、好まれる青のトーンも微妙に異なると思われる
日本は水色っぽい空だけど、曇りがちだから、くすんだ色をしている日も多いね
落ち着きの青
「◻︎青」は、何となく落ち着いて見えるだけでなく、青い部屋は本当に心が落ち着く効果があります。
1つには、慣れ親しんだ空の色に囲まれているからでしょう。
あとは、青の可視光線は波長が短いために、赤やオレンジのように、目にストレートに飛び込んできません。そのため、脳への刺激が少ない色でもあるのです。
また青は、後退色でもあります。前方向にせり出てくるのではなく、奥に引いたような印象を受けます。迫ってこない色という意味でも、落ち着く色と言えるでしょう。
深い青は古い記憶の中にある?
「◻︎深い青」には、さらに落ち着いたイメージがあります。
これはかなり意欲的な仮説なのですが、深い青は、「海の中」の色のイメージから来ているのかもしれません。
え?人間は陸で生きてるのに?
原初の生物は海で誕生し、ずっと海の中で過ごしてきました。約40億年ほど前の話です。初めて生物が陸に上がったのは、海に生物が誕生した35億年ほど後の話です。
我々の遠い遠い祖先は、ずーっと母なる海で生きてきたのです。
そうそう。母親のお腹の中にいる胎児は、進化の過程を辿っていると言われています。だから羊水の塩分濃度は、かつての海水と同じ。初期の胎児には、エラと尻尾がついています。
お腹の中にいる赤ちゃんは、哺乳類に進化する前の、魚類や爬虫類の段階を疑似体験しているということになるでしょう。
生まれて「オギャー」っと泣いた瞬間に、初めてに人間になるんだね
不思議な話だねぇ〜
そんな機構が備わっているくらいですから、我々人間の深層心理に、まだ海の中で過ごしていた頃の記憶が残っていても、何ら不思議もありません。
前前前世のさらにずっと前世。遠い昔の故郷の風景を、「深い青」に見ているのではないでしょうか?ロマンチックなボク(?)は、そんな風に思っています。
「◻︎深い青」の景色は、1番古い実家のようなもの。見ると落ち着くのも、「信頼」や「保守的」といった印象を抱くのも、ごく自然な反応だと思います。
紫(Purple)
「◻︎紫」のイメージ
- 不安定
- 幻想的、神秘的
- 怪しい
- 不思議
- 個性的
- 上品
- 高貴
- 豪華
- 優雅
- 妖艶、セクシー
- 異国情緒
ミステリアスな紫
「◻︎紫」は、色相環では、「◻︎青と◻︎赤の間」。言うならば、「冷静と情熱の間」です。
相反するイメージの狭間にある。それが紫という色相だ
冷静なときもあれば、情熱的なときもある。物質としても、人の性格としても、「不安定さ」を感じますね。
また、その不安定さには、「次にどう転ぶかわからない」「先が読めない」というニュアンスもあります。やはり、ミステリアスな雰囲気につながっています。
また、紫色は、自然界にはそう多くありません。これは、可視光線の波長がもっとも短い紫が、もっとも目に届きにくいことに端を発しているのかもしれません。
自然界の紫は、一部の花や鉱石のみに見られる色。「夕日の赤」や「空の青」や「植物の緑」のようにありふれた色ではありません。
滅多に見れない貴重な色という意味でも、神秘的に映ってしまうんですね。
これも納得感あるな〜
高貴な紫
歴史的に見ると、「◻︎紫」は世界中で「高貴な色」と見なされてきました。
根本的な理由は、染料が貴重だったからです。貝紫(かいむらさき)という染料は、エグいくらい大量の巻き貝を使用するので、庶民の手に入る代物ではありませんでした。
そのため紫は、「帝王紫」とか「クレオパトラの紫」とか言われるように、かなり身分が高い人間しか身に纏えない色だったのです。
なお、紫の染料が貴重だったのは、日本でも同様でした。
聖徳太子が制定したと伝えられている「冠位十二階」では、官僚を12段階の位を定めました。それぞれの位に応じた冠(かんむり)の色が決められており、第1位の大徳は「濃紫」で、第2位の小徳は「薄紫」でした。
「紫衣(しえ)」という紫色の袈裟(けさ)は、位の高い坊さんしか身につけられません。時代によっては、勅許(天皇の許可)がなければ身につけられなかったとか。
そんな経緯があって、歴史的には、「紫」は庶民の憧れの色だったんだね
現代では安価に手に入る紫色ですが、今でも変わらず高貴な色と見なされています。
茶色(Brown)
「◻︎茶色」のイメージ
- 落ち着き
- 温もり
- 自然、ナチュラル
- 癒し
- 安心感
- 安定感
- 歴史がある
イメージは緑に近いが、緑とは違う
自然界にある「◻︎茶色」は、「木」あるいは、「土」です。木がある、土があるということは、そこに植物があり、食べ物が手に入るということです。
「◼️緑」に囲まれて安心するように、茶色もまた囲まれていると安心する色なのです。
ログハウスって憧れるよね
うん、なんか安心感あるある!
緑と茶色に対する、「安心感」や「癒し」の効果は同質と考えて良いでしょう。
しかし、「◻︎茶色」には、「◻︎緑」との決定的な違いもあります。
緑の葉っぱは、枯れたり、地面に落ちたりします。一方で、茶色い木の幹は、人間の一生よりも長くそびえ立ったまま。あるいは、ずっと変わらない大地の色です。
ゆえに茶色には、安心感に加えて、「安定感」も付加されるのです。
また、色味としては、「◻︎オレンジ」を暗くしたものなので、系統としては暖色です。緑にはない温かみが、茶色にはあります。
加えて、暗い色ということは、それだけ「重厚感」を感じさせます。軽やかな緑よりも、より高級感のあるイメージを演出できるでしょう。
薄くて黄色っぽい茶色だと、砂漠のような物悲しさが漂う。安心感を出したいなら、栄養豊富な土壌のように赤茶色っぽい方が良いね
白(White)
「◻︎白」のイメージ
- 純粋
- 清潔
- 無垢
- 何色にも染まらない
- 始まり
- 神聖
- 完璧
- 完全無欠
- 明るい
- 若々しい
- 軽やか
- シンプル
全てを跳ね除ける白
物体が「◻︎白く」見えるのは、その物体が、全ての可視光線を反射しているからです。
太陽光が持つ「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」の光を、全て跳ね返した結果、人間の目には白く映るわけです。
これって、何気にスゴいことじゃない?
可視光線は、実際には7色じゃなくて、その間に無数のグラデーションがあります。無数ある光のうち、どれ1つとして受け入れなかった結果の白です。
文句なしに、「純粋」で「無垢」で「汚れない清潔」な色。だから新郎新婦は白い衣装がぴったりで、赤ちゃんのイメージは白以外が思い浮かばないのです。
神聖な白
古今東西どんな宗教であっても、大抵神様は、「天」すなわち、「空の上」におわす存在とされてきました。天国であり、高天原(たかまがはら)です。
自然界にある「◻︎白」は、「雲」ですね。場所によっては、「雪」もそうでしょう。
どちらも空にあるものです。見上げた先にあり、手の届かない場所にあるもの。そして、神様がおわす場所にあるもの。
神様が住むところの色ですから、白は神聖な色の最右翼だったに違いありません。いや、これしか考えられない唯一の色だったのでしょう。
そのためか、聖職者は白を身につけることが多いですね。キリスト教でも、神道でも、神に使える人が着るのは白い装束です。
そんな背景から、白に元々あった「汚れのない」イメージだけでなく、「神聖」なイメージまで付加されるようになったのでしょう。
真っ白い服は合わせづらい?
服に関心がない人ほど、「無難に白のTシャツでいっか」となりがちですが、実際のところ真っ白なTシャツはかなり合わせづらいです。
実のところ、「◻︎真っ白」はかなり目立つ、というより「浮く色」です。理由は、明度がもっとも高い、すなわちもっとも明るい色だからです。
真っ白なチューリップやバラを想像して見てください。他の色に比べて、お花の部分がくっきり際立って見えると思います。葉や茎の緑や、周りの壁の色にも馴染みません。
セラミックの歯の人って、白すぎて歯が浮いて見てるもんね
目立たせたいなら、真っ白でも良いんだけどね
そういう意味では、洋服であったり、インテリアであったりで、周りの色と調和させることを念頭に置くなら、「◻︎真っ白」はイマイチな選択肢になります。
もし白が持つ「純粋」や「無垢」といったイメージを残しつつ、周りの色との調和も捨てたくないなら、真っ白から明度を少し落とすことをオススメします。
「オフホワイト」や「アイボリー」のような少しくすんだ白を使うだけで、このちょっとした違いで、劇的に他の色とも馴染むようになります。
黒(Black)
「◻︎黒」のイメージ
- 不安
- 孤独
- 混沌
- 静寂
- 恐怖
- 威厳
- 意志が強い
- 重厚感
- 高級感
- シャープ
- モダン
- 洗練
- シンプル
黒が持つ独特の強さ
白も黒も、他の色に染まらなかった色という意味では共通しています。しかし、両者の持つニュアンスは、全く逆になります。
「◻︎白」は全ての色を跳ね除けて、完全無欠のまま純白を守りました。そこに、「純粋」や「完璧」といった、気高いイメージが紐づいています。
一方で「◻︎黒」は、全ての色を吸収し切って呑み込んだ上で、どの色にも染まらなかった色です。これはこれで、白とは対照的な凄みがあります。
そんな黒は、何か底知れぬ、深く大きな力を感じさせますね。一種のパワーを感じるわけですが、「◻︎赤」や「◻︎オレンジ」が持つような、パワーとは質が違います。
赤やオレンジが持つパワーのイメージは、エネルギッシュであったり、腕力であったり、正義の力だったりします。直情的や直接的なパワーと言えば良いでしょうか。
一方で「◻︎黒」が持っているパワーのイメージは、必ずしも腕力のような直接的な力ではありません。権力や影響力のように、もっと得体の知れないパワーです。
また「正義感」のような直情的なものではありません。酸いも甘いも噛み締めて、深く深く考え抜いた末で、覚悟を決めて、強い決意の下で振るうパワーといった印象もあります。
赤いリーダーよりも、黒いリーダーに着いて行きたくなる気持ち
うむ。わからんでもない
そのような背景から、精神的に安定していない人には不安さを覚える色ですが、精神的に安定している人には強さを感じる色です。
ゆえに、若い人が身につける黒には、「不安」や「孤独」を感じますが、一定の年齢を超えた人が身につける黒には、「威厳」や「意志の強さ」を感じるんですね。
政治家が髪を黒染めするのは、一般的には若く元気に見せるためと考えられています。実際には、それに加えて、黒による威厳を纏いたい思惑もあるのではないでしょうか?
というわけで、どちらかというと大人向け、あるいは歴史を重んじるブランドに向いている色と言えるでしょう。
高見えの黒
黒っぽい色ほど重く見えます。自然界で、「◻︎黒いものは大抵重い」という経験則が、脳にプログラムされた結果でしょう。
その色の「明度(明るさ)」が低い、すなわち暗い色ほど、重く感じるようになります。もっとも明度が低く、暗い色は黒。よって、黒はもっとも重く感じる色なのです。
そして、重いということは質量があるということ。密度が詰まっているということ。総じて言えば、価値が高いというイメージになります。
作品もそうですが、ただパッケージを黒くするだけでも、高級感を演出できます。
ハンドメイドは高く売ってナンボの商売。ブランドイメージと相反しないのであれば、この黒の持つ「高見え」の性質は、したたかに使っていきたいですね。
灰色(Gray)
「◼️灰色」のイメージ
- 不安
- 迷い
- 曖昧
- 控えめ
- 虚無
- 無機質
- ニュートラル(中立)
- 都会的
- モダン
- 洗練
もっとも意味を持たない灰色
「◻︎灰色」は、白や黒と同じ無彩色。彩度が「0」なので、色味による意味を持ちません。それでも、白や黒は強い色ですから、独特のイメージを放ちます。
しかし、灰色には何もありません。白のように、膨張して見えることはなく、軽やかに見えることもありません。黒のように小さく見えたり、重く見えることもありません。
色によるイメージという文脈では、もっとも情報を持たない色が灰色なのです。逆に言えば、他のどんな色とも調和する色とも言えます。
意見を持たない人ほど、誰とでも付き合えるみたいな感じかね。良くも悪くも
もし特定のブランドイメージを持たせず、「無機質」、あるいは「無骨」なイメージを伝えたいなら、グレーをブランドカラーにしても良いですね。
作品を使うお客さんの合わせやすさを優先して、「グレー」というラインナップを用意するのも良いでしょう。
本来は無彩色の灰色に少しだけ色味を加えて、「青みがかったグレー」や「グレージュ」にすると、オシャレ感や高級感も演出できます。
色としては使いやすくて重宝する!
都会の灰色
コンクリートによる近代建築が、現代人がもっともよく目にする「◻︎灰色」でしょう。灰色を「都会的」と感じるのは、後天的なイメージと考えられます。
ボクのイメージは、世界的建築家である安藤忠雄さんの作品。コンクリート打ちっぱなしで、まさに「都会的」、あるいは「モダン」の象徴のように感じます。
無機質で、都会的で、洗練されたグレー。これもなかなか魅力的なイメージです。
ボクはこういうイメージが結構好き
まとめ:色選びはもっとロジカルに
あなたが趣味で作品を作っているなら、思うままに好きな色を使えば良いでしょう。
しかし、お客さんを相手にしているなら、色選びのセオリーを踏むべきでしょう。先人が築いた法則を元に、ロジカルに選ぶべきです。
まず、いきなり「何色が良いかな?」と考え始めてはいけません。「お客さんにどんなイメージを持って欲しいか?」からスタートするのです。
そう。色選びは、伝えたいイメージから逆算して考えるべきなのだ!
あなたがお客さんに伝えたいのは、感じ取って欲しいのは、どんなイメージですか?
「クール」なイメージなら「寒色」 | 「ぬくもり」のイメージなら「暖色」 |
「目立たせたい」なら「暖色」かつ、「高明度&高彩度」 | 「落ち着かせたい」なら「寒色」かつ、「低明度&低彩度」 |
「高級感」を持たせたいなら「黒っぽく」 | 「軽やかさ」を演出したいなら「白っぽく」 |
「ふんわり」見せたければ「白っぽく」 | 「シャープ」に見せたければ「黒っぽく」 |
また、各色彩の持つイメージは強力ですから、ぜひあやかってください。
色相 | イメージ |
---|---|
◻︎赤 | エネルギー、行動力、大胆、ダイナミック、刺激的、正義感、力、情熱、怒り、興奮、熱い、セクシー |
◻︎オレンジ | 元気、活発、健康的、行動的、社交的、暖かい、楽しい、賑やか、親しみ、落ち着き(深いオレンジ) |
◻︎黄色 | 喜び、楽しい、ユーモア、好奇心、幸運、無邪気、子供っぽい、カジュアル、注意、危険 |
◻︎緑 | 癒し、安らぎ、リラックス、調和、安全、安心、自然、ナチュラル、やさしい、健康的、若々しい、生命力、繁栄、永遠 |
◻︎青 | 自由、知的、進歩的、誠実、落ち着いた、大人っぽい、静かな、冷静、冷たい、悲しみ、信頼(深い青)、保守的(深い青) |
◻︎紫 | 不安定、幻想的、神秘的、怪しい、不思議、個性的、上品、高貴、豪華、優雅、妖艶、セクシー、異国情緒 |
◻︎茶色 | 落ち着き、温もり、自然、ナチュラル、癒し、安心感、安定感、歴史がある |
◻︎白 | 純粋、清潔、無垢、何色にも染まらない、始まり、神聖、完璧、完全無欠、明るい、若々しい、軽やか、シンプル |
◻︎黒 | 不安、孤独、混沌静寂、恐怖、威厳、意志が強い、重厚感、高級感、シャープ、モダン、洗練、シンプル |
◻︎グレー | 不安、迷い、曖昧、控えめ、虚無、無機質、ニュートラル(中立)、都会的、モダン、洗練 |
イメージを持っておけば、選択肢はかなり絞れるね!
本も1冊置いておくと良い
というわけで、ある程度論理によって使う色は絞れます。しかし、最終的には実際に目で見た印象で選びたいですよね。
そんなときは、手元に1冊「配色本」があると便利です。
ペラペラめくって眺めると、様々な雰囲気の配色が目に入ります。その通りにしても良いし、自分なりに少しアレンジを加えても良いでしょう。
我が家に置いてあるのはこちら
配色本は大体似たような感じなので、これである必要はありません。本屋さんで、気に入ったモノを1冊買ってもらえばOKです。
強いてポイントを挙げるなら、次の点を意識してみてください。
- 厚み(ボリューム)がある
色んな雰囲気の配色を参考にしたいので、サンプルは多いに越したことない - HEX(16進数)のカラーコードが載っている
ネット上で色を指定するときは、「#」から始まる6桁英数字のカラーコードを使うことが多いため。例えば、真っ白は「#ffffff」になる
また、あなたの作風によって、色の方向性がハッキリしているなら、それに応じた本を手に取るのが良いですね。
明度や彩度が高い「ファンシーな配色」の本もあれば、明度や彩度を抑えた「和風な配色」の本もあります。
なお、こういったビジュアルで読む本(活字でなく)は、電子書籍は向きません。必ず紙の本を買うようにしてくださいね。
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