
ビジネスにおいて、「ベネフィット:購入する真の理由」に相当します。
あなたも、大まかには理解しているでしょう。
当サイトでも、↓の記事で解説しています。
ただ、「これじゃ足りないんだよなぁ…」とずっと思っていました。間違ったことは書いてないです。ただ、足りていないんです。
納得できていなかったので、いつか書き足そうと思っていました。が、そのまま書き足すと混乱させてしまいそう。
これは「基礎編」と「発展編」に分けた方が良さそうです。
というわけで、この記事を新たに書いた!
ベネフィットは、カット前の「ダイヤの原石」のようなものです。ベネフィットの時点で見どころがなければ、どんなお化粧をしても輝きません。
「どうすれば、とびっきりの原石を掘り当てられるか?」
が、この記事のテーマ。
この記事に書いてあること
- ベネフィットとは「商品の良さ」ではない
- ベネフィットと「買う価値」は分けて考える
- 人間が求める10の終端価値
- 強いベネフィットを作る5つの構造テコ
正直なところ、「細かすぎないか?」と思われるレベルまで行きます。一般的には、このレベルまでベネフィットを深く落とし込むことは少ないでしょう。
それでもやる理由は、2つあります。
- ベネフィットは「買う理由」であり、枝葉でなく幹。どれだけ理解を深めても、深め足りないことはない
- AI時代は、現実的にここまで実践できるから
本音を言えば、後者の理由が大きいです。
生身の人間が1人で分析するには、この記事のレベルは手に余ります。が、AIを併用すれば、このレベルまで現実的に捌けます。
かつ、AIは細かく指示すればするほど、回答精度が上がりますからね。投下する材料としては、このくらいが妥当です。
近い将来、ここまで掘るのが当たり前の時代になるから
AI時代に対応するためにも聞いておかなきゃ!
まずは教科書通りのベネフィット

基礎編のおさらいで、まずは教科書通りのベネフィットから入りましょう。
ベネフィットとは、「商品を購入したお客さんが手にする望ましい変化」です。
「お客さんが手に入れたい理想の未来」と言った方が、馴染むかもしれません。
超重要なポイントが、お客さんは「商品」がほしいのではなく、「変化」がほしいということ。商品はどうでもよくて、あくまで「自分がどう変わるか」なんですね。
ベネフィットを正しく理解するには、
- 商品の特徴
- 商品がもたらす直接的な結果
- 望ましい変化(= ベネフィット)
を分けて考えることです。
「予備校」を例に考えてみる

1つ、わかりやすい例で考えてみましょう。
「予備校」におけるベネフィットは何でしょうか?
経験豊富な講師陣?
実践性の高いテキスト?
個別指導型カリキュラム?
そうじゃないですね。
- 商品の特徴
:優秀な講師陣、実践性の高いテキスト、個別指導型カリキュラム - 商品がもたらす直接的な結果
:成績が上がる、偏差値が上がる - 望ましい変化(= ベネフィット)
:難関志望校に合格する
ということになります。
ベネフィットの主語はお客さん
こう考えてください。
商品が主語になるベネフィットはあり得ません。機能やらスペックやらは、ベネフィットを実現するための手段です。それそのものが、お客さんに求められるわけではありません。
ベネフィットは、常にお客さんが主語になります。お客さんにどんなハッピーな未来が訪れるか。お客さんが手に入れたいのは、その未来の自分像なのです。
もちろん、商品の特徴は伝えるべきですよ。
が、それだけではダメなのです。
- まずは、ベネフィットを語る、見せる
- ベネフィットを提供できる根拠として、商品の特徴を語る
という順番です。
…とここまでが、一般的なベネフィットの理解。知らなかった人にとっては、これだけでもコペルニクス的な大転換だと思います。
そうよね〜。一度知った後は、「なんて当たり前のこと」って思うのに
コロンブスの卵よな〜
ベネフィットの再定義

一般的なベネフィットの理解でも十分に有益ですが、まだフワッと感があります。
「お客さんが主語になる望ましい変化」と理解すれば、1つ新しい扉が開くわけですが、その先には無限の選択肢が広がっています。
- どんな「変化」を提案したら、お客さんは買ってくれるのだろう?
- もっとたくさん、もっと高く売れる「変化」とは、いったいどんな変化だろう?
- 「望ましい変化」を提案できていたら、本当に売れるのか?(←違う気がする)
という疑問が続いてしまいますね。
ベネフィットを知った瞬間に全能感でちゃって、疑問に思わなかったなぁ
もう1段か2段か解像度を上げた方が、実用面では使い勝手が良いと思うんだよね
そこで、改めてビジネスにおける「ベネフィット」をキチンと定義し直して、料理しやすい形に再構成していきたいと思います。
ベネフィットは差分である
当たり前の話をします。
ベネフィットは、「Before(商品を購入する前)」→「After(商品を購入した後)」の差分です。
「体脂肪率10%まで痩せられるダイエットコース」があるとしましょう。
- Aさん
:体脂肪15%(差分 : -5%) - Bさん
:体脂肪35%(差分 : -25%)
では、Bさんの方が差分が大きくなります。
つまり、「同じ商品」で「同じAfter(未来)」を提供していても、受け取る人の「現状(Before)」よってベネフィットの大きさは変わってくるのです。
ベネフィットの本質は、「状態Aのお客さんを、より良い状態Bまで持っていく」なんですね。
ここは忘れがちなところ。お客さんの「到着地点」だけでなく、「スタート地点」も決めておかないと、ベネフィットを設定することはできないのです。
だから、ターゲットを見定めて、ターゲットの現状理解を徹底しなきゃいけないわけよ
「ベネフィット = 購入」ではない
お客さんは、正味のところ「ベネフィット」という名の変化を買っています。「望ましい変化」を提供できていれば、理屈の上では「売れる」となりそうです。
しかし、実際はそうではないんですね。良い新商品が必ず売れるとは限りませんし、発売から随分経ってブレイクすることもあります。
お客さんが購入に至る最後を指標を、「行動価値」と呼ぶことにしましょう(呼び名は、「購買価値」「顧客価値」と悩みました)。
「行動価値」がプラスなら、人は重い腰を上げます。
もちろん、「購入」も行動の1つですね。
ビジネスで「行動(Action)」といったら、大抵は「購入」「資料請求」「会員登録」のことね
「ベネフィット」と「購入」の関係
行動価値 = 期待リターン – コスト
という計算式になります。
そして、「期待リターン」の内訳を分解すると、
期待リターン = ベネフィット × 実現可能性(0〜100%) × 時間割引率(0〜100%)
となります。
あ、あぁ…
ちゃんと説明するし、そんな難しくないから!
まず言えるのは、やはり計算式の最初は、「ベネフィット」の大きさです。
仮にベネフィットが「100」だったとしましょう。
皮を剥く前の玉ねぎをイメージしてください。
そこに係数がかかって小さくなり、さらにコストが引かれていきます。皮を剥かれて、小さくなっていく玉ねぎのように。
最終的には、行動価値は「30」とか「15」とかになったりします。実際には、「0以下」になってしまうことの方が多いでしょうね。
行動価値がプラスで残れば、行動する理由になるってことね
本記事は、あくまで数値調整される前の純粋な「ベネフィット」を扱っています。
ベネフィットは「ダイヤの原石」のようなもので、テクニックで増減させるものではありません。最初に設定した値が全てです。
最初の時点で如何に、「10」よりも「100」、それよりも「300」のベネフィットを捻り出すかというのが、本記事で追求したいこと。
他の変数は、マーケティングでお化粧できます。本記事ではテーマ外なので深掘りはしませんが、理解のためにカンタンに触れておきましょう。
「実現可能性」という係数
脳は、目の前にぶら下げられたベネフィットを、そのまま鵜呑みにはしません。経験則から、実現可能性を「0〜100%」で見積もって、ベネフィットに掛け算します。
大雑把に、
- ベネフィットを提供できるに足る能力・資格としての「信用」
- この人物の言うことなら嘘はないだろうという「信頼」
で値踏みされることになります。
能力について申し分なく、人としての信頼も勝ち得ているなら、実現可能性は「100%」に近くなり、ベネフィットが間引かれずに済むわけです。
逆に、何処の馬の骨ともわからなければ、「0%」に近づき、ベネフィットもほぼ「0」まで下がってしまうのです。
「時間割引率」という係数
「時間割引率」は、難しそうな響きですが、中身はシンプルです。
脳は、遠い未来に得られる報酬ほど価値を下げて(割り引いて)見積もる性質があります。
脳は進化過程の環境にマッチするように進化してきましたが、その時代というのは旧石器時代の話です。せいぜいが新石器時代で、どんなに少なく見積もっても1万年前。農業も始まる前。
当時のご先祖さまにとっては、「今日と明日」が全てでした。
1年後は生きているかもわかりません。食べ物は貯蔵できませんから、今すぐ身体に蓄えるしかありません。未来予測ができない状況で、未来の報酬などあってないようなもの。
だから、近い将来のベネフィットほど実物大で受け取られ、遠い将来ほど矮小化するアルゴリズムが組み込まれているわけです。だから、老後のための貯蓄や運動は難しいんです。
「コスト」は広い意味で捉える
コストは、もちろん「値段」もありますが、それだけではありません。
- 購入/使用にかかる手間:身体コスト
- 考えたり調べたりしなければならない:認知コスト
- 周囲に説明したり理解を求めたり:社会的コスト
- その行動を選ぶことで逸する機会:機会コスト(機会損失)
全て勘案してのコストです。
意外かもしれませんが、人はどんなに個人的な行動であったとしても、「その行動を取ったもっともらしい理由」を用意しようとします。
「なんでこれ買ったの?」と聞かれたときに、「なんて愚かな買い物をしたんだ…」と思われないだけの理由が与えられていないと、社会的コストが重く購入に踏み切れないのです。
社会的コストが極大なのは、「美容整形」じゃないでしょうか。
金額もそれなりにしそうですが、家を買うほどではないでしょう。ボチボチの新車を買うくらいの値段で人生がバラ色になると判断できるなら、値段だけで言えばリーズナブルかもしれません。
しかし、それを他人に説明したり、理解を求めるのは、かなり苦しいです。むしろ、人間関係をリセットして、新しいお顔と環境で再スタートした方が、トータルコストは安いかも。
もちろん、今の人間関係をリセットすることも大変なコストですが。
そんなわけで、美容整形のコストは、お値段以上に高く計算されているのです。
ベネフィットが、購入する動機の1丁目1番地であることは揺るぎありません。
ベネフィットはダイヤの原石であり、剥く前の玉ねぎです。
- ベネフィットが小さい
- ベネフィットがズレている
- そもそもベネフィットが存在しない
こういう商品が売れることはありません。
しかし、「ベネフィットだけで売れるものではない」という純然たる事実は、ここで強調しておきたいと思います。
ベネフィットの原点

ベネフィットを最後の最後(というより最初の根っこ)まで辿ると、生物の根源的リターンである「生存」と「繁殖」に行き着きます。これが、究極の終端価値になります。
なので原則としては、ベネフィットは「生存 and/or 繁殖」に紐づくもの。
脳としては、「生存」と「繁殖」を有利にする行動を、宿主の身体に奨励したいですよね。
そこで、作り出したのが「感情」です。
- もっとやれ
→ ポジティブな感情(嬉しい、美味しい、楽しい、気持ち良い、など) - もうやるな
→ ネガティブな感情(痛い、マズい、苦しい、気持ち悪い、など)
なお、「もっとやれ」の感情は、快楽だけに限定されません。「自信」「威厳」「コントロール感」のような感情も、ポジティブな感情として含まれます。
ともかく、ベネフィットには、何かしらの感情が伴います。
「ポジティブな感情を起こすもの」か「ネガティブな感情を取り払うもの」でない限り、ベネフィットにはなり得ません。
感情なきベネフィットは存在しない!
ベネフィットは、必ずしも生存や繁殖を有利にしない?
原則的には、ベネフィットは「生存」と「繁殖」を有利にするのですが、現代では、必ずしもそうでない場合もあります(「現代では」というところがミソです)。
脳が前提としている進化過程の環境は、どんなに少なく見積もっても1万年以上前。
当時は「甘い = 果実の食べ頃サイン」でした。あるいは、動物性脂肪の甘さであったかもしれません。「甘い」は生存に有利であったために、ポジティブな感情が伴うよう進化しました。
しかし、現代では、「人工甘味料」があります。甘いだけで、エネルギーもビタミンもありません。むしろ、甘いものは身体に害あるケースの方が多いでしょう。
脳は、「甘いけど、生存には有利にならないもの」を、深いところで理解できていません。だからコロッと騙されてしまうわけですね。
旧石器時代と現代では、環境が変わりすぎてしまいました。
大昔では生物学的リターンが約束されていた行動が、現代ではそうと限らないケースが大量に出てきてしまったのです。
「進化のミスマッチ」や「環境ミスマッチ」と呼ばれている現象よ
- 甘い食べ物
- ポルノ
- エンタメ全般
- SNS
- ドラッグ
- ギャンブル
- 過剰な地位競争
などは、環境ミスマッチゆえに、ベネフィットとして通用しています。
環境ミスマッチを起こす行動の中には、「反社会的」のレッテルを貼られているものもありますが、「文化」として認められているものの方が多いでしょう。
「環境ミスマッチを狙うなんてけしからん!」なんて言うつもりはありませんよ。ただ、ベネフィットの性質を理解する上で重要なので、解説しておいたまでです。
10の終端価値

ベネフィットを「生存」と「繁殖」の2つの究極因まで遡ってしまうと、使い勝手が悪いですね。「この商品は、どのように生存を有利にしてるか?」と考えるのは、ちょっと距離が遠い。
実際に脳も、「これは生存や繁殖に有利に違いない」と学習(環境ミスマッチで錯覚した場合も含む)した何某かに対しては、そのものに価値を感じ、ベネフィットとして扱います。
「お金」は物理的には紙切れですが、これによって衣食住を整えたり、あるいはお金があることで労働をスキップしたりできます。そのことを、人生を通して何度も学習しています。
ゆえに「お金」は、本来的にはベネフィット足り得ない紙切れのはずが、現代環境では、ほぼ直接的にベネフィットと見做されるようになりました。
…とこんな風に考えると、ベネフィットの候補が無限に拡大してしまいます。さりとて、「生存」と「繁殖」では使い勝手が悪い。
そこで、実務上使いやすい10個に分類したのが、次の「終端価値」です。
本記事の根幹がこれ
| 終端価値 | 状態変化 |
|---|---|
| 1. 身体・生理・感覚的快適 | 身体的に快適になる、苦痛が減る |
| 2. 探索・刺激・美的充足 | 新奇性、美、発見、遊び、知的刺激を得る |
| 3. 安全・安定 | 危険、不安、不確実性が減る |
| 4. 資源・余力 | お金、時間、体力、情報、選択肢が増える |
| 5. 自律・有能性 | 自分で決め、制御し、成果を生み出せる |
| 6. 愛着・ケア | 特定の大切な相手と結びつき、守り、喜ばせる |
| 7. 貢献・有用感 | 他者や社会の状態を良くし、役に立つ |
| 8. 所属 | 仲間として受け入れられ、居場所を得る |
| 9. 評価・地位 | 尊敬、魅力、権威、優位性を得る |
| 10. 自己・物語・意味 | 自分らしさ、一貫性、人生の意味を維持・形成する |
これらは、満たされること自体が生物学的リターンなので、疑う必要はありません。これ以上遡って考えることも不要です。もちろん、感情はバッチリ動かせます。
「Before(商品を購入する前)」→「After(商品を購入した後)」でこれらが改善するなら、ベネフィットとして通用します。
また、⑥〜⑨の価値については、他人の存在を前提とした、「社会的ベネフィット」である点も付け加えておきましょう。
ベネフィットは10種類に大別できる!
ってことで良い?
今んとこはその理解でOK!
イメージしやすい項目、しづらい項目があると思います。全部ザッと触れていきましょう。わかりづらいところだけ、厚めに解説します。
終端価値1. 身体・生理・感覚的快適
これはわかりやすいですよね。
食べて「美味しい」とか、肩揉まれて「気持ち良い」とか、そういう話です。
作品での現出例
- 軽い
- 痛くない
- あたたかい
- 手触りが良い
- チクチクしない
- 左利きでも使いやすい
身体で感じる類のベネフィットですね。
OK、OK。これはわかりやすいわ
この価値を追求する場合は、「デザイン」よりも「機能性」押しの設計になるね
終端価値2. 探索・刺激・美的充足
2番目にわかりづらいやつ。
主に、エンタメや芸術界隈での「面白い」「美しい」と評される類で、ビジネス界ではほぼ見過ごされているベネフィットです。
でも、やっぱりちゃんとベネフィットなんですよ。行動価値がなければ、あえてマンガを買ったり、映画を見に行ったりしませんから。
総じて言えば、「学習」という価値です。
人間は、世界の歩き方をプリインストールされていない状態で、生まれてきます。生まれてすぐ自力で生きていける生物もいる中で、人間の養育期間が以上に長いのは、生まれた後で学習する設計だからですね。
- 丸いものは転がるんだ
- 水は下に下に流れていくんだ
- 寝ている人を起こすと不機嫌になるんだ
- 悩みを聞いて頷くだけでも、その人は気持ちが晴れるんだ
などなど、「世界の法則」を学び、次に何が起こるかを予測することで、環境に適応しているわけですね。
子供の遊びは、どれも学習なのよ
世界の法則を学習して、ケラケラ笑ってるのか!
「新しい情報」は、原則として面白い。新しい世界の法則を学べますから。刑事ドラマや医療ドラマだって、自分の知らない世界を学習しているわけです。
恋愛ストーリーは、自分が恋愛するときのシミュレーションです。『アルマゲドン』は、地球に小惑星が衝突する危機を避けるシミュレーションです。
原則として、エンタメ作品が「人」を扱っているのは、そこに社会を学べるシミュレーション要素があるからです。人間同士の機微なやり取りを観察して、社会の歩き方を学んでいるのです。
「美」とは何か?
同じ構造が、よりわかりづらい形で現れているのが「美」です。
見晴らしの良い景色が美しいのは、一つの視界で学習できる情報が多いからです。
柄と柄が合わさって、テイストもバラバラだと、「美しくない」と感じます。そこに、法則性を見出せないからです。
対して、規則的なパターンは、法則性があるので「美しい」と感じます。
ただ、カンタンに法則性が見出せてしまうと、「学習完了!」ということで、興味を失ってしまいます。そのため、「美しい」から「退屈」に変わってしまいがち。
法則性はありそうだけど、ちょっと読みきれない。
というのが最高に美しい塩梅です。
作品での現出例
- 美しい柄
- 整った形状
- 規則的な配置
- 初めて見る意匠
- 定番の中にある外し
- モチーフや製作者の意図を探る楽しさ
こういう感覚的なのもベネフィットになるってことね
そう認識されてないけどね。本当に深淵な話だから、別途↓の記事を見て
終端価値3. 安全・安定
まだ現実にはなっていない危険を、未然に防ぐ価値です。
一般的な商材だと、防災・防犯用品やサプリメントや保険などが該当します。
一見すると、作品とは無縁のようですが、そうとも言えません。
作品での現出例
- 燃えない
- 割れない
- 子供が誤嚥しない
- 皮膚に傷がつかない
- 水に濡れても大丈夫
- 有害物質を含まない
- スマホを落としても割れない
守らなければならない対象に使う作品の場合は、最優先で満たさなければならないベネフィットになり得ます。
突き詰めなくて良いけど、最低限満たさなきゃいけないレベルは満たさなきゃいけない、というニュアンスですね。
作品の最大の売りになるケースは、滅多にないと思うけどね
サブのベネフィットって感じかね
終端価値4. 資源・余力
経済的に、体力的に、時間的に余裕ができる価値と捉えて貰えば良いでしょう。
広い意味で、「ラクできる」と捉えて差し支えないと思います。
作品での現出例
- お財布に優しい
- 手入れがカンタン
- 荷物を探す時間が減る
- 付け替えや着替えが不要
- 長く使えて買い替えの手間や負担が減る
これも「デザイン」より「機能性」で実現する価値だね
とても良い価値ではあるけど、1番の売りになるケースは少ないと思う
一般論で言えば、「資源・余力」はメインの売りになり得る強力なベネフィット。ですが、ことクリエーターの作品では、付随的なベネフィットに落ち着くでしょう。
例えば、長く使える上等なレザー財布は、「資源・余力」の価値を満たしています。ただ、その負担軽減がほしくて買うことは、あまりありません。
冷静に考えて、「丈夫さ」で財布を選ぶ人は少ないでしょう。「加点」ではありますが、「決め手」にはなりません。
実際には、後ほど解説する「自己・物語・意味」の方が強く効いています。いわゆる、「自分色に染まる」的なベネフィットの方が主になっています。
終端価値5. 自律・有能性
少々わかりづらい価値ですが、「自分の裁量で選択して、自分の能力で未来をコントロールできるようになる」という意味合いです。
何もできない木偶の坊よりは、自分で食糧調達できて、自分で煮炊きできて、自分で利害関係を調整できる方が、生存に有利ですね。だから、有能な自分になれることは価値です。
作品の場合は、持ったお客さんが「〇〇できるようになる」という価値に還元できるか。道具(あるいは武器)によって、能力が延伸するイメージです。
作品での現出例(有能性)
- 雨の日でも外出できる
- キャンプで火を起こせる
- 旅行に必要な持ち物を全て持ち運べる
作品での現出例(自律性)
- パーツ交換できる
- 長さを調整できる
- 名入れや刻印ができる
- お客さん自身でカスタマイズできる
- オーダーメイドでお客さんが仕様を決定できる
オーダーメイドやカスタマイズ性は、お客さん自身が、自分で決定できること自体が価値になります。特に意外ではないでしょう。
しばしば「世界に1つだけだから良い」と勘違いされていますが、そこは本質じゃない。自分の裁量で組み上げられることが価値です。
ただ、カスタムした結果「世界で1つだけのイケてるアイテム」が出来上がるなら、「評価・地位」にもまたがります。とても強い価値になりますね。
オーダーメイドは、そのものが価値か!
ミニ四駆とかレゴみたいに、自分でカスタムできることもね
終端価値6. 愛着・ケア
⑥〜⑨は、他人の存在ありきの社会的ベネフィットです。
主に、家族・恋人関係の価値です。
- モテたい
- 家族を大事にしたい
- 家族や恋人に大事にされたい
といった類です。
作品での現出例
- 家族・恋人が喜んでくれる
- 大切な人を身近に感じられる
- 子供との時間をエンジョイできる
- 手書きでメッセージを入れられる
- 子供のランドセルや祖母の着物を再利用する
- 〇〇への愛の深さを表明できる
プレゼントもこのパターンで、ハンドメイド作品だと、「あなたのために選んだ/作った」と言える点が、工業製品と比べて有利です。
リンクコーデや子供向けアイテムもこれだね
クリエーターの作品でもメインを張れるベネフィットよ
基本的には、大切な身内に対する感情ですが、「推し」や「趣味」への愛の深さをアピールできることも、この価値に分類されます。
推しの缶バッジをビッシリつけたり、リュックにお気に入りのお人形を入れてお出かけするのは、こういう根っこがあるわけです。
男性よりも、女性に効きやすいベネフィットだね
終端価値7. 貢献・有用感
1つ前と似ているように見えますが、ちょっと違う。
こちらはごく近い身内ではなく、もっと広い第三者や社会全体の役に立てるという価値です。ボランティアや環境保護の精神は、この終端価値から来ています。
なぜ、そんなお人好し行動が価値になるか?
見返りありきならわかりますが、「ただ他人の役に立てるだけで嬉しい」とは、どういうことか?
人間は社会的動物です。他人との協力が前提の生き物なので、個々に分裂したら生きていけません。だから、なるべく協力し合えるようなアルゴリズムが、脳内に組み込まれているわけです。
もし、見返りのリターンとして事後的に協力するアルゴリズムだったら、誰も進んで奉仕しなくなります。結果として、協力社会になりません。
他人の役に立てるだけで「嬉しい」という感情が湧くからこそ、積極的な協力社会が実現できるわけです。他人の役に立つことは、回り回って生存が有利になるのです。
善意ある起業家は、この精神でビジネスを興していますね。
売り手のモチベーションの源泉にはなりやすいのですが、商品を買うお客さん視点では、価値に還元されづらいところがあります。
ベネフィットとしては、限定的な範囲に収まるでしょう。
作品での現出例
- 環境にやさしい/環境負荷が少ない
- 廃材を再利用できる
- 修理して長く使える
- 地元の技術を残せる
- 動物福祉へ配慮できる
- 文化や自然の保護・保全活動を支援できる
- ペットが道端でしたウンチをキレイに片付けられる
ただし、ヴィーガンや、熱心な動物愛護者など、強い信条を持っているターゲットに対しては、このベネフィットが中核になり得ます。
その場合は、「8. 所属」や「10. 自己・物語・意味」と融合します。
これも、どちらかと言えば、女性優位のベネフィットだよ
終端価値8. 所属
特定の人たちの集団に所属できる価値です。あるいは、その仲間達から自分の存在を認めてもらう価値です。
前述の通り、人間は群れで協力し合う生き物ですから、どこかの集団に属さなければなりません。生存に不可欠で、非常に強力な価値です。
作品での現出例
- 悪目立ちしない
- 仲間と同じでいられる
- その場の雰囲気に馴染む
- TPOによく適合している
- 同じ趣味やセンスの人に認めてもらえる
- 同じ趣味やセンスの人に気づいてもらえる
- ニッチな仲間と同じ気持ちや文脈を共有できる
クリエーターの作品としては、最上級に重要なベネフィットになります。
ニッチなモチーフが求められるのは、そのニッチな界隈の仲間とつながるためです。交流まで求めるかは人によりますが、仮に交流は求めなかったとしても、その界隈の仲間として認知はされたいわけです。
仲間に見つけてもらうためには、界隈だけで通じる共有コードを搭載しなければなりません。こういうニッチ市場は、大企業では追えませんから、零細・個人事業者にこそ開かれた市場です。
大量ロットの工業生産品では実現しづらいよね
個人クリエーターとはめちゃ相性が良い!
終端価値9. 評価・地位
その集団の中で、より高いヒエラルキーを得る価値です。
1つ上で解説した「所属」が下敷きになることが多いです。1人でお山の大将だと、上はいませんが、下もいません。国外追放された王様に何の意味があるかという話。
ヤンキーは学区内でヒエラルキーを争っているわけですが、あくまで「中学生or高校生」という集団内での話。だから、学ランを脱がないわけです。どこまで改造しても、学ランに見えなければ、所属が満たされなくなってしまいますから。
あくまで、集団に属しながら、その中でより高い地位に上り詰めたいわけです。
「所属」は単独で価値になりますが、「評価・地位」は「所属」とセットになっていないと価値になりづらいのです。
極端な話、猿にセンス認めてられてもしょうがないっしょ?
作品での現出例
- 希少である
- 特定の集団の中で目立つ
- センスがある人に見られる
- 量産品ではない、他人と被らない
- 基本はスタンダードだけど、ちょっと個性を出せる
- 界隈の「通」「古参」「有識者」だと思ってもらえる
- 能力、職業、資格、成績を外部に表明できる
「黒帯」とか「紫衣(高位の坊さんだけが着られる袈裟)」は、わかりやすいですよね。「オレは上位にいるんだ」って、わかりやすく表明できますから。
- 医者だったら医者らしい
- 大工だったら大工らしい
- エンジニアだったらエンジニアらしい
そんなモチーフを求めるものです。
サーファーは、横ノリ系ブランドのステッカーをボードや車に貼りますね。あれだって、「オレはサーファーなんだぜ」って表明できることが価値です。
これは男性により響く価値。女性は、「所属」と「愛の深さ」を求めるけど、「上に立ちたい」とはあまり思ってないません。
ただ、「センスがある人間だと思われたい」「ちょっと個性を出したい」は、女性も共通です。
終端価値10. 自己・物語・意味
これが1番わかりづらい。
おそらく、「お、おぅ。そうか(わかるような、わかんないような)」という感想じゃないですかね?
「意味」とか言われるとね…
安心して。本当に理解できてる人は、99.9%いないから
結論を先に言うと、これは「アイデンティティ」の話です。
アイデンティティとは、「過去の自分と現在の自分が同一人物である」という感覚です。
で、それの何が良いかって話ですよね。
人間は、
- 今日は、コッテリ系を食べるか、ヘルシー系を食べるか?
- 理系を選ぶか、文系を選ぶか?
- 都会に住むか、田舎に住むか?
- ゴージャスな家具を買うか、ミニマルな家具を買うか?
- サラリーマンか、独立か?
など、日常的に大小様々な選択を迫られています。
そのとき、何を基準に判断しているかと言えば、「過去の自分」なんですね。過去の自分がシンプルを好んでいるから、「よしミニマルを選ぼう」となるわけです。
まぁ、そうなのかなぁ
記憶喪失にでもならないと体感できんな
うちの1歳の息子は、昨日までトマトとバナナが大好きだったのに、急に翌日から全拒否ということがありました。「おいおい、昨日までの息子はどこいった」と、途方に暮れます。
もし「過去の自分」が脳内から消え去ったら、自分自身に対して同じことが起きます。
- 「コッテリ?ヘルシー?え、どっちだろう…」
- 「ゴージャス?ミニマル?え、どっちだろう…」
とはいえ、過去の自分の記憶を、全部引っ張り出すと都合が悪い。
だって、その記憶は生きてきた全時間分ですから、ウン十年分あります。検索には適さないボリュームです。
そこで、ニュアンス的には、2時間程度の尺に収めた『自分物語』を脳内に持つわけです。主人公は、キャラクター化した自分。その主人公が脳内にいてくれるから、一貫性のある行動が取れるようになると。
ざっくり言うと、「アイデンティティ」というのはこういうことね
ふむふむ…。続けてくれたまえ
「自分らしい」とは、「自分物語の主人公のキャラクターに合致している」という意味です。自分らしいアイテムを選択することで、自分物語を更新しているわけですね。
過去はシンプルを選んでいたのに、ここでゴージャスを選んでしまうと、自分物語と矛盾します。ゴージャスを選ぶなら、シンプルがダメである物語に更新しないと、話がつながらなくなっちゃいますね。
これは大問題。物語が崩壊し、未来の行動指針が崩れ去ってしまいます。
だから、「過去の自分とつながっている」と感じられること自体が価値になるわけです。自分物語が保持され、存続していると確認できることは、それ自体が価値なのです。
作品での現出例
- ノスタルジーを感じる
- 自分の信条やこだわりを貫ける
- 地元人、日本人らしくいられる
- 子供時代や青春時代を思い出せる
- 10年使って自分だけの革に育てる
- 育児中でも、自分らしさを失わずに済む
- 流行ではなく、自分の基準で選ぶ人でいられる
- 自分の中にある良き大人、良き妻/夫、良き親、良き職業人でいられる
これも、クリエーターとはすっごく相性が良い
ただわかりにくさMAXなので、詳細は↓の記事で
10の終端価値の狙い所

改めて、10の終端価値を見直してみましょう。
| 終端価値 | 状態変化 |
|---|---|
| 1. 身体・生理・感覚的快適 | 身体的に快適になる、苦痛が減る |
| 2. 探索・刺激・美的充足 | 新奇性、美、発見、遊び、知的刺激を得る |
| 3. 安全・安定 | 危険、不安、不確実性が減る |
| 4. 資源・余力 | お金、時間、体力、情報、選択肢が増える |
| 5. 自律・有能性 | 自分で決め、制御し、成果を生み出せる |
| 6. 愛着・ケア | 特定の大切な相手と結びつき、守り、喜ばせる |
| 7. 貢献・有用感 | 他者や社会の状態を良くし、役に立つ |
| 8. 所属 | 仲間として受け入れられ、居場所を得る |
| 9. 評価・地位 | 尊敬、魅力、権威、優位性を得る |
| 10. 自己・物語・意味 | 自分らしさ、一貫性、人生の意味を維持・形成する |
どれもが商品の最大の売りになり得るもの。
どこを狙ってもOK。
どれも正解にはなり得ます。
ただし、個人クリエーターとの相性はマチマチです。
作家にとって狙いやすい終端価値を見つけよう!
大量生産品とハンドメイドの棲み分け

今更すごい大事なことを言います。
人間には、
- 「平均的な人」
- 「外れ値の人」
がいますね。
学力偏差値でも、身長でもそうですよね。だいたい同じで山形の分布になります(統計学では「正規分布」と呼ばれる)。
このとき、
- 山の大きい「平均」を狙うのが工業製品
- 山の小さい「分布の端(ニッチ)」を狙うのがハンドメイド作品
となります。
理由は想像つくっしょ?
一応解説してもらおうか
分布が大きい層は、ニーズが太く、市場規模が大きいために、大企業は投資判断しやすい。結果として、研究開発、設備、品質管理に投資が進み、低コストで高品質な生産体制が築かれます。
個人では勝ち目のない市場ですね。
ニッチを狙え!!!
一方で、ハンドメイドが強いのは、平均的な顧客ではなく、
- 特定の身体条件
- 特定の生活場面
- 特定の美意識
- 特定のコミュニティ
- 特定の文化背景
- 特定の自己物語
を持つ、分布の端にいる顧客です。
散々言ってますが、「手作りの温かみ」は、どうでも良いのです。
ちょっと言い過ぎてはいる。けど作家は、手作り自体に優位性があるなんて思わないことよ
ハンドメイドの本質的な優位性は、「大量生産では採算が合わないほど細分化された価値を、少量生産で商品化できること」にあるのです。
「ニッチを狙え」は、中小企業にとって常識。共通スローガン。
個人のクリエーターは、「超絶ニッチを狙え」ですよ。大きな市場で企業と戦って、「少しくらいおこぼれ貰えるだろう」なんてのは、市場構造を理解しない愚かな発想です。
世の中には、「マネキン買い」するお客さんがいます。マネキンが着ている服をそのまま買うわけです。「無難」「間違えたくない」というニーズから来る購買行動ですね。
マネキン買い客を相手にするのは、企業の仕事。
あなたが相手にするのは、マネキンどころか、世界中どこを探してもお目当てが見つからないような奇人・変人(平均から乖離しているという意味。悪い意味ではない)ですよ。
かつ、その変人っぷりを自認していて、変人である自分に恍惚とするようなお客さんよ
「変わってるよね」って言われて喜んじゃうようなね
相性がイマイチな終端価値
さて、謎のお説教は何の前振りだったのか?
10の終端価値のうち、以下は、無人島でも発動する類の価値。
| 終端価値 | 状態変化 |
|---|---|
| 1. 身体・生理・感覚的快適 | 身体的に快適になる、苦痛が減る |
| 3. 安全・安定 | 危険、不安、不確実性が減る |
| 4. 資源・余力 | お金、時間、体力、情報、選択肢が増える |
| 5. 自律・有能性 | 自分で決め、制御し、成果を生み出せる |
基本的にはサバイバルするための価値で、これらは誰もが共通して求めています。
- 軽い
- 安全
- ラクできる
- 使いやすい
などは、ニーズの個人差が出ません。
ニーズが大きいので、基本的には工業生産が有利になってしまうのです。
なるほどなぁ
企業だったら、こっちのベネフィットをまず検討する。ニーズが手堅いから
とはいえ、100点を狙うのは企業さんに任せたとしても、使用上最低限は満たさなければなりません。スマホが割れるスマホケースは問題ですからね。
なので、無視はしません。が、積極的に追うケースは多くないでしょう。
ただし、
- 耳たぶが厚い人向けのイヤリング
- 左右差のある身体に合わせた服
- 補聴器と干渉しないピアス
- 車椅子で使いやすい丈の服
までターゲットを激絞りすれば、個人のクリエーターでも戦える土壌です。
問われてるのは、「工場生産が割に合わないくらい、対象者が絞られているか?」だからね
相性が良い終端価値
逆に相性が良いのは、以下です。
| 終端価値 | 状態変化 |
|---|---|
| 2. 探索・刺激・美的充足 | 新奇性、美、発見、遊び、知的刺激を得る |
| 8. 所属 | 仲間として受け入れられ、居場所を得る |
| 9. 評価・地位 | 尊敬、魅力、権威、優位性を得る |
| 10. 自己・物語・意味 | 自分らしさ、一貫性、人生の意味を維持・形成する |
これらは、人の数、あるいはコミュニティの数だけニーズが分散されるので、1つ1つの市場がかなり細かく細分化されます。
まさに、ここが個人クリエーターの主戦場。
見た目の「美しさ」はもちろんとして、「所属」とか「アイデンティティ」が大事!
「探索・刺激・美的充足」については、何を「面白い」「美しい」と感じるかのアルゴリズムは概ね人類共通。ですが、見慣れた環境が何であるかによって差が出るので、美観も文化圏で分かれます。
それよりも重要なのは、しばしば「美しい意匠」は、「所属」「自己・物語・意味」ともリンクすること。なので、やっぱりここも重要な狙い所になります。
狙い所の格付け
わかりやすく、以下のようにティアを分けてみましょう。
Sクラス
こここそが狙い目!
個人の方がむしろ有利!
| 終端価値 | 作品における方向性 |
|---|---|
| 2. 探索・刺激・美的充足 | 美観に優れている |
| 8. 所属 | そのアイテムを持つことで特定グループの一員になれる |
| 9. 評価・地位 | 個性を出せる、センスが良いと思ってもらえる |
| 10. 自己・物語・意味 | 過去と接続できる、信念を体現できる |
Aクラス
個人でも勝機あり!
アイデア次第では狙い目に!
| 終端価値 | 作品における方向性 |
|---|---|
| 5. 自律・ | オーダーメイドやカスタマイズで、自分オリジナルが作れる |
| 6. 愛着・ケア | ギフト・プレゼント、子供向け、ペット向け |
Bクラス
メインの売りにはなりづらい。
多くの場合は、必要条件を満たすだけ。
| 終端価値 | 作品における方向性 |
|---|---|
| 1. 身体・生理・感覚的快適 | 軽い、肩が凝らない、手触りが良い |
| 3. 安全・安定 | 安全、安心 |
| 4. 資源・余力 | 長く使える、楽できる |
| 5. | 機能によってできることが増える |
| 7. 貢献・有用感 | 環境に優しい、特定の文化や自然を保護できる |
あー、なんかそういうイメージは持ってたけど、スッキリ整理された感じ!
これはガチだから、ぜひ意識してちょ!
中間ベネフィットと終端価値

ここまでも有益オブ有益でしたが、さらに掘り進めていきましょう!
いやぁ、勉強しすぎて頭クラクラしてきたよ
頭が疲れたら、ここで一旦休んで、翌日に続きを読もう!
記事の最初の方に戻りましょう。
一般的に、
- 痩せる
- お金がもらえる
- 志望校に合格する
は、ベネフィットとしてカウントされています。それも、かなり強い部類のベネフィットとして。実際に強い吸引力があります。
ですが、これらのベネフィットは終端価値になっているでしょうか?
「志望校に合格する」は、直接的には、単に試験にパスするだけです。それ自体には、何の意味もありません。
しかし実際には、数多くの終端価値がぶら下がっています。
| 終端価値 | 状態変化 |
|---|---|
| 2. 探索・刺激・美的充足 | より良い学習環境で学べる |
| 3. 安全・安定 | 将来の不安が消える |
| 4. 資源・余力 | 生涯年収が増える |
| 5. 自律・有能性 | 卒業後の選択肢が増える |
| 6. 愛着・ケア | 家族を養える |
| 7. 貢献・有用感 | 他者や社会の状態を良くし、役に立つ |
| 8. 所属 | ハイソな人々の仲間入りできる |
| 9. 評価・地位 | 能力を証明できる |
| 10. 自己・物語・意味 | 成績上位だった自己像を維持できる |
「志望校に合格する」は、直接的にはベネフィットではありませんが、間接的にはベネフィットになります。
言ってみれば、「中間ベネフィット」ですね。
「中間ベネフィットは、本当のベネフィットじゃない」と言いたいんじゃないですよ。むしろ、世の中の商品のベネフィットは、中間ベネフィットの方が多いくらいです。
「痩せる」「脱毛」とかも、いろんな終端価値につながってそうよね
強いベネフィットの裏には、たくさん終端価値が連なっているものなの
究極の中間ベネフィットは「お金」、だが…
そういう意味では、「お金」は究極ですね。
お金は万物の交換手段になっていますから、全ての終端価値と交換できます。
ゆえに「お金」は、超強力な中間ベネフィットとして作用します。
ただし、単に「100万円稼げます」とアピールするのは、とてもレベルが低い、というか解像度が低い訴求です。
「100万円」の先に求めている終端価値は、人によって異なるからです。
- 100万円稼げれば、美味しい外食ができる
- 100万円稼げれば、他の時間を好きな活動に割ける
- 100万円稼げれば、嫌な仕事を断れる
- 100万円稼げれば、子供を私立の学校に通わせることができる
- 100万円稼げれば、老後を安心して過ごせる蓄えが作れる
- 100万円稼げれば、ブラック労働で疲れ切ったパートナーを助けられる
- 100万円稼げれば、ハイクラスの人々とお近づきになれる
- 100万円稼げれば、同窓会で自慢できる
などなど。
中間ベネフィットは大変結構。
実際に、あなたも中間ベネフィットを狙うことになりましょう。しかし、その先にある「本当に求める理想の未来」を見せなければ、お客さんの琴線に強く触れません。
中間ベネフィットの先にある終端価値まで見抜かなければ、適切なマーケティングはできないのです。この点は、いくら強調しても、し足りないことはありません。
言いたかったのはそれか!
中間ベネフィットでも、終端価値まで掘り下げて理解せぇってこと
ベネフィットを強くする5つの構造テコ

ベネフィットを10種に大別できたわけですが、これで早合点してはいけません。
より強く、より大きなベネフィットに仕立て上げたいじゃないですか。
ベネフィットが強く大きくなれば、それだけ購買意欲が高まり、より多く、より高く売れるようになりますから。
ちょっと待て。ベネフィットはお化粧では増やせんって言わんかった?
これはお化粧の話ではない!
- 終端価値が、「何が良くなるのか」なら、
- ここで解説するテコは、「その良さが、どの程度広く、長く、強く発生するのか」
勘違いしないでくださいね。
計算補正のテクニックで「ベネフィットを大きく見せる」のではなく、本当に「ベネフィットそのものを大きくする」方法です。
ベネフィットって、大きくできるの?
できるよ!
テコ1. 状態差を大きくする
結局のところ、ベネフィットは、「Before → After」の差分です。
予備校がわかりやすいですね。
「偏差値40 → 65」まで持っていくとしたら、差分「+25」がベネフィットです。「偏差値55 → 65」だと、差分「+10」ですから、ベネフィットは小さくなります。
「同じ商品」で「同じAfter(未来)」を提供していても、受け取る人の「現状(Before)」よってベネフィットの大きさは変わってきます。
つまり、お客さんが潜在的に持っている
- 不満
- 欠損
- 葛藤
を解消できるほど、ベネフィットは大きくなります。
満たされているお客さんではなく、満たされていないお客さんをターゲットにした方が、当たり前にベネフィットは大きくなるのです。
一見すると、お悩み解決型の商品っぽくないんだけどね
それでも、何かしら不足を満たすために買っている!
テコ2. 持続時間/発生頻度
ベネフィットが得られるのが1回こっきりよりは、以降も繰り返し得られた方が、嬉しさの総和は増えますね。
そこで、
- 持続時間
:どれだけ長くベネフィットを享受できるか - 発生頻度
:日常的に何度もベネフィットを享受できるか
というテコが効いてくるわけです。
消耗品は100均で済ませても、家や車や家電は、グレードの高い商品を選ぶことが多いでしょう。シンプルに、ベネフィットの総和が大きいからです。
「20年使える本革のビジネスカバン」は、持続時間が長く、発生頻度も多いので、相応にベネフィットは高くなりますね。
テコ3. 適用範囲
上記と似ていますが、どれだけ広いTPOで使用できるかという話です。1粒で何度美味しくいただけるか。
例えば、スタイリッシュなキャンプ道具は、
- キャンプで使える
- 日常でも使える
- 旅行先でも便利
- 災害用にもなる
と、適用範囲が広い。それだけ享受できるベネフィットも大きくなります。
特定の式典だけで使える服よりは、通常生活でも使える服の方が、ベネフィットは大きくなります。オンとオフの両方で使える方が、ベネフィットは大きい。
ただ、1点注意。汎用性を高めるほど、1つの場面に対する適合度は下がることが多いです。身につけるアイテムは特にそうですね。
汎用性と適応度はトレードオフになりやすい
男女の選択の違い
男性は、比較的に汎用性の方を選びます。どこでも着ていけるスーツは重宝しますし、オンオフ関係なく使えるシンプルなバッグは刺さります。
一方で女性は、各シーンで最適解を選ぶ傾向があります。「どこでもスーツ」発想ではなく、仕事と式典では装いが微妙に変わります。バッグも、オンとオフで分ける方が多いでしょう。
もちろん、本当にどんなシーンでも最適解を叩き出せる、「汎用性」と「適合度」を兼ね備えたアイテムなら女性も喜んで買うでしょう。が、現実にそのようなアイテムは難しい。
テコ4. 大切な誰かへの波及効果
そのベネフィットが自分だけでなく、子ども、配偶者、家族、顧客、仲間など、身の回りの誰かにも波及するかという観点です。
あるいは、作品や会社のような、人ではないものの、自分自身の延長に位置付けられるようなものに波及することも含みます。
例えば、「時短家電(中身は何でも良いです)」を考えてみましょう。
パッと考えると、「労力・時間が浮いた」というベネフィットです。
しかし、時間が浮いたことで、子供と過ごせる時間が増えたなら、子供にもベネフィットが波及することになります。時間に追われてイライラすることがなくなれば、パートナーにとってもベネフィットですね。
自分以外にも価値が波及すれば、ベネフィットの総和は大きくなるよ!
テコ5. 終端価値のコンボ
「1つのベネフィット = 1つの終端価値」ではありません。終端価値は、1つでもあればベネフィットになり得ますが、必ずしも1つに限りません。
複数の終端価値が束になれば、それだけベネフィットは大きなものになります。
例えば、「美しい柄のコート」を考えてみましょう。
| 終端価値 | 状態変化 |
|---|---|
| 1. 身体・生理・感覚的快適 | 暖かい、肌触りが良い |
| 2. 探索・刺激・美的充足 | 配色や構図が美しくて見入ってしまう |
| 9. 評価・地位 | 他人から美しく見られる |
…という具合に、複数の終端価値を同時に網羅することは可能なわけです。
というか、多くのライフスタイル商材は、大抵が複数の終端価値を満たしています。
洋服は、単に「暖を取るため・肌を覆うため」だけで高い値段はつきませんよね。「収納力がある」だけのバッグも同様です。
多くの場合、以下の価値が付随しています。
| 終端価値 | 状態変化 |
|---|---|
| 2. 探索・刺激・美的充足 | 美観に優れている |
| 8. 所属 | そのアイテムを持つことで特定グループの一員になれる |
| 9. 評価・地位 | 個性を出せる、センスが良いと思ってもらえる |
| 10. 自己・物語・意味 | 過去と接続できる、信念を体現できる |
訴求のことは一旦脇に置けば、商品のベネフィットに包含される終端価値は、多ければ多いほど良いのです。
トレードオフ解消
しばしば両立しない終端価値があります。良薬口に苦しの発想で、「Aを満たすと、Bは満たされない」ということが往々にしてあるわけです。
- 楽だが、だらしなく見えない
- 個性的だが、職場で浮かない
- 子育てしやすいが、母親専用服に見えない
両価値のトレードオフ関係を相殺して「いいとこ取り」できると、ベネフィットの総和は増えます。
複数価値間の関係を改善するということだね
内部犠牲はないか?
ある終端価値を満たした結果、そのAfterの未来で、別の終端価値を失うこともままあります。
- 収入は増えるが、家族との時間が減る
- 個性は出るが、職場で信頼を失う
- 軽くなるが、耐久性がなくなる
こういったマイナス価値があると、ベネフィットはいくらか相殺されてしまいます。
ないに越したことはありませんが、ときにこの手の犠牲はつきものです。繊細さを追求した結果、壊れやすくなってしまうこと致し方ない面も。
絶対に悪ではない。けど、なくせるならその方が良い
ケーススタディ:魚を与えるのではなく、釣り方を教える

おさらいとして、ビジネスでよく取り上げられる「魚を与えるのではなく、釣り方を教える」を例に考えてみましょう。
- 魚を与えられるベネフィット
- 魚の釣り方をマスターできるベネフィット
両者の大きさを、ここまで学んだ内容に即して比較してみましょう。
魚を与えられるベネフィット
「魚を与えられた」ら、今は腹が満たせます。美味しいです。
【終端価値】
| 終端価値 | 状態変化 |
|---|---|
| 1. 身体・生理・感覚的快適 | 美味しい、腹が満たせる |
【ベネフィット増大の構造テコ】
| 構造 | 内容 |
|---|---|
| 状態差 | お腹がめちゃくちゃ空いていれば嬉しい |
| 波及効果 | 量がそれなりなら家族にも分け与えられる |
といったところでしょう。
ふんふん。まずまずの嬉しさだな
魚の釣り方をマスターできるベネフィット
では、魚の釣り方を教わったら?
【終端価値】
| 終端価値 | 状態変化 |
|---|---|
| 1. 身体・生理・感覚的快適 | 美味しい、腹が満たせる |
| 3. 安全・安定 | 将来も食糧が得られる |
| 4. 資源・余力 | 食料自給率が上がる |
| 5. 自律・有能性 | 他者への依存を減らせる、環境を自分で制御できる |
| 6. 愛着・ケア | 家族にも魚を分け与えられる |
| 7. 貢献・有用感 | 困った仲間にも魚を分け与えられる |
| 9. 評価・地位 | 有能な人物して評価される |
| 10. 自己・物語・意味 | 「私は生きていける人間だ」という自己像を得る |
【ベネフィット増大の構造テコ】
| 構造 | 内容 |
|---|---|
| 状態差 | お腹がめちゃくちゃ空いていれば嬉しい |
| 持続性 | 将来に渡って魚を獲れる |
| 反復性 | 繰り返し魚を獲れる |
| 波及効果 | 家族や仲間も同じ価値が波及する |
めっちゃ増えた!
それだけベネフィットが大きくなったということだね
今この瞬間に飢えている人は、即効性のある1匹の魚を選ぶでしょう。喫緊の欠損が大きいために、目の前の魚から得られるベネフィットが極大になるからです。
今にも危機が迫っていないのであれば、「将来に渡って、自分で魚を得られる能力」の方が、ベネフィットははるかに大きなものになります。
ただし例外も
とはいえ、全てがこうなるわけではありません。
例えば、「足の骨が折れた」という場合。とにかく痛みを抑えるなり、生活できるように処置してたりしてくれることが、最大のベネフィットです。
「自分で骨折を対処できる外科医になる」というベネフィットは、ここでは意味がありません。
「家が燃えている」というときも、「とにかく火を消してくれ」でしかないですね。一足飛びに、「人様の命を助けられる消防士になりたい」とはなりません。
この手の、「ただ解決できさえすれば良い」という不足は、しばしばあります。
安く早く解消される以外に求めることはないもんな
クリエータービジネスでは、あまり該当しないと思うけどね
〜な人達の一員になる

絶対ではないのですが、概ね通用する考え方が、
- 「〜できる」
- →「〜できる人になる」
- →「〜できる人達の一員になる」
というベネフィットの増大傾向です。
売れっ子作家グループの一員になる
クリエーター自身を例に考えてみましょう。
「作品が売れる」は、もちろんベネフィットになります。
「売れっ子作家になる」は、さらに大きなベネフィットですね。先ほどの「魚の釣り方をマスターできる」と同じです。
さらに上が、「売れっ子作家グループの一員になる」というベネフィットです。
- 自分は孤立していない
- 同じ価値観の人がいる
- 自分も正規メンバーとして認められている
- 他者から見ても、私はその種の人間である
という「所属」「評価・地位」の終端価値まで含むからですね。
確かにそうかもしれん
また所属は、「自分が、自分自身についてそう思っている」という私的なアイデンティティを、「周囲も、自分をそのような人物として扱っている」という社会的事実へとグレードアップさせてくれます。
必ずしもその集団内で交流をするとは限りません。交流することもベネフィットになりますが、中には交流を求めない人もいます。
しかし、交流は求めていなくても、「そういう人々の1人だと認められたい」という欲求はあるのです。
世捨て人ですら、「老子のような世捨て人グループの一員に見られたい」と思っているもんよ
お客さんをどう変化させる?
お客さんについても同様です。
予備校における一般的なベネフィットは、「難関校に合格する」です。素晴らしいベネフィットには違いありません。
しかし、本当に思い描いているのは、「1年後に、憧れのキャンパスを闊歩する自分の姿」なのです。もっと言えば、「そこで、クールでハイソな友人達に囲まれている自分」です。
仮に、あなたが「パンクなアクセサリー」を作る作家だったとしましょう。
一見すると、「パンクな見た目になれる」「パンクな気分になれる」という変化です。決して悪いベネフィットではありません。
が、お客さんが本当に関心があるのは、「自分自身がどういう人間になるか」です。
だからこそ、「大人になった今、世間に揉まれながら生きているけど、反骨精神を忘れないパンクな人間になれる」まで含んだベネフィットの方が強いのです。
「反骨精神を持った憧れの人や同志達の一員となって、周りの人達にもそう認識してもらえる」まで含まれれば、さらに強いベネフィットです。
なので、「〜な人達の一員になる」は、汎用的に強いベネフィットになる
「〜になる」<「〜な人間になる」<「〜な人達の仲間になる!」
4つの具体例で考える作品ベネフィット
概念レベルは理解してもらえたと思います。
ただ、如何せんイメージが湧かないというあなたのために、「実際の作品ではこういう風にベネフィットが効いてくるんだよ」という例を挙げたいと思います。
- パンク好きOL向けピアス
- 長く使えるレザーバッグ
- 子どもと過ごす人向けのワンピース
- カスタマイズできるシルバーアクセサリー
もちろん、パッと考えた例なので、これがそのまま売れるとは限りません。
思考法のサンプルとして、受け取ってもらえればと
例1. パンク好きOL向けピアス

ターゲット像
- 30代のOL
- 平日はオフィスカジュアル
- 若い頃はライブハウスに通っていた
- 今もパンクやオルタナティブ・ロックが好き
- 今でもパンクなファッションをしたいと思っている
パンクらしいアイコン
- 安全ピン
- 缶バッジ
- スタッズ
- ライダースジャケット
- タータンチェック
- 破れた服
- チェーン
- ブーツ
悩み
- 安全ピンをそのまま耳につけるような表現は、今の職場や服装には合わない
- 今となってはそれなりの役職なのに幼く見えてしまう
- かと言って、無難なアクセサリーを着けると、自分ではない感じがする
このファッションは、大人になるほど抵抗感出るよねー
パンクってそういうもんじゃん。大人の社会とは、本来交わらない
中間ベネフィット
「相容れない2つの世界を1つのアクセサリーで接続する」
- 大人になっても、あの頃好きだったパンクまで卒業しなくていい
- オフィスに馴染むパンク
- 月曜の会議にも、金曜のライブにも
網羅する終端価値
| 終端価値 | 状態変化 |
|---|---|
| 2. 探索・刺激・美的充足 | デザインの背景を探る楽しさ |
| 3. 安全・安定 | 職場で浮かない、子供っぽく見えない |
| 5. 自律・有能性 | 職場に合わせながら、完全には同化しない |
| 8. 所属 | 職場で受け入れられる |
| 8. 所属 | パンク仲間に気づいてもらえる |
| 9. 評価・地位 | 単に派手ではなく、背景のある人に見える |
| 10. 自己・物語・意味 | 昔の自分を捨てずに済む |
| 10. 自己・物語・意味 | 若い頃の自分と現在の自分がつながる |
利用する構造テコ
| 構造 | 内容 |
|---|---|
| 状態差 | 満たされない葛藤を解消する |
| 持続性 | 長く使える |
| 反復性 | 最大週5日使う |
| 適用範囲 | オフィスでも業後のライブでも使える |
| トレードオフ解消 | 本来相入れないオフィスとパンクの融合 |
商品設計
- 一見すると細身のシルバーフープ
- よく見ると、留め具が安全ピンの構造になっている
- 表面は鏡面ではなく、少し傷を残した酸化銀
- 黒いエナメルを一点だけ入れる
- 正面からは端正だが、横から見ると尖った形状が見える
このパターンは多そうだよね〜
「パンク」が他のジャンルに変わるだけよ
例2. 長く使えるレザーバッグ

レザー製品は、「高品質なレザー」「職人の手仕事」「経年変化」という説明が多くなりがちですが、これは作り手側の言葉。顧客のベネフィットではありません。
ターゲット像
- 40代の男性サラリーマン
- すでに色んなスタイルを一周して、自分のスタイルが落ち着いてきた
- ブランドのネームバリューではなく、物自体の良さで選びたい
- あれこれ物色するよりも、気に入った1つのアイテムを使い続けたい
- 財布も、ボールペンも、バッグも、「これ」というモノを見つけたい
悩み
- ブランドが主張してしまうバッグはちょっと…
- 数年使えば、何かしら不具合が出る。そのときに、同じバッグが手に入らないのは困る
- 残りの一生使い続けるつもりで、数年後にまた選び直すことを考えたくない
中間ベネフィット
「所有期間が長くなるほど、持ち主固有の存在になる」
- 20年使う前提のバッグ
- 10年後に「私のバッグ」になる
網羅する終端価値
| 終端価値 | 状態変化 |
|---|---|
| 3. 安全・安定 | すぐに壊れない、買い替えなくて良い |
| 4. 資源・余力 | 長期的に買い替えの手間(選ぶ手間も含め)が減る |
| 5. 自律・有能性 | 流行ではなく、自分の基準で選ぶ人でいられる |
| 7. 貢献・有用感 | 長く物を使えば環境に優しい |
| 9. 評価・地位 | 丁寧に物を選ぶ人に見える |
| 10. 自己・物語・意味 | 使用した年月が物語として残る |
| 10. 自己・物語・意味 | 過去の自分と未来の自分を同じ物がつなぐ |
利用する構造テコ
| 構造 | 内容 |
|---|---|
| 持続性 | 長期間に渡って使える |
| 反復性 | (ビジネスでも使えれば)使用する頻度が多い |
商品設計
- 上質で長持ちするレザー
- 経年変化するタイプのレザー
- 修理対応可能
- 取り替え可能なパーツ
- タイムレス/エイジレスなデザイン(→総じてシンプル)
- ロゴなどはなく、形状の美しさで魅せる
- 具体的な用途に特化しすぎない
- 重さやコンパクトさよりも、汎用性を重視
- 40代以降の男性が、オンでもオフでも持ち物が入る収納
今は「ミニマル」「シンプル」がトレンドなので、その路線が多く見られますね。
ですが、本来的には、こういうターゲット像があって、ドンピシャのベネフィットを提供するために、狙い澄ましてシンプルにするものです。
例3. 子どもと過ごす人向けのワンピース

ターゲット像
- 30代前半〜40代前半
- 未就学児の子供がいるママ
悩み
- 出産後に体型が変わったので、体のラインが出る服には抵抗がある
- 子供と遊ぶ前提だと、動きやすさと洗濯のしやすさが優先されるので、どうしてもデザインがおざなりになってしまう
- お出かけや人と会うときの服装に困る(子供を取るか、おしゃれを取るか)
中間ベネフィット
「子どもと動けて、そのまま人にも会える一着」
要するに、「動きやすくて、おしゃれで、洗えて、体形カバーもできるワンピース」ということになるのですが、ベネフィットは羅列するほど、1つ1つの価値が弱く映ります。
基本的には、「1ベネフィット = 1メッセージ」です。
1つの中間ベネフィットを語ることで、複数の終端価値を満たすのがミソ
網羅する終端価値
| 終端価値 | 状態変化 |
|---|---|
| 1. 身体・生理・感覚的快適 | 身体を締めつけずに動ける |
| 4. 資源・余力 | 着替えや手入れの負担が少ない |
| 6. 愛着・ケア | 子どもと遠慮なく動ける |
| 9. 評価・地位 | そのまま外出や人との面会ができる |
| 10. 自己・物語・意味 | 育児中でも、自分らしい装いを失わずに済む |
| 10. 自己・物語・意味 | 良き母親である自分も放棄せずに済む |
利用する構造テコ
| 構造 | 内容 |
|---|---|
| 状態差 | 悩みに根差した商品 |
| 反復性 | 日常使いで頻度が多い |
| 適用範囲 | 1つのアイテムで、街ブラから公園まで対応できる |
| トレードオフ解消 | 「ママ」と「女性」のトレードオフを解消できる |
商品設計
- 動きやすい
- 洗濯できる素材
- 体のラインが出ない
- だらしなく見えない
ただ、これは結構ありきたりなベネフィット設計です。実際には、ここにさらに、「ターゲットの趣味嗜好」を反映したデザインが加わるでしょうね。
先ほどのように、「パンク」な女性もいれば、「北欧風」を好む女性もいれば、「ギャル」もいます。「和装」を好む人もいるでしょう。
そこまで絞れば、他所と競合しづらくなります。
例4. カスタマイズできるシルバーアクセサリー

イメージは、「ゴローズ」のような、ネイティブアメリカン系のシルバーアクセサリー(もちろんそうじゃなくても構いません)。
チェーンに、複数のトップをつけられるようになっています。
- フェザー(羽)
- イーグル(羽を広げたワシ)
- 矢じり
- メダル
- 植物の葉っぱ
など、いくつかモチーフがあります。シンプルなシルバーもあれば、ターコイズやゴールドが付いた華やかなものもあります。
お気に入りを1つだけつけても良し。ジャラジャラさせても良し。その日の気分で付け替えるのも良し。
一蘭のラーメンみたいに、自分好みにカスタマイズできるわけね
ふむふむ
「世界に1つだけ」で何を満たす?
世の中には、「世界に1つだけ」という訴求がしばしば見られます。
パターンとしては、
- 希少:本当に数が少ない
- 個体差:個体によって表情が違うので、同じものがない
- カスタマイズ:自分好みに改造できる
- 経年変化:使っていくと自分だけにフィットする
- 自分の印:名前やイニシャルなど
がありそうです。
希少を除けば、「世界に1つだけ」という事実そのものは、ベネフィットにはならないでしょう。どの終端価値にも接続しないので。
この中で、「個体差」だけは、どの終端価値にもつながりそうにないんですよね。
天然石やレザーでは、しばしば個体差をもって「世界に1つ」と言われはします。が、正直なところ、お客さんにはあまり刺さっていないと見えます。
「世界に1つだから何?」って感じよなぁ
大事なのは、「世界に1つ」の先にどの終端価値を見出すか
カスタマイズ性による「世界に1つ」は、次の終端価値につながります。
| 終端価値 | 状態変化 |
|---|---|
| 2. 探索・刺激・美的充足 | 組み合わせを探る楽しさ |
| 5. 自律・有能性 | 自分自身で決定できる |
| 8. 所属 | カスタマイズを通して、仲間とコミュニケーションが発生する |
| 9. 評価・地位 | センスが良いと思ってもらえる |
| 9. 評価・地位 | そのセンスの良さが自分自身の功績になる |
| 10. 自己・物語・意味 | 自分らしさを表明できる |
ツボを押さえてます。ライフスタイル商材でド本命の終端価値ばかり。
思えば、子供のおもちゃもこのパターンが本当に多い。
- ミニ四駆
- トレーディングカードゲーム
- シルバニアファミリー
- リカちゃん人形
- LEGO
どれも、カスタマイズ性があります。
ボクの少年時代を思い返すと、ブームはコロコロコミックから発信されるものでした。流行るのは、ミニ四駆を始めとしたカスタマイズ性のある商品ばかり。
世代じゃないけど、ベイブレードもそうよね?
「わたしが考えたんだぞ」って言えるところが良いよね
そもそも、「ファッション」自体、自分の裁量でコーディネートするものですよね。インテリアだってそう。その楽しさは、あなたもよくご存知のはず。
子供だけじゃなく、大人にとっても、カスタマイズ性はベネフィットです。
カスタマイズ性は選択肢の1つであって、必須ではありません。が、もう少しこういう攻め方をするブランドがあっても良いようには思います。
ベネフィット・ドリブン・マーケティングのススメ

長かった記事も、ようやく終わりを迎えようとしています。
最後に伝えたいのが、「ベネフィット・ドリブン・マーケティングで行こう!」です。
ドリブン…?
ビジネス用語で、意訳すると「ありき」だね
つまり、「ベネフィットありきのマーケティングをしようぜ」ということです。
いや、当たり前すぎて、言うまでもないことなのですが。だって、「ベネフィット」は買う理由そのもので、お客さんはベネフィットを買っているわけですから。
ベネフィットは、カットする前のダイヤの原石です。
- ベネフィットを実現する商品
- ベネフィットを訴求する文章
- ベネフィットを想起させる画像
原石の段階で価値がなければ、どんなに巧みなカットも水泡に帰すのです。
ベネフィットが見えないマーケティングは、目隠しでやるダーツみたいなもの。ベネフィットを起点に全てのマーケティングを展開させるのは、至極当たり前のことです。
が、実際には当たり前じゃないんだよね
マーケター達の苦悩
世の中の「マーケター」と呼ばれる人々は、上流に関与できないことが多い。上から落ちてきた商品を、「これ売る方法を考えて」と指示されるケースがほとんどです。
歯痒いでしょうね。
本来のマーケティングは、商品を企画するところから始まっていますが、そこは滅多に入り込めない聖域。部門(場合によっては会社ごと)が断絶されているので、上流と下流を気軽に行き来するのも難しい。
また、企業の商品製造には、
- 生産ラインとか
- 金型・鋳型とか
- 生産ロットとか
色んな制約があります。
構造的に、下流に一旦渡したら、カンタンに上流に戻せません。何度も手直ししてたら、下流部門から「ちゃんと決めてから降ろせよ!」って怒られちゃいますからね。
代わりに、どんな商品が落ちてきたとしても、あるのかないのかわからないベネフィットをこじつけなければいけない。それが、世のマーケター達の苦悩です。
個人作家だからこその強み
そこいくと、個人で活動するクリエーターは、上流から下流までセルフ完結。
かつ、1点から気軽に作れます。
全部あなたのさじ加減次第。
上流↔︎下流を行ったり来たりし放題。
素晴らしい自由度!
理想的なマーケティングプロセスを実践できる環境です。
この強みを活かさない手はない!
にも関わらず、なんとなく作品を作ってみて、「さて、どう売ったものか?」と考える。順番が違います。
ベネフィットが先、作品が後です。先にベネフィットの仮説を立てて、ベネフィットを実現する作品を考えるのです。
あ、頭が痛ぇ…
ざっくりと、以下の順番で考えるといいですね。
- 顧客理解
:この作品を使う前、お客さんはどんな状態にいるか - ベネフィット設計
:使用後、お客さんの生活は具体的に何が変わるか
:その変化は10の終端価値のどれに接続するか
:その価値は、長く・頻繁に発生するか。他の価値も同時に満たすか - 商品設計
:それらを形にする作品とは、どんなものか
この順番は、ごくごく一般的な事業企画のプロセスです。
実際には、裏付けのための細かい調査が行われますが、これはカンタンに後戻りできないためでもあります。1点から作れる作家は、厳密に調査する代わりに、1つ作品を仕上げて市場に投下し、反応を見る方がリーズナブルでしょうね。
それでも、「顧客理解→ベネフィット設計→商品設計」の順番は絶対です。
これ以上は省略できない
実践するだけで、お客さんに望まれない作品が生まれる可能性を、劇的に減らせます。とっても生産性の高い企画プロセスです。
悪いことは言いません。使わない手は、ないと思いますよ。

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