現役専業ハンドメイド作家の奥さんのマーケティングやってます♪
ビジネス用語が苦手なハンドメイド作家さんでも、「ターゲット」という言葉を聞いたことがあると思います。意味もそのままで、どのお客さんの層を狙うかという意味です。
もし「あなたの作品のターゲットは誰?」と聞かれて、スラスラ言葉にできないとすると、あなたはかなり損しています。というよりムダを苦労を背負い込んでいます。
ハッキリ言って、ターゲット不在のビジネスはあり得ない。ビジネスじゃないってことは、趣味ってことです。
ぐぬぬ、言いたいこと言いやがってー!
のっけから厳しいこと言ってゴメン
でもさすがにターゲットは決めておかないとヤバいからぶっ込んでみたよ
しかし実際のところ、ターゲット設定はやった方がいいという認識はあるものの、「で?具体的にどうするの?」がないから動けないのではないでしょうか?
そんなあなたに朗報です♪この記事では、「ハンドメイド作家がここまでやればOK!」というターゲットの設定方法を解説しています。
結論を先に言うと、「ターゲットは絞れるだけ絞れ!」です。具体的にどういう手順で設定すれば良いかまで踏み込んでいます。
ターゲットを絞れば、あなたの作品はもっとカンタンに、もっと高い値段で売れるようになります。イヤでも月10万円くらいは売れちゃうでしょう。
難しい話や計算は出てこないから、安心して読んでみて!
ターゲットとペルソナの違い
始めに、よく一緒に語られる「ターゲット」と「ペルソナ」の違いに触れておきます。
言葉の意味だけで言うと、「ターゲット」の範囲を1人まで狭めたものが「ペルソナ」になります。
ターゲット | ペルソナ | |
---|---|---|
意味 | 商品やサービスを買ってくれる顧客層 | ターゲット内の典型的な顧客像 一般的には架空の人物像 |
人数 | 数万〜数百万人 | 1人 |
目的 | 市場規模の大きさを測る | お客さんを深く理解する |
用途 | 経営企画・営業企画 | 主に商品企画 |
作成例 | 30代で子供を保育園に通わせ、時短の仕事をしているワーママ | 高橋みき。33歳。東京都世田谷区在住。 同い年の夫と3歳の娘の3人家族。 子供は保育園に通わせ、新宿の旅行代理店で時短勤務。 趣味はカフェ巡りだが最近はできていない。 悩みは、…(この後も長々と続く) |
「ターゲット」は、その市場にどのくらいのビジネスチャンスがあるか、要するにどれくらい儲かるかを測るもの。数字と金勘定の話です。
「ペルソナ」は、お客さんが抱えている悩みや、叶えたい欲求を理解するもの。お客さんの心理や行動の話で、ペルソナを手掛かりにお客さんが求める商品を考えます。
順番としては、「ターゲットの設定→ペルソナの設定」です。
ペルソナは重要ですが、ぶっちゃけ設定しないまま商品化されているケースが少なくありません。企業ですらそうなので、ハンドメイド界隈は尚のことです。
しかしターゲットを設定しない商品はありえません。どんな中小企業でもターゲットは必ず設定しています。
ターゲットの設定は、基本中のキホン!
絞るほど売りやすくなるターゲット
まずビジネスの常識として、ターゲットを絞るほど、パイ(買ってくれる人の総数)は小さくなるが、売れやすくなるという事実があります。
ベーシックな機能で、ベーシックな形で、ベーシックな色の商品は、誰もが買う可能性があるものの、誰もそこまで欲しいと思いません。
逆に尖った機能で、奇抜な形で、ド派手な商品は、ほとんどの人が見向きもしない代わりに、一部の人は熱狂的に欲しがります。
- オイスターバー
→牡蠣好き以外に見向きもされないが、牡蠣好きは強烈に引き寄せられる - レモンサワー専用グラス
→レモンサワー好き以外に見向きもされないが、レモンサワー好きは強烈に引き寄せられる - ドッグラン付きマンション
犬を飼ってない人には見向きもされないが、犬を飼っている人には魅力的
「イス」一つとっても、ただ座るだけのイスを売ろうと考えてはいけません。
- ゲーミングチェア
- マッサージチェア
- 痔の人用に穴が空いたイス
- 腰痛に効く坐骨で座るイス
- 持ち運べる折り畳みイス
のように、さらにターゲットを細分化しなければなりません。
ビジネスの鉄則は、ターゲットを絞ること!
「PAYPAY」や「UNIQLO」のような不特定多数に向けた商品は、超大手だけに許される例外中の例外だと思って
慣れていない人がターゲットを設定すると、「全ての日本人!」とか「30代女性!」のように範囲が広くなりすぎる傾向があります。
しかし、広すぎるターゲットは、「ターゲットなし」と同じ意味になってしまいます。これではまず売れません。
ターゲット全員だった「T型フォード」の話
1900年代の初め頃、アメリカで「T型フォード」という初めての大衆車が登場しました。
車種は1モデルで、カラーは黒のみ。その代わり安い。全ての大衆をターゲットにしたT型フォードは1,500万台以上販売された大ヒット商品になりました。
さてその後、現代に至るまでに車のモデルはどれほど増えたでしょうか?
高級感のあるセダン、アウトドアやスポーツに使えるSUV、たくさん乗れるミニバンなど、ターゲットが細分化されていきましたね。
もはやベーシックで黒1色のT型フォードのような車を欲しがる人は、いなくなってしまいました。
かつてT型フォードがバカ売れしたのは、それ以外に大衆の手に届く値段の選択肢がなかったから。競合がいる状態だと、ターゲットを絞らなけきゃ売れないのです。
「全部のタスクが最優先だ!」って言ったら、それはどのタスクも優先してないことになるよね
「全員ターゲット」は、同じような自己矛盾を抱えているよ
小規模なビジネスほどターゲットを絞れる
ターゲットは絞るほど売りやすくなる代わりに、市場規模は小さくなっていきます。
世の企業は、「どこまでターゲットを絞れるかのチキンレース」をやっているとイメージするとわかりやすいでしょう。
チキンレースって、バイクでどこまでブレーキ掛けずに突っ走れるかってアレか
大企業は売上目標が大きく、多くの社員を養っています。100億円くらいの市場規模がないと旨みがないので、ターゲット絞りのチキンレースからは早々に脱落します。それでも高い品質や安い価格のおかげで、ちゃんと買ってもらえます。
一方で中小企業は、思い切ってターゲットを絞れます。品質は大企業に劣るものの、よりお客さんに刺さるコンセプトで商品化できるので、多少高くても買ってもらえます。
だから市場は、安くて高品質な大企業の商品だけで埋め尽くされないんだ
なるほどねぇ。だからハンドメイド作家みたいな個人でも生きる道があるんだね
大企業と同じ戦い方をするな!
繰り返しなりますが、口酸っぱく言わせてもらいますね。
大企業が幅広いターゲットを設定しているのは、多くの人に売らないと、図体の大きな会社を維持できないからです。大食漢は、少々食べただけでは、代謝を維持できないのです。
その代わり彼らは、
- 多くの社員を抱え、
- 広い販売網を持ち、
- 高性能な設備を有し、
- 多額の広告費用をかけています。
- 安くて高品質な製品を、作って売る体制を持っています。
- お客さんから認知と信頼を獲得しています。
広いターゲットを相手にするということは、彼らに真正面から戦いを挑むこと。鉄砲を携えた3万8千人の織田・徳川連合軍に、竹槍1本で突っ込むようなものです。
何1つとして勝てないフィールドで、裸一貫で戦おうとしているのです。
バカを言っちゃあいけないよ!
農家になったと想像してください。
周りには、「東京ドーム何個分」とかの土地を持って、トラクターで「米」を作ってる農家がいます。そんな農家がゴロゴロしています。
そんな中あなたは、「6畳分」の土地しか持っていません。たった1部屋分の広さです。
さて、ここで何を作りますか?
この6畳からの収穫だけで、家族を養うんですよ?
ここで「米」を作りますか?
うぅ、作らない!
そういうことかぁ…!
農業のことはわかりませんが、「高麗人参」とか「白トリュフ」とか「アヘン(流石にダメか)」とか「超レアな漢方薬」とか、もっとニッチで高いものを作るでしょう。
もしここまでで、勘違いさせてしまっていたらごめんなさい。オブラートに包まず、ハッキリと伝えておきます。
ハンドメイド作家には、ターゲットを絞る選択肢があるのではなく、ターゲットを絞る選択肢しかないのです。絞る以外に、生き残る道などないのです。
ハンドメイドのターゲットは「1人」まで絞る気持ちで
では大抵は個人事業であるハンドメイドは、どこまでターゲットを絞れるか?
答えは「1人」です。たった1人欲しがってくれればOKです。
えぇ!?1人しか買ってくれなかったら生活できないよ!
1人が買ってくれれば、その背後には同じような人が1,000人や1万人はいます。
個人の場合は、1人買ってくれることがわかれば、自分の食い扶持くらいは稼げる市場規模が担保されます。数字とにらめっこする必要はありません。
どこまでもターゲットを絞れるのが個人ビジネスの強み。生かさない手はありませんね。
難しく考えず、「ターゲットは絞れるだけ絞る」って理解しておけばOKよ
おー!やることがスッキリした!
「誰か1人は買うだろう」はただの甘え
1人でも買ってくれればOKと聞いて、少し安心したのではないでしょうか?
ここで釘を刺しておきます。「思いのままに作品を作っても、誰か1人くらいは買ってくれるのでは?」という安易な思考は絶対にNGです。
「1人が欲しがる作品を作ろう」と「誰か1人は買うだろう」の間には、天と地ほどの差があります。
ターゲットを無視していいとは一言も言っていないので、くれぐれも履き違えないように。
裁縫針に糸を通すシーンを想像してみよう
一点集中で糸を通すことはできても、目を瞑った当てずっぽうじゃ何百回やっても通らないでしょ?
確かに。1人に売れればいいからって脳死でいいわけじゃないよね
ハンドメイド作品のターゲットの絞り方
「ターゲットは絞るべし」とわかったところで、次は肝心の「ハンドメイド作家がどういう手順でターゲットを絞っていくか?」を解説しましょう。
ターゲットの範囲は、属性を掛け算するごとに絞れていきます。
ハンドメイドのお客さんは十中八九が女性なので、試しにターゲットを「女性」とするところから始めてみましょう。
日本の人口は約1億2,000万人いるので、「女性」は半分の6,000万人です。ターゲットとしては大きすぎます。
ここで「ママさん」という属性を掛けてみましょう。1学年の人口はだいたい100万人。仮に小学生以下の子供を持つママということにします。
- 「ママさん」→1,200万人まで絞れる。
- 「0歳児のママ」→100万人まで絞れる
- 「0歳児の女の子のママ」→50万人まで絞れる。
- 「初めてのおもちゃを買うママ」→10万人以下まで絞れそう。
ここに「教育熱心」や「ナチュラルな雰囲気が好き」や「〇〇アレルギーがある」といった属性をさらに掛け算していくと、ターゲット1万人以下まで絞れます。
ターゲット設定のヒント
- 上記の例は「購入者=利用者」ですが、ハンドメイドだと贈り物のユースケースも多い。「友達の出産祝いを贈りたい」といった属性もあり得ます。
- ハンドメイドのお客さんの9割は女性なので、通常ターゲットは女性です。ただターゲットを絞る意味で、あえて男性をターゲットにするのも1つの手です。
繰り返しになりますが、ターゲットを絞るほど売るのがカンタンになります。カンタンになるとは、値下げや熱心なセールスがなくても売れるということです。
どこまでもターゲットを絞れるのがハンドメイド作家の強みなので、この強みは最大限に利用すべきです。
そこそこ大きな企業がターゲットを設定する場合は、100万人(ざっくり人口の1%)くらいに絞りますが、個人なら1万人以下まで絞りたいところ。
属性を掛けられるだけ掛けて、ターゲットを絞りましょう。
これってちゃんとターゲットの人数を計算した方がいいの?
肌感覚でいいよ
「こんだけ絞ったら滅多にいないよ?」って思えたらそれで
(参考)本サイトのターゲット設定
参考までに、当サイトの例も紹介しましょう。
当サイトはハンドメイドブランドではないのですが、ターゲット設定の考え方は何ら変わりません。
本サイトのターゲット例
- ハンドメイド作家(正確にはモノづくり系のクリエーター)
- 確固たる制作スキルを持っている
- けど、売り方がわからず芽がない
- モノづくり一本で食って行くことを目指している
- フォロワー数やお金よりも、納得できる作品を作る方が大事
本サイトの記事は、すべからく「あなたは、プロと遜色ない制作スキルを持っている」という体で書いています。
また、あなたの目標は、お小遣い稼ぎレベルではなく、生活費を稼げるレベル(月20-50万くらい)を目指しているという前提で書いています。
加えて、SNSでよく見る、「3ヶ月で100万円!」みたいな「お金、お金、お金」の価値観ではなく、愛するモノづくりに没頭できる「心の豊かさ」に価値を感じる人に向けて書いています。
もしあなたが、このサイトに強く惹かれたとしたら、それはあなたが本サイトのターゲットであり、ボクがあなただけに向けて記事を書いているからです。
もちろん、未経験の作家さんや趣味の作家さんに見てもらっても構わないよ
ただ、そういう人に向けて書いていないんだね
ターゲットにリンクするように作品に属性を追加する
ここからが肝です。絞ったお客さんのターゲットにリンクするように、作品にも属性を追加していきます。
先ほどの例の続きで、「女性 ママさん 0歳児の女の子の初めてのおもちゃを買う 教育熱心」というターゲットにしたとしましょう。
商品カテゴリーを「おもちゃ」にして、
- 「飲み込まない大きさ」
- 「柔らかい素材」
- 「女の子も遊べる」
- 「(おもちゃデビューなので)長く遊んでもらえる」
- 「知育」
といった属性を追加できそうです。
こうやって、作品に属性を追加してニッチ化していきましょう。
絞り込まれたターゲットのお客さんが、「わたしが欲しいモノは、この作家さんしか売ってないみたい」というレベルまでニッチ化できるのが理想です。
規模が大きい企業ほどターゲットを絞れないので、作品がニッチになるほど競合は減っていきます。
競合が減れば、あなたの作品が選ばれやすくなるだけでなく、高い価格でも買ってもらいやすくなります。
売れやすいだけじゃなく、単価も上げられるのか!
そう!ニッチ化はハンドメイド作家の唯一にして最大の武器だよ!
良いターゲット設定の見分け方
良いターゲット設定の条件は、まずはキッチリと人数を絞れることです。
しかし、もう一つ大事なニュアンスがあります。
それは、お客さんがターゲットスコープを聞いたときに、「お!それ、まさに私のことだ!」と瞬時に直感することです。
「これは、私のためのブランドだ!」と、お客さんが直感することです。
例えば、
- シンプルが好きな人
- 大人の落ち着いた雰囲気を好む人
- 子供との時間を大切にしたい人
- 周りに流されず、自分の感性を大事にしたい人
というターゲットスコープを聞いたときに、あなたはどう思うでしょうか?
ボクはどれにも合致します。なので、ボクはこれらのターゲットスコープの内側にいるはずです。しかし、何となく自分ごとに感じません。
これじゃあダメなんだ!
例:革小物作家さんと話したときのこと
先日お話しした革小物作家さんは、「シンプルで、機能的で、長持ちする丈夫なアイテムを好む人」というターゲットを設定していました。
ボクはどれにも当てはまるわけですが、男性は大体、シンプルで機能的で長持ちするアイテムが好きです。女性にだって、そういう人は多いでしょう。
「これって、自分のためのブランドなのかな…?」と、首を傾げてしまいます。
でも話をもっと掘り下げていくと、色々面白い話が出てきたのよ
革製品といえば、長年メンテナンスしながら、自分色に育てていくイメージがありますよね。革にこだわりのある作家さんほど、そういう革の扱い方を好む印象もあります。
でも、その作家さんは、革にしっかりこだわりを持ちながらも、メンテナンスに対する煩わしさを理解していました。
「10年20年と革製品を長く使いたいけど、ぶっちゃけメンテナンスは億劫な人」と言われたら、ボクは「おお、それはまさに自分だ!」と思ったわけです。
また、その作家さんは、ファミコン・スーファミ時代のドラクエやファイナルファンタジーが大好きで、そういう作風も考えているとのことでした。
商標や著作権に抵触しない配慮は必要ですが、これはなかなか面白いですよね。実は、ボクもこの世代(よりちょい下ですが)なので、とってもワクワクします。
「スクエアとエニックスが競い合っていた頃に少年時代を過ごした人」がターゲットなら、「やばっ!それめっちゃ自分じゃん!」と直感します。
単に属性を重ね合わせていくだけでは、弱いんですね。その属性のうち、少なくとも1つは、お客さんにクリティカルに刺さる属性でなければならないわけです。
性別や年代のような当たり障りのない属性を何個も掛け合わせるよりも、1つでも、一気に人となりが見えるような属性で絞った方が効果的なんですね。
伝わったかな?この感覚
あー、わかる気がする!ニュアンスは伝わった!
ハンドメイドでターゲットを絞る思考法
でも、完全に自由にターゲットを選ぼうとすると、何から手をつけたらいいか迷うね
大丈夫!当たりの付け方を紹介するよ!
ハンドメイド作家の場合、制作ジャンルや作風によって、作れるモノの範囲がある程度決まってきます。
- 自分の制作ジャンルや作風の「特徴」を列挙する
- 列挙された「特徴」を欲しがる人をターゲットにする
の順番でターゲットを選定するのが、手っ取り早いです。
ステップ①:制作ジャンルや作風の「特徴」を列挙
あなたが取り組む制作のジャンルは、すでに決まっていると思います。ウチの奥さんは、フラワーアイテムです。刺繍の人もいれば、レジンの人もいるでしょう。
あなたが取り組んでいる制作ジャンルの特徴を、できる限り列挙していってください。
ハンドメイドではあまりないと思いますが、「生花」を使う場合、次のような特徴が挙げられます。
例:生花の特徴
- 自然由来の美しさがある
- 格式高いイメージがある
- 季節感がある
- 良い香りがする
- 枯れる
- 飾り続けるなら交換が必要
*もっと挙げられますが、一旦ここで止めときます。
ポイントは、良い特徴だけでなく、悪い特徴も列挙していくこと。ここでは「枯れる」は、悪い特徴かもしれませんが、構わずに書いていってください。
また作風に関しても、同じように特徴を、良し悪しに関わらず列挙していってください。
ステップ②:列挙された「特徴」を欲しがる人をターゲットに
次に、先に挙げた特徴を眺めて、
- それらの「特徴」を積極的に欲しがる人
- 「デメリットとなる特徴」を気にしない人、あるいはメリットと捉える人
- 「類似ジャンルのデメリット」を避けたい人
を考えてみてください。
生花の場合、「枯れる」は、本来であればデメリットです。しかし、贈り物を探している人にとっては、枯れることはメリットでもあります。
贈り物をもらった人は、なかなか捨てづらいもの。しかし花は枯れるが故に、気兼ねなく捨ててもらえます。だからこそ、贈り物にはピッタリなのです。
また、生花の「季節感」は、空間に変化を持たせたい人にピッタリです。
ハイセンスなアパレルショップは、季節のお花を生けて、常連客を飽きさせないようにできるでしょう。
これがドライフラワーやプリザーブドフラワーになると、「枯れない(数年は保つ)」という特徴になります。
頻繁に交換したりメンテナンスしたりする手間やコストはかけたくないけど、お花を飾りたい人がターゲットになってきます。
クリニックや士業事務所、忙しいけど部屋をオシャレにしたいOLには、生花よりもドライフラーやプリザーブドフラワーが向いているでしょう。
デメリットの部分も結構大事なんだね。なんかヒントもらえた気がする!
ネイルチップは、「取り外せる」という特徴があります。
ずっと塗りっぱなしだと支障がある職業の人、例えば、飲食系や医療従事者は、ターゲットになるかもしれませんね。
せっかく取り外しができるので、普段使い兼用の落ち着いたデザインでなく、ぶっ飛んだデザインも許容されます。コスプレイヤーをターゲットにして、超攻めたデザインも売れるでしょう。
また、「マニキュアと違い、子供の爪に悪影響がない」という特徴から、娘にネイルをしたいとせがまれているママも、ターゲットになるかもしれません。
こんな感じで、ターゲットを導き出してみてね
間違ったターゲット設定に注意
ボク元々法人営業をしていたのですが、法人営業には1つの鉄則があります。それは、「本当の決済権限者にアタックせよ」ということです。
ハンドメイドと法人営業に何の関係が?
まぁまぁ、ここは聞いてってよ
例えば、「セキュリティソフト」を売るとしましょう。
当然、その辺の営業担当や、総務のおばちゃんに話しても意味はありません。かといって、ITに詳しくない社長に話しても、イマイチ要領を得ません。
アタックすべき相手は、システム部長です。彼が首を縦に振りさえすれば、鶴の一声で購入が決定するからです。
会社によっては、社内にシステム部門を置いておらず、IT業務を別会社に外注しているかもしれません。その場合は、外注先の営業担当者がアタック先になります。
「本当の決済権限者」とは、「財布の紐を握っている人」を指します。逆に言えば、財布の紐を握っていない人は、ターゲットになり得ないということです。
財布の紐を握っているのは誰?
あなたが、子供向けのアイテムを製作している作家だとしましょう。
作品を実際に使うのは子供ですが、お金を払うのは親ですね。ここでのターゲットは、「子供」ではなく、「親」の方です(厳密には、お父さんかお母さんかも区別した方がベターだが)。
って言うけどさ、結局子供が欲しがるものを、親が買うことになるんじゃないの?
いやいや、そんなことは全くない。子供が欲しいものと、親が欲しいものは、全然違うよ
子供と親とでは、勘所が異なります。
子供は無邪気に欲しいものをねだりますが、親は、安全性や、耐久性や、メンテナンスのしやすさなども考慮に入れて考えます。
子供は「プリキュア変身セット」を欲しがるかもしれませんが、親目線では、そんな賞味期限の短いおもちゃは買いたくありません。
それよりも、「LEGO」のような長く遊べるおもちゃを買いたいのです。
優先されるべきは、あくまでターゲットである「親」の方です。親のニーズを満たす作品に仕上げなければならないのです。
例えば、親は、「子供が小学校の工作で使う材料」は最安で済ませようとしますが、「学習塾」には、なかなか高額な月謝を支払います。これも、親のニーズによる差です。
多くの場合、リンクコーデをしたいと思っているのは親の方です。子供は、親と同じ服を着たいとは思っていないでしょう(ボクがそう思っているだけかもしませんが)。
ペット向け作品を作っているなら、ターゲットは「ペット」ではなく、「飼い主」の方。ペットを喜ばせるのではなく、飼い主を喜ばせる方向で考えなければなりません。
ウェディングアイテムを作っているなら、どちらかといえば「花嫁さん」がターゲットになるでしょう。花嫁さんが「ウン」と言えば、旦那は大抵その通りにします。
旦那1人の稼ぎで生計を立てている家庭でも、スーパーでどの野菜を買うかを決めているのは、専業主婦の奥さんです(ちょっと古い家庭像ですが)。
ぜひ、「本当に財布の紐を握っているのは誰か?」をよくよく考えてみてください。
お金がないターゲットもNG
こんな言い方はしたくないのですが、「金払いの悪いお客さん」も、相手にすべきではありません。
あなたが、戸建住宅の展示場の営業スタッフだったとしましょう。そこにフリーターがノコノコやってきたら?
「時間のムダだな…」と、内心で舌打ちするはずです。
年金暮らしでギリギリの高齢者や、お小遣いでやりくりする中学生は、相手にしちゃいけないお客さんです。
理想を言えば、
- エリートサラリーマン
- 経営者
- 共働きのパワーカップル
- お金に余裕が出てくる50代
- バブル時代に青春を過ごした世代
のような金払いの良いターゲットであれば、言うことありません。
しかし、ターゲットの可能性を限定しすぎてしまうと、作風を捻じ曲げることを要求されるかもしれません。それはクリエーターとしては、譲るべきでないラインでしょう。
ハンドメイドの場合、単価は数千円〜数万円です。どんなに高くても、10万円程度でしょう。家や車のように、限られた人しか手に入らない金額ではありません。
気に入りさえすれば、「5,000円のTシャツ」や「5万円のバッグ」を買える層なら、十分ターゲットになります。このくらいなら、普通の人でも十分ターゲット範囲内です。
あくまで、「あまりにお金がない人はNG」とだけ理解していただければ十分です。
学生は本当にお金がないのか?
なお、「学生はお金がない」と思われがちですが、これは間違いです。
むしろ実家暮らしの大学生は、バイト代をフルに使えるので、高額な服をバンバン買っています。20〜30代の子持ち家庭よりも、ずっと金払いの良いお客さんです。
ボク自身、一番服にお金を使っていたのは、高校生の頃だったよ
若年層は、収入こそ低いものの、独身者だと家賃や食費を切り詰めて、趣味にお金を投じる人も多いですね。実際には、金払いが良いケースも多いでしょう。
あ、もちろん、「若者をターゲットにしろ」と言っているわけではありませんよ。
あくまで、「イメージに流されず、そのお客さんの本当の懐具合を理解すべき」と言っているのです。ぜひ頭の片隅に入れておいてください。
まだ難しいと感じるあなたへ
ここまでで、セオリー通りのターゲット設定の仕方を解説してきました。おそらく賢明なあなたなら、ボクの言っていることを理解できたと思います。
しかし、自分のブランドに当てはめたときに、「はて、どう設定すればいいんだろう…?」と首を傾げているかもしれませんね。
もう一つヒントになる話をしましょう(なかなか盛り沢山な内容になってきました)。
ターゲット設定をしようとすると、多くの人は「女性」「40代」のように、性別や年代というわかりやすいセグメントで切ろうとしがちです。
しかし、お客さんは必ずしも性別や年代では区切れません。
「蜂の巣の駆除業者」のターゲットは、もちろん「家に蜂の巣があるご家庭」です。ここに、性別も年代も関係ありません。
「外貨両替」のターゲットは、「海外出張の多い大企業のサラリーマン」や「海外旅行帰りの人」でしょう。やはり、性別や年代では区切れませんね。
もっとシンプルに、「〇〇な人!」を考えてみてはいかが?
「〇〇が好きな人」をターゲットにしてみては?
ハンドメイド作品は、機能性よりは、雰囲気やデザインでもって選ばれることが多いですね。
この場合は、「趣味嗜好」でターゲットを特定するのが有効です。要するに、「〇〇が好きな人」をターゲットにするのです。
「〇〇」に当てはまる対象は、何だって構いません。ただし、ここまで散々話してきた通り、該当者は絞られていなければなりません。
「グルメが好きな人」だと広すぎますね。「スイーツが好きな人」も広すぎます。「和菓子が好きな人」でもまだ広い。「ぜんざいが好きな人」くらいには絞りたいですね。
そうですね、例えば、
- 「古代エジプト」が好きな人
- 「空海」が好きな人
- 「カンブリア時代の生き物」が好きな人
- 「アイルランド」が好きな人
- 「ミッドセンチュリー(1950年代)のデザイン家具」が好きな人
- 「80年代の英国ロック」が好きな人
- 「ティムバートンの映画」が好きな人
- 「麻雀」が好きな人
- 「スティーブ・マックイーン」が好きな人
- 「矢沢永吉」が好きな人
- 「戦車」が好きな人
- 「日本刀」が好きな人
- 「CLAMP作品」が好きな人
- 「滝」が好きな人
といった具合です。いくらでも出せますが、この辺りにしておきましょう。
例えば、「日本刀が好きな人」をターゲットにするなら、日本刀好きにしか通じないマニアックな特徴を作品に施すのです。日本刀好き以外の人は、一切ムシでOK。
安易に日本刀の形を模すだけでは、全く足りません。
例えば、波紋(刀身に白っぽく浮き出ている模様)にもいろいろ種類があって、「丁子(ちょうじ)」とか「互の目(ぐのめ)」とか、形によって名前がついています。
そういった波紋の違いを、作品にも施してみてはどうでしょう。普通の人はチンプンカンプンですが、日本刀好きの人は、心をくすぐられるはずです。
今となってはちょっとベタな感もありますが、「鬼丸国綱」や「大包平」のような、有名な日本刀をモチーフにしても、まだ通用するかもしれませんね。
「この作品は、〇〇好き専用!」と言い切るくらいでちょうど良い!
作家自身も「〇〇」が好きである必要がある
もうお気づきでしょう。「〇〇」が好きな人をターゲットにするなら、作家であるあなた自身も、その「〇〇」が大好きでなければなりません。
- 「日本刀好き」をターゲットにするなら、あなたも日本刀好きでなければなりません
- 「鉄オタ」をターゲットにするなら、あなたも「鉄オタ」でなければなりません
お客さんに「ヤベェ!ここまで踏み込んできたか!」と思ってもらわなきゃいけないわけです。あなた自身も、その世界にどっぷり浸かっていなければ不可能でしょう。
難しく考える必要はありません。これまでの硬い話は、一旦脇に置いておきましょう。シンプルに、「あなたが大好きな〇〇を素直にぶつけよう!」と考えてみてください。
- 「他の売れ筋作品とは全然違うけど、大丈夫かな?」とか
- 「こんなマニアックなの気づいてくれるかな?」とか
余計な心配は無用です。
言ったでしょう?誰か1人でも欲しがれば、その後ろには、たくさんのお客さんが控えていると。
素直に自分の「好き」を突き詰めるって、考える工程も楽しそうだね!
この辺りの話は、↓の記事でも解説しているから、よーく読んでみて
ターゲット以外に「NO」を突きつける勇気を
一般的には、ターゲット外の客さんに対して、「これはあなたの役に立つ商品ではないので、他に当たってください」と、わざわざ言うことはありません。
が、ターゲット以外には、勇気を持って「NO」と言うべきでしょう。
- プリクラ専門ゲームセンターは、男性だけの入店を断っています
- 子供向け室内遊技場は、中学生以上だけでの入店を禁止しています
- ガチのハイブランドは、みすぼらしいお客さんの入店をブロックします
これらの排他的なルールは、一見すると印象が悪いかもしれません。しかし、本来のターゲットであるお客さんを守るために、必要な手立てです。
ちょっと考えてみてください。
「アフタヌーンティー」に、ニッカポッカを履いた作業員が集まっていたらどうでしょう?そこで、優雅な時間を過ごせると感じるでしょうか?
キティちゃんサンダルを履いたヤンキーが、「エルメス」のバッグを持っていたら?ハイソな人々は、エルメスをステータスの象徴と見なすでしょうか?
アフタヌーンティーが、おじさんが入りづらい外装・内装にするのも、エルメスが大衆の手の届かない価格設定にするのも、理にかなっています。
もし京都の料亭が、マナーの悪い外国人を相手にしたくないなら、日本語のサイトでしか予約できないようにし、メニューも接客も日本語オンリーにすべきでしょう。
まだ抵抗がある人は、受験をイメージしてみてください。
- 優秀な学生が集まる学校は、勉強ができない学生を弾いています
- 小論文必須の大学は、文章を書けない学生を弾いています
- 美大は、デッサンができない学生を弾いています
やっぱり、お客さんを選んでいるのです。
もし招かざる学生を受け入れれば、授業のレベルを落とさざるを得ません。そうなっては、本当に学ばせたい優秀な学生のためにならないのです。
お客さんがあなたを選ぶように、あなたもお客さんを選ぶべきだ!
ハンドメイド作家がターゲット以外のお客を弾くには?
ハンドメイド作家が、本来のターゲットではないお客さんを弾くためには、
- ターゲットだけに刺さる仕様を施して、高い値段で売る
- 商品ページ内で、「ターゲット以外は買わないで」と明記する
が有効です。
ターゲットだけに刺さる仕様
これまでお話ししてきたことの繰り返しです。
もしターゲットが「柴犬が大好きな人」だったら、思いっきり、芝犬に寄せたデザインにしてしまいましょう。
できれば、柴犬好きだけに伝わるデザインが施せると良いですね。芝犬独特の肉球があるなら(実際にあるかはわかりませんが)、そのディティールを突き詰めるのです。
その上で、高い値段をつけましょう。
ターゲットのお客さんにとっては、「高い金額を払うだけの価値ある作品」ですが、ターゲット外の人には、「よくわからないけど高い作品」に映ります。
ターゲット以外は買わないで!
さらにダメ押しで、「柴犬好のための作品です。柴犬がお好きでない方(柴犬好きへのプレゼントは除く)は、ご購入をお控えください」と書いちゃいましょう。
語気の強さが気になる場合は、「この作品は、柴犬好き専用です」の意思だけ伝わればOKです。あとは読者に、筆者の気持ちを察してもらいましょう。
この一言に、ターゲットのお客さんは熱狂します。「まさに、自分のための作品だ!」と感じて、強く惹きつけられるのです。
一方で、ターゲット外の人は、ムッとするかもしれません。しかし、ターゲット外の人がどう思おうが、知ったこっちゃありません。あなたの商売には関係ないことです。
一見するとネガティブな文章に見えるけど、何の実害もないんだな
むしろ、ターゲットを惹きつけるから得ってことか
まとめ
今回は、ビジネスの基本中の基本中のキホン。「ターゲット」の話でした!
なんか売れそうな気がしてきた!!
うん!やれば売れるよ!難しくないから実践してみて!
この記事をまとめます。
ターゲットとは?
- 商品やサービスを買ってくれる顧客層
- 範囲を絞るほど売れやすくなる
- 個人ビジネスなら1人まで絞るくらいの意識で
ハンドメイド作家のターゲットの絞り方
- ターゲットに属性を掛け算して絞っていく
- 絞られたターゲットにリンクするように、作品にも属性を追加してニッチ化する
- ターゲットが、「私の欲しいモノは、この作家さんしか売ってない!」というレベルまでニッチ化できるのが理想
「技術」「設備」「人手」「価格競争力」「ブランド力」といったあらゆる要素で劣る個人が、唯一有利に戦えるのがニッチ化です。
ニッチ化はハンドメイド作家にとって、唯一にして最大の武器。同時に、唯一の生き残る道でもあるのです。
ターゲットを限界まで絞り、針の穴を通すようにニッチ化すれば、あなたの作品は売れやすくなるだけでなく、もっと高い値段で売れるようになります。
「ペルソナ」でさらに上を目指そう!
ターゲットを意識するだけでも月10万円くらいは売れますが、さらに上のステージに行くためには「ペルソナ」まで手を伸ばす必要があります。
ペルソナとは、典型的なターゲットを1人の人物像に落とし込んだもの。ターゲット属性を掛け合わせるだけでなく、ドラマや漫画の主人公のように、1人の血の通ったキャラクターを作るイメージです。
もしあなたが専業ハンドメイド作家として生活費を稼ぐなら、ペルソナの設定は避けて通れない!
ペルソナを設定すれば、さらに作品が研ぎ澄まされて、お客さんの心に「ズブっ!」と突き刺さるようになります。もっと高い値段でも売れるようになります。
ただ難点があって、ターゲット設定は割とカンタンなんですが、ペルソナ設定はちょっと難しい。むしろ教科書通りにやるとプロでも難しい…。
でもハンドメイド作家でも実践できる、現実的なペルソナ設定方法があります。
この記事でターゲット設定が十分理解できたら、ペルソナ設定の記事もチェックしてみて下さい。
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