現役専業ハンドメイド作家の奥さんのマーケティングやってます♪
「本音では値上げしたい。でもしたらお客さんが離れていってしまうのでは…?」
「値上げするならいくら?」
「告知はした方が良いの!?」
こんな悩みや疑問を抱えている作家さんが多いのではないでしょうか?
ベストな値上げタイミングは学校では教えてくれなかったので、わからないのも当然ですよね。
ハンドメイド作家は値段を安くし過ぎる傾向があるよね
いつかは値上げするときが来るよ!
それをいつにするかが問題なんだよなー
多分ほとんどの作家さんは、値上げを必要以上に怖がり過ぎています。実際のところ、値上げはもっとカジュアルにして良いものなのです。
この記事では、ハンドメイド作品を値上げすべきタイミングを解説しつつ、値上げに対する恐怖心を取り除きます。
読み終えたあなたは、値上げに対してポジティブに考えられるようになります。もう安い値段で消耗することはありません。
値上げタイミングに迷っている人は、ぜひ最後まで読んでみてください!
値上げはハンドメイド作家の至上命題
はじめにハッキリ言っておきます。ハンドメイドは、典型的な「厚利少売」のビジネスモデルです。
ハンドメイドは「薄利多売」の逆で、なるべく高い値段をつけて、なるべく少ない数を売るのが正解なのです。
理由はシンプルで、ハンドメイドは工場生産と違い、生産数に上限があるからです。
1人が1ヶ月に手作業で作れる量は、それほど多くはありません。量が増やせない以上、高く売らなければ売上も利益も上がっていかないわけです。
「ハンドメイド作家としての成長」=「作品の値段を上げていくこと」と言っても過言ではありません。
「ハンドメイド作家は高く売るべき」は、一つの真理だと思ってるよ
異論はない!
積極的に値上げすべきタイミング3選
値上げのタイミングには、
- 積極的に値上げすべきタイミング
- しょうがないから値上げせざるを得ないタイミング
があります。
まずは前者、「積極的も値上げしたいタイミング」について解説しましょう。
タイミング①:売れてる限り、値上げし続ける
いきなり核心をズバリ言います。これがベストタイミングです。
ハンドメイド作家は、コンスタントに売れている限り、どんどん値上げしてしまうべきです。
普通は売れてきたら、「やった!」とそのまま増産になりますよね?
でもそうしません。そのまま売る数を増やすのではなく、値段の方を上げていくのです。
例えば、ある作品が1月に「10個」売れたとしましょう。
2月に「11個」以上売れたら値上げします。3月も「11個」以上売れるようなら、値上げを続けていきます。
大体月に「10個」売れる状態をキープするように、値段の方を上げていくイメージです。
これは大胆!初めて聞いたぞ!
ここは他の人とは意見が分かれるかもしれない
でもボクは値上げを取るべきだと思う
企業だったら、値上げした場合に減ってしまう需要を考慮します。低い値段に設定して、数をたくさん売った方が利益が残るケースもあるわけです。
しかし前述の通り、ハンドメイドは供給量に天井があります。数を増やそうにも、すぐに限界に到達してしまうんですね。
しかもたくさん作るほど、お客さんとのやりとりや発送手続きにかかる時間がキツくなります。1ヶ月に、「1,000円×300個=30万円」よりも、「10,000円×30個=30万円」の方がはるかに楽です。
確かに。相手するお客さんは、少ない方がありがたい
たくさん売ろうとすると、次の展開を考える余裕もなくなっちゃうからね
できる限り時間の余白を持っておき、さらに作品の質を上げたり、新作を考えたりする時間に充てる方が生産的でしょう。
繰り返しますが、ハンドメイドは「厚利少売」のビジネスモデルです。少ない生産量で済ませるために、値段の方を上げていきましょう。
タイミング②:生産が追いつかなくなったら
生産が追いつかなくなったら、間違いなく値上げのタイミングです。
ただボクの考えとしては、生産が追いつかなくなってからの値上げでは遅いです。すでに述べた通り、売れているなら稼働が逼迫する前に値上げしていくべきでしょう。
あなたの時間が取られていくと、作品をブラッシュアップしたり、新作を考える余裕もなくなってしまいます。
タイミング③:売れない状態が続いたら
意外かもしれませんが、売れていない作品が、値上げがきっかけで売れ始めるケースがあります。
一般的には、安ければ安いほど売れると思われがちですが、実際には安過ぎて売れないケースは存在するのです。
行動経済学者ダン・アリエリー氏の著書『予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』にこんな逸話が紹介されています。
真珠王と言われたサルバドール・アサエル氏は、世の中では存在がほとんど知られていなかった黒い真珠を売り出そうとしたのですが、最初はひとつも売れませんでした。そこで、友人の宝石商ハリー・ウィンストン氏を訪ね、ウィンストン氏のニューヨーク5番街にある店のショーウィンドウにとんでもない値札をつけて置いてもらうことにしました。その後アサエル氏は高級雑誌にダイヤモンド・ルビー・エメラルドと黒真珠を並べて一面広告を掲載しました。ほどなくして人々は黒真珠が高級品であると認識するようになったのです。
ライバル作品と比べて、あなたの作品の値段が安いと、お客さんはあなたの作品の価値を低く見積もります。いわゆる「安かろう悪かろう」の精神ですね。
贈り物やライフイベントで使う作品は、むしろ高くないと都合が悪いですよね?
安いことが原因で売れないケースは、往々にして起こります。ハンドメイドのような玉石混交の市場では、その傾向が強いかもしれません。
売れていないときは一度値上げすると状況が変わるかも?
しょうがなく値上げすべきタイミング3選
次に、「消極的な値上げのタイミング」を解説します。
なぜ消極的なのか?
これらの理由はいずれも、売り手の都合による値上げだからです。
市場(=お客さん)に向き合った結果の値上げではないので、できればしたくない。でも値上げせざるを得ない。そういうタイミングです。
タイミング④:原材料費or生活費が上がったら
原材料費が上がったのに値段を上げなければ、もちろん利益は減ってしまいますね。利益を維持するためには、値上げせざるを得ません。
また物価高などの影響で生活費が上がってしまったら、やっぱり値上げして生活を維持するより他ありません。
苦しい値上げだね
タイミング⑤:手元に残る利益が少な過ぎたら
ハンドメイドあるあるで、「安過ぎて実は利益が残っていなかった」というケースがよくあります。
利益が残っていないなら、そもそもビジネスになっていません。値上げすべきでしょう。
これはあるある!
タイミング⑥:迷惑なお客さんに悩んだら
これは見逃されがちですが、値段が安いほど、客層が悪くなります。これは「高級レストラン」と「ドヤ街の激安居酒屋」の客層を比べれば一目瞭然です。
たまたま1回ならいいのですが、コンスタントに迷惑なお客さんに当たるようなら考えもの。
消耗するくらいなら、値上げして客層をガラッと変えた方が良いでしょう。
値上げに対する正しいマインドセット
まだ値上げが怖いでしょうか?確かに上げてみないと、反応がわからないですもんね。
でも大丈夫です。ここで、あなたの値上げに対する恐怖心を取り除くことにしましょう。
値上げしてもクレームは来ない
値上げしたところで、誰もあなたを怒りません。クレームも来ません。
ウチも何度か値上げしてるけど、クレームなんて来なかったでしょ?
1回もないなw
もちろん値段が上がれば、お財布事情で買わなくなるお客さんは出てきます。
しかし値上げしたことが理由で、欲しがる気持ちが消えてしまったり、これまでのファンがファンじゃなくなったりすることはありません。
値上げを怖がる理由なんて、ほとんどないのです。
値段は本来上がっていくもの
平成以降の30年間、日本はデフレ(物価が下がる)の時代を過ごしました。いわゆる「失われた30年」です。
しかしこの期間は、世界の経済史では例外中の例外。
貨幣が生まれてこの方、物価は上がり続けてきたのです。物価は上がるのが当たり前。これが世界の共通認識です。
失われた30年を過ごした日本人くらいだよ
値段がずっと変わらないと思っているのは
しかし長く暗いトンネルも、もう終わり。日本も物価が上がる時代に突入します(政府と日銀が致命的な政策ミスを犯さなければですが)。
今年100円で売っていたものは、来年はもっと高くなり、再来年はさらに高くなります。20年後には、倍の200円くらいになっているのではないでしょうか?
もう一度言います。値段は上がるのが当たり前。値上げに臆する必要は一切ありません。
むしろ値下げの方がずっと怖い
値下げには、負の側面があります。むしろ値下げの方が慎重になるべきです。
値下げの弊害
- 今すぐ買わない理由を与えてしまう
- 既存のお客さんを怒らせる
- ブランドイメージを損なう
値上げの状況では、指をくわえていたらドンドン値段が上がっていきます。安い今のうちに買おうという気持ちになりますよね。
しかし値段が下がっていくなら、あるいは近々セールがあるとわかっていたら、お客さんは今買わなくなります。待った方が得ですから。
だから物価が下がっていくデフレは悪者扱いされてるんだ
買い控えで、経済が縮小していくから
また既存のお客さんの気持ちも考えましょう。
もし買った品が、後日値下げされていたらどんな気分になるでしょうか?すごく嫌な気持ちになりますよね?
これは行動経済学の「プロスペクト理論」が関係しています。カンタンに言えば、人間は損することが大っ嫌いなのです。
これが後日値上がりしている分には、お客さんは悪い気持ちになりません。むしろ「早く買っておいてよかった」とすら思います。
値下げしたら、良いお客さんを失いかねない…
いくら値上げするか?
もう値上げに関する恐怖心は、かなり和らいだのではないでしょうか?
次に出てくる問題は、「さて、いくら値上げするか?」ですね。
方法①:適正価格に合わせる
これまでが安すぎた場合は、適正価格まで値上げしましょう。ハンドメイド作品の適正価格は、お客さんが払う意志のある最大の値段です。
一般的には「原価の3倍」が適正価格と言われることが多いのですが、これは正直オススメしません。
値段を決めるのは、あくまで市場。作品の原価云々は、適正価格とは関係ありません。
1番良いのは、お客さん自身に「いくらなら買う?」と聞いてしまうこと。ですが、聞けるチャンスがなかなかないと思います。
次善の策として、
- 「同じ商品ジャンル」で
- 「同じような品質」で
- 「実際に売れている商品」の中で
- 高めにつけられている値段
を取ってくるのがオススメです。
あとはその適正価格に見合うように、コストを調整しましょう。
コストには材料費だけでなく、自分の人件費も加えた上で、利益が残るようにしよう!
方法②:値上げの妙技を使う
人気が出てきて値上げしていく際は、10%ほど値上げしていくのが良いと思います。
10,000円だったら、1,000円値上げするくらいですね。
心理を突いたズルい値上げテクニックも紹介するね!
心理を突いた値上げテクニック
「実際の値段」と「心理的に受け取る値段」は異なります。
例えば、「10,000円」と「9,990円」は、たった10円しか変わりませんが、心理的には大きな隔たりがあります。もちろん「9,990円」の方が売れやすいです。
逆に「9,100円」と「9,990円」は1,000円近く変わってくる割に、心理的にはあまり差がありません。ならば「9,990円」にしてしまった方が得ですね?
桁や位を超えるかどうかで、印象が大きく変わるんだ
チラシとかテレビショッピングでよく見るヤツだ!
とまぁ、ここまではみんな薄々気づいています。
もう一歩深く考えてみましょう。
実は、「8,800円」と「9,800円」は、実際の金額差ほど差を感じません。
どちらも「1万円弱」という印象だからです。
ウチも「8,800円」から「9,800円」にシレッと値上げしたとき、全然変わらなかったでしょ?
うん!お客さんは全く減らなかった!
逆に1万円を超えて、「10,800円」にするなら、「11,800円」でもさほど印象は変わりません。多分「12,800円」くらいまでは、近い印象でいけると思います。
実際には、約20%も値上げしてることになるんですが。
実際の値上げ幅だけでなく、字面の見た目から受ける印象も意識しましょう。
もちろんできるだけ高めに引っ張るように。
値上げを告知するか?
もう値上げする気マンマンになりましたね?
次に気になるのは、「値下げすることを、お客さんに告知するべきか?」ですね。
パターン①:告知しなくても問題ない
まず告知はしなくても、別に問題ありません。誰もあなたを怒りません。クレームも来ません。
短期間で値上げを繰り返す場合は、都度告知すると「おいおいまたか」という印象を与えてしまうかもしれません。
それなら、シレっと値上げすれば良いでしょう。
パターン②:事前告知で駆け込み需要を促す
値上げすることを事前に告知しておくと、「値上がりする前に買わなきゃ」という駆け込み需要を喚起できます。消費税増税前と同じ現象ですね。
値上げしつつ、直近の売上まで上げてしまうズルい賢いやり方です。
ただあまり期間が長いと忘れられてしまうので、1週間〜1ヶ月前に告知するのが良いでしょう。
「駆け込み需要を捌けるだけの在庫が用意できるなら」って条件はつくけどね
パターン③:事後報告で履歴を残す
事前に告知はせず、値上げした当日にその事実を発表する方法もあります。駆け込み需要を捌ける自信がないときは、こちらを選ぶと良いでしょう。
ここで注目したいのは、「あえて値上げの履歴を残す」という点です。
過去に値上げされている事実を知ったお客さんは、「この先も値上げがあるかも」と思うようになります。値上げの履歴が複数回あれば特にそう。
値段が上がるかもしれないと匂わせることで、今すぐ買ってもらえるように仕向けるです。
というわけで、事前でも事後でもいいけど、値上げの履歴は残しておくのがオススメ!
なんと、したたかな…!
値上げの理由は伝えるべきか?
値上げを伝える際は、その理由も添えておくと良いでしょう。
単に「値上げします」だけでもいいのですが、お客さんとの関係を考えると、理由を添えて丁寧に伝える方がベターです。
「それはしょうがない」と思える理由
理由が利己的だと、お客さんは反感を覚えます。
「タワマンに住みたいから値上げします!」は、どう考えても逆効果ですよね?
- 原材料費が高騰しているため
- 物価が上がっていて、これまで通りの値段では生活できないため
- お客さんが殺到しており、これ以上注文が増えるとクオリティを維持できないため
といった、「それはしょうがないね〜」と思える理由を伝えましょう。
環境の変化など、外部要因のせいにしちゃうのがオススメ!
お客さんのメリットも添える
オンラインゲーム界隈では、キャラクターや武器などの下方修正(弱体化)を「ナーフ」と呼びます。
値上げは、お客さんからすると一種の「ナーフ」と言えるんじゃないかな?
そして運営がナーフをするとき、完全な下方修正はあまり好まれません。ただ弱体化してしまうと、そのキャラクターを使っていたプレイヤーが幻滅してしまうからです。
トータルでは性能を下げるものの、一部強化する部分も残してあげるのが「ナーフの流儀」と言えるでしょう。
このナーフの気配りは、値上げの告知にも応用できます。
値上げには違いないのですが、
- これまで以上に高い品質で提供する
- お客さんとコミュニケーションの時間を作る
- 環境に配慮した活動にシフトする
といった、お客さんにとってのプラスの側面も添えると良いですね。
こういう美辞麗句を挟めるのもビジネスセンスだよ
絶対に謝るな!
そして最後に、釘を刺しておきます。
値上げすることを絶対に謝らないでください。悪びれもしないでください。
一度謝ってしまうと、次の値上げに対して心理的なブレーキが働いてしまいます。結果的に、値上げせずに耐える方向にバイアスがかかってしまいます。
また謝ってしまうと、お客さんも「値上げは悪いことだ」と受け取るようになってしまいますね。言うまでもなく、誤った認識を与えてしまいます。
うわぁ、意識してないと言っちゃいそう
値上げして売れなくなったら?
ボクの経験上、値上げしたからと言って、売れなくなるケースはほとんどありません。
が、値上げした結果、やはり売れなくなるケースも存在します。
適正価格を大幅に超えてしまえば、もちろん売れなくなってしまいます。しかし、値段とは別の理由で売れなくなってしまうパターンも存在するんですね。
「おい!いざ値上げしたら売れなくなったぞ!」と、言われる前に、対応策を伝えておくね
売る場所を変えてみよう
値上げした結果、その「場所」の相場を超えてしまうと、客足がパタっと止まってしまうことがあります。
客単価5万円のレストランが、銀座にある分には問題ないでしょう。しかしこれが、フリーマーケットのキッチンカーだったら?
サイゼリアに、1皿2,000円のメニューができたら?
ユニクロに、3万円のデニムパンツが売られていたら?
それは誰も行かないなぁ
極端な例だけど、構造的にはこれと同じことが起きてるかも!
ここで客足を止めてしまう要因は、
- 周りの商品と価格差が開きすぎて、悪目立ちしてしまう
- 安い相場の場所には、安いものを求める客ばかりが集まる
の2つです。
というわけで、売る場所を変えると解決するケースが往々にしてあります。
プラットフォームなら、「メルカリ < minne < Creema ≦ iichi」の順番で相場が上がっていきます。売る場所を変えるだけで、高い値段で売れる可能性があります。
究極的には、プラットフォームではなく、「Shopify」や「BASE」などの独立したショップで販売するのがオススメ。周りの作家の安い値段に左右されなくなるからです。
まとめ
値上げはカジュアルにしてOK!
値上げは怖くないってわかってもらえたかな?
うん!値上げしていくために、どうすべきかを意識して制作するぞ!
この記事をまとめます。
積極的に値上げするタイミング
- 売れている限り値上げしていくのがベスト
- 生産が追いつかなくなってからの値上げはちょっと遅い
- 安すぎて売れないケースがある。売れてなかったら値上げしてみる
しょうがなく値上げするタイミング
- 原材料費や生活費が高騰したら
- 安すぎて手元に利益が残っていないと判明したら
- お客さんの質が悪いと感じたら
値上げに使えるテクニック
- 桁や位に意識して、字面の印象を意識する
- 事前or事後で値上げを告知する。お客さんは値上げする前に買おうとする
- 値上げの理由も添えると良い。ただし謝罪はしない
日本は30年間の停滞があったので、ハンドメイドのメイン客層は物価が上がる時代を知りません。そのためか、値上げへの悪い印象が根強いですね。
ですが本来値段は上がっていくもの。値上げは至極当たり前の行為。もっとカジュアルに値上げしてOKなんです。
供給量の天井が低いハンドメイドは、数を増やして売上を上げるのが難しいビジネスです。売上を上げるためには、値上げするしかないと心得ましょう!
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