現役専業ハンドメイド作家の奥さんのマーケティングやってます♪
「あなたの作品は、他の作品と何が違うんですか?10秒でお答えください」
と聞かれたら、あなたはどう答えるでしょう?
「うっ、それは…」と、言葉に詰まってしまった人もいるでしょう。聞かれたくないことを聞かれてしまった。そんな顔になってませんか?
「差別化が大事!」なんて、耳にタコができるほど聞いた。でも、どう差別化すれば良いのかが、いまいちピンと来ない!
これが本音でしょう?
うぉー、そうだよ!差別化ってよくわかんないんだよ!
差別化とは、お客さんが、他の作品ではなく、あなたの作品を買う明確な理由です。
あなたもお客さんの立場になったときは、ごく当たり前のように差別化ポイントを見抜いて商品を選んでいます。
- あなたが、そのバッグを選んだ理由は?
- そのスマホを選んだ理由は?
- そのシャワーヘッドを選んだ理由は?
何かしらあるはずですね、その商品を選んだ理由が。それが差別化ポイントですよ。
この記事では、
- ビジネスにおける差別化とは何であるか?
- ハンドメイド作品を差別化するための8つのポイント
を解説しています。
あなたの作品の差別化ポイントを見つける上で、この上なく大きなヒントになります。「あ!」という気づきが欲しい人は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
差別化の大原則を知ろう!
ライバルとの違いを意図的に用意するのが「差別化」です。
そんな「差別化」には、大きく3つの原則があります。
差別化の原則
- 差別化とは、コントラストである
- 差別化とは、ベネフィットの差別化である
- 差別化とは、ターゲットを絞って最適化することである
ハンドメイドに限らず、また規模の大小に関わらず、どんなビジネスであっても共通の原則です。
差別化とは、コントラストである
良い特徴か悪い特徴かはさておき、その他大勢と何かしらの違いがなければ、違いを見出せませんね。
つまり、「コントラスト(対比)」です。
まずはわかりやすく、「色のコントラスト」を想像してください。「真っ青」な海と空と、「真っ白」な入道雲は、自然が織りなす美しいコントラストです。
コントラストとはすなわち、2者間の乖離です。両者の距離が離れているほど、それぞれの違いがクッキリと見えるわけです。
ちなみにボクは、「伝統的な東洋建築」と「近代的な高層ビル」のコントラストが好き。上海の豫園(よえん)辺りで見られる光景だよ
次に、色のコントラストではなく、ビジネスのコントラストを考えてみましょう。
- 片一方はもちろん「あなた」です。
- もう片方は「その他大勢」です。
あなたが、その他大勢の「平均」から離れた位置にいるほど、あなたの姿はハッキリと映ります。ライバルから思い切って距離を離すことで、初めてそれが「差別化」と認識されるのです。
「白い羊」の群れに、「黒い羊」が1匹いれば目立ちますね。反対に、周りが「黒い羊」ばかりなら、その中にいる1匹の「白い羊」が目立ちます。こういうことです。
英語圏では、厄介者や嫌われ者を「Black sheep(黒い羊)」と呼びます。聖書が由来で、「集団の中で異質な存在」を指す慣用句として使われています。
ビジネスでは、「黒い羊」になることを恐れてはいけません。
日清食品のCMは、いつの頃からか、風変わりな方向性になりました。多くの視聴者は、「気でも狂ったのか?」と思ったことでしょう。
あのCMが成功かどうかは、結果がわからないので判断できません。しかし、他のCMとのコントラストがハッキリしているので、少なくとも目立つことには成功しています。
多くのネイルチップ作家は、みな一様に乳白色でフワッとしたデザインの作品を作っています。これがトレンドで、売れ筋だからだそうです。
しかし、その他大勢と同じデザインで参入したところで、お客さんには金太郎飴にしか見えません。見出してもらえなければ、トレンドもクソもないのです。
それなら思い切って、魔女の爪のようなおどろおどろしいネイルチップでも作ってみたらどうでしょう?見つけてもらえないよりは、100倍マシです。
こう考えてみてください。
あなたは、とある変わった学校に通っています。クラスメイト30人全員が、あなたと同じジャンルの作家です。あなたが刺繍作家なら、周りの29人も刺繍作家です。
このクラスの中で、どう自分を目立たせていくか?と。
ホントその通りだよね。いっぱしのスキルがあっても、他と同じ作品じゃまず売れないもん
大事なのでもう一度言おう。勇気を出して、自ら「黒い羊」になるんだ!
差別化とは、ベネフィットの差別化である
- 四角いタイヤの車
- 重さ3kgのランニングシューズ
- 氷でできたネックレス
は異彩を放ちますから、コントラストがハッキリして目立ちます。
しかしこれらは、差別化として正しいでしょうか?
欲しくはならないね…
そう。ただライバルと違うことをすれば、奇抜なことをすれば、差別化として機能するわけではないのです。
お客さんが商品を買うのは、その商品がもたらす「ベネフィット」が欲しいからです。ベネフィットとは、その商品を使うことで得られる理想の未来のことです。
お客さんは、商品を買っているように見えて、その実はベネフィットに対してお金を払っているんですね。
ただ意表をついただけの奇抜な特徴は、目立つだけでベネフィットをもたらしません。よって、お客さんに選ばれる差別化にはならないのです。
ここ、サラッと重要なこと話してるよ!
もしライバルの作品ではなく、あなたの作品が選ばれたとしたら、「あなたの作品には、ライバルにはないベネフィットがあった」ということ。
差別化とは、正確に言えば「ベネフィットの差別化」です。
ライバルにはできない形で、お客さんにハッピーな未来を届ける特徴を持たせる。これが、差別化なんですね。
差別化とは、ターゲットを絞って最適化することである
お客さんに、幸せな未来を届けることができる特徴が「差別化」です。
では、その「お客さん」とは、誰を指しているのでしょうか?
人によって、求めている理想の未来は異なります。
- 「痩せたい人」もいれば、「筋肉をつけたい人」もいる
- 「目立ちたい人」もいれば、「人目に映りたくない人」もいる
- 「豪華な生活を求める人」もいれば、「時間にゆとりある生活を求める人」もいる
そう。人によって、求めるベネフィットは変わってくるのです。
誰でも使える普遍的なバッグは、誰もが買うと思いきや、実際には誰にとっても1番になりません。誰の1番にもなれない「幕の内弁当」と同じですね。
同じバッグであっても、
- 「ラグジュアリーを求める人」は、「コテコテのブランドバッグ」が良いのかもしれません
- 「ミニマリスト」なら、「それ1つでどんな用途にも使える機能的なバックパック」を求めるでしょう
- 「カメラマン」なら、「カメラを安全にしまえるスペースがあって、三脚を引っ掛けられるバッグ」が喜ばれるでしょう
もうお分かりですね。
ターゲットとなるお客さんを特定しなければ、その人に最適なベネフィットを提供できませんね?
ターゲットを絞るから、「1日分の野菜弁当」や「山盛りウニ弁当」みたいな琴線をエグる商品になるんだよ
ターゲットを絞らなければ、「幕の内弁当」にしかならない…!
あなたが作品を差別化したいなら、その前段階でターゲットを絞っておかなければなりません。
その上で、そのターゲットのお客さんに最適化した特徴を持たせるのです。
これが、正しい「差別化」の設計です。
差別化とは「外し」である
誤解を恐れずに言えば、ボクは、「差別化=外し」と解釈しています。
- ビシッとしたスーツ姿だけど、靴下だけ赤と白のストライプ
- オーケストラに混ざったタイプライターの音(実際にそういう曲がある)
- コロコロ転がらない四角いスティックのり
- 創作和食の懐石に添えられたポルチーニ茸
- ビビットカラーのカンザシ
みたいな感じですね。
今でこそ定番だけど、登場した頃の「おろしハンバーグ」は「外し」以外の何ものでもないよね
あるモデルのスニーカーには、謎の隠しポケットが付いています。実はこれ、マ○ファナを隠すポケットなんですね。背景にある、ちょっとアングラなストリートカルチャーを反映した「外し」です。
もちろん、ホントにマ○ファナを入れるわけではありません。というか、別に何も入れません。ただ、そういう細かい「外し」に、心惹かれるお客さんは確かにいるのです。
「外し」の前には、「普通」がある
平均的なライバル達が提供しているオーソドックスなスタイルは、現時点での正解と言えるでしょう。合理的なプロセスによって、今の「普通」の形に落ち着いたのです。
しかし、お客さんは、「普通」には心を奪われません。
- 「綺麗にまとまっているな」
- 「教科書通りだな」
と思うだけで、そこに琴線は揺さぶられません。
お客さんの目が釘付けになるのは、「普通」から少し飛び出した「外し」に対してです。「外し」こそが、お客さんの心を奪うのです。
しかし、無造作に塗り重ねた「奇抜」は、ただのデタラメ。絵画なら落書き、音楽なら雑音にしかなりません。本来の「外し」とは、もっと繊細なもの。
まずは、その業界の「普通」が何であるかを知る必要があるでしょう。現時点の正解である「普通」に敬意を払い、そこのあなた独自のスパイスをサッと振りかける。
これが「外し」というものです。その外しが、お客さんがあなたから買う理由、すなわち差別化ポイントになるのです。
ハンドメイドに限らず、どんな世界においても、初めに基礎を学びます。回りくどいようですが、上手な「外し」ができるように、まず「普通」を学ぶことが大事なのです。
「差別化」は「外し」か!
なんか分かりかけてきた気がする!
逆に言えば、平均的な制作スキルさえあれば、差別化は十分できるよ
もちろん上手いに越したことはないけど、スキルを上げるよりも「外し」に意識を振った方が成功は早い
ハンドメイド作品に使える差別化ポイント8選
一般論で言えば、差別化をもたらす商品の特徴は様々あります。
ハンドメイド作品で使える差別化ポイントには、以下に集約される考えています。
ハンドメイド作品に使える差別化ポイント
- 「技術」による差別化
- 「機能」による差別化
- 「素材」による差別化
- 「デザイン」による差別化
- 「知識」による差別化
- 「設備」による差別化
- 「ストーリー」による差別化
- 「関係性」による差別化
どれか1つだけでもOKですし、組み合わせても良いでしょう。
1.「技術」による差別化
技術が秀でている熟練の作家さんなら、「技術」が差別化ポイントになります。ハンドメイド作家であれば、ここを目指したいところですよね。
- 「平均的な料理人」より、「練達の料理人」のお店に行きたいですよね
- 「平均的な大工」より、「練達の大工」に施行を頼みたいですよね
- 「平均的な外科医」よりも、「練達な外科医」に手術してほしいですよね
これと同じこと。技術レベルが高ければ、それだけで差別化になります。マネしたくても他の人にはできませんから。
ここで履き違えちゃいけないのは、「技術」そのものに意味があるのではないということ。価値があるのは、「その技術がもたらすベネフィット」です。
技術を持った料理人だから食べたいのではなく、その技術によって美味しい料理を作ってくれるから食べたいんですよね?
ハンドメイド作品の場合、見た目の美しさに惹かれるケースが多いですね。ならば、その技術によって、より美しい作品に仕上げられることが差別化になるわけです。
技術の掛け合わせも有効
1つの制作スキルを、徹底して磨いている作家さんが多いと思います。ハンドメイド界隈は素人も多いので、平均的なプロ品質を提供できるだけでも差別化できるかもしれません。
しかし、そんな素人の横好きばかりだったハンドメイド界隈も、段々とレベルが上がってきています。「プロ並みに作れて当たり前」という時代が、もうすぐそこに来ています。
どんな業界でも繰り返されてきたシナリオだよ
ブログやYouTubeもそう。スキルのない素人でも稼げるフェーズはいつか終わるんだ
プロばかりの競合を差し置いて、技術で飛び抜けるのはカンタンではありません。
しかし、2つ以上の技術を掛け合わせれば、割とカンタンに差別化できてしまいます。
これは単純な算数の話。
1万人に1人の技術レベルに達するには、かなり苦労することになるでしょう。10年20年選手は当たり前で、その道の求道者だけがたどり着く領域です。
しかし100人に1人のスキルレベルであれば、ちょっと頑張れば辿り着きます。これを2つ掛け合わせれば、100人×100人=1万人に1人になりますね。
スキルの掛け合わせは、差別化の近道!
明治から昭和にかけて活躍した板谷波山という陶芸家をご存知でしょうか?
大正6年第57回日本美術協会展に出品された「葆光彩磁珍果文花瓶(重要文化財)」は、最高賞である一等賞金牌を受賞しました。これは、当時の日本陶芸界で、波山が頂点に立ったことを意味します。
波山には、陶芸・彫刻・絵画の造詣がありました。どれもプロ並みの技術ですが、おそらくそれぞれの道には、もっと上がいたと思います。
でもそれらのスキルを掛け合わせられたのは、波山だけだったんですね。
それ以前の陶芸は、どちらかというと実用品で、美術品とは認識されていませんでした。波山の差別化ポイントは、陶芸・彫刻・絵画の技術の掛け合わせによって、陶芸を美術作品に昇華させたことにあります。
「歌える人」や「踊れる人」はたくさんいるけど、「歌って踊れる人」は少ないよね。これと似ている
三浦大知より「歌が上手い人」はいるし、「踊りが上手い人」もいるよね。でも三浦大地より、「歌って踊れる人」はあんまいないもんね
2.「機能」による差別化
工業製品の場合は、「機能」による差別化がよく見られます。もちろん、お客さんの痒いところに手が届く機能である必要がありますね。
お客さんの利用シーンに想いを馳せて、「こうなってたら気が利いているんだけどなぁ!」という機能を持たせるのです。
- 「しおり紐」がついているブックカバー
- 「カード入れ」がついているスマホケース
- よく混ざるように「溝」が掘られた納豆皿
- 「コードを通す穴」が空いている作業机
などが、その一例です。
機能による差別化は、お客さんにとってわかりやすく、また売り手も訴求しやすい特徴があります。
家電などの工業製品と比べると、ハンドメイド作品が機能で差別化するケースは限定的でしょう。でも、できれば強い差別化になってきます。
一般論で言えば、ビジネスでまず考えるべき機能の差別化だよ!
3.「素材」による差別化
「素材」による差別化には、
- 品質の高い素材を使う
- 珍しい素材を使う
- 機能的な素材を使う
- アップサイクル
のパターンがあります。
品質の高い素材を使う
大間のマグロや、A5和牛、24金、本革、マホガニーの木材のように、シンプルに高価で優れた素材を使う手法です。
単に「美しい」「丈夫」といった、高品質に直接裏打ちされたベネフィットもありますが、それだけではありません。
- 「本物を持っていることで満たされる充足感」
- 「より高価なものを身につけることで得られる優越感」
といった、承認欲求に働きかける点も見逃せません。
珍しい素材を使う
これは、布地を使うタイプの作家さんなど、素材によってある程度完成品の形が決まってしまうジャンルで有効です。
日本の有名生地屋さんで仕入れると、商用可能でセンスの良い柄の生地は限られます。どうしても他の作家さんと被りやすくなってしまうんですね。
ちょっと勇気を出して、海外からニッチな柄の生地を個人輸入してみましょう。
もしその柄の生地を使っている作家があなたしかいなければ、柄を気に入ったお客さんは、あなたから買うしかありません。
機能的な素材を使う
それを使うことで、作品の使用感が変わってくる素材も存在します。
- 金属アレルギーの人は、「アレルギーが起きづらいチタン製」のアクセサリーが良いでしょう
- 子供向けのおもちゃなら、「柔らかいウレタン素材」が好まれるかもしれません
- アウトドアシューズには、「水を通さないゴアテックス生地」が良いですね
- ウチは、「食洗機&電子レンジが使える素材」の食器しか買いません
発想は、「機能」による差別化に近しいですね。
お客さんの用途を考慮したときに、どういう素材だと都合が良いか?これを考えてみてください。
アップサイクル
「アップサイクル」とは、廃材を再利用して商品化する手法です。単にリサイクルするのではなく、より高く売れる商品に生まれ変わらせる手法です。
上記の2つとは異なり、素材に「意味」を持たせる手法だよ!
こちらは、後ほど解説する「ストーリーによる差別化」とも関わってきます。
アーティストのHaroshiさんは、スケボーの廃材で作品を作っています。スケートボードカルチャーを生きる人にとって、Haroshiさん作品は特別な意味を持ちます。
意味があるから欲しくてたまらなくなるのです。同じ形で、別素材のオブジェでは全く意味がありません。
4.「デザイン」による差別化
「技術」で差別化するのは一朝一夕ではいきません。「素材」による差別化は、ライバルも同じ素材を仕入れられると分が悪いです。
ハンドメイド作家にとって、本命になってくるのは「デザイン」による差別化でしょう。これは、ハンドメイドの原点でもあります。
もっと機能的で安価な工業製品でなく、あえて手作りを選ぶのはなぜでしょう?
それは、その作家にしか作れないオリジナリティあふれるデザインに惹かれるからですよね?
売れてる作家さんの作品は、どれも個性的なデザインだもんねー
「キレイ」や「カワイイ」では足りない!
ただし、ここでいうデザインとは、単に「キレイ」とか「カワイイ」にとどまる話ではありません。キレイやカワイイは当たり前で、その先があります。
お客さんは、その作品を身につけたり飾ったりしたビジュアル的な映像が、自分の理想とする「こうありたい自分」のイメージに合致したときに心惹かれます。
ちょっと難しい言い方をしましたね。
要するに、「その作品のデザインが、いかにも自分らしい」と感じたときに、心ときめくのです。
- 北欧風のスッキリしたデザインが、自分らしい
- 中世ヨーロッパ風のクラシックな雰囲気が、自分らしい
- 白と黒でフリフリのゴシック調が、自分らしい
- 明度と彩度を抑えた日本らしい色調が、自分らしい
こんな感じで、お客さんの中には、自分だけの自分らしいスタイルを持っています。そこに合致するデザインを求めているんです。
ターゲットをグッと絞って、お客さんが「私の大好きな世界観を理解してくれるのは、この作家さんしかいない!!」と感じるデザインを目指しましょう。
5.「知識」による差別化
「知識」による差別化は、特定の知識がないと作れないデザインを施すことです。
正確には、「デザインによる差別化」の亜種と言っても良いかもしれません。
ボクは中学生の頃からスニーカーが大好きです。NIKEの「DUNK」と「Air Jordan 1」には、80年代にリリースされた初期カラーが存在します。
その初期カラーは、ボクにとっては特別な意味を持つカラーリングになります。要するに、無条件で目を奪われてしまうカラーパターンなのです。
「アテナイの学堂」というルネサンス期を代表する絵画をご存知でしょうか?
ルネサンス期よりさらに2,000年前を生きた、プラトンやアリストテレスをはじめとした、古代ギリシアの哲学者たちが一堂に会したシーンを描いた大作です。
それ以前の中世ヨーロッパでは、キリスト教以外の世界観を許さない時代が長く続いていました。知の世界が花開いた古代ギリシア文化は、長きに渡って封印されてきたタブーだったのです。
しかしさらなる知を求めた人類は、2,000年ぶりに古代ギリシアの知恵が詰まったタイムカプセルを開けることになります。それがルネサンスという時代。その後の大航海時代や産業革命につながる新時代の萌芽だったのです。
この絵画は、歴史好きにはグッとくるものがあります。絵や構図の上手さの考察は得意な人に譲るとして、この絵の持つ意味に目頭が熱くなるのです。
という感じで、その世界に浸かって、その世界を知っている人にしか理解できないデザインというものは、確かに存在するんですね。
その世界を知っている住人にしか作り出せず、外の住人はマネしようと思ってもできない。そして、その世界の住人の胸を、どこまでも熱く焦がすようなデザインが。
あなたには、大好きな小説や映画、何かフェチのようなジャンルはあるでしょうか?そういった特定の世界の知識は、強烈な差別化になるかもしれませんよ?
これ、凄いね!メチャクチャ差別化できそう!
ちょっとやそっとの技術差や価格差なんて、跳ね飛ばすくらいの魅力になるからね!
6.「設備」による差別化
大企業では、大型設備を導入した工場が、差別化要因になります。設備投資に莫大なコストがかかるので、他の企業がカンタンに手出しできないからです。
この話をミニチュアサイズにすると、ハンドメイド作家にも当てはまります。
例えば、「レーザープリンター」を導入するとしましょう。ちょっと躊躇する値段ですが、個人でも買える値段です。
- レザークラフトの財布に、絵柄や文字を施すことが可能になります
- 結婚証明書なら、アクリル板に新郎新婦の名前を印字できます
その設備を持っているかどうかだけなので、買えば誰でもできます。
でも、ちょっとお金がかかるので、手を出す作家は多くありません。導入コストが参入障壁になっているわけですね。
やればお客さんが喜ぶことはわかっているなら、導入してみてはいかが?
7.「ストーリー」による差別化
ここまでは、作品そのもので差別化する方法を挙げてきました。
しかし、「ストーリー」による差別化は、仮に瓜二つの作品を売る人がいても、あなたから買ってもらう理由になります。
「商品ではなく、ストーリーを売れ!」という言葉が囁かれるようになってしばらく経ちますが、本質を理解している人は多くありません。
うん、ちっともわかんないヅラ
ビジネスにおけるストーリーとは?
ストーリーとは、頭からお尻まで、一貫した文脈でつながっている状態を指します。桃太郎は、「どんぶらこ」から「鬼退治」まで、一貫した文脈でつながっていますね。
ビジネスにおけるストーリーとは、上流にあるブランドコンセプトから、下流にある商品だったりあなたの立ち振る舞いが、一貫した態度で貫かれている状態を指します。
- ブランド名
- ブランドロゴ
- 色使い
- フォント
- 作品ラインナップ
- 作品の特徴
- 素材
- パッケージ
- SNSの投稿
などが、全て一貫した態度で貫かれている状態がストーリーです。
なるほど!一本筋が通った行動が、ストーリーになるんだね!
現代のお客さんは、機能や値段だけで商品を選んでいません。売り手のこだわりや信念にまで想いを馳せ、共感できた相手から買いたいと思っています。
お客さんは、直接的にはあなたの作品を買っているわけですが、実際にはあなたのストーリーの一部として作品を買っています。この事実を決して忘れないでください。
あなたのお気に入りブランドも、ボクが好きなAppleも、似たような商品を出す競合はいます。でも浮気せずに買い続けるのは、そこに愛でるべきストーリーを見出したからでしょう?
動物愛護を謳う作家であれば、本革を使うのではなく、あえて素材としては劣る合成皮革を使うのが正解になります。一本筋の通ったストーリーが、お客さんの共感を呼ぶのです。
人間の購買行動には、こういう精神があることも理解しよう!
8.「関係性」による差別化
単にお客さんが、あなたと何らかの接点を持っているだけでも、あなたから購入する理由になります。
どんな人間でも、関係性を持った人に報いたい、喜んでもらいたい、助けになりたいという心理を持っています。
- 友達が美容師なら、その人に切ってもらいたい
- 家族が税理士なら、その人に依頼したい
- 親戚が焼肉屋をやっているなら、そこに食べに行きたい
心理学的な考察もできますが、長くなるので省きます。難しく考える必要はありません。だって、それが人情ってもんでしょう?
家族や友人から作品を買ってもらった経験がある作家さんも多いと思います。
こう言っちゃあれですが、別に他所で買っても良かったシーンはあったはずです。でもあなたとの関係性が、「他ではなく、あなたから買いたい!」と思わせたのです。
それは確かに否定できない
お客さんとの関係性には、
- 第1段階:知られている
- 第2段階:知り合っている
- 第3段階:好かれている
の段階があります。より深い関係になっているほど、買ってもらいやすくなります。
第1段階:知られている
まず第1段階として、知らない相手よりは、知っている相手から買います。
なので、単にSNSで見たことあるだけでも、あなたから買う理由になるでしょう。CMで見たことがある商品を、スーパーで手に取るのと同じです。
第2段階:知り合っている
第2段階として、お互いに知り合っている相手から買います。ネガティブな印象を持たれていない限り、SNSなどでやり取りしたことがある相手から買うものです。
第3段階:好かれている
第3段階として、より好きな相手から買います。あなたの人柄に好感を持っている人は、あなたから買いたいと思うはずですね。
好感を持ってもらうためには、
- 人間味を出す
- 共通点を知ってもらう
- 丁寧な応対
が有効です。
SNSで企業アカウントより個人アカウントがフォローされるのは、「その人らしさ」が伝わるからです。人間味を感じないロボットを、好きにはなれないでしょう。
人には好き嫌いがあるので、あなたの人間味を好きになる人もいれば、嫌いになる人もいます。でもそれで良いのです。人間味を出さない限り、誰からも好かれませんから。
あと、共通点を出すという意味でも、普段のあなたを見せておいた方が良いですね。同じスポーツチームのファン、同じ出身地、同じママさん同士など、共通点は好感を引き出します。
というわけで、SNSをやっているのは結構有利だよね
価格で差別化はダメ絶対!
安易に陥ってしまうのが、価格を下げることで差別化する発想です。確かにライバルより安ければ、あなたの作品だけの差別化になるでしょう。
でも、値下げでお客さんを釣ろうという発想自体が、ハンドメイド作家にとって自殺行為です。
値下げ戦略とは、大量生産・大量販売できるプレーヤーに許された数の暴力です。たくさん売る体制が整っているから、安くしても利益が残るんです。
ハンドメイド作家は、生産できる量に限りがありますね?
それも、そんなに多い数じゃありません。売る数を増やせないのに、値段を下げるなんてのは、全くもってナンセンス。脳死行動です。
正しい差別化とは、「あなたの作品がより高く売れるような違い」を見出すことですよ?勘違いしてはいけません。
絶対に忘れないでね!
できると強い差別化ポイントのKPI化
差別化ポイントを数値化すると、お客さんにその強みを訴求しやすくなります。
- ウチのトマトは「糖度14度」です!平均的なトマトの「2倍」の甘さです!
- ウチのショルダーバッグはたった「300g」の重さなので、肩が痛くなりません!
- 普通のブーケは5種類の花を使うところ、ウチのブーケは倍の「10種類」を使って、より華やかに仕上げています!
*数値の例はテキトーです。イメージだけ受け取ってください。
ビジネスの世界では、こういった成果に直結する数値化された指標を「KPI(Key Performance Indicator)」と呼びます。
KPI自体は、別に覚えなくてもいい用語だけどね
ニュアンスだけ受け取ってもらえればOKよ
もしあなたの差別化ポイントを、KPIとして数値化できると強いです。お客さんに伝えやすいだけでなく、作者自身が再現しやすいメリットもあります。
ただしハンドメイド作品の特徴は、必ずしも数値で測れるものではありません。美しいイラストや刺繍を、数値で押し測るのは難しいですね。
もしできそうならでOKです。無理に数値化する必要はありません。頭の片隅に入れておいてもらえれば十分です。
お客さんに差別化ポイントを聞いてみよう
もし聞けるのであれば、お客さんに差別化ポイントを聞いてしまうのが1番です。
聞き方はこう。
「なぜ他の作品ではなく、私の作品を買ってくださったんですか?」
その答えが、あなたの作品の差別化ポイントです。売り手が頭をこねくり回して考えるよりも、ずーっとリアルな答えが返ってきます。
とあるハンドメイド作家さんから、当サイトの好意的な感想を頂戴しました。
他のノウハウ発信者と違い、専門的な用語を用いて論理的に解説してくれる点で、ボクを信頼してくださったそうです。
その作家さんは、「ハンドメイド CVR」で検索して、当サイトに辿り着いたそう。CVRは成約率(≒購入率)を意味するマーケティング用語です。
基本的な用語なはずなのに、そういった用語が一切出てこない人の説明に、不満を感じていたようでした。
ボクはこのサイトを、「論理性」や「再現性」で差別化しています。読者の感想から、自分の差別化ポイントを再確認しました。そしてもっと強化すべきと確信しました。
お客さんの素直なコメントは、あなただけの強みを教えてくれます。あなた自身が意識しているか否かに関わらず、それはあなたの作品の差別化ポイントです。
あなたのホントの差別化ポイントに気づけら、より意識して磨きをかけていこう!
まとめ
差別化とは、お客さんが、他の作品ではなく、あなたの作品を買う明確な理由だよ!
わかっちゃいるけど、うまく表現できないんだよね
うんうん、難しいよね。でもこの記事の型を使えば、思いつくんじゃないかな?
この記事をまとめます。
差別化の大原則
- 差別化とは、コントラストである
平均から乖離していることで、初めてお客さんに差別化が認識される - 差別化とは、ベネフィットの差別化である
お客さんにハッピーな未来を届ける差別化でなければ、どんなに目立っていても選ばれることはない - 差別化とは、ターゲットを絞って最適化することである
作品を差別化したいなら、その前段階でターゲットを絞っておかなければならない。その上で、そのターゲットのお客さんに最適化した特徴を持たせる
ハンドメイド作品に使える差別化の型
- 「技術」による差別化
- 「機能」による差別化
- 「素材」による差別化
- 「デザイン」による差別化
- 「知識」による差別化
- 「設備」による差別化
- 「ストーリー」による差別化
- 「関係性」による差別化
結局のところ差別化とは、平均的なライバルから抜け出した特徴を持たせることです。
「外し≒差別化」と捉えても、あながち間違いではないでしょう。
しかし「外し」というのは、単に奇抜なことをすれば良いわけではありません。お客さんにとって心地よい「外し」でなければ、お客さんの心は奪えませんね。
効果的に「外す」ためには、まず世間一般で受け入れられている「普通」を理解する必要があるでしょう。普通があるから、外しが存在するのです。
まずは、あなたの作品ジャンルで、オーソドックスな作品がどんなものかを理解してください。作ったことがなければ、まず作ってみてください。
「普通」を理解した上で、あなたなりの「外し」というスパイスを振りかけるのです。差別化というのは、こういうものだと知っておいてくださいね。
【最後に】勘違いしてはいけないこと
ちょっと上級者向けの話になるので、あえて最後の最後に持ってきました。
ここまで読んだあなたは、
- どんな素材を使ってみようか?
- どんなデザインにしてみようか?
- どんな色にしてみようか?
などなど、思い描き始めたのではないでしょうか?
前進してるね!素晴らしい!
と、他の人なら、ここでおしまいにするところ。ですが、ボクは本質の先にある、さらに深い本質を追い求める人間です。ここでは終わらせません。
もし、「ただ他の作品と違いがあれば良い」と思っているようでは、あなたの差別化戦略は失敗に終わるでしょう。
現に、他の作家とは全く違う特徴の作品を作っているのに、「なぜ売れないんだろう…」と嘆いている作家さんがどれだけいることか。
差別化は、ただ「奇をてらうこと」ではありません。面白いことをするのも、珍しいことをするのも、差別化の本当の本質からは逸れています。
うへぇ!まだ何かあんのかよ!
そこに作家の哲学はあるのか?
例えば、「白黒」だけのモノクロームなインテリアを作っている作家さんがいるとしましょう。他所の作品とのコントラストで、きっと目立つと思います。
そこで、「なんでモノクロにしたんですか?」と問われたときに、
- 目立つと思ったから
- レトロっぽい雰囲気がウケると思ったから
と答えているようでは、全然ダメ。
うーん、理由かぁ。難しいなぁ
そうですね。例えば、
- 色を排除することで、造形の美しさを表現したかったから
- お部屋にある他の色を引き立てたかったから
と答えられれば、その差別化は正しい。
両者の理由で、なんとなく雰囲気の違いは感じてもらえたと思います。が、厳密には何がどう違うのでしょうか?
気づいて欲しいのは、その差別化に、「作家の哲学が反映されているか?」です。
「哲学」という言葉がピンとこなければ、「想い」とか「意見」とか「こだわり」と読み替えていただいても構いません。
「作家にとって何か重要な意味があって、その差別化を施す必要があった」と、一本筋が通っていなければならないのです。
哲学から「共感」が生まれる
先ほどの例で、モノクロの家具を作っているのは、「お部屋にある他の色を引き立てたかったから」という理由からだったとしましょう。
その作家は、お部屋の中に「色」が溢れすぎていることに気がつきました。色んなメーカーの家具や家電によって、「色」に統一感がなく、調和が取れないということに。
また、窓から見える「緑」や、何気ないテーブルの「木目」といった、自然の美しい色彩がかき消されているように思いました。
そこで、一度部屋の中の「色」をリセットしようと思い立ちました。白と黒だけの世界にして、お部屋にある「色」を引き立てる「黒子」になると決意したのです。
だからこの作家の作品には、本当に「白」と「黒」しかありません。というより、それ以外の色を出してはいけないのです。
とまぁ、これはボクが即興で考えたフィクションなので、本当にこういう「哲学」を持った作家がいるかは分かりません。
しかし、もし本当にそう思っている作家さんが1人でもいるなら、同じような考えを持った同志は、世の中に五万といるでしょう。
そうであれば、その色に対する「哲学」と、その哲学が忠実に反映された「作品」は、同志諸君の強い「共感」を得ることになります。
こう一本の線でつながって、差別化は力強く機能するのです。
もし「色」に対する哲学がない作家が、なんとなく白黒の作品を作ったとしたら、間違いなく徹底できません。おそらく、アースカラーの別の作品でも作っているでしょう。
本当に「哲学」を共有している人には、底の浅さを見透かされてしまいます。その程度の想いでは、本物のファンはつきません。
どうすれば真の差別化ができるのか?
今あなたは混乱していると思います。分かりかけてきた「差別化」が、ますますわからなくなってしまったことでしょう。
すみません。ボクの責任です。ボクが、本来であれば踏み込まないであろう深みまで、あなたを連れてきてしまったせいです。
しかし、ここを乗り越えなければ、真の差別化には辿り着けない!
ハンドメイド作品で差別化したいと思うなら、いきなり、
- どんな素材を使ってみようか?
- どんなデザインにしてみようか?
- どんな色にしてみようか?
から考え始めてはいけません。
作品のことは、一度忘れてください。
一足飛びに考えようとするから、浅はかな差別化になってしまうのです。こねくり回して結論を急ぐから、線がつながらないのです。
だから世の作家は、迷いの森から抜け出せないんだよ
もっと上流まで、あなたのクリエーターとしての原点まで遡るのです。キレイな線でつなげるために、1度からまった紐を解いていきましょう。
スタート地点は、「あなたはクリエーターとして、何を大事にしているか?」です。
- なぜ、既製品や他の作家の作品では、あなたは満足できないのでしょうか?
- あなたにとって、どんな作品が理想でしょうか?
- 作品を通して、お客さんにどうなって欲しいのでしょうか?
あなたが大事にしていることは、どんな作品なら実現できるでしょうか?
その答えが、あなただけの筋が通った「差別化」です。
ぜひ、時間をかけて考えてみてください。答えはカンタンに出ないと思います。ですが、カンタンに出ないからこそ、他の誰にもできない「差別化」になるのです。
おおおおおお!
作品から一度離れる!原点まで遡る!
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