現役専業ハンドメイド作家の奥さんのマーケティングやってます♪
「商品ではなく、ストーリーを売れ!」と囁かれるようになって、久しくなりました。
ものが溢れる現代において、同じような商品は誰でも作れます。あまたいる売り手の中から、お客さんは何を決め手にたった1人を選ぶのか?
そう。それがストーリーなんですね。お客さんは、グッとくるストーリーを持っている人から買うんです。
あ、インスタのストーリーじゃないよ
「物語」の意味のストーリーね
わかるようで、さっぱりわからないんだよな
そのストーリーってのが
ちなみに、世の中のストーリーに関する解説記事はデタラメばかり。フワフワした言葉を並べているだけで、多分書いている人が根本的なことをわかっていません。
この記事では、「ハンドメイド作家がどうやって、グッとくるストーリーを作るか?」を解説します。これよりわかりやすい説明は不可能だと思います。
めっちゃハードル上げてんな
大丈夫か?
うん。こういう話は得意分野だから任せて!
ハンドメイド作家を含む個人のクリエーターは、技術だけでは差別化が難しい商売。これはあなた自身が1番よく知っているはず。
最高のストーリーを目指すとなると難儀ですが、及第点のストーリーは、パズルのようにカチカチ当てはめていけば作れます。
ライバル作家はストーリーの作り方を知りません。この記事を読んだ人だけが、差をつけられます。ぜひ最後まで熟読ください!
*フルバージョンの記事は「【違うそうじゃない】ビジネスに効くストーリーテリングの実践方法を徹底解説」です。もっと論理的な解説を知りたい人は、こちらも読んでみてくださいね。
「ストーリー」とは、単にこれだけのこと
思うに、みんな「ストーリー(物語)」のことを難しく考えすぎています。実はストーリーと言える条件は、たった1つ。
「各情報が、1つの文脈でつながっているか」だけです。
本で例えれば、次のように分類できます。
ストーリーがある | ストーリーがない |
---|---|
小説 | 図鑑 |
マンガ | 辞書 |
ビジネス書(普通は1冊で1つのテーマを扱っているため) | 単語帳 |
あー、なるほど
これはハッキリ違うね!
話の流れがつながっていれば、それは「ストーリー」ってこと。それだけの話
ただそのストーリーが面白いかどうかはまた別の話。これは後ほど解説するね
何のためにストーリーを作るのか?
目的をハッキリさせておきましょう。ストーリー作りは、ブランディングの一環として行います。
実際には一環というより、ストーリー作りこそがブランディングの根幹です。
で、「ブランディング」って要するに何なの?
ブランディングの意味についても軽く触れておこう
まず、お客さんが売り手や商品に持っているイメージが「ブランド」です。主語はお客さんで、あくまでお客さん目線のイメージです。
一方で、売り手がお客さんに対し、持ってほしいイメージを植え付ける活動が「ブランディング」です。
まとめると、「お客さんにより好ましいイメージを持ってもらうために、企業はブランディングを行なっている」ということになりますね。
話を戻すと、「お客さんへ、ブランドへの良いイメージを効果的に刷り込むために、ストーリーにして伝える必要がある」という話です。
ストーリーにするメリットは何?
ではなぜ情報をストーリーにして伝えるのが優れているのか?
それは、お客さんの記憶に残るからです。
将棋の棋士が、棋譜(1ゲームの全コマ運びを記録したもの)を丸ごと覚えられるのは、そこにストーリー的なつながりがあるからです。デタラメでつながりがなければ、10手も記憶できないでしょう。
大抵の日本人は、桃太郎のストーリーを覚えています。スタートからゴールまで、文脈がつながっているから覚えていられるのです。
しかし日本史の「〇〇時代」を、最古の飛鳥時代から現代まで、順番通りに言える人は多くないでしょう。歴史の教科書が、本来あったはずの文脈を削ぎ落としてしまった結果です。
覚えていないということは、知らないも同然。覚えてもらわないことには、話にならないのです。
整理すると、次のようになります。
- お客さんに、ブランドに対し良いイメージを持ってもらいたい
- そのためには、記憶に残るストーリー仕立てで伝える必要がある
- 複数の情報を1つの文脈でつなげれば、ストーリーが出来上がる
おー、なんかモヤモヤしたものが晴れてきた気がする!
ビジネスのストーリーとはどういうことなのか?
「本」や「映画」は、スタートからゴールまで話が一直線に進みます。ストーリーでつながっているのは一目瞭然でしょう。
しかしこれが「ビジネス」になると、途端によくわからなくなってしまいます。
「ビジネス」がストーリーになっている、頭からお尻まで話がつながっているとは、つまりどういう状態なのか?
そうそう、そこが気になる!
大丈夫!ここもしっかり言語化するよ!
よくある「ストーリー性」の勘違い
ときに、「商品の誕生秘話を細かく書けば、ストーリー性を出せる!」という意見を耳にしたことがあります。
これは、半分正解で、半分不正解です。
確かに商品の誕生秘話を語れば、物語のような話のつながりはできるでしょう。
しかしそれでは、1話完結の『こち亀』のように、ぶつ切りのストーリーになってしまいます。こち亀はスゴい漫画ですが、ストーリーのお手本としては相応しくありません。
ブランドストーリーは、もっとずっと上位の概念。ビジネス全体で、頭からお尻までつながっている長編ストーリーです。商品単体のストーリー語るだけでは不十分です。
扱っている商品たちはストーリー性に溢れていても、それを取り揃えた百貨店自体にストーリー性は感じないでしょ?
確かに。企画展みたいに、何かの軸でつながってないと、全体としてのストーリー性は感じないね
商品ごとにストーリーがバラバラだったら、それを束ねるブランドストーリーはないも同然になってしまいます。
ブランドにストーリーを持たせるためには、第1話の冒頭から最終回まで全てつながっている『進撃の巨人』のようなストーリーを目指すべきです。
ヒントは大河ドラマ
ストーリー作りのヒントは、大河ドラマにあります(大河ドラマを見たことない人でも、「なるほど」と思える内容なのでご心配なく)。
大河ドラマは、歴史上の偉人を主人公とした、ほぼノンフィクションのお話ですね。主人公は実在の人物です。
後世を生きるボクたちは、そんな偉人の生涯を、楽しいストーリーとして鑑賞しているわけです。
しかし、当の偉人本人は、ストーリーを作ろうとして生きていたわけではありません。それでもボクらは、その偉人の足跡にストーリーを見ます。
ま、そりゃそうだわな
そう、まさにここがポイント!
偉人がなぜ偉人かといえば、何かの野望を持って、その野望を生涯かけて達成したからですよね。
何かの野望を持って、そのために生きてきた軌跡をたどれば、それがストーリーになっているのです。
ストーリーは作ろうとしなくて良い
あなたのビジネスや、クリエーターであるあなた自身がストーリーを纏うためには、大河ドラマの主人公と同じことをすれば良いのです。
別に偉人のような、とんでもない偉業を成し遂げなければならないわけではありません。
あなたが持っている
- 「野望」
- 「信念」
- 「情熱」
- 「こだわり」
- 「理念」
- 「ミッション」
- 「パーパス」
呼び方は何でも良いです。
企業は「理念」や「ミッション」を好んで使うけど、ここでは馴染みやすい「信念」を使うことにするね
あなたのビジネスが、あなたの一挙手一投足の全てが、あなたの持つたった1つの「信念」につながっている。
この状態がストーリーです。
つまり、あなたは「ストーリーを作ろう!」なんて意識しなくて良いのです。
ただ信念に従って行動する。そしてその信念を決して裏切らない。そうして行動した軌跡が、振り返ったときにストーリーになっているのです。
うわぁ、なんかエモいわ
でもそういうことだね、ホントに!
あ、秘密バラしちゃった…。
これガチだから、内緒にしといてね
なぜ企業はストーリー作りに悩んでいるのか?
多くの企業はストーリー作りに難儀しています。企業にできないなら、個人の作家には不可能と思いがちですが、実はそうでもないという話をしましょう。
企業は、お客さんを惹きつけるストーリー作りに奔走しています。そうしなければ、AmazonやIKEAのような巨大資本に叩き潰されてしまうからです。
でも、自社の商品からストーリーが見えない…。けっきょく価格勝負になってしまう…。
と悩んでいるわけです。なぜか?
それは、後になって「何か良いストーリーはないか?」とこじつけようとするからです。捏造しようとするから上手くいかないんです。
ここは絶対的に「急がば回れ」
正しい順番でなければ、ストーリーは絶対に作れない!
企業における「信念」は、「企業理念」や「ミッション」と呼ばれることが多いです。それを強くハッキリと言語化しなければ、何も始まりません。
社員全員が「企業理念」を暗記しているなんて当たり前。社員全員がその理念に心酔しきっていなければ、ストーリーなんて作れないのです。
リーダーの最も大切な仕事は、仲間が惚れ込む「理念」を語ること。マネジメントやマーケティングは他の人に任せられるけど、これだけは任せられません。
なんかマンガの主人公みたいだね!
「ONE PIECEのルフィ」とか「キングダムの信」とか
そうそう。「海賊王になって、ひとつなぎの大秘宝を手にいれる!」という船長の理念なくして、麦わら海賊団はありえないわけよ
【チャンス】個人のクリエーターはストーリーを作りやすい
企業がストーリーを作るのは本当に大変です。リーダーは、自分の信念を社員にインストールしなければならないわけですから。
社員の「共感」なんて言葉では生ぬるい。「崇拝」のレベルまで持ってかなければなりません。その土台があった上で、組織体制にメスを入れる必要があります。
大企業ならストーリーを作る以前に、その準備段階で何年も経ってしまうんだ
しかしながら個人のクリエーターには、企業が抱えている構造的な難しさはないんですね。
単に自分の「信念」を言語化して、あとは頑固にそれを守り続けるだけで良いわけです。他人様の心を変える必要も、組織改革の必要もありません。
個人のクリエーターなら、明日からと言わず、今日の今この瞬間からストーリーを作り始められるのです。
ハンドメイド作家がストーリーを作る3ステップ
ハンドメイド作家(というより個人のクリエーター)は、次の3ステップでストーリーを作っていきましょう。
ストーリー作りの3ステップ
- 自己分析
- 「信念」を言語化する
- 「信念」を行動に反映させる
難しくはありませんが、頭を使います。頭の良し悪しの話ではなく、よく考える必要があるという意味です。
ストーリーを作り始める際は、一度活動をストップするか減速させることをオススメします。
ステップ①:自己分析
まずやってもらいたいのは、「自己分析」です。人によっては、就活のときにやったあれですね。
- 自分は一体どういう人間なのか。
- 何を大切にしているのか。
- どういう価値観で生きているのか。
過去を遡って、自分という人間を客観視するところから始めましょう。
自己分析は、片手間にはできないよ!
時間を作って、1人で集中できる環境でやろう!
ステップ②:「信念」を言語化する
次に、浮かび上がってきたあなたの人物像から、「信念」と言える大切な考え方を抽出して言語化します。
企業は、よく「ミッション・ビジョン・バリュー」の3つで言語化します。
- ミッション
あなたが果たすべき使命や役割 - ビジョン
あなたがこうあるべきと考える理想の自分 - バリュー
大切にする価値観や行動基準
これをそのまま個人に当てはめても良いでしょう。
ボク自身は作家じゃないけど、人生の方向性に迷ったときは、いつもこの3つを考えてるよ
知らないところで、こんなことしてんだ!
ちなみにこの「信念」を言語化するプロセスは、1回やったら終わりではありません。この先の活動でもずーっと意識し続けます。
そして、より真に迫る言葉にブラッシュアップしていきます。1年に1回くらい、ゆっくり休めるタイミングで考えてみても良いでしょう。
ステップ③:「信念」を行動に反映させる
あとは、あなたの「信念」に沿った行動の全てがストーリーになります。
ハンドメイド作家であれば、次のような行動がストーリーになっていくでしょう。
- ブランド名
- ブランドロゴ
- 作家プロフィール文章
- 作品ラインナップ
- 作品コンセプト
- 作品のディティール(カタチ、色、素材)
- お客さんと接するときの言葉遣い
- SNSでの発信内容
- イベント出展のブース
やはり1番は、なんと言っても作品に関する行動。
作品では、あなたの「信念」を、モチーフや形や色で比喩的に表現します。そして作品ラインナップは、1つの「信念」で統一されているべきです。
こういった具合に、全てが1つの「信念」につながっている。逆に言えば、他人に「なぜそうしたんですか?」と聞かれたら、大元を辿ると全て同じ「信念」に行き着く。
この状態がストーリーなんですね。
あとは行動量と時間の経過によって、ストーリーがどんどん深く大きくなっていくよ
【初級者編】魅力的にストーリーを語るテクニック
ここまではストーリーの作り方を解説してきました。実際には、自分が大事にしている「信念」に沿って行動すれば、勝手にストーリーができていきます。
ただし、そのストーリーがお客さんにとって魅力的かはまた別の話。
桃太郎のストーリーは記憶に残っていますが、魅力的ということはないでしょう。だから桃太郎グッズがあったところで、欲しくならないと思います。
ストーリーが魅力的に聞こえる語り方を、レベル別に解説します。まずは初級者編から。
ちなみにあくまでテクニック論なので、あなたが持っている「信念」を曲げる必要はないよ!
個人的なエピソードを語る
人間の脳は、「300万人が飢餓で苦しんでいます」と言われるよりも、「7歳のロキアという名の少女が、飢えに苦しみながら懸命に生きています」と言われた方が、グッと来るというようにできています。
あなたの極めて個人的で具体的なエピソードを語ることで、お客さんはよりストーリーに没入するようになります。
ハンドメイド作家をしている人は、今に至るまでに様々な出来事があったはず。活動のきっかけになったようなターニングポイントもあったのではないでしょうか?
リアルな情景が浮かぶように、個別具体的なエピソードを語るほどあなたのストーリーは魅力的になります!
ちなみにボクが奥さんのハンドメイド活動をサポートするように至ったエピソードは、プロフィールで少しだけ語っているよ
あのちょっと恥ずかしい話かw
あなた自身の意見や主張を加える
あなたの意見や主張が強ければ強いほど、あなたの魅力は研ぎ澄まされていきます。あなたのファンは、あなたの尖ったストーリーにゾッコンになるでしょう。
反対に主張が弱ければ、あなたの信念も弱く映ります。起伏がない、平坦でつまらないストーリーになってしまいます。
例えば、「お金と時間のどちらが大事か?」というテーマで発信するとしましょう。
この時に、「どっちも大事だよね」とか「人に依って答えは違うよ」と言ってはいけません。
「お金」なのか「時間」なのか。どちらでも良いですが、立場をハッキリとさせてください。
もちろん主張が強ければ、それを嫌う人も増えていきます。しかしそういう人は、お客さんにならないんで別に気にする必要ありません。
例えば、ローランドさんとか本田圭佑さんとかホリエモンさんとか
イメージつくでしょ?
強キャラばっかだw
そういう意味では、あなたの信念は一切曲げる必要はないものの、ちょっとだけ誇張した自分を演じても良いかもしれません。
そうしていると、演じていたはずの自分に、だんだん本当の自分が寄っていきます。結果的にあなたは、より強い意見や主張を持つ人物になっていくでしょう。
タブーに注意
ただし避けた方が良い意見や主張もあります。
意見や主張のタブー
- 個人を攻撃する内容
- 政治
- 宗教
- 人種
これらは万国共通で、触れない方が良いと言われているタブーです。
タブーをペラペラしゃべってしまうと、かなり偏った人物像になってしまい、お客さんが近寄りがたくなってしまいます。
お客さんとの共通点を語る
人間は、自分と似たような人を好きになることがわかっています。
共通点がある人の方が、親近感が湧いて好意を抱くのです。
だからナンパ師や詐欺師は、相手との共通点を探って心を開かせようとするんだ
ヤベェ奴が使ってるテクニック!そりゃ効果ありそうだ…
共通点と言っても色々あるわけですが、汎用的で効果が高いのは次の3つです。
親近感を抱きやすい共通点
- 社会的な身分
- 悩み/コンプレックス
- 共通の敵
それぞれカンタンに説明しましょう。
社会的な身分
話題の人が「東大卒」や「帰国子女」や「財界人の子息」と知り、「あぁ、わたしとは違う人だ」と距離を感じた経験があるのではないでしょうか?
人間は、自分と同じような身分、あるいは自分と同じような出自の人を好む傾向があります。2世政治家や2代目社長よりも、庶民から成り上がった初代が好かれるのもこのためです。
庶民的でプライベートな話をところどころで披露しておくと、あなたのストーリー(というよりあなた自身)に魅力がプラスされます。
悩み/コンプレックス
人は、悩みやコンプレックスを代弁してくれる誰かに、強いシンパシーを感じます。同志あるいはオピニオンリーダーとして、心酔するようになります。
全く関係ない悩みよりは、ストーリーにリンクするような悩みの方がベターですね。現在進行形でも良いですし、過去の話でもOK。
共通の敵
外部に共通の敵がいると、「敵の敵は味方」の状態になり、好感度がグッと上がります。
ニュアンスとしては、「わたしの(同時にお客さんの)悩みは、本人の問題でなく、〇〇が悪いからだ!」と、責任転嫁するイメージ。
暗にお客さんに、「あなたが苦しんでいるのは、あなたのせいじゃない!あなたは悪くないよ!」と正当化する感じです。
ただ「〇〇」の範囲が狭いと、攻撃的すぎてイメージが悪い。社会、政治、経済、日本人特有の悪習など、広い塊を仮想敵にすると良いですね。
元明石市長の泉房穂さんは、この3つを上手く使ってるよね
庶民感覚をアピールして、物価高や増税の悩みを代弁
自民党を共通の敵に仕立て上げて、大衆の心を掴んでる
おー、確かに!
あれは狙ってやってるんだね!
【中級者編】魅力的にストーリーを語るテクニック
ここまででも十分効果を発揮しますが、さらにあなたのストーリーを魅力的に語るテクニックがあります。
余裕が出てきたら実践してみてください!
どん底から這い上がるエピソードを語る
人間は、どん底から這い上がるエピソードが大好きです(さらにテクニカルなことを言うと、男性と女性でウケるストーリーの筋書きが変わってきます)。
パターンとしては、
- 低い位置から上に上がっていく「右肩上がりパターン」
- スタート地点から一度落ちて、過去以上に盛り返す「V字回復パターン」
の2つがあります。これはどちらでもOKです。
インフルエンサーが、ブラック勤務時代、うつ病、貧困、転落、コンプレックスなどを語るのも、結局はお客さんがそういうストーリーを好むからです。
青汁王子こと三崎優太さんは、意図的にV字回復パターンを演じているよね
もう自分で「青汁劇場」とか言っちゃってるしね
完全に確信犯だな
なお基本的には、先に紹介した「個人的なエピソード」とセットになります。
そこまで劇的ではなくても、下から上に向かうようなエピソードがあれば披露してみてください。
「やらないこと」を明確に打ち出す
あなたの「信念」を貫くために、あえて「やらないこと」をハッキリと宣言するのも効果的です。
パタゴニアは、「地球を救う」という理念を掲げていることから、再生可能素材やリサイクル素材しか使わないと明言しています。
「最高のコーヒーを提供したい」と考えているスターバックスは、全面禁煙で、匂いの強いのフードを全面廃止しました。
ある意味、自分で自分の首を絞めているわけですが、それが強いストーリーになるわけです。
これは先ほど紹介した「あなた自身の意見や主張を加える」の延長線上にあります。
あなたの意見や主張を、口だけでなく、行動で示すということです。
動物愛護の精神で、本革をあえて使わない作家さんもいたよ
お客さんの願望とストーリーをリンクさせる
情報の洪水である現代において、99%の情報は無視される運命にあります。では脳は、何を基準に見るべき残り1%の情報を選別しているのか?
それは、その情報が「自分の願望を叶えてくれそうか?」です。
あなたのストーリーにお客さんが振り向くかどうかは、そのストーリーから「理想の未来」の匂いがするかにかかっているのです。
難しく考える必要はありません。
お客さんの「理想の未来」を、あなたの口から語れば良いのです。「あなたの欲しい未来、ちゃんとわかってるよ!」と言わんばかりに、何度も繰り返せば良いのです。
どんなに騒々しい場所でも、関心ある言葉はスッと耳に入ってくるよね
この現象は「カクテルパーティー効果」と呼ばれているよ!
ちなみに、商品を使うことで手に入る理想の未来を、マーケティング用語で「ベネフィット」と呼びます。
お客さんは商品が欲しいのではなく、ベネフィットが欲しいのです。ベネフィットにお金を払っているわけです。
お客さんを魅了するためには、あなたがベネフィットを叶えてくれる存在であると認識させる必要があるわけです。
なんか教祖さまみたいだな
まさにその通り!
よくファンビジネスを「信者ビジネス」って揶揄するけど、あれがあるべき到達点だ!
【上級者編】魅力的にストーリーを語るテクニック
ここまで来ると、難しすぎてほとんどのハンドメイド作家はやっていません。というより、企業ですらほとんどできていません。
ここまでやらなくて全然OKなんですが、もしできると、インフルエンサー並みの魅力を持てるでしょう。参考までに見てみてください。
CSR(社会的責任)を果たす
CSR(Corporate Social Responsibility)は、「企業の社会的責任」と訳されます。聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
収益は目的とせず、地球環境や社会問題の改善に取り組むことを指します。昔は寄付や植林ばっかりでしたが、昨今ではSDGsへの取り組みがフォーカスされるようになりました。
シューズメーカーの「TOM’s Shoes」は、靴が1足買われるごとに、貧しくて国の子供達に靴をプレゼントしています。
電力会社の「ハチドリ電力」は、CO2ゼロの自然エネルギー100%のみを販売しています。
ハチドリ電力のように、「やらないことを明確に打ち出す」とセットにして、「地球環境や労働環境に配慮された材料しか仕入れない」といった手法も取れます。
ストーリーとリンクしないCSRだと「ただの良い人」で終わりですが、ストーリーに根差したCSRだとファン化が進みます。一本筋が通ってますから。
本来は下心なく行うのがCSRなのですが、結果的に売上増にもつながるのです。
基本的には大企業がやるCSRだけど、あえて個人レベルでやるとインパクト大!
お客さんを巻き込む
本来、お客さんはあなたのストーリーを眺める観客です。
もしそのお客さんが、観客席から舞台に登り、あなたのストーリーを一緒に演じる共演者となったら?
共演者となったお客さんは、あなたの1ファンから、あなたを喧伝する宣教師になるでしょう。
お客さんを自分のストーリーに巻き込むことを、「共犯者に仕立て上げる」と表現することもあるよ
ハンドメイド作家だとちょっとやりづらいんですが、商品企画にお客さんを参加させる手法が王道です。
あとはクラウドファンディングを使うと、ただ売るよりもお客さんを巻き込んでいる感が出てストーリーになります。
ホントだ!見せ方上手い人のストーリーに、クラファンってよく出てくるよね!
前述のCSRと絡めるのも効果的です。
「TOM’s Shoes」も「ハチドリ電力」も、お客さんはそこから商品を買うだけで、企業と一緒にCSR活動に取り組めるわけですから。
お客さんは、「買うだけで売り手のストーリーに参加できる」っていうのがベストですね。
事件を起こす/伝説を作る
最上級のストーリー作りが、「事件を起こす」あるいは、「伝説を作る」です。
「そんなのありえないでしょ?」ってなるから「事件」や「伝説」なので、ハッキリ言って難しいです。
でもできれば、あなたの代名詞になるストーリーが出来上がります。
もちろん「事件」は犯罪を犯すという意味じゃないよ
センセーショナルな出来事を起こすという意味ね
これには3パターンの作り方があります。
- 前人未到の快挙を叩き出す
- 世界初(あるいは日本人初)の〇〇になる
- やりすぎエピソードを作る
難しい順になっていて、再現性があるのは、「やりすぎエピソード」のみでしょう。
前人未到の快挙
例えるなら、次のような人物です。
- 野球の大谷翔平さん
- 将棋の藤井聡太さん
- フィギュアスケートの羽生結弦さん
ただ再現性が全くないので、参考のみとさせていただきます。
世界初(あるいは日本人初)の〇〇
歴史に名を残すのは、歴代で1番上手な人ではなく、1番最初に道を切り開いた人です。
これもかなり難しいのですが、ナンバーワンではなくオンリーワンを目指せば良いので、「前人未到の快挙」よりは少し現実味があります。
日本人初のプロゲーマー梅原大吾さんは、格闘ゲーム界隈ではレジェンド中のレジェンド。必ずしも大会で優勝しているわけではありませんが、やっぱり彼が歴代最高のプレイヤーというのが世界の共通認識です。
それまでプロゲーマーという職業すらありませんでした。やはり道がないところに道を作った人は強いですね。
やりすぎエピソード
誰でもチャンスがあるのがこのパターン。
「いや、普通そこまでしないでしょ?」という超やりすぎな行動を、意図的に取るのです。
正体不明のアーティスト「バンクシー」は、現代社会へのアンチテーゼを打ち出しています。「裁断事件」は、彼のストーリーを際立たせた大事件でした。
ある日、「風船と少女」という作品が、転売でオークションにかけられることになりました。しかし1億5,500万円で落札されたその瞬間、突然シュレッターが動き出し、絵の下半分が裁断されてしまったのです!
これはバンクシーが転売に備えて、予め仕組んでいた仕掛けでした。しかもバンクシーはオークション会場にいて、その様子をSNSで投稿していました。
アメリカの靴専門オンラインショップの「ザッポス」は、あのAmazonが恐れた企業として知られています。その理由は、メチャクチャ手厚いサポートで、お客さんの心を鷲掴みにしていたから。
それを象徴する、「返品理由が履かせたかった人が亡くなったからと言ったら、お見舞いの花が送られてきた」というとんでもエピソードがあります。ザッポスには、この手の話に事欠きません。
こういったやりすぎエピソードは、事件や伝説としてファンの間で語り継がれていきます。
まとめ
今回は、ビジネスにおけるストーリー作りを言語化してみたよ
意外とロジカルな話だったでしょ?
うん!センスありきって思ってたけど、ちゃんと道筋があったんだね!
みんなフワフワした話すぎなんだよ
カンタンとは言わないけど、やれば誰だってできる!
この記事に書いてあることは、理解するのはそれほど難しくないと思います。
でもやってみると、これが難しい。すごく難しくはないけど、手こずることは間違いないでしょう。
しかしやれば必ず、新しい自分が見つかります。悩めば悩むほど、あなたという人間の核心に近づきます。そこにあなたのストーリーがあるのです!
ストーリーの本質とは?
- 情報が1つの文脈でつながっていることがストーリーの条件
- 小説はストーリーがあるが、辞書にはストーリーがない
- ストーリーにする理由は、記憶に残りやすいから
ビジネスにおけるストーリーとは?
- 「信念」を掲げ、一挙手一投足の全てをその「信念」にリンクさせること
- 「信念」に忠実に行動してきた軌跡が、振り返ったときにストーリーになる
ストーリー作りの3ステップ
- 自己分析する
- 「信念」を言語化する
- あとは「信念」に沿って行動するだけ
作品を0から作るクリエーターという生き方を選んだ以上、ストーリー作りは避けて通れません。これが他人の商品を売るサラリーマンとの最大の違いです。
現代アーティストの姿勢は、良いお手本になるでしょう。
彼ら彼女らは、自分の哲学を持ち、自分の主張を作品に込めます。それが評価されているんです。決して、技術だけで評価されているわけではありません。
バンクシーは最高のお手本だと思ってる!
難しく考える必要はありません。あなたの中に眠っている素直な気持ちを、ただ言葉にすれば良いだけです。
そこがストーリーの出発地点。時間をかけて、じっくり取り組んでみてくださいね。
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