「わたしの作品って、いったいいくらで売れば良いの?!」
ハンドメイド作家に訪れる試練の一つではないでしょうか?
それもそのはず。ほとんどの人にとって、値段はつけられているもので、自分でつけるものではありません。メルカリで物を売るにしても、定価や市場価格が基準になるので、ゼロから値段はつけませんよね。
知りたいのは、「お客さんに売れて、なおかつ損しない値段」。一体どう計算すればわかるのでしょうか?
ハンドメイド界隈では、
- 原価を基準に販売価格を決めよう!
- 原価の3倍がオススメ!
という意見を目にします。
こんな素人意見は聞き入れてはいけません。原価から値段をつけるのは大間違いです。
企業のプレゼンで、「新商品の値段は〇〇円です!原価から割り出しました!」なんて言った日には、上司に鼻で笑われます。「何もわかってねぇなぁ」と。
この記事で解説しているのは、ビジネスの最前線で使われている「攻めの価格付け」です。第一に売れる、しかし損はしない。適切な価格づけノウハウです。
ぶっちゃけボリュームはそこそこあるし、専門用語も出てくる。でもこの内容さえ押さえれば、もう作品の値付けには一切迷わないよ!
【ダメ絶対】原価から値段をつけてはいけない理由
ハンドメイド界隈では、原価をベースに値段をつけるのがスタンダードなようです。「原価の3倍」が目安という意見が多かったですね。
でもハッキリ言って、原価からの逆算はオススメしません。
- 「原価」の基準が曖昧で計算が難しいから
- 「売れる価格」は原価からは導けないから
という2つ理由をそれぞれ解説します。
理由①:原価の基準が曖昧で計算が難しいから
ハンドメイド作家が自分で計算しようとすると、どこまで原価に含めて良いのか相当迷うはずです。
それもそのはず。実は「原価」という言葉は、使うシーンで意味が変わってしまうんです。
- 飲食店は「原価率30%」が相場
→食材コストだけを原価にカウントしている - 本来の「原価」という言葉
→人件費や家賃、光熱費なども原価にカウントされる
ハンドメイドの場合、前者のように材料費の3倍(言い換えると、材料原価率33.3%)だと「ちょっと安すぎるかな?」という値段になります。
材料費が占める比率は、作品によって変わるでしょうが、15〜25%くらいだと思っています。10,000円で売る作品なら、材料費は1,500〜2,500円くらいが妥当かと。
ハンドメイド界隈の解釈は後者が多いみたいですが、人件費や家賃など全部ひっくるめて3倍だと「現実離れした高すぎる」値段になってしまいがち。
パッと計算すると変な数字になるんだよね。どこまで原価に含めるか迷っちゃう
ってな感じで、ただの数字遊びになっちゃいがちなんだ
理由②:売れる価格は原価からは導けないから
まずビジネスの世界の常識からお話ししましょう。
ビジネスの世界で価格を決める際、原価をスタート地点にはしません。
なぜなら、売れる値段と原価には、何の関係もないからです。
アイドルやキャラクターの「アクリルスタンド(通称アクスタ)」を例に考えてみましょう(原価は300円くらいでしょうか)。
さて、あなたは「推しのアクスタ」にいくら払うでしょうか?
んー、3,000円くらいかな
では、「何もプリントされていないただの透明のアクスタ」ならいくら払うでしょうか?
なんじゃそりゃ。1円も払わないでしょー
つまりそういうことなのよ
は?どういうこと?
プリントしようがしまいが、アクスタの原価(厳密には版権へのロイヤリティはありますが)はさほど変わりません。でも値段は天と地ほど変わります。
原価がいくらだろうが、欲しけりゃ10倍でも払うし、いらなきゃ1円も払わない。これが真実なんですね。
原価から値段をつけようという発想は、どこまでも作家側の都合。「お客さんはこの値段で買ってくれるか?」という、もっと大事な視点がスッポリ抜けています。
んんんんん!?ちょっと待って!
でも原価から逆算しないと、売っても損するでしょ!?
うん、だからそれが作家側の都合なんだって
損しない値段付けたって、売れなきゃ意味ないでしょ
ちなみに一般的には、単価が高くなるほど、原価率は下がる傾向にあります。
飲食は原価30%と言われますが、高級レストランは20%ほどが相場。ハイブランドとユニクロのジーンズは、原価が同じという話も聞いたことがあります。
もっと高く売れるかもしれないのに、杓子定規に原価の3倍をつけるのは間違っていますね?
また材料費が下がったら、いま売れている作品の値段も下げるんでしょうか?そんなことしないですよね。
「原価の3倍」は、売り手が損しない数字ってだけ。適正価格でもなんでもないよ
いますぐ発想を変えてください!
原価から値段を付けるクセがついてしまうと、「売れない思考回路」ができてしまいます。いますぐ忘れてください!
問題は考える順番。次の順番が正解です。
問い | 考えた結果 |
---|---|
①お客さんが欲しがるモノは何だろう? | →作品が決まる |
②それはいくらなら買ってくれるんだろう? | →販売価格が決まる |
③原価をいくらに抑えれば、利益が手元に残るだろう? | →原価が決まる |
どうでしょう?ピンと来るでしょうか?
「原価が3,000円だから、販売価格は9,000円にしよう」じゃないんです。
「販売価格を9,000円に決めたから、原価を3,000円に抑えよう」の発想なのです。「いくらで売るか?」と考えるときに、最初に原価が思い浮かんだ時点でアウトなんです。
「もし販売価格に対して、原価が高くて手元にお金が残らなかったら?」と疑問に思いましたか?
そうです。そこで初めて原価を調整しようという発想になるわけです。
コペルニクス的展開だぁー!!
ここメチャクチャ重要!
テストに出るから、腹落ちするまで何回でも繰り返し読んでね!
【新常識】作品の適正価格の付け方
ズバリ言いましょう。ハンドメイド販売において、「適正価格=お客さんが払う意思のある最大の価格」です。
なので、適正価格は市場から判断しなければなりません。
次の2つの調査方法がオススメです。
- 〇〇の人に値段を聞く
- 市場の価格帯から決める
企業でも使われる価格付け手法です。これがスタンダードなので、ぜひ実践してみてください。
オススメ①:〇〇の人に値段を聞く
「この作品いくらだったら買う?」と素直に聞いてしまうのが、一つ目のやり方。
企業のマーケティングリサーチでも、インタビューやアンケートなどを利用して、ユーザーが商品にいくら払えるのかを調査しています。
値段は4段階で聞くのがベスト
お客さんが買ってくれる値段は、ピンポイントで「4,000円!」ではなく、実際には「3,500〜4,800円」のように幅があります。
安い分にはいくらでもいいんじゃないの?
いや安すぎて売っちゃいけない値段もあるよ
10万円の車とか買わないでしょ?
1円のプレステとか、絶対別に何か買わされると思うでしょ?
確かに…。ヤバいもん掴まされそうだわ
次のように4段階で聞くと、お客さんが感じている値頃感が4倍リアルに掴めます。
- 高すぎて買う気にならない値段
- 高くても買う気になる値段
- お買い得!と感じる値段
- 安すぎて品質が不安になる値段
②と③の間が、お客さんが買ってくれる価格帯です。ここでは仮に「適正価格帯」と呼びましょう。
できれば複数人にヒアリングし、精度の高い適正価格帯を導きます。
その適正価格帯の中で、②の高め寄りの値段が「適正価格」になります。
おぉ、こんな聞き方あるんだ!これはテクい
この4段階の価格調査ノウハウは、「Hacking Growth グロースハック完全読本」を参考にしてるよ(難しいから読まなくて大丈夫)
聞く相手を間違えないで!
前出のアクスタの例の通り、正しい値段を答えてくれるのは、買う気のある人だけ。いらない人は1円でもいらないので、聞きたい値段は返ってきません。
マーケティング風に言えば、「ペルソナ」で設定した人物像に近い人に聞かなければ意味がありません。
「ペルソナ」とは、ターゲットのお客さんを具体的な1人をイメージできるまで掘り下げた人物像のことだよ
聞くべきレベル | 対象者 |
---|---|
値段を聞くべき人 | 既存のお客さん 既存のファン ペルソナに近い人物 |
聞いてもイマイチな人 | 女友達 女性の親族 知り合いのハンドメイド作家 |
聞いちゃいけない人 | 男性 |
まず、男性にハンドメイドの値段を聞くのは、基本ナシだと思ってください。
ここでは詳しくは触れませんが、基本的に男性はハンドメイド作品に興味がありません。高確率でかなり安い値段を言われてダメージを負ってしまいます。
男性に聞くよりは遥かにマシですが、女友達や女性の身内に聞くのも微妙です。
作風と相手のセンスが合えば、良し悪しの意見は参考になるでしょう。しかしドンピシャのターゲット顧客じゃないので、申告した値段の信憑性は薄いです。
知り合いのハンドメイド作家に、「これいくらだと思う?」と聞くのもイマイチです。原価を予想して、その3倍の数字を言ってくるだけなので。やはりお客さんが買ってくれる値段ではありません。
でもさぁ、そんなカンタンにお客さんと話せる機会なんてないよぉ?
始めたばかりの作家だと、正直ハードル高いよね。そんな人は次の方法をご覧あれ!
オススメ②:市場の価格帯から決める
実際に売れている商品の値段を観察すると、あなたの作品がいくらで売れそうか当たりをつけられます。
以下の3ステップで調査しましょう。
手順①:ネットで同じジャンルの作品を探す
まず、あなたの作品と同じジャンルの商品をネットで探します。
ハンドメイドと既製品の両方見たいので、
- minne
- Creema
- Amazon
- 楽天
から売れてそうな商品を、上位5〜10個ずつほどピックアップしましょう(数は前後しても大丈夫です)。
手順②:スプレッドシートにまとめる
次にGoogleスプレッドシートに入力していきましょう。
次のカラムを用意して埋めてください。
- プラットフォーム名
- 商品名
- 値段
- 品質(自分の作品を3として5段階で)
「品質」については、客観的に判断するのが難しいと思います。
厳密なスコアはつけられないので、「デザインセンスの良さ、素材、精巧さ、トータルの見目の良さ」などから大体の数字を入力してください。
手順③:適正価格を見つける
スプレッドシートを「値段」が高い順にソートします。
メニューバーの「ツール→フィルタを作成」でソート機能をオンにできます。
表を上から見ていって、最初に出てくる品質「3」の商品の値段が、あなたの作品の適正価格になります。
なるほどね〜、同じ品質のライバルと同じ値段ってことか!
実際に売れている価格帯ありきで、品質が高いほど高価格帯のゾーンを陣取れるイメージだね
損しない値段とコストのバランス
作品の値段が決まったら、利益が残るようにコストを調整します。しつこいようですが、この順番は鉄則です。
「原価を販売価格の3分の1までに抑える」のイメージで概ね間違ってはいないですが、「原価」の定義がブレてわかりづらくなりがちです。
ここは、複雑な計算はナで行きましょう。ハンドメイド作家にオススメのコスト計算方法を紹介します。
曖昧な原価ではなく、「変動費」「固定費」で考えよう
コストを「原価」ではなく、「変動費」と「固定費」に分けて考えると、途端にわかりやすくなります。
なんか難しい話しようとしてない?
難しそうな用語に見えるよね。でもこっちの方がスッキリ理解できるよ!
変動費 | 固定費 | |
---|---|---|
意味 | 作品を1個作るごとにかかるコスト | 作品の個数に関係なくかかるコスト |
例 | 材料費 梱包費 販売手数料 人件費* CPA(広告費)* | 家賃 水道光熱費 通信費 会計ソフトなどの各種ツール代 イベント参加費(場所代) |
*人件費の補足
雇用する場合は、人件費は固定費にするのが一般的。ですが、自分の裁量で働けるハンドメイド作家は、変動費として扱いましょう。
なお、人件費に最低賃金を当てはめるのはNG!先々に外注も視野に入れると、最低賃金じゃ誰もやりません。あなた自身も最低賃金では満足しないでしょう。
時給1,500〜2,000円くらいは見積もっておいた方が安全です。
*CPA(広告費)の補足
「CPA(Cost per Acquisition)」は、1件の売るのにかかる広告費用のこと。上級者向けなので、ここではスルーしてもらって大丈夫です。
「変動費(1個作るのに必要なコスト)」に対する利益のことを、「粗利(あらり)」と呼びます。
「変動費」に加えて、「固定費」も加味した利益を、「営業利益」と呼びます。ビジネスで単に「利益」と言った場合は、基本的には「営業利益」を指します。
最終的に「営業利益」がプラスになればOKというのが、ビジネス界の共通認識となっています。
初見だと「う…」って感じるけど、よく見ると大したこと書いてないよ!
ハンドメイド作家は「変動費」だけで計算しよう
本来なら「営業利益」から計算したいところですが、一つ問題があります。
「営業利益」を計算するためには、「固定費」を計算式に入れなければなりません。しかし、「固定費」を勘定に入れると、途端に計算が難しくなってしまいます。
作品ラインナップごとに売る個数を正確にコントロールしないと、まともな数字が弾けないからです。慣れていないと、ただの数字遊びになってしまうでしょう。
できる気がしないわ
本職のビジネスパーソンでも難しいよ!ここは妥協しよう!
ハンドメイド作家は、シンプルに「変動費」と「粗利」だけを使ってコスト計算するのがオススメです。
割ってはいけない粗利0のライン
まず、価格が絶対に下回ってはいけないラインが、「変動費(主に材料費+人件費)」です。
つまり粗利は最低でも0。マイナスにならないようにコストを調整しましょう。
粗利0の例
A. 販売価格:4,500円
B. 変動費:4,500円
C. 粗利:0円(A – B)
D. 粗利率:0%(C ÷ A)
もし価格が変動費を下回ってしまうと、売れば売るほど赤字が膨らんでしまうからです。誤解を恐れずに言えば、食材費300円のラーメンを250円で売ってしまうイメージ。
ちなみに「粗利0(価格=変動費)」だと、固定費は1円も回収できないので、トータルでは赤字です。特別な狙いがあるときだけの選択肢になります。
とはいえ一応、作家自身の人件費は稼げているから、粗利0でもやってけないこともないよ
目標は粗利55%
ハンドメイド作家が、目指すべき一つの基準が、「売上100に対し、変動費45(つまり粗利55%)」の割合です。
粗利55%の例
A. 販売価格:10,000円
B. 変動費:4,500円
C. 粗利:5,500円(A – B)
D. 粗利率:55%(C ÷ A)
この「粗利55%」という数字がどこから来たのか、気になりますよね。
ビジネスの一般論をします。メーカーが他社に販売を委託するケースでは、売上の50%程度を相手方に差し出すのが一般的です。
ハンドメイドの委託販売でも、相手方に差っ引かれるマージンの相場は55%。これが、自分の商品を人様に売ってもらうコストなのです。
逆に言えば、粗利55%をキープしていれば、委託販売でマージンを抜かれても赤字になりません。割ってはいけない変動費のラインが、ギリギリ残るのがミソ。
アート作品のギャラリーも同じくらいのマージンって聞いたことあるよ
ただハンドメイド作家で、人件費込みで粗利55%を出せるのは、かなり優秀な数字です。
minneやCreemaやメルカリでの活動がメインであれば、粗利20%や30%もよくある数字かと。55%を下回ったらダメというわけではありません。
粗利20〜30%でも、自分の人件費+αは稼げています。まとまった数が売れていれば、固定費も回収でき、トータルでも利益は残るでしょう。
ウチも粗利55%には届いてないね
粗利55%はあくまで目標値。届かなくても心配する必要はないけど、ここ目指してクオリティを上げよう!
粗利55%を超えるのはOKか?
ここで「粗利55%を超えてる分には問題ないの?」と思った人もいるかもしれません。
粗利60%や70%となると、かなり高利益率。とっても商売上手です。もちろん売れているならそれが正義なので、別に問題ありません。
ただしお客さんが高い値段に見合う満足度を感じていないようなら、コストをかけて品質向上させましょう。
売れてる作品をわざわざ値下げする必要はない。値段はそのままで、品質アップするのが◎
【初公開!】粗利シミュレーター
このシミュレーターに数字をポチポチ入力するだけで、粗利が確認できます。
ぜひ使ってみてくださいね!
①販売価格を入力 | ||
---|---|---|
販売価格 | 円 | |
②変動費を入力 | ||
材料費 | 円 | |
梱包費 | 円 | |
販売手数料 | % | |
制作時間 | 時間 | |
自分の時給 | 円 | |
CPA(広告費) | 円 | |
変動費 | 円 | |
③粗利をチェック | ||
粗利 | 円 | |
粗利率 | % | |
コメント |
ちなみにさ、もしコストが減らせなくて、どうしても粗利が出ない場合はどうするの?
趣味ならいいけど、仕事ならその作品はお蔵入りだね
企業でも、「経済合理性がない」って理由でボツになるよ
価格をつける際に意識する3つのこと
もう値付けの原理原則は説明しきりました。
ここで終わっても良いのですが、ハンドメイド作家向けに、少しだけ補足しておきます。
作品の値付けでは、次の3つを頭の片隅に入れておきましょう。
意識①:原則、値段は高め
ハンドメイドは、薄利多売のビジネスモデルではありません。ハンドメイド作家は、高めに値段をつけることを常に意識してください。
冷静に考えてみましょう。
同じ月30万円売り上げるとしたら、
- 1万円の作品を30個売る
- 1,000円の作品を300個売る
のどちらが楽でしょうか?
もちろん30個の方が楽ですよね。300個売れば、お客さんとのやり取りや梱包&発送も300回ついてきます。
薄利多売は物理的にムリなので、売上を伸ばすためには単価アップが不可欠です。
制作しながら1日10件とか地獄だよ
迷ったら高め!
作品ジャンルによるけど、最低でも単価5,000円、できれば1万円欲しい
意識②:既製品の価格に引っ張られすぎない
ついついやってしまいがちなのが、Amazonなどで売れている商品の価格に合わせてしまうこと。
しかし売れているのは、得てして低価格帯の既製品です。工場で大量生産されているので、ハンドメイドとは比べ物にならないくらい低コストで製造されています。
「既製品と比べて、わたしの作品高すぎ…?」と気にする必要はありません。そもそもビジネスモデルが違うんですから。
もちろん既製品がいくらで売れているかは見ておいた方がいい
でもその値段に寄せるのではなく、作品を差別化してもっと高く売ることを考えよう!
意識③:値段変更は悪ではない
日本人は、商品の値段が変わることにネガティブな印象を抱いています。値上げした企業はよく謝ってますよね。
ですが、本来物価は上がっていくのが普通なので、値上げでいちいち謝る必要なんてないんです。
売れ行き好調なら、堂々と値上げしましょう。
逆に、動かない場合は、値下げするのも一つの手です(そもそも値段が原因ではないケースも多いですが)。
最初につけた値段を変えちゃいけないって呪縛から解き放たれよう!
後から値段を変えてもいいと思うと、気がラクになるね!
戦略的に安く売るのはアリ
基本的なスタンスは、「高く売れ!」なんですが、戦略的にわざと安売りするマーケティングもアリです。
*ただし前述の通り、粗利がマイナスにならない値段に留めましょう。
初期の信用づくりのため
ハンドメイド作家として駆け出しの頃は、レビュー0、SNSフォロワー0であることが多いはず。
仮に作品は優れていたとしても、信用がなくて買われづらい状態です。
Amazonでも楽天でも、レビューがない商品って買いづらいでしょ?
良し悪しの判断材料がないって、なんか腰が引けちゃうよね
またminneとCreemaは、レビューの星やレビュー数そのものが、何らかの形でアルゴリズムに組み込まれている可能性が高いです。レビュー数が0や1桁だと、検索結果の上位に上がりづらくなってしまいます。
初期のブースト施策と割り切って、適正価格よりはるかに安い値段で作品をバラまく戦略が有効です。早くレビューが溜まり、お客さんが安心して買いやすくなるだけでなく、検索結果で上位を狙いやすくなります。
ここで一つ注意点。安く売るからといって、品質は落としちゃダメ。目的は信用作り。安かろう悪かろうで、微妙な信用を積み上げるのはナンセンスです。
2ステップマーケティングのフロントエンド商品として
高額な作品を販売するときに使える戦略です。やや上級者向けなので、すぐに実践しなくても大丈夫です。
一般論として、高額な商品ほど購入ハードルが高くなります。
コンビニで見つけた新商品のお菓子はカンタンに即決できます。しかし家電やスクール、美容サロンのように、値が張る商品を初見で購入する人は滅多にいません。
ハンドメイドは高く売るのが基本スタンスだけど、高くするほどお客さんは購入に踏み切りづらくなるよ
そこで高額商品を売るために考え出されたのが、「2ステップマーケティング」という手法です。
2ステップマーケティングでは、
- フロントエンド商品
→本命の前に売るリーズナブルな商品。ハンドメイドなら数百円〜1,500円程度 - バックエンド商品
→本命の高額商品。ハンドメイドなら1万円以上が目安
の2つの商品を、段階を踏んで売ります。
ポイントは、お客さんは1度何かを購入した相手には、そうでない相手よりもカンタンに財布の紐を緩めるということ。
だから高額商品を売る前に、安い商品をサクッと売っておくのです。
例えば、30万円のコンサル契約を販売する前に、3,000円のセミナーに参加してもらうと、本命のコンサル契約の成約率が跳ね上がります。
ハンドメイド販売なら、まず安価なエントリー作品を気軽に買ってもらうことで、次回以降にメインの高額作品を買ってもらいやすくするということですね。
心理学の「一貫性の法則」をビジネスに応用した典型例だよ
すっげぇズルい!
みんなこうやって買わされてたのか!!
言い方は悪いですが、フロントエンドは「撒き餌」なので、利益を出す必要はありません。利益は高額なバックエンドで取れば良いので。
こちらも一つ注意点。フロントエンドも安かろう悪かろうは厳禁。フロントエンドの品質に満足するからこそ、バックエンドが高額でも買ってもらえると心得ましょう。
でもさぁ、いくら利益度外視って言っても、高品質で安い作品ってあり得るのかな?
ここは頭を使う必要があるよ
「小振りで材料費が安く済む」+「見栄えが良い割に制作の手間がかからない」が理想
それで、変動費(≒ほぼ材料費)を回収できる値段で売るイメージだね
最終的には自分が売りたい値段を決める
ここまでは、市場を尊重して、市場で受け入れる値段の付け方をレクチャーしてきました。これは民主的な値付けの方法で、1つの正解だと思ってください。
しかし、ハンドメイド作家、というよりモノづくりをするクリエーターには、もっと独裁的な値付けの仕方もあります。最終的には、ここを目指す必要があるでしょう。
それは、「あなたがいくら欲しいか?」から逆算する値付けです。
例えば、あなたが「月30万円」欲しいとしましょう。ハンドメイド作家の偏差値70くらいに相当しますが、専業で食っていくなら、全くおかしくない数字でしょう。
そして、「月20日(約週休2日)」働くとしましょう。これも普通だと思います。
すると、1営業日あたり、「30万円 ÷ 20日 = 1.5万円」を稼がなければなりません。これは利益ベースの話ですから、売上にすれば「1日3万円」くらいになりますね。
*いったん、固定費とか税金とかは深く考えないことにします。
- 1日で「1作品」作れるなら、単価は「3万円」
- 1日で「2作品」作れるなら、単価は「1万5,000円」
- 1日で「3作品」作れるなら、単価は「1万円」
ということになります。
極端な話、月に1作品しか作れないなら、単価は60万円になるよね
ハンドメイドは特殊なビジネスで、生産できる数がほぼ所与(決まっていて動かせない)です。他のビジネスのように、拡大(増産)して稼ぐのが難しいんですね。
そうなると、欲しい金額に合わせて、作品の価値を釣り上げる道に行き着きます。究極的には、「どこまで単価を上げられるか?」が、ハンドメイド業の核心なのです。
売る値段は先に決まっていて、その値段でも売れるだけの作品を作るってことか!
まとめ
お疲れさま!内容盛りだくさんで、ちょっと疲れたでしょ?
うん(笑)。専門用語とか数字が出てきて、「ウッ」てなりそうだったよ〜
ゴメンゴメン。でもこの記事の内容だけ押さえておけば、ハンドメイド作品の値付けは間違いないよ!
本記事の内容をまとめます。
原価の3倍で値段をつけるのはNG
- 「原価」は定義がブレやすく、数字遊びになりがち。意味のある数字を計算するのは難しい
- お客さんが買う値段は、原価とは無関係。原価の3倍で値付けしても売れなきゃ意味ない
適正価格=お客さんが払う意思のある最大の価格
- 既存顧客やターゲット層に値段を聞くのが1番良い方法。4段階で値段を聞くのがオススメ
- ネットで売れている商品の価格帯を調査し、高めのゾーンで値付けするのもオススメ
「変動費」を基準にコストをコントロールしよう
- 「変動費」とは、作品1個作るためにかかるコストのこと。主に材料費と人件費が含まれる
- 最低基準として、「価格 ≧ 変動費」になるようにコストを抑える
- 「粗利55%」が目標値。ただし20-30%でもそこまで悪くはない
「コストありきで適正価格を決めるんじゃない。まず適正価格ありき。適正価格でも利益が出るようにコストを調整する」ということですね。
まずはここを腹落ちさせましょう。
ハンドメイド界隈の悪習で、今まで「原価、原価」って言われ続けてきた作家さんが多いと思います。
どうしてもコストの方に意識が向きがちですが、ビジネスセンスの根幹に関わる大事なところ。少しずつ矯正していきましょう!
ハンドメイド作家が値付けに対して持つべき意識
- 高く売ることを念頭におく。薄利多売はNG
- Amazonなどで売れている安い既製品に合わせる必要はない
- 値段変更は柔軟にしてOK
戦略があれば、安売りもアリ
- 0→1達成の段階では、レビューを積む必要がある。安く売って信用を買う投資が有効
- (上級者向け)高い作品を売るために、激安作品をバラまく2ステップマーケティング
最終的には売りたい値段で売る
- 究極的には、欲しい金額に合わせて、作品の値段をつけることになる
- 値段が先に決まって、その値段に見合うように、作品の価値を上げていくことになる
虎視眈々と、値上げのチャンスを狙うのが基本スタンスですね。
ただし先行投資として安売りする戦略もアリということも知っておきましょう。
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