現役専業ハンドメイド作家の奥さんのマーケティングやってます♪
ハンドメイド作品の主要な販売チャネルの1つに、「委託販売」があります。
マーケティングの大部分をポイっとお任せできるのが魅力ですが、一方で、高い販売手数料を差っ引かれます。
「委託販売って、ぶっちゃけアリなの?美味しいの?」
そんな疑問を持っている作家さん、かなり多いのではないでしょうか?
気になるよね、委託って。何か起きそうな予感がするしね
ウチの奥さんも、イベント出店で声をかけられて、委託販売をやってみた経験があります。やってみた結果、「これは割に合わないな」ということで辞めてしまいました。
委託販売の売上で生活していこうと思うと、ちょっと苦しいなというのが実情です。
本記事では、ハンドメイド作品を委託販売することの、ビジネス的な意義を解説しました。せっかくなので、委託販売を経験した奥さんのリアルな心境もレポートします。
総論では、ハンドメイド作品の委託販売に関して、やや批判的に映るでしょう。実際にはウチは、「もうやらなくて良いかな」と思ってます。
ただ、じゃあ委託販売はダメかというと、そんなこともありません。やる目的さえを間違えなければ、ちゃんと旨みがあります。
- 委託販売に興味を持っている人
- 実際に委託販売をやっている人
は、ぜひ最後までチェックしてみてください!
委託販売って、どういう仕組み?
そもそも「委託販売とはなんぞや?」という基本的なところから理解していきましょう。
「もう知ってるよ!」という人は、この章は飛ばしてもらってOKです。
販売形態
「委託販売」とは、本来なら自分でやる販売業務を、別の誰かに丸っとお願いする販売方法です。
ポイントは、一般的な仕入れ販売ではないってところだ
仕入れ販売の場合、まず販売店がメーカーから卸値で買い取ります。買い取った上で、色をつけた上代で一般消費者に販売します。
一方で委託販売は、作家から作品を買い取りせず、一旦は棚に置くだけ。値段は、作家側が自由に決められます(といっても、常識の範囲内でですが)。
棚に置かせてもらった作品が売れたら、手数料を差っ引いた売上金を、作家にバックする仕組みです。
仕入れ販売と委託販売では、お金の流れが違うんですね。買い取った商品が在庫になるリスクがない委託販売は、売る側にとって都合の良い販売形態と言えるでしょう。
ちなみに委託販売は、やや珍しい販売形態ではありますが、ハンドメイド販売特有というわけでもありません。
ボクは高校生の頃に、スニーカーとか裏原ファッションの転売をやっていたことがあるのですが、当時の売り先は「委託販売」が主流でした。
販売場所
委託販売の場所は、主に次の通りです。
ハンドメイド作品の委託販売を行なっている場所
- レンタルボックス、レンタルスペース
- 百貨店
- カフェ、レストラン
- 美容院、ネイルサロン
ただし、これらは代表例というだけで、チャンスは他にもあります。
先方にとっては、在庫リスクを抱えず、片手間でお小遣いを稼げるチャンスです。お願い次第では、あらゆるお店で取り扱ってもらえる可能性を秘めています。
手数料
委託販売の手数料率は、大きく2種類の設定があります。
委託の販売手数料のパターン
- 棚代あり
出品するのに、月数千円の定額料金がかかる。別途、販売手数料として20〜30%を引かれる - 棚代なし
出品は無料。売れた際に、40〜60%程度の販売手数料を引かれる
ハンドメイド作品に特化したレンタルボックスのような小型店舗は、「棚代あり」のパターンです。この手の業者は、「棚代」という家賃を徴収して、最低限の運営費を捻出しています。
ハンドメイド特化でないお店は、「棚代なし」のパターンが多いですね。こちらは本業が別にあるので、あえて作家から家賃的なお金をもらう必要がありません。
しかし、わざわざ場所を空けて、ショボい手数料をもらうだけでは割に合いません。そのため、40〜60%と比較的高い手数料を持っていく傾向があります。
ただし、それもケースバイケース。善意で、「地域のクリエーターを応援したい!」というお店は、もっと低い手数料で良いと言ってくれる場合もあります。
ウチが委託販売したときは、棚代なしで販売手数料は55%だったよ
ちなみにネット販売は、出品無料で手数料は10%程度です。
ネット販売で「1万円」の作品が売れれば、「9,000円」が手元に残ります。
これが棚代なしの委託であれば、「1万円」で売って、「4,000〜6,000円」が手元に残ります。やはり手数料は高くつきますね。
委託販売のメリット
次に、委託販売の良い点を挙げていきましょう。
作家には難しい場所でインプレッションが取れる
委託販売の1番のメリットは、個人では到底出店できない場所に作品を置けること。個人では獲得できない「質or量」のインプレッション(露出)を確保できることです。
例えば、百貨店のお客さんは、持ち物にこだわりがあって、金払いも良い、素晴らしい客層です。しかし、彼ら彼女らにあなたの作品を見てもらう機会を作るのは、至難の業です。
他にも、
- 雰囲気の良いカフェだったり、
- 人気の美容室だったり、
- 地域の伝統工芸品のお店だったり、
に訪れるお客さんにアプローチできるのは、委託販売ならではのメリットです。
低リスクで始められる
委託販売は、リアル店舗販売の中では、もっとも低リスクで始められる販売形態です。
もし自分でお店を出すなら、言わずもがな家賃やテナント料がかかります。売れ行きに関わらず、固定の出費になりますから、これは中々のリスクです。
イベント出展であっても、それなりの規模なら何万円か出店料を取られます。準備にもボチボチお金がかかります。取れないほどのリスクではありませんが、ちょっとした冒険ですね。
一方で、委託販売はといえば、ほとんど出費がかかりません。
「棚代あり」のパターンで1ヶ月出品しても、1万円以内で収まります。実際には、3,000円くらいでスタートできるでしょう。
あとは、作品を発送するときの送料を負担するくらいです。
委託先さえ見つけられれば、始めるハードルはかなり低い!
制作に専念できる
委託販売は、販売業務の一切を丸投げすることになります。
よって作家自身は、
- 集客をする必要も、
- 接客をする必要も、
- 発送業務も
- メッセージのやり取りも
ありません。
浮いた時間は、すべて制作に専念できます。これは中々魅力的ですね。
そうそう!だから人付き合い苦手な作家さんとかは、委託に引き寄せられがちだよね
委託販売のデメリット
一方で、委託販売には見過ごせないデメリットも存在します。
販売手数料が高すぎて、手元にお金が残らない
先にも述べた通り、委託販売の手数料は、次のどちらかです。
委託の販売手数料のパターン
- 棚代あり
出品するのに、月数千円の定額料金がかかる。別途、販売手数料として20〜30%を引かれる - 棚代なし
出品は無料。売れた際に、40〜60%程度の販売手数料を引かれる
売る規模にもよるのですが、「売上の半分くらい持っていかれる」と思っておいて問題ありません。
ちなみに、手数料が高いからといって、委託販売の値段だけ高く設定するのはNGです。委託販売店にクレームが来る可能性があるので、おそらく規約等でNGなはずです。
そもそも論ですが、お客さんからしたら、どこで買うかは関係ない話です。
高く買わされたと気づけば、嫌な気持ちになるでしょう。そんな苦い体験をしたお客さんが、あなたのファンになるでしょうか?
どこで買ってもらおうが、大切なお客さんの1人です。値段で差別するのは得策ではありません。
この販売手数料の話は、後ほど詳しく解説するね
お客さんの反応が見えない
ネット販売であっても、
- お客さんとのメッセージ
- お気に入り登録
- レビュー
などから、作品に対するお客さんの反応を、少なからず得ることができます。
お客さんの直の反応からは、様々なブラッシュアップの方向性が見えてきますね。ビジネスにとって、お客さんの反応は、最大の金脈なのです。
しかし、委託販売は、良くも悪くも販売業務を丸投げしてしまいます。わかるのは、「何が何個売れたか」だけ。
お客さんの反応が見えないため、どう試行錯誤をしていけば良いかのヒントがありません。作家としても、1人のビジネスパーソンとしても、成長の機会を1つ失うことになります。
あー、これは痛いかも。委託販売オンリーだと、見えないことが多いな
微妙にトラブルになるケースも
大抵の場合、委託販売業者はトラブルの責任は取ってくれません。
ここでいうトラブルとは、「破損」や「紛失」のことです。おそらく規約にも書いてあると思いますし、委託を開始する際も念押しされると思います。
実際にトラブルが頻繁に起こるわけではありませんが、1つ注意しておきたいポイントです。
委託販売の「手数料」の意味を正しく理解しよう
委託販売の1番のメリットは、普段はタッチできないお客さんのインプレッション(露出)を獲得できるところです。
一方で、1番のデメリットは、なんと言っても販売手数料の高さですね。半分くらい持っていかれる覚悟が必要です。
さてこの辺りで、この「販売手数料」について、正しい認識を持ってもらいたいと思います。
販売手数料=マーケティング代行費
「販売手数料」は、作家が委託販売店に支払う、一種の代金です。
何に対する代金だと思いますか?
その代金は、なぜネット販売よりも高いんだと思いますか?
ここで、「場所代」とか「人件費」と考えるのは、ナンセンスだ!
ギクッ!(違うのか!?)
あなたが1泊10万円で、星空が見えるグランピング施設に宿泊したとしましょう。
大自然の中で、満点の星空を見ながらのんびり過ごせます。
キャンプのように、自分で何でも準備する必要はありません。料理もアメニティもついていて、係の人もいます。ホテルに泊まる感覚で、大自然を楽しめます。
このときあなたは、何に対して10万円を支払っているのでしょうか?
場所代や、人件費として、お金を払っているのでしょうか?
違いますよね。あなたが買っているのは、「星空が見れる体験」や「細やかで不自由のないサービス」です。
「場所代」とか、「人件費」というのは、販売店側のコスト構造の話です。裏側の話です。あなたが気にする必要はありません。
あなたが買っているのは、「場所代」や「人件費」ではなく、そこからあなたに還元される「価値」です。
minneやCreemaのようなネット販売のプラットフォームは、大体10%の販売手数料です。その代わり、出品しただけでは売れず、写真や文章やSNSを駆使して、作家自身も売り込まなければなりません。
一方で、委託販売なら、丸っと全てを向こうに投げられます。作品を作って送ったあとは、結果を待つだけです。
「マーケティングを丸投げするコストとして、売上の半分をくれてやる必要がある」
これが、委託販売の高い手数料に対する、正しい認識です。
やっぱり高くないか?
ただ個人的には、やっぱり委託販売の手数料は、割高感があると思います。
先ほど、ボクが高校生時代に、スニーカーや裏原ファッションの転売をしていた話をしました。
委託販売をよく使っていましたが、手数料は5〜14%でした。これが買取店だと、大体売値の50%くらいが買取価格の相場でした。
売上の50%を持っていくというのは、本来なら買い取りでも良いマージンです。
それだけの高いマージンをとっておきながら、自分たちはリスクを抱えない委託販売。うーんって感じするよ
前述の通り、販売手数料はマーケティング業務の代行コストです。「それだけ持っていくんなら、それなりの仕事してくれるんだろうな?」という話になってきます。
ちなみに、アート作品を売るギャラリーも委託販売です。やはり販売手数料は50%ほど持っていかれますが、高値を払ってくれるお客さんを集めてくれるので、あながち悪い取引ではありません。
金払いの良い客を連れてきて、高値でバンバン売ってくれるなら、売上の半分くれてやっても良いかもしれません。しかし、ただ作品を置いてもらう程度で、売上の半分持っていくのはどうですかねぇ…。
悪い言い方をすれば、総じてマーケティングが苦手なハンドメイド作家は、委託業者に足元を見られているとさえ思います。
全ての委託業者がそうだとは言いませんが、作家のやりがいを搾取して、良い「カモ」にしている面もなくはないですよ?
Oh…そうは思いたくないけどね
委託販売がメイン収益源にならない理由
委託販売だけで、メシを食っていけるかというと、かなり厳しいのが実情です。
「現実的な数字」を使って考えてみましょう。
制作のキャパシティ
- 「1日2個」、作品を作れるとしましょう。
- 週休2日として、稼働できるのは「月20日」です。
- 1ヶ月で作れる作品数は、「1日2個×20日=40個」となります。
値付け
- 作品1個の売価は、「@10,000円」とします。
- 原材料費は、1個あたり「@2,500円」としましょう。
- そのまま売れば、粗利は「@7,500円」です。
ここで、委託販売の手数料を差っ引いてみましょう。
委託販売だと…
- 販売手数料「50%」とすると、作品1個あたり「@5,000円」差っ引かれます。
- 作品1個あたりの粗利は、「@2,500円」になります。
- 40個全て完売として、手残りは「2,500円×40個=10万円」です。
この残った「10万円」からさらに、会計ソフト代とか、移動費用とか、諸経費が差っ引かれていきます。
正味手元に残るのは、ざっと「月8〜9万円」といったところでしょう。
フルタイムで働いて、単価1万円の作品を月40個売って、手元に残るのは週3パート代くらい。旦那さんの扶養内で働くパート主婦と同じくらいですね。
まぁ、これが委託販売の現実だよね。むしろ、委託でこれだけ売れたら、偏差値70くらい行ってるよ
ぜひ、あなたの環境で計算してみてほしい。おそらく、アルバイトより稼げる結果にはならないと思うよ
委託販売だけで生活できる作品は限られる
委託販売だけで食っていける作家は、かなり絞られます。
委託販売で食っていける作家は?
- 高単価で利益率がべらぼうに高い
- 量産できる
単価が3万円とかで、粗利率が90%とかだったら、委託販売でも食っていけるかもしれませんね。しかし、あまり現実感がありません。
金太郎飴のように量産できる作風なら、数の力で押せるかもしれませんね。
ここでの「金太郎飴」は、悪口の意味ではありません。海苔巻きのように、「事実上1回仕込むだけで、10個20個と作品が作れる」という意味です。
ある種のアクセサリーや、イラストをプリントする類の作品であれば、中単価の作品を量産できます。
逆に言えば、「現実的に委託販売で食っていけるのは、量産できる作家くらいしかいない」ということです。
わたしのお花の作品みたいに、1つ1つ作ってくしかない作風だと、委託販売じゃ稼げないのよね
委託販売は「プロモーション」と心得よ
では、多くのハンドメイド作家にとって、委託販売は意味がないのでしょうか?避けた方が良いのでしょうか?
そうではありません。
こう考えましょう。「委託販売は、一種のプロモーションである」と。
ポップアップストアも同じです。ショバ代とスタッフの人件費を払ったら、お金はほぼ手元に残りません。
ポップアップをやる目的は、多くのお客さんに知ってもらうきっかけ作りのためです。マーケティングっぽく言えば、新規顧客のインプレッションを稼ぐためです。
つまり、ポップアップというのは、出稼ぎではなく、プロモーションなんだよね
委託販売も同じ。あくまで、新しいお客さんの目に触れる機会として利用するべきでしょう。ここは、稼ぎに行くところではないのです。
次回購入につながる導線も用意できればベスト
委託販売は、あなたのブランドや作品を知ってもらうきっかけです。
できることなら、知ってもらったあとは、手数料の低い直販サイトから買って欲しいものですね。
作品のパッケージなどに、SNSアカウントへのQRコードを印刷しておけば、気に入ったお客さんは見に来てくれるでしょう。
そして、SNSアカウントには直販サイトのリンクがあるので、次は直接あなたかのネットショップから買ってくれるかもしれません。
したたかに行こうぜ!
ただし、あからさまな誘導は、委託販売店との利益相反になります。直販サイトへの直リンクは、避けた方が無難でしょうね。
この辺りは、委託販売店の方針にも寄るところ。ぜひ規約等をチェックした上で、上手に導線を仕込んでみてください。
委託販売先はどうやって見つけるのか?
とまぁ、特別やらなくても良いかなという委託販売。ただ、酸いも甘いも理解した上で、それでも「委託販売をやってみたい!」と言うなら、もちろん応援します。
では、委託先はどうやって探せば良いのでしょうか?
大きく、次の4つの方法があります。
委託先の探し方
- ネットで探す
- スカウトされる
- 知り合いの伝手で置かせてもらう
- 相性の良い店を探して突撃する
それぞれ見ていきましょう。
ネットで探す
1番簡単なのは、ネットで探す方法。
「ハンドメイド 委託 地域名」で、Google検索すれば委託先候補が出てきます。
同時に、都心であれば、意外と委託屋さんが多いことに気が付くでしょう。
スカウトされる
次に多いのが、スカウトされるパターンです。
SNSか、イベント出店時に、向こうから声をかけてもらう格好です。
そう聞くと、「よほどすごい作家じゃないと、声がかからないのでは?」と思われるかもしれませんね。でも、全然そんなことありません。
まず、現時点で人気作家である必要は、全くありません。かつ、超絶技巧の作家じゃなきゃ声がかからないということもありません。
わたしもこのパターン!イベントで声かけられたよ!
知り合いの伝手で置かせてもらう
もし知り合いがお店をやっていれば、そこに作品を置かせてくれるように交渉することもできます。
商店街や地域のお店は、横のつながりでパンフレットを相互に置いていたりしますよね。あのイメージです。その延長で、作品も置いてもらうようお願いするわけですね。
大企業が相手だとちょっと厳しいですが、数店舗程度の小企業や個人のお店なら、話を聞いてくれる余地は十分にあるでしょう。
相性の良い店を探して突撃する
正直なところ、あなたにとってベストな委託先は、そう多くはありません。
あなたの作品と親和性があり、かつあなたのターゲットが集まるようなお店です。
例えば、髪飾りを作っている作家さんなら、成人式が書き入れ時です。着物のレンタル屋さんや、写真館などが、ベストの委託先になるでしょう。
しかし、そんなドンピシャなお店が、たまたまハンドメイド作品の委託販売をしている、なんて奇跡は普通ありません。
あなたの方から「置かせてください!」と提案するしかないでしょう。
もちろん勇気は入りますし、断られる覚悟も必要です。しかし、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」です。突撃提案が、1番効果のある委託先の開拓方法でしょう。
ここまでやる作家なんているんかな?
滅多にいないっしょ。そこまでするなら、ネットで売る方が楽だしね
ただ、どうしても委託で売りたいなら、突撃提案がベストだと思うよ
突撃提案のコツ
ボクは元営業です。パートナー企業開拓も散々やってきました。勇気を出して突撃する人のために、コツをお教えしましょう。
大原則として提案は、相手の利益を第一に思ってやらねば、まず成功しません。
「この提案は、あなたにこれだけのメリットがあります!ついでにわたしも、少しおこぼれに預からせていただきますね」
というスタンスで臨んでください。
ところで先方のお店は、何かしらの本業でビジネスが回っています。ハンドメイド作品の委託料で目を輝かせることは、基本ないと思ってください。
先方が「おっ、その話悪くないな」と感じるのは、本業に対するシナジーです。「あなたの作品を取り扱うことで、本業が儲かる」というストーリーが何より効きます。
先ほど例に出した、「髪飾り」を「着物のレンタル屋さん」に提案するシーンで考えてみましょう。
最近の若い子は、伝統的な和柄じゃなくて、モダンな柄の振袖を選ぶ傾向がある(としましょう)。実際に、レンタルのラインナップには、モダンな柄もある。
しかし髪飾りはというと、伝統的な和柄に合うものしかない。これでは、モダンな雰囲気を求めるお客さんを、取り逃してしまう可能性がある。
わたしが作っている髪飾りは、モダンな柄の振袖に映えるようにデザインしている。実際に、成人式用に買っていくお客さんがほとんど。かつ評価も上々。
振袖を見にきたお客さんに、一緒に髪飾りを合わせてみれば、きっと気に入る。気に入ってもらえれば、その場で御社を選んでくれるお客さんが増えるのでは?
1分で創作したので雑ではありますが、大体こんな感じのストーリーですね。
こうやってWin-Winのストーリーを作るのが、提案の1番大きな仕事であり、また1番頭を使うところでもあるのです。
委託先を選ぶ3つのポイント
さて、委託先を選ぶにあたっての基準はあるのでしょうか?
次の基準を参考にしてください。
良い委託先の条件
- ターゲットを集客する能力があるか?
- 箔がつく売り場か?
- 自分の作品単価と、お店の平均単価は見合っているか?
基本的には、全てを満たす委託先を選びましょう。
ターゲットを集客する能力があるか?
その委託販売のお店は、「あなたの作品のターゲットとなるお客さんが集まるのか?」を確認してください。
この条件を満たさなければ、なんの意味もありません。
- そのお店には、あなたの作品を買ってくれそうな客層が来ているか?
- または、SNSで、買ってくれそうな客層からフォローされているか?
をチェックするのです。
かつ、あなた個人では集客が難しい層を集められるお店が望ましいです。
ちょっと悪口っぽくなってしまうのですが、レンタルボックス系の委託販売店に来るお客さんは、minneやCreemaを覗きにくる客層と被っています。
あえて委託屋さんに頼まなくても、自力で集客した方がコスパ良いなと思ってしまいますね…。
箔がつく売り場か?
「箔がつく売り場か?」とは、言い換えれば、「そのお店で取り扱ってもらうことが、あなたのブランドイメージを強化してくれるか?」です。
例えば、「百貨店」で扱ってもらうことは、ブランドイメージを強化してくれます。
百貨店は、質の良いブランドだけを取り揃えています。そこにあなたのブランドも加わるのですから、第三者的に見て、あなたのブランドも質が高い見られます。
センスの良い「カフェ」や「アパレルショップ」などに置いてもらえば、あなたの作品もセンス良く映ります。
「イメージアップになる売り場か?」を問うてみて!
自分の作品単価と、お店の平均単価は見合っているか?
どんなビジネスであっても、商品単価と客層は比例します。「大衆居酒屋」と「高級レストラン」では、客層が違いますよね。
もしあなたが、単価「1万円」の作品を売っているなら、平均単価「3,000円」のお店に置いても売れません。そのお店に来るお客さんは、「3,000円」の作品を求めているからです。
大半のハンドメイド作家が、安すぎる値付けをしているせいで、ハンドメイドの委託販売もまた、安い価格帯に落ち着きがちです。
ちなみに、ウチの奥さんが以前にやっていた委託販売店では、「2,500円」くらいが売れ筋という話でした。販売手数料を差っ引かれたら、何にも残りません。
あなたの作品の単価に合った、相応のグレードのお店に委託販売をお願いしましょう。
サイゼリアに、1万円のワインを売らせるようなマネはしないで!
専業作家の奥さんの感想
最後に、実際に委託販売をやってみて、卒業して行ったウチの奥さんに、話を聞いてみました。
奥さんの作品と委託販売の条件
- 作品:ドライフラワー、プリザーブドフラワー、造花
- 委託販売場所:ショッピングモールや百貨店
- 販売手数料:55%
現役ハンドメイド作家のリアルな話なので、きっと参考になると思います。
きっかけはスカウト
どんな経緯で、委託販売を始めることになったんだっけ?
イベントで、委託屋さんに声をかけられて!
奥さんの委託販売のきっかけは、東京ビッグサイトのハンドメイドイベントに出店したときでした。まだネットで月1万円売れるくらいの、駆け出し作家の頃です。
とある委託屋さんから声をかけてもらい、名刺交換をしました。程なくして、名刺に書いてあったアドレスへ「委託販売してみませんか?」と打診をいただきました。
詳しい話はWEB会議でってことで、そのまま話す流れに。
販売場所は、主にショッピングモール内の展示スペースで、たまに百貨店もあり。手数料55%が、「たっけえなぁ」と思ったくらいで、他はまぁそうだよねって感じ。
一応、注意事項としては、
- 往復の送料は、作家側持ち
- 紛失や破損、盗難については、責任を負わない
ってところくらいです。
書類に一筆したら委託契約スタート。ただし契約しても、先方に作品を送らなければ、何も起こりません。
いつでも委託販売できるようにと、とりあえず契約を進めました。
手間は確かにかからない
実際に委託販売を始めてみてどうだった?
ホントに送るだけだから、楽ではあるよね
その委託屋さんは、常設店舗ではなく、いろんな場所で2〜3週間程度の臨時店舗を開くタイプのやり方でした。
委託契約をすると、直近のイベント案内が来ます。
一応お店の大きさは限られているので、必ず作品を置いてもらえるわけではありません。ただ、逼迫している感じはないので、希望すれば出品はできるように感じました。
逆に、「ちょっとスペースに空きがあるから、出品しませんか?」というお誘いが来るときもあります。
出品することになったら、作品をダンボールに詰めて、指定の住所に送るだけです。あとは、向こうで勝手に売ってくれます。
単価の安い作品しか売れなかった
で、実際に売れたのかな?
んー、0ってことはなかったけど、あんま足しにはならなかったね
2〜3週間の出品で、5,6個売れるくらいでした。
しかも、単価「2,000円」程度の安い作品だけ。当時の奥さんのメイン作品は、単価「8,800円」でしたが、そちらは全然動きませんでした。
というのも、全体的に低単価の作家さんが多く、「1,000〜3,000円」の作品がほとんど。「5,000円」を超える作品は、滅多にない売り場だったんですね。
やっぱり手数料が高すぎる
実際に、手元に残った金額はどのくらいだったんだろう?
やっぱ手数料が高くてねぇ。材料費になるかならんかくらいよ
「2,000円」の作品が「5個」売れて、売上は「1万円」くらいです。
そこから「55%」の手数料を差っ引かれて、振り込まれるのは「4,500円」。しかし、往復の送料はこちらが負担していますから、正味の手残りは「2,500円」くらいです。
これじゃ、材料費も回収できているか怪しいレベルですね…。
先方とのやり取りに不満も
「低単価」と「手数料の高さ」以外にも、気になるところはあった?
うーん、ちょっとやり取りでストレスはあったかなぁ
大きなトラブルはありませんでしたが、売れずに残った作品が、なかなか帰ってこないことがありました。
担当者に連絡を入れても、なかなか返事がなく、ちょっとヤキモキしました。結局、後日無事に帰ってはきましたが。
確かに販売はマルっと任せられますが、そういったやり取りとか、イマイチ見えない部分もあるので、ノーストレスという感じでもなかったです。
気になるなら一度やってみては?
委託販売に興味がある人に向けて、アドバイスはあるかい?
とりあえずやってみて判断でいいと思う!
奥さんの場合は、正直あまり相性の良くない委託屋さんに当たってしまいました。先方の名誉のために言うと、決して悪意のある業者ではありませんでしたが。
ウチはこれに懲りて、「もう委託はいっか」となってしまいましたが、ちゃんと相性の良い委託屋さんを選べば、商売になったかもしれません。
ただいずれにしても、一度経験してみないと、自分に合っているのか判断できません。
幸いにも、委託販売すること自体には、大した出費はかかりません。リスクはほぼないと言って良いでしょう。嫌な思いをすることはあるかもしれませんが、痛手を負うことはありません。
どんなもんか、1度やってみても良いのではないでしょうか?やった上で、合えば続ければ良いし、合わなければやめれば良いだけです。
あと、売れない在庫の捌き先として、委託販売に回すのもアリ。
ブランドの価値を下げたくないので、自分のネットショップでは安売りしたくありません。そこで、委託販売へ安く回して、材料費だけ回収できれば御の字というわけです。
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