ハンドメイド販売のひとつやり方に、「オーダーメイド」があります。
お客さんに仕様を自由に選んでもらい、世界に1つだけの作品を届ける手法です。
この記事は、「オーダーメイドでの販売って、美味しいの?やる価値があるの?」という作家さんの素朴な疑問に答えるものです。
オーダーメイド販売には、「良い面」と「悪い面」があります。
先に言っておくと、「オーダーメイドはやって全然OKだけど、やらなくて済むならやらないほうが良い」がボクの意見です。
あ、そういう考えなんだ
どちらかと言えばね
それに、「いつかは卒業するのがオーダーメイド」とも思ってる
この記事を読んで、
- オーダーメイド販売に進む人
- 引き返してやっぱり既製品で勝負する人
の両方が出てくるでしょう。
両論あって良いと思います。ぜひこの記事を判断材料として使ってください。
もしオーダーメイド販売をやる場合は、トラブルを避けるために絶対に守ってほしいルールがあります。
オーダーメイドへ進む人のための道標として書いておきます。ぜひ参考にしてください。
オーダーメイドのメリット
最初に、オーダーメイドで作品を販売することの「メリット」「デメリット」からお伝えしていきましょう。
まずは、「メリット」の方から。
お客さんに選ばれやすい
オーダーメイドは、お客さん自身が商品をカスタマイズできる販売体系です。既製品のように、売り手が一方的に用意した選択肢の中から選ばせるのではありません。
お客さんは、より自分の「欲しい!」と思える商品に辿り着きやすくなるため、オーダーメイドを選ぶ動機があります。
ボク自身、過去に「スーツ、ジャケット、ワイシャツ」「スニーカー」をオーダーメイドで作ったことがあります。とっても満足度の高い買い物でした。
ボクは買ったことはないですが、注文住宅を買った人は、オーダーメイドで作っていますね。
「オーダーメイド」という選択肢があるだけで、一定のお客さんがあなたから買いたいと思います。
「オーダーメイド」を提供していることが、選ばれる理由になるということです。
単価を上げられる
「お客さんの要望によりフィットする」ということは、「お客さんにより大きな価値を与えられる」ということでもあります。
より大きな価値をもたらす商品に、より大きな金額を払うのが、経済の道理です。オーダーメイドは、単価を上げやすい販売形態でもあります。
なお、あなたのビジネスリテラシーを上げるために、1つレクチャーです。
オーダーメイドは、「より手間がかかるから高い」のではありません。「より大きな満足を与えられるから高い」のです。
マニュアルを変えて丁寧に作った「マクドナルドのハンバーガー」に、+αを支払うお客さんがいるでしょうか?
いないでしょうね。要らぬ手間に金を払う客はいません。
お客さんが+αの代金を支払うとしたら、
「より美味しい」「よりボリュームがある」「よりヘルシー」「より映える」「よりデートに使える」「より家から近い」
といった、+αの「満足」に対してです。
モノの値段は、コストの積み上げでは決まりません。
「満足」「価値」「ベネフィット」など、呼び方は色々ありますが、意味はどれも同じ。お客さんが得る満足度の高さによって、「いくら払っても良いか」が決まるのです。
(補足)少し突っ込んだ経済学の話
ただのお勉強の話で、知らなくても何ら問題ない話です。興味ない人は閉じちゃってください。
———
あなたは、昔習った「需要曲線」と「供給曲線」を思い出したかもしれません。
「×(バッテン)」の形のグラフが交わる点で、市場価格が決まるという話です。「需要」と「供給」の両方によって、値段が決まるはずですね。
しかしこの記事では、「お客さんの満足度」で値段が変わると言いました。これは、「お客さんの需要だけで値段が決まる」と言っているに等しいです。
なぜ、「供給側(売り手)」の都合は無視されているのか?
それは、ハンドメイドが「供給」を増やせない販売形態だからです。増えた「需要」に合わせて増産するのが難しい、特殊なビジネスだからですね。
供給量が一定の場合、「供給曲線」はただの縦棒になります。
こうなると、売り手の都合は、市場価格に全く影響しなくなります。もっぱら、需要の増減だけで、市場価格が決まることになります。
オーダーメイドのデメリット
では、オーダーメイドにすることの「デメリット」は何でしょうか?
続けて見ていきましょう。
コミュケーションコストが高くつく
既製品と違い、オーダーメイドはお客さんとのやり取りが発生します。
1往復でOKでは済まないでしょうから、それなりの人件費になってしまうでしょう。
ただオーダーの受け方をスマートにすれば、やり取りの工数はグッと減らせるよ
これは後ほど解説するね
修正依頼が来ると面倒
既製品であれば、「修正」という概念が存在しません。気に入れば買うし、気に入らなければ買わないだけです。
しかしオーダーで作ると、「思っていたのと違う」「もっと〇〇にしてほしい」というような、修正依頼が入り込む余地が出てきます。
修正依頼の対応は、なかなかに面倒。
何回も修正させられると、倍の額をもらっても割に合わないよ
トラブルの温床になりやすい
修正依頼と似た話ですが、完成品がない状態で取引が走り始めるので、後からトラブルが起きやすいのも特徴です。
「思い通りにならなかったからキャンセル」ということもあるでしょう。もっとタチが悪いと、「作っている間に熱が冷めたからキャンセル」ということも考えられます。
やらなくて済むならやらない方が良い?
オーダーメイドには、「メリット」もありますが、「デメリット」も相応にあります。
両者を天秤にかけると、「デメリット」の方がいくぶん大きいかなという印象です。
というわけで、オーダーを受けずに既製品だけで食べていけるなら、作家としてはその方が幸せだと思います。
ただし、オーダーメイドの「デメリット」を限りなく小さくする手立てはあります。その辺りの話をしていきましょう。
フルオーダーはやめておけ
まず、お客さんに全ての仕様を委ねる「フルオーダー」は、避けるべきです。
オーダーメイドの負の部分が、フルに降りかかってくるからです。
- やり取りの量は膨大で、
- 修正対応の嵐で、
- クレームの可能性もグンと上がります。
戦国時代や江戸時代に、大名に雇われた「御用絵師」という人たちがいました。構図としては、大名はお客さんで、絵師は作家です。
しかし、大名は絵師から「絵を買っている」わけではなく、「その絵師を雇っている」格好です。
「お前の生活費は全て工面するから、俺のために絵を描け!」という契約をしているわけですね。だから言いたい放題も許されるのです。
もしお客さんが、あなたの1ヶ月分の生活費+材料費を払ってくれるなら、1ヶ月まるまるわがままに付き合っても良いでしょう。
普通のハンドメイド作家じゃ、そんな金額の取引にはならんなぁ
だからフルオーダーなど受けるべきではない
作家の「サンクチュアリ(聖域)」に踏み入らせるな
とはいえ、どんな形であれ、何でもかんでもお客さんに委ねる「純度100%のオーダーメイド」はあり得ません。
そもそも、お客さんは素人ですよね?
どんなに目が肥えているお客さんでも、
- 自分で「ネイルチップ」を作るわけじゃありませんし、
- 自分で「花」を生けるわけじゃありませんし、
- 自分で「刺繍」を刺すわけでもありません。
審美眼はあるかもしれませんが、自分で作れるわけではありません。
作れない人が、プロの技術者(ここでは「作家」でなく、あえて「技術者」と呼ぶ)に対して、1から10まで指図などできるのでしょうか?
ウチの奥さんが、花屋に務めている時代にフルオーダーも受けていたそうです。口うるさいお客さんの指示通りに作ると、どうしても珍妙な仕上がりになるので、随分苦労したと言っていました。
そうそう、だからフルオーダーってやりたくないのよ!
その技法には、その技法ならではのルールやセオリーがあります。無視をすれば、作品がグチャグチャになってしまいます。
高級料亭が、コース料理の中身に口出しさせるでしょうか?
選ばせるとしたら、「メインは肉か魚か?」とか、「嫌いな食べ物やアレルギーはないか?」とか、そのくらいでしょう。
素人が好みで、調理方法や出汁にまで口出しされてしまったら、コース全体の調和は崩壊してしまいます。
作家には、誰にも口出しさせない「サンクチュアリ(聖域)」があってしかるべきです。「ここは黙って、わたしに任せてもらおう!」という領域があって然るべきです。
誇りを持つプロだからこそ、完全なフルオーダーは受けるべきではない!
やるならパターンオーダー
実際のところ、ハンドメイドでオーダーメイドを受けるなら、「パターンオーダー」でしょう。「セミオーダー」も同じような意味です。
パターンオーダーとは?
- お客さんがカスタマイズできる箇所を限定する
- カスタマイズ内容は選択制にする
ポイントは、「選択式」によるカスタマイズだけ受け付けること。「自由記述」によるカスタマイズを受けないことです。
ボクがオーダーでワイシャツを作った際も、やはりパターンオーダーでした。
「サイズ」「生地」「襟の形」「袖口の形」「ボタン」(他にも選べた箇所はあった気がするが)を、それぞれ用意されている選択肢の中から選ぶ格好でした。
そもそも素人がワイシャツの作り方を、0から指示なんてできません。選択肢を選んでカスタマイズするパターンオーダーの方が、よほどありがたい。
パターンオーダーであれば、オーダーメイドの「メリット」を残しつつ、「デメリット」の大部分をカットできるのです。
選ばせるだけなので、延々と続くメッセージのラリーを回避できます。また曖昧な仕様が出来にくい分、クレームにも繋がりづらくなります。
「一蘭」を参考に
ラーメンチェーンの「一蘭」も、典型的なパターンオーダーですね。
一蘭と言えば、「自分好みにカスタマイズできるラーメン」として、国内のみならず、海外でも有名ですね。
選べる範囲も、選べる選択肢も、あらかじめ決められています。あくまで、お店側が許す、限られた範囲でのカスタマイズです。
よくよく選択肢を見てみると、そこまで突飛な項目はありません。
それでもお客さんにとって、一蘭のラーメンは、楽しく、美味しく、満足度の高い体験になっているわけです。
一蘭のオーダーシートは、ハンドメイドのパターンオーダーの参考になりますね。
関係ないけどさ、ラーメン好きとしては、一蘭はどういう評価なの?
普通に美味しいと思うよ。深夜で一蘭しか空いてなければ喜んで行く。ただ最近は値段が高いなぁ…ってくらい
【鉄則】オーダー販売の7つのルール
オススメする「パターンオーダー」の前提(仮にフルオーダーであってもだが)で、絶対に守ってほしいオーダー販売のルールを解説しましょう。
オーダー販売のルール
- 作品名に「オーダーメイド」を入れる
- 値段は高めに設定する
- オプションは明朗会計にする
- 余裕を持った納期を設定する
- 修正依頼の上限回数を決める
- イレギュラーな要望は勇気を持って断る
- 決済確認後に作業を開始する
ポイントは、「手綱は常に、作家側であるあなたが握り、お客さんに主導権を渡さない」ということ。
ルール1. 作品名に「オーダーメイド」を入れる
サムネイル画像だけでは、オーダーなのか、既製品なのかが判別しづらいですね。
オーダー可能な作品を探している人のために、作品名に「オーダーメイド」の文字を入れておきましょう。
プラットフォーム内やGoogleの検索で、「〇〇(商品ジャンル) オーダーメイド」という検索キーワードにも引っ掛かるようになります。
加えて、minneやCreemaであれば、「#オーダーメイド」のハッシュタグもつけておくと良いでしょう。
ルール2. 値段は高めに設定する
オーダー作品(あくまでパターンオーダー)の値段は、既製品の1.3〜1.5倍程度がちょうど良いかと思います。
既製品が1万円なら、オーダーメイドは13,000〜15,000円のイメージですね。
お客さんに融通を効かせるために、作家側がいくらかの面倒を背負い込むわけですから、当然+αの金額をいただいてしかるべきです。
ルール3. オプションは明朗会計にする
都度の個別見積りは事故の元。なるべく避けてください。
オプションの選択によって料金を変える場合は、「何をしたら、いくら上がるのか?」が一目瞭然である必要があるということです。
わかりやすく言えば、「価格表を作ろう」という話。これが明朗会計というもの。
また、冷静に考えてみてください。
- 「時価」と書いてあるお寿司屋さん
- 「追加費用は現地で判断」と書いてあるエアコン取り付け業者
こういうお店や業者は、ちょっと怖いですよね。
いやー、入るに勇気がいるよね
ボクなら後退りしちゃう
表にキッチリ価格表が提示されているお店の方が、安心して購入できます。
「CVR(成約率)」の面でも、きっちり価格表を用意していた方が有利です。ぜひ覚えておいてください。
ルール4. 余裕を持った納期を設定する
言わずもがなですが、既製品よりも長めの納期を指定しましょう。
ここでの納期とは、「決済」+「カスタマイズ項目のヒアリング」が完了してから、発送までの日数です。
オーダー制作にかかる時間は様々でしょうから、一概に何営業日とは言えません。「この日数なら、注文が重なっても絶対に納期は割れない」ラインで決めてください。
既製品の場合は、「3営業日以内に発送」ってところでしょうか。
必ずバッファ(≒余裕)込みの納期にしてほしいので、仮にオーダー制作自体は1日で完了するとしても、「7営業日」はもらいましょう。
ルール5. 修正依頼の上限回数を決める
パターンオーダーの場合、「修正」という概念が存在しないケースもあると思います。その場合は、本ルールは飛ばして構いません。
しかし中には、「こんな仕上がりになりました!いかがでしょう?」という確認ステップが入ってしまうケースもあるでしょう。
ウチの奥さんはお花の作家です。お花は自然のものですし、細かいお花をいくつも組み合わせます。パターンオーダーにしても、ヒアリング段階ではカッチリと仕様を決めきれません。
このような環境では、作り終わったら即発送というわけもいかないでしょう。どうしても、一度お客さんに、画像添付で仕上がりを見てもらうことになります。
見てもらう以上は、「ちょっと、ここ直して」の余地が生まれてしまいます。
美容院で、最後の「いかがですか?」と同じ感覚よ
坊主なんだから、美容院行かないだろ
ここで何度も手直しを要求されてしまうと、全く割に合わない商売になってしまうでしょう。ちょっとやってられません。
そこであらかじめ、「修正は○回まで承ります」と宣言しておくのです。精々が、1回か2回でしょうね。
このやり方は、デザイナーさんがよく使う手法です。そっくりそのまま、ハンドメイドにも応用できますね。
ルール6. イレギュラーな要望は勇気を持って断る
もし、オーダー可能な選択項目を超えて、仕様を変えてほしいお客さんが来たらどうするべきでしょうか?
イレギュラー対応を受けるか否かに、絶対的な正解はありません。売り手のビジネス判断です。
ただ、ほとんどの場合では、断るのが正解でしょうね。
- ちょっと多めにお金をもらえるから
- いま割と手が空いているから
と、誘惑に靡いてしまう気持ちは理解できます。
しかし、ここで問うべきは、「次も、その次も、同じような依頼が来たら受けるか?」です。
もしそのイレギューな要求が、そこまで難しいものではなく、新たにメニューに加えても良いレベルであれば、ファーストユーザーとして受け付けてもOKです。
しかし、「こんな面倒な依頼を受けるのは、これっきりだろうな」と思うなら、勇気を持って断るべき。無理を押しても、1回多めにお金をもらえるだけ。
次につながらない安請け合いしないことだ
ルール7. 決済確認後に作業を開始する
制作は、絶対に決済が終わってから。お客さんが先に支払ってからスタートです。
お客さんの感覚として、お金を払うまでは、買ったことにはなりません。契約・取引成立とは思いません(企業間取引だとそんなことないんですけどね)。
- 仕上がりが気に入らなければキャンセル
- あるいは、待っている間に気が変わったからキャンセル
と言われる余地を残すことになります。代金回収ができないのは、ビジネスとしてはあまりに致命的。
またお客さんは、「気に入るまで直して!じゃなきゃお金は払わん」と言うこともできます。完全にカスハラですが、法的手段に訴えでもしない限り、どうにもなりません。
作家側が屈して、無制限に修正を繰り返すハメになるでしょう。
お金を払うタイミングが「先か後か」は、ただの順番ではありません。「あなたが主導権を握って取引を進められるか否か」がかかっている重大な決定と思ってください。
どんな事情があろうと、「お金を払ってもらうまでは、作業は開始しない」を徹底しよう!
【攻め】せっかく受けるならクロスセルも狙え
オーダーメイドの特徴として、お客さんとの「インタラクション(相互のやり取り)」が、余計に発生します。
「工数が増える」という意味ではデメリットでしょう。
しかし一方で、お客さんとの接点が増えるので、それだけセールスを仕掛けるチャンスが多いとも言えます。
ここで狙えるのが、「クロスセル」です。関連する別の商品も一緒にオススメして、客単価を上げるマーケティング手法です。
「関連する商品」とは、「同じシーン(あるいは目的)で、一緒に使う商品」と考えてください。
なんか難しそうな…。営業経験者じゃなくてもできるの?
大丈夫。大層な技術はいらない。誰も今すぐできる内容だよ
キーワードは「チャンスは今だけ」
クロスセルが効き目抜群なシーンは、「セットで買うなら、チャンスは今しかないよ」です。「今しかない」から、後回しせずに、いま買ってくれるのです。
ボクは引越しのときに、
「エアコンクリーニングは、いまがチャンスですよ。中まで分解できるのは、引越しのタイミングくらいですから」
というクロスセルにまんまとハマりました。
注文したことを後悔しているわけじゃないですよ。ただ、あまりに鮮やかにシュートを決められたので、感心してしまったのです。
と言っても、巧なセールストークは必要ありません。
なぜなら、オーダーメイド販売は、「今しかない」理由をつけやすく、クロスセルが仕掛けやすいからです。
「3ステップ」でクロスセルを決めよう!
オーダーメイドでの、「クロスセル」セールスの手順を説明します。
次の「3ステップ」で案内するだけでOKです。
ポイントは、押さないこと。
ここでは、「木材で家具を作る作家」を例にトークを考えてみるね
ステップ1. あくまでご案内
まず最初に、
これは一応ご案内なんですが、
と、前置きします。
そう。これは押し売りではなく、あくまでご案内です。
うんうん、それで?
ステップ2. 今だけの理由
ここが肝。続けて、
ダイニングテーブルと一緒に、おイスのオーダーも受付できます。
一緒にご注文いただければ、
- 実物が手元にある状態で作れるので、確実にジャストフィットのサイズでご提供できます。別々でご依頼の場合、実物を見ない状態なので、一緒に使ってみたら「どこかが引っかかる」などの可能性も0ではありません。
- 同じ木材からお作りできるので、同じテイストでイスもご用意できます。
- 別々でご発注いただくよりも早い納期でお届けできます。
- セットで配送させていただきます。
もしご入用でしたら、いまがチャンスではあります。
と、今すぐの理由を添えます。
あくまでも、「案内」のスタンスを崩さないように。「いかがですか?」とか「オススメです!」とか、前のめりなフレーズは使わないでください。
前のめりなフレーズは、お客さんを警戒させるから、成約が遠のくんだ
ステップ3. クロージング
最後に、
ご不要であれば、テーブルのみ制作させていただきます。もしイスもご入用でしたら、このタイミングでお申し付けください。
と締めくくりましょう。
これ以上、押す必要はありません。
え?こんなソフトタッチで買ってもらえるの?
むしろセールスは、引く方が売れるんだよ。グイグイ行っちゃダメ
このセールストークで、何割かのお客さんは落とせます。客単価は、着実に引き上げられるでしょう。「やり得」、もとい「言い得」です。
オーダーメイドは、作家側に、余計に負荷がかかる販売方法です。しかし、まとめて何個も買ってもらえるなら、工数に見合うリターンは十分にあるでしょう。
ヒアリング方法について
オーダーメイドを受ける際は、選べる範囲と選択肢を限定した「パターンオーダー」をオススメしました。
「一蘭」のオーダーシートのように、複数項目をお客さんに指定してもらうわけですが、毎回メッセージ上でのやり取りは面倒ですよね。
販売プラットフォーム側の機能で、オプション項目を設定できる場合もあります。これで済むなら良いのですが、ちょっと複雑な指定は難しいかもしれません。
そこで使えるのが、次の「ツール」を使用したヒアリングです。
Googleフォームをヒアリングシートにする
無料で使える「Googleフォーム」は、ヒアリングシートにピッタリです。
- 択一選択も、
- 複数選択も、
- 自由記述も、
およそ考えられる、すべての設問形式が使用可能です。
オーダーのヒアリングは、Googleフォーム1本で完了します。
1度フォームを作っておけば、メッセージでリンクを送り、「これに回答お願いします♪」と添えるだけ。やり取りの手間をガッツリ削減できます。
これ、めっちゃ楽やーん♪
ビデオ通話でヒアリング
こちらはより手が込んだ手法です。ビデオ会議で、直接会話しながらヒアリングをする方法もあります。
正直なところ、進んでお客さんと会話したくない作家さんも多いよね
うーん。こう言っちゃなんだけど、イケイケな性格じゃないからね
ただ、お客さんとの直の会話は、大きなメリットもあります。
世の企業は、お金を払ってでも、お客さんと会話を持とうとしています。その理由も知っておくと良いでしょう。
クロスセル成約の確度が上がる
直に話ができるのは、営業的にはチャンスです。
オーダーメイドは「クロスセル(関連商材のセット販売)」 の絶好の機会でしたね。先に解説した通り、巧なセールストークは必要ありません。ただ案内するだけです。
それでもやはり、直に話した方が、クロスセルの成約率は上がります。
というのも、「情報量」と「リアルタイム性」がセールスの成否を左右するからです。
- 「テキスト」より、「音声」
- 「音声」より、「動画(録画)」
- 「動画(録画)」より、「ライブコマース」
- 「ライブコマース」より、「ビデオ通話」
- 「ビデオ通話」より、「対面営業」
という順で、成約しやすくなります。
「ビデオ通話」は、WEB媒体でもっとも成功率の高いセールスができるのです。
繰り返しになりますが、「セールス」を意識する必要はありません。ビデオ通話で案内するだけで、関連商材が売れやすくなるとだけ覚えて貰えば大丈夫です。
マジか!?どっかでチャレンジしてみるか?
お客さんをもっと知れる
「売れる売れない」は脇に置いておいて、「お客さんを深く知ること」自体にも、大きな価値があります。
イベントでお客さんと会話したことがある作家さんなら、この意味がわかるでしょう。
お客さんは様々な反応を見せてくれます。
- すごく気になってるんですけど、我が家には少しサイズが大きいんですよね
- 小さい子供がいるから、割れる素材が気になって…
- あのカラーを見逃してから、ずっと再販を待っているんです!
- 「○○(提供していない商品ジャンル)」を作るは予定ありますか?
などなど。
金の卵を産むアイデアは、いつだってお客さんの中にあります。お客さんの直の反応は、まさに値千金の情報なのです。
テキストメッセージだけでは、得られる情報には限界がありますね。やはり、面と向かって話すことで、得られる情報は圧倒的に多いのです。
だから企業は、謝礼を払ってでもお客さんと話したがるのか!
自然な流れで、お客さんとタダで話ができるなんて、サイコーだね
やるなら有料ツールを使おう
ツールは、「Google Meet」か「Zoom」がオススメです。どちらもビデオ会議のド定番で、間違いない選択肢です。
個人的にはGoogleがオススメ。色んなツールがセットになってる「Google Workspace」を契約して、その一機能としてMeetを使うことになる
会話だけなら無料でできないこともないですが、無料だと録画ができません。あとで振り返れないので、ヒアリングに使うには適していませんね。
よってこちらは、原則有料ツールを使うことになります。
オーダーが面倒に感じる日が来たら?
オーダーメイド作戦が功を奏し、次々と作品が売れていきました。狙って売ったヒットは嬉しいですね。初めのうちは、気分は揚々だと思います。
しかし、一定数の作家さんは、途中から「またオーダーか。面倒くさいなぁ」と思うようになります。
人に言われたモノを作り続ける人生が、つまらなくなってしまうんですね。「もっと自分の創作性を全面に出して、自由にモノづくりがしたい」と思ってしまうのです。
これは「クリエーターの性(さが)」だから、しょうがないこと
「画家」になったつもりで聞いてください。
絵だけで生きていくとして、
- 「他人が描いてほしい絵」
- 「自分自身が描きたい絵」
では、どちらを描いていく人生が幸せでしょうか?
そりゃあ、自分が描きたい絵だろうなぁ
いつか来るであろう「オーダーメイドの憂鬱」にどう対処していけば良いかを語って、最後の締めくくりとしましょう。
ガツンと値上げする
オーダーメイド販売に需要があり、あなたの生活費を支えているとしたら、いきなり0にはできないでしょう。しかし、徐々にフェードアウトはさせたい。
まずは、値段を上げることです。オーダーメイドの値段を上げて、お客さんのオーダー数を減らすのです。
例えば、単価5万円のオーダー契約を「月4人限定」で受ける。それ以外は、既製品の販売としても良いでしょう。
オーダー依頼はクローズド案件とする
それでもオーダーの需要が旺盛なようなら、「クローズド案件」にしてしまうのも手。
今までは誰でも購入できる「オープン案件」でした。それを、特定のルートからやってきた人しか買えないようにクローズ化してしまうのです。
クローズド案件化の例
- 過去に購入履歴があるお客さんだけ
- 既存のお客さんからの紹介だけ
- イベントに来てくれたお客さんだけ
最終的にはオーダーメイドをやめる?
もうオーダーメイドに頼らなくても生活できるようなら、「オーダーメイドは卒業」ということになります。
この領域まで辿り着いたあなたは、自分の創作性を追求したい「アーティスト寄り」の作家になっているのかもしれません。
ただ人生は長いですから、また気が変わることもあるかもしれません。
「ただ作るのが好き」と考えが変わり、少ないお客さんを相手にオーダーを再開しても良いでしょう。求められるがまま、マイペースに制作を続ける人生も悪くありません。
ハンドメイド作家は自由な生き方です。どんな意識で取り組むかは、人それぞれ。オーダーメイドを受けるも受けないも、あなたの考え方次第です。
コメントを残す