「高品質の作品を作れ!」と、何度も言われてきましたね。ボクも何度も言っているかもしれません。
しかし、ここで解せないことが1つ。
「”品質が高い”って、具体的にどういうことなん?」と。そう、「品質」とは、とっても曖昧で、抽象的な言葉なんです。
- 「技術」が高ければ品質も高い
- 「素材」が良ければ品質も高い
と思われがちですが、必ずしもそうじゃなさそうです。
「素材さえ良ければ、高品質なのか?」と問われれば、答えは「No」でしょう。料理のできないボクが、高級食材を使ったところで、出来上がるのは生ゴミプレートです。
「品質」とは、技術や素材といった、どれか1つのパラメータの良し悪しだけでは決まりません。かといって、それらの掛け合わせで決まるものでもありません。
最高の素材と最高の技術でも、高品質な作品になるとは限りません。反対に、平凡な素材と平凡な技術でも、高品質な作品を作れないこともありません。
さて、困りましたね。「高品質な作品を作れ!」と言われるのに、「品質を判断する基準がないじゃないか!」と。
結局わからずじまいか!
それがあるんですよ。品質の高さを決める絶対の基準が。
この記事で、モノづくりの真髄をお伝えしましょう。モノづくりをしないボクが、モノづくりをするあなたに、その真髄を教えるのです。なんだか不思議な感じがしますね。
でも、関係ないんですよ。モノづくりだろうが、料理だろうが、映画だろうが、小説だろうが、全部同じ。品質を測る基準は、全部同じなんです。
では、始めていきましょう。モノづくりの真髄を知るためのレッスンを。極めて本質的で、実践的なレッスンを。
品質=満足度
引っ張ってもしょうがないので、答えを言ってしまいましょう。
「品質の高さ」は、イコール「満足度の高さ」です。
もちろん、お客さんの満足度ですよ。「最高品質」とは、「お客さんの満足度が最高に高い」という意味になります。
満足度…?それで、品質を測って良いのか…?
疑われているかもしれないので、証明してみようか?
あなたは、「サイゼリア」に行ったことがありますか?
あの安さで、まずまず美味しくて、あまり罪悪感のないメニューが多い。あなたが余程グルメで舌が肥えてない限りは、サイゼリアはなかなか満足度が高い選択肢です。
だとすれば、「サイゼリアは品質が高いですよね?」という問いに、「No」とは言えないでしょう。
確かに…
別の例を出しましょう。人間国宝レベルの水墨画家が、優雅な山水画を描いたトイレットペーパーがあったとします。筆に負けない紙なので、ちょっとゴワゴワしています。
あなたはこの芸術品のようなトイレットペーパーに、満足するでしょうか?
きっとしないですね。では、「このトイレットペーパーは品質が高いですか?」と聞かれて、「Yes」とは答えづらいはずです。
むむむ!これも確かにそうだな!
無意識のうちに、あやふやな「品質」を「満足度」に換算して考えているわけよ
「満足度」は「品質」の近似値である
「品質=満足度」というのは、少々乱暴な意見です。ちょっと言い過ぎました。
しかし、ほとんどのお客さんは、目の前にあるモノの「品質」を正確に測れません。よほど知識と経験と鋭い感覚がない限り、良し悪しの程度などわからないでしょう。
あなたも、昔からやってるTV番組「芸能人格付けチェック」を見たことがあるなら、イメージできると思います。素人は、品質の良し悪しを測る目を持っていないのです。
だから、「満足度」を、「品質」の近似値として使っているわけです。満足すれば、品質が高い。だから買おうということになるんですね
厳密には、「品質≒満足度」っていう思考回路になっているんだね
スキルも素材も大事だが、品質とイコールではない
もちろん、製作スキルや素材は、作品の品質と無関係ではありません。
しかし、決してイコールではありません。製作スキルが高いか低いかは、イコール品質ではありません。素材の良さも、イコール品質ではありません。
ただ、製作スキルや素材が優れている方が、お客さんの満足度も高くなりやすいという話です。腕の良いシェフが作った料理の方が美味しいことが多いですし、素材が良いご飯の方が美味しいことが多いでしょう。それと同じです。
ただし、「卵かけご飯」のように、スキル不要で平凡な素材でも、満足できる料理もあります。必ずしもスキルと素材だけでは、品質が決まらないということです。
「品質」は主観に過ぎない
あなたの感覚値としても、「品質の高さ」と「満足度の高さ」は一致していると思います。「満足度」とは所詮、個人の感想ですね。
「品質」と言うと、万人にとって共通の、絶対指標のように聞こえてしまいますが、実際にはそうではないわけです。
先ほど、「サイゼリアの品質は高い」という例を出しました。あなたがボクと同じ庶民なら、概ね同意してもらえると思います。
しかし、貧乏学生時代も、小さな子供と外食できる場所を探した経験もない人にとっては、大した品質とは感じないかもしれません。
ボクからしたら、平日お昼の「しゃぶ葉」は最高品質ですが、そう思わない人もいるでしょう。
最高級ドライヤーは、きっと女性には素晴らしい満足度を与えるでしょうが、坊主頭のボクには無価値です。品質の高さを判断できる立場にありません。
つまり、「品質」の捉え方には、個人によって差があるのです。ある商品が、Aさんにとっては最高品質でも、Bさんにとっては最低品質になることもあるかもしれません。
そして、あなたが目指すべきは、万人にとっての最高品質ではありません。万人を満足させるのは、個人のビジネスにはハードルが高過ぎますから。
ごく限られたターゲットのお客さんだけが満足する、ごく限られた範囲の高品質を目指すべきです。
なるほど…。「品質」とは「満足度」だから、人によって感じ方が違うと
「品質」は、TOEICの点数や100m走のタイムみたいに、誰が見ても同じ数値には変換できないんだね
だからこそ、誰も品質を具体的に捉えられないのよ
品質を判断する5つの指標
「品質=満足度」と分かりましたね。
次に出てくるのは、「満足度をどう測るの?」ですね。お客さんがどれほど満足したかを測るのも、なかなか難しいことですから。
でも大丈夫。次の条件さえ満たした作品なら、お客さんに満足を与え、「高品質」と判断されます。
「高品質」の条件
- 価格以上のベネフィットを提供している
- 上位互換が存在しない
- 期待値を下回らない
- 想定される使用に耐えられる
- 致命的な欠陥がない
どれか1つだけではダメ。全部満たしてなきゃダメだ!
指標1. 価格以上のベネフィットを提供している
1つの文章ですが、2つの要素が入っています。
すなわち、
- ベネフィットを提供すること
- そのベネフィットがお値段以上であること
の2つです。
ここはとーっても大事なので、丁寧に分けてお話ししよう
「ベネフィット」を提供すること
まずは、「ベネフィット」についてお話ししましょう。
お客さんは、あなたの作品が欲しくてお金を払うんじゃありません。ハンドメイドに限った話ではありません。お客さんは、商品そのものが欲しいわけではないのです。
お客さんがお金を払っているのは、作品を使って得られる「理想の未来」に対してです。この理想の未来のことを、ビジネスの世界では「ベネフィット」と呼ぶのです。
このベネフィットには、
- 満たされていない「欲求」を満たす
- 解決できていない「不安」や「不満」を解決する
の2パターンが存在します。
つまり、あなたの作品が、お客さんの欲求を満たしたり、不安や不満を解決していない限り、売れることはないわけですね。
ベネフィットは、お客さんが買う理由そのものなんだ!
そのベネフィットが「お値段以上」であること
ここまでが第一関門。作品を通じてベネフィットを提供するのが大前提になるわけですが、それだけでは足りません。
そのベネフィットが、お値段以上でなければ、高品質とは判断されません。
ボクが「サイゼリア」や「しゃぶ葉」が高品質だと感じるのは、得られるベネフィットに対して、価格が安いからでもあります。
もし「サイゼリア」や「しゃぶ葉」の客単価が5,000円だったら、さほど満足度は高くなく、高品質とは思わないでしょう。
こう言うと、「100万円のロマネコンティは、1,000円のワインの1,000倍美味しいのか?」という疑問を感じる人もいるでしょう。
確かに。ロマネコンティはお値段以上かねぇ?
まだベネフィットについて、理解が浅い。もっと深く考えてみよう
ワインの場合、「美味しさ」だけがベネフィットではありません。本物を手にした「優越感」や、憧れを手にした「達成感」も含めて、ロマネコンティのベネフィットです。
その証拠に、もしロマネコンティと全く同じ味(すぐ隣の畑で採れたブドウとか)のワインがあっても、ロマネコンティと同じ値段にはなりません。
ちなみに、誤解して欲しくないのですが、ボクは「安く売ろう」と言っているのではありません。ハンドメイド作品を安く売るのは、愚策中の愚策ですからね。
むしろ、高くても売れるだけのベネフィットを持たせようと言っているのです。
今あなたの脳裏には、「どうすれば、お値段以上のベネフィットを作品に持たせられるのか?」という疑問が浮かんでいると思います。
ここまで言っておいてなんですが、「お値段以上」の部分については、それほど意識しなくて大丈夫です。とにかく、先に言った「ベネフィットを持たせる」の部分だけ、強く意識してください。
残りの指標も満たしていれば、よほど法外な値付けをしない限り、ちゃんと満足度の高い作品になる。心配しないで!
指標2. 上位互換が存在しない
満足度とは、主観的であり、相対的なもの。もし、あなたの作品の上位互換が存在すれば、あなたの作品の満足度は、相対的に低くなります。
具体的に言えば、
- あなたの作品と同程度のベネフィットをもたらす作品が、もっと安く買えたら
- あなたの作品と同程度の値段で、もっとベネフィットの大きい作品があったら
あなたの作品は、もはや高品質とは見做されなくなるのです。
「上位互換がいない」ためには、あなたの作品が、比較対象の中で1番優れていなければならないわけです。
1番になるために競走する必要はない
ここであなたの目の前には、2つの道があります。
- 競争する
たくさんの競合を殴り倒して、てっぺんに辿り着く - 競争しない
競合が誰もいない場所で戦う
の2つです。
あなたはどちらを選びますか?
ボクなら、後者の「競合がいない場所」を選びます。
美しい女性を口説こうと思った時、ライバルの男がバラの花を10本贈ったら、君は15本贈るかい? そう思った時点で君の負けだ
Apple創業者 スティーブ・ジョブズ
比較対象がない作品を作り、気に入ったお客さんはあなたから買う以外に選択肢がない。そういう作品を作って売ります。
- 「一人相撲で、不戦勝」
- 「天保山(大阪にあるめちゃ低い山)で、お山の大将」
で大いに結構。むしろ、それこそが正解の道なのです。
あなたが1番でありさえすれば良いのです。2番目以降がいなくても、あなたが1番であることは変わりませんから。
競合不在の作品を作るには?
ちなみに、「どうやったら競合不在の作品が作れるんだろう?」と、あなたは思うかもしれません。
そうだよ!それができたら苦労しないでしょ!?
ボクから言わせれば、そう疑問に思うことの方が疑問だけどね
あなたは既に競合不在で戦えるだけのネタを持っています。にも関わらず、わざわざ他の作家と同じような作品を作って、自ら競争の渦中に身を投じているように感じます。
そう難しくないですよ?
もしあなたが刺繍作家で、絶滅動物が大好きなら、「絶滅動物刺繍作家」で、あなたの右に出る人はそうそういないでしょう。
それだけの話。ね?カンタンでしょう?
指標3. 期待値を下回らない
「品質=満足度」と考えると、レビューの星の数は、「品質」と密接に関係していることになります。
レビューのニュアンスからすると、星5が最高品質とは言い切れません。が、一方で間違いなく言えるのは、星を1つでも減らされたら、品質にケチがついたということ。
レビューで星を下げられる原因は色々ありますが、総じて言えば、「購入前の期待値を下回った」からです。
飲食店の看板ではボリューム満点だったのに、実物がショボかったら?いくら美味しくても、満足度は下がりますね。星は1つか2つ下げられるでしょう。
「盛るな!」ってことだね
期待値を下回らないためには、盛らずに、ありのまま作品の魅力を伝えよう!
あえて期待値を下げるのは悪手
あえて購入前の期待値を下げて、実物でポジティブなギャップを与えれば、満足度は上がるでしょう。レビューの星も高くなりますし、高い品質と感じてもらえるでしょう。
しかし、期待値を下げるということは、販売前の時点で、作品の魅力を伝えきらないということです。
マーケティングとしては悪手ですね。本来なら買ってくれるお客さんに、十分に訴求できないことで、買ってもらえなくなっているわけですから。
大切なのは、期待値をコントロールすることではありません。あなたが意識すべきは、「購入前の期待値」と「実物の満足度」を一致させることです。
つまり、まだ作品の実物を持ったことがないお客さんに、あなたかも作品を手に取ったかのように、作品のことを100%伝え切る。これが肝心なのです。
引き出したいレビューは、「思ってた通りサイコーでした!」だよ
指標4. 想定される使用に耐えられる
ハンドメイド作品の多くは、消耗品ではなく、ある程度の期間使い続ける耐久財です。
想定される使用年数は持つように作られていなければなりません。
どことは言いませんが、ある種のファストファッションは、ワンシーズンで着れなくなってしまうと聞きます。こういう持たない商品は、「低品質」と見做されます。
一方で、良質な革を丁寧に縫製した革小物は、10年20年と持ちます。こういう商品は、「品質が高い」と見做されています。
あなたの作品を買うお客さんは、何年使うことを期待しているでしょうか?3年ですか?5年ですか?10年ですか?その期待を裏切らないことです。
布や革製品であれば、多少よれたり引っ張ったりしただけで壊れてはいけません。子供用の作品であれば、多少雑に扱ってもへっちゃらな丈夫さが求められます。
ハンドメイドだからって、ちゃっちいのはダメだね!
指標5. 致命的な欠陥がない
作品に、何か1つでも「決定的にダメなポイント」があったら即アウトです。
これからちょっとイヤな描写を想像させますが、ご容赦ください。
目の前に、美味しそうなフルーツが山盛りのボールがあります。イチゴにメロンにマンゴーにパイナップル。マスカットやさくらんぼも。
このフルーツの上を、1匹の「G(言葉にするのもおぞましいアレです)」が歩いていたら…?どう思うでしょうか?
もうすべてが台無しだね。ボクは見た瞬間もうムリ
冷静に考えると、少し不思議な話です。
もしフルーツの中に、1つだけジャガイモが混じっても、「まぁ取れば良いか」で済みます。アサリの味噌汁の中に、1つだけ閉じたままの貝を見つけたときと同じ反応です。
でも、「G」のような致命的な欠陥は、一発で全体がアウトになるわけです。
- 口に入るものを気にする人は、ある種の添加物が入っていたら、一発でアウトになるかもしれません
- シャンプーにシリコンが入っていたら、即選択肢から外す人もいるでしょう
ハンドメイド作品でも、そういうケースはあるんですね。
- なんで、その形にしちゃったの?
- なんで、その色使っちゃったの?
- なんで、その素材にしちゃったの?
- なんで、そんな余計なの付けちゃったの?
てなケースが。
ターゲットがミニマリストなら、基本的には黒や白の無彩色を好むでしょう。そこに、赤いステッチでも入っていたら興醒めなわけです。
動物愛護者をターゲットにするなら、本革はNGでしょう。適切に処理されていたらOKになるかもしれませんが、ハラコ(気になる人はググって)は絶対アウトでしょうね。
ダイニングテーブルで使う子供用のイスなら、高さが調整できないのは厳しいですね。子供の成長に合わせて使えませんから。
MagSafe(iPhoneの背中についているマグネットの機構)対応の財布なのに、磁気カット機能がなかったら、財布に入れたカードの磁気が消えてしまいます。
大人の女性向きの落ち着いたアクセサリーなのに、なぜかハート型のチャームがついていたら、ちょっとナンセンスかと思います。
30代がターゲットだと、まだ賃貸に住んでいる人も多い。にも関わらず、壁に穴を開ける前提のインテリアだと、正直選ぶ対象には入りません。
ちゃんとターゲットの勘所を見極めないとね!
高品質な作品を達成できたサインとは?
お客さんから、ある反応をもらえたら、間違いなく「高品質」と判断されたと言えるサインがあります。
それは、熱烈なレビューコメントをもらえたら。
例えば、↓みたいな感じね
- こんな素敵な作品に出会えて、本当に感動しています!
- 次も絶対〇〇さんから買います!親友にも勧めます!
- 他の作家とは、レベルが違うと感じました
もう耳タコでしょうが、結局のところ、「品質=満足度」です。
これだけの反応をもらえれば、お客さんは大満足しているでしょう。よって、お客さんにとって、素晴らしい品質であると判断されていることになります。
まずは1人から熱烈なコメントをもらおう
「売れるor売れない」は、作品以外の立ち回りによっても左右されます。写真だったり、文章だったり、SNSだったり。テクニック的な要素も絡んできます。
優れた作品を作れたからといって、売れるとは限りません。逆に言えば、現状売れてない作品が、優れていないとも限りません。
ハリーポッターの作者のJKローリングさんは、12回出版社に断られてるからね
「売れてない=ダメな作品」ではない!
作品そのものの品質の高さは、現在の売上では判断できないのです。
一足飛びに売上を目指すのではなく、まずは、お客さんから熱烈なレビューを1件もらう事を目標にしましょう。その1件の裏に、何千何万という潜在顧客が眠っています。
1件でも熱い感謝のコメントをもらえれば、「高品質の素晴らしい作品だよ!」とお墨付きをもらえた格好です。あとは、自信を持って集客に専念すれば良いのです。
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