現役専業ハンドメイド作家の奥さんのマーケティングやってます♪
あなたが腕に覚えのある作家さんなら、一度は思ったことがあるはずです。
「なぜ、あんな下手な作家が、わたしより売れているんだろう?」と。
いい気持ちはしないですよね。
でも、ビジネスではよく見る光景です。スポーツの世界のように、少しでも実力がある人が、必ず上の順位になるわけではないのです。
必ずしも、歌が上手い歌手が売れるとは限らないわけよ
ホントにね。なんでヘタでも売れる人がいるんだろう?
この記事は、タイトルの通り、「下手でも売れるの作家の秘密」を全て打ち明けます。同時に、極めて実践的なビジネスレッスンでもあります。
ジェラシーを感じる必要はないのですが、「下手なのに売れている理由」を知ることは、あなたのビジネスリテラシーを大きく底上げします。
最後まで読めば、「悔しい!」という気持ちが、「なるほど!そういうことか!」に変わるはず。
ただ勘違いしないで欲しいのは、ボクは制作スキルを軽視しているわけではありません。むしろその逆です。
あなたには、「下手だから、作品以外で頑張って売る作家」ではなく、「上手いから、堂々と作品で売れる作家」になって欲しいのです。
内容が気になってウズウズしてきましたか?ぜひ最後までチェックしてくださいね。
お客さんは作家の実力を判断できない
本題に入る前に、根本的な話をしましょう。
そもそもお客さんは、下手な作家とあなたの違いを理解できていません。
100%実力で評価されるスポーツと何が違うのか?
スポーツは少しでも実力が上の選手が正当に評価されるのに、なぜハンドメイド作家はそうならないのでしょうか?
理由は、スポーツには絶対的な「評価基準」があるからです。というより、絶対的な評価基準があるものが、総じて「スポーツ」と呼ばれているんですが。
例えば、「100m走」や「マラソン」は、0.01秒でも早くゴールできた人の勝ちです。顔が良いとか、人柄が良いとか、フォロワーが多いとかは、一切関係ありません。
唯一絶対の評価基準が決まっているからこそ、スポーツは、素人目でも順位がハッキリするんだ
評価基準がわからないと、観戦してても面白くないしね
一方で、ビジネスはどうでしょうか?もちろん、ハンドメイド販売もビジネスですね。
作品に、「どれだけ優れているか」を計る指標はありません。あなたの作品に、「100点満点中91点!」というスコアはついていません。
ゆえにお客さんは、目の前で2つの作品を並べられても、どちらの方が優れているかを判断できないのです。
素人のお客さんにはスキルの機微は判断できない
絶対的な指標はなかったとしても、作品を見比べれば、どっちが上手いかわかりそうじゃない?
と思いましたか?
いやいや甘い。
あなたが作っている側の人だからそう思うんだよ
ボクの奥さんは、お花のプロです。他の作家さんの作品を見れば、瞬時に「これはプロの作品」「これは素人の作品」と判別できます。
しかし、素人のボクには、違いがわかりません。色使いや形を見れば、作風が違うことはわかります。しかし、どちらが上手いかはよくわかりません。
奥さんに、一つひとつ見るべきポイントを教えてもらえれば、「あぁ、言われてみると違うねぇ」とようやく理解できます。
昔からやってる人気お茶の間番組「芸能人格付けチェック」を見たことがありますか?
- 「3億円のストラディバリウス」と「普通のバイオリン」の違いがわかりますか?
- 「世界的なダンサー」と「大学のダンス部」の違いがわかりますか?
ボクにはわかりません。あなたがGACKT様レベルの審美眼を持っていれば別ですが、実際にはあなたもボクと大差ないでしょう。
ある一定のレベルまで達していると、素人には違いがよくわからないのです。
お客さんは、間違いなく素人でしょうから、あなたのスキルの高さを理解できません。よほどヘッタクソじゃなければ、お客さんにとっては買う候補に入ってしまうのです。
だから素人に毛が生えた作家の作品に、騙されちゃうのかぁ
まずは伝える努力から
もしあなたの制作スキルが高いなら、スキルの高さをお客さんに伝える努力をしましょう。まずはここからです。
ただ作品画像を載せて、「あとはお客さんの目で判断してください」では、あなたの上手さは伝わりません。
と言っても、そう難しい話ではありません。
あなたが作品を作る工程を、0から10まで事細かく教えてください。
例えば、ボクに教えるつもりで!
あなたがどんな作品を作っているかはわかりませんが、ボクは間違いなくド素人です。そんなボクに、材料調達の段階からスタートして、作品がどうやって出来上がっていくのを教えてください。
ポイントは、「こんなの当たり前」と思わないこと。
- 同じジャンルの作家さんなら、当然これくらいやっている。
- 別にわたしだけが、特別スゴいことをやってるわけじゃない。
と思っても、素人はそんなこと知りません。全部教えてください。
【シュリッツ・ビールの事例に学ぶ】
1920年代初頭、10社ほどの醸造会社が競い合っていた。シュリッツの業績は今一つで、市場で第8位でした。
どの醸造会社の広告も、基本的には同じメッセージ。 「私たちのビールは純度が高いです」 でした。
ところが、「純度が高い」とは実際に何を意味しているのか、説明する会社はありませんでした。ただ、純度が高いと言い続けていました。
シュリッツは売上を改善すべく、マーケティングコンサルタントを雇いました。このコンサルタントに醸造所を見学してもらい、シュリッツがどのようにビールを作っているのか説明しました。
コンサルタントは、学んだ内容に深い感銘を受けました。
- 最高のビールを作るのに最適なミネラル含有量の水を得るために、深さ1,500mの井戸を2つも掘っていた。
- 一番豊かな味と口当たりを生み出す酵母菌株を見つけて育てるため、5年以上かけて1,623回の実験を重ねていた。
- 水は2,760度まで加熱され、冷却され、凝縮される。しかも、不純物を完全に取り除くために、これを1回ではなく3回も繰り返していた。
- 瓶詰めの工程では、瓶を871度の蒸気にあてて、バクテリアや微生物をすべて殺菌していた。
- 醸造するたびに、混じり気がなくふくよかなあじか試飲してから、瓶詰めと出荷を行うようにしていた。
コンサルタントは、その醸造工程に圧倒されました。そして、シュリッツの経営陣にこう提案しました。
「この素晴らしい醸造基準について、消費者に伝えるべきだ」と。
それに対して、シュリッツの経営陣はこう答えました。
「なぜでしょうか?どの醸造会社も同じようにやっています」
(中略)
シュリッツは、自社のビールがどのように作られているのか説明した、最初で唯一の会社となりました。
消費者は、シュリッツの醸造と瓶詰めの工程を知り、どのビールとも全く異なるもの、はるかに価値があり、はるかに魅力あるビールだと思うようになりました。
半年後、シュリッツはビール市場売上第8位から1位に躍進しました。
ジェイ・エイブラハム著『ハイパワー・マーケティング』より引用、一部編集
業界の常識は、外の世界では非常識だもんなぁ
あなたが一人前のスキルを持っているなら、その制作工程は、下手な作家のそれよりもずっと洗練されているはずです。
ボクに教えてくれようとした内容を、そのままお客さんに伝えてください。ありのまま語れば、あなたのスキルの高さは、ちゃんとお客さんに伝わりますよ。
下手でも売れる作家の7パターン
では本題、下手なのに売れる作家の秘密を公開しましょう。
ズバリこちらです。
下手でも売れる作家の秘密
- 中の人で売れている
- インプレッション数が桁違いに多い
- 古参作家
- 人間関係で売っている
- 見せ方を盛っている
- 競合がいない
- お客さんの理想を的確に捉えている
あなたが首を傾げて恨めしく見ている作家は、99%の確率でどれかに該当しています。複数に該当していることもあるでしょう。
ちなみにそれぞれのパターンは、
- 「マネできないもの」
- 「マネできるが、すべきではないもの」
- 「マネすべきもの」
に分類できます。
それぞれ解説しつつ、あなたがマネすべきか否かについてもレクチャーしよう!
パターン1. 中の人で売れている
- 2010年、女優マリリン・モンローの「胸部のレントゲン写真」がオークションにかけられ、約400万円で落札されました。
- 2015年、第16代アメリカ大統領のエイブラハム・リンカーンの「髪の毛」は、約294万円で落札されました。
歴史的価値の高い手紙だと、何億という値段が付くケースもあるのですが、上記はそういう類とは異なりますね。
何が言いたいかというと、中の人が有名なら、何だって売れてしまうということです。
例えば、芸能人がテレビの企画で作った作品が、一瞬で完売してしまったというシーン。あなたも見たことがあるのではないでしょうか?
「あんなヘタクソな作品が売れるなら、もっと上手に作れるわたしも売れるかも?」と、いったい何人の無垢なハンドメイド作家を勘違いさせたんでしょうね。
騙されて心に傷を負った作家の魂が見える…
形こそハンドメイド作品ですが、実際に売っているのは中の人の影響力です。
NFT界隈はもっと露骨で、本当に絵が上手なクリエーターよりも、有名インフルエンサーのプロジェクトの方がはるかに売れています。
あなたが売っているのは「作品」で、有名人が売っているのは「影響力」です。そもそも売り物が違うんですから、比べる意味がありません。
影響力もその人の武器。「そんな売り方はズルい!」と非難するのはお門違いだ
マネはできない!
中の人の影響力は、マネできませんね。
もしあなたが影響力で売れるような人なら、おそらくハンドメイド作家はやっていないでしょう。この記事に辿り着くこともなかったはずです。
作品を売るために、これからインフルエンサーを目指すのもおかしな話ですね。「えっと、あなたはホントは何がやりたいの?」と、聞き返したくなります。
ハンドメイド作家には、ハンドメイド作家の売り方がありますから、影響力をつけようと考える必要はありません。
パターン2. インプレッション数が桁違いに多い
あらゆるビジネスでどれだけ商品が売れるかは、次の式で計算できます。
インプレッション数 × クリック率(CTR) × コンバージョン率(CVR) = 売上個数
- インプレッション
表示回数のこと。お客さんの目に、どれだけ商品が露出したかを測る - CTR(Click Through Rate)、クリック率
販売ページをクリックする確率。つまり、販売ページの閲覧率とも言える - CVR(ConVersion Rate)、コンバージョン率
成約率。ハンドメイドであれば、販売ページから購入される確率
WEBマーケティング用語ではありますが、根本的な考え方は、リアル店舗でも、テレアポでも、飛び込み営業でも変わりません。
この3つの変数で、大きな差がつきやすいのが、「インプレッション」です。
有名人やインフルエンサーの商売が有利なのは、先の「中の人の影響力」だけでなく、インプレッションが多いからでもあります。
- あなたが作品をネットにアップしても、見てくれるのは0〜100人かもしれません。
- 一方で、有名人がテレビで放映したり、有名インフルエンサーがSNSで宣伝すれば、1発で何百万ものインプレッションを獲得できます。
下手でも売れている作家さんは、あなたの10倍、下手したら100倍のインプレッションを集めているかもしれません。例えば、SNSで万単位のフォロワーを抱えているとか。
大量のインプレッションは、数の暴力です。どんなに下手でも、大量に見てもらえれば、何個かは売れます。
「あなた」と「下手なのに売れる作家」の差が、そのまま「インプレッション数」の差であるケースは、相当に多いと思われます。
インプレッションの違いはホントに大きい!
マネはできるが、目指すべきかはあなた次第
全ての作家は、何かしらの形でインプレッションを確保する必要があります。インプレッションが「0」なら、売上も例外なく「0」のままですからね。
しかし、インプレッション第一主義で進むべきかは、甚だ疑問です。
もっとも効率の良いインプレッション稼ぎは、SNSです。あなたもSNSを頑張れば、下手でも売れる作家と同レベルのインプレッションを獲得できるでしょう。
有名インフルエンサーになるのは再現性がないにしても、SNSで万垢になるくらいなら、あなたにも芽があります。
しかしSNSに時間を割けば、作品を作る時間は減っていきます。両者はトレードオフの関係なので、SNSに全力投球するほど、作品制作から距離を置くことになるのです。
- SNSに全振りして、インプレッションで売る作家になるか
- SNSはほどほどにして、あくまで作品主体で売っていくか
どちらもビジネスとしては成立します。ここは選択ですね。
ぜひ胸に手をあえて考えてみてください。どちらがあなたの目指したい道でしょうか?
いや、そりゃ作品作りでしょ。SNSに全振りするくらいなら就職するわ
パターン3. 古参作家
このパターンは、「下手でも売れる」というよりは、「あなたと同レベルなのに、なぜか向こうばっかり売れる」といった方が正確でしょう。
今のハンドメイド市場は飽和気味で、プロでもカンタンに売れない時代になりました。
しかし、何年か前には、素人でも稼げた「イージーゲーム時代」もありました。
- 天然石に紐を通しただけで売れた
- ユザワヤ買った生地をバッグにしただけで売れた
そんな太古の時代から作品を売っている古参作家は、まだライバルが圧倒的に少なかった頃に、大量のレビューを積み重ねています。
結局お客さんは、レビューが多い作家を「優れている」と思ってしまいますから、古参作家がずっと選ばれやすくなるわけです。
この現象は、心理学では、「バンドワゴン効果」としてよく知られています。人気があるものほど、さらに人気になる傾向のことです。
Amazonや楽天でも、お馴染みの光景です。似たような商品が並ぶ中で、レビューの多い商品やショップだけが圧倒的に売れてますよね。
だから、あなたと同じような素材で、同じようなスキルで、同じような値段で売っているのに、古参作家ばかりが売れるのです。
なんかズルいような、ズルくないような…
ある種の既得権益だからね。歯痒い気持ちはわかる
けど、誰でもチャンスはあったんだよ。古参は、いち早く行動してチャンスを掴んだわけだ
マネはできないが…
古参が売れるのは、どんな業界でも共通です。
いわゆる「先行者利益」ですから、羨んでもひっくり返りはしません。そういうものだと思って、受け入れるしかありません。
ここはポジティブに考えてみましょう。
この先も、新人ハンドメイド作家はどんどん生まれてきます。そして、今いるハンドメイド作家も、これから始める新人作家も、半数以上は夢破れて去っていきます。
今のあなたは、比較的新参者かもしれません。しかし、栄枯盛衰のサイクルをしぶとく生き抜けば、いずれはあなたも古参になります。
地道に実績が積み上げるほど有利になります。あとが楽になります。ぜひ挫けずに続けていってください。
パターン4. 人間関係で売っている
人間は「社会的な動物」と呼ばれますね。これは、「人間は、群れで助け合って生きていくタイプの動物だよ」を、少し難しく表現しているだけですね。
およそどんな人間にも、「なるべくなら、よく知っている間柄の人に報いたい」というバイアスがあるのです。
- 知り合いに税理士がいれば、その人を頼ろうとするでしょう。
- 知り合いに建築士がいれば、戸建ての設計を頼もうとするでしょう
- 知り合いにピアノの先生がいれば、娘のレッスンをお願いするでしょう。
「わたしは三越でしか買い物しない!」みたいな強いこだわりでもなければ、人間関係の繋がりから買おうとするのが自然です。
中小企業だと、取引先同士で、お互い発注し合っているケースも多いですね。この商習慣は、「互恵取引」と呼ばれています。
わかりやすく言えば、「地元の商店街」みたいなものです。互いのお店にお金を落とし合って、食っている人も大勢いるわけです。
難しく考える必要はありません。
- 知らない人よりは、知っている人から買おうとする
- ただ知っている人よりは、お互いに知り合っている人から買う
- ただ知り合っている人よりは、好意を抱いている人から買う
ということです。
見た目は劣ったアイドルでも、ファンサが手厚ければ人気になれるのです。
下手でも売れている作家さんは、あなたより知り合いや友達が多かったり、あなたよりたくさんファンと交流しているかもしれません。
できる範囲でマネしよう
あなたが友達を作るのがあまり得意でなく、人の輪に飛び込むのが苦手なタイプなら、人脈で売っていくスタイルは苦痛でしかないでしょう。
今さら良い大人が、交友関係をゴリゴリ増やしていくのは難しいですよね。ハンドメイド販売は、そこまでしなきゃ食っていけないほどシビアではありません。
ボクも友達作るのは苦手だよ
Me Too
無理する必要はないでしょう。
ただ、マネできるポイントもあります。
- SNSで少しでも人柄を知ってもらう
- ライブ配信でフォロワーと交流する
- DMにはマメに返信する
- メッセージのやり取りは、適度にフランクにする
といった行動を積み重ねていけば、お客さんとの距離は縮まります。もちろん、近すぎず遠すぎない距離感までで構いません。
距離感が縮まれば、お客さんはもっとあなたから買おうとするでしょう。着実に売上は上がっていきます。
パターン5. 見せ方を盛っている
「盛って」いるから売れている作家もいるでしょう。
文字通りの意味です。「盛る」とは、「実物以上に優れているように装うこと」ですね。
軒先のポスターでは、色鮮やかで、ボリューム満点で、とっても美味しそう!で、釣られて入ってみたら、出てきた品はイマイチ。「う〜ん、こんなんだっけ?」と。
盛れば商品が良く見えるわけですから、当然売れやすくなります。マーケティングっぽく言えば、「クリック率」や「コンバージョン率」を爆上げさせる効果があります。
ただ、やっていることは「詐欺」とあまり変わりません。
明確な基準、例えば、スペックとか産地とか効果でウソをつくと、「詐欺」と言われます。あいまいなところで嘘をつくと、「盛る」になります。
「詐欺」と「盛る」は、程度の差があるだけで、本質的には同じだよ
作品画像を加工して、実物以上によく見せようとしてはいけません。大して人気も無いのに「大人気」と謳ったり、どこでも手に入る素材を「貴重な素材」と謳ってもいけません。
もちろんマネは厳禁
「盛る」とは、意図的にウソをついて売ることですから、倫理的にアウトです。しかし、ここは感情論ではなく、実益の観点から盛るべきではない理由を述べましょう。
ビジネスの文脈で「盛る」は、
- 買う前の「期待値」を上げて
- 買った後の「満足度」を下げる
行為です。
そのため、短期間で刈り取るビジネスは、盛ったもん勝ちな部分もあります。
- 短期の出店計画で、話題性で売る流行りのスイーツ店
- B級映画
- (質の悪い人の)情報商材
なんかは、「盛る」と相性が良いですね。バっと売り捌いて、何年分か、あるいは一生分のお金を短期で稼ぐわけです。
期待させるだけさせて、1回買わせればもうOK。1回買った客は用済みですから、その後の満足度がどうなろうが、ビジネス的にはどうでも良いのです。
倫理的にはアウトだな
しかし、利にはかなっている
一方で、ハンドメイド販売はどうでしょうか?
ハンドメイドは、短期で売る切るビジネスではありませんね。そもそも生産量が少ないですから、チビチビと長く売っていくしかありません。
既存のお客さんにリピートしてもらったり、あるいは友達を紹介してもらったり。過去のお客さんの評判を聞いて、新しいお客さんが来てくれたり。
こういう長期軸のビジネスで、盛ったらどうなるでしょう?
期待を裏切られれば、お客さんの満足度が下がります。満足度が下がれば、良いクチコミは望めませんし、リピートも紹介もありません。
長い目で見ると、「盛る」は、直近の売上を取る代わりに、未来の売上を犠牲にするのです。自ら賞味期限を早める行為であると理解しましょう。
パターン6. 競合がいない
競合がいなければ、下手でも売れます。
例えで、こう考えてみましょう。
地方の過疎集落に、廃校寸前の中学校があります。全校生徒は4人だけ。「男子3人」に、「女子1人」です。
ちょうど、ドラえもんで言うところの、「のび太」「ジャイアン」「スネ夫」「しずかちゃん」のような構成ですね。
このとき、「しずかちゃん」のポジションにいる女子は、モテる可能性が極めて高いです。見た目も中身も平凡でも、余程の欠点がない限りはモテ確定です。
そりゃそうですよね。他に女子がいないんですから。
以前ボクが住んでいた街に、「モルドバ料理専門店」がありました。
- 駅から離れたビルの2階という微妙な立地
- イケてるわけでもない雰囲気
- 家庭料理風だけど、値段は結構お高め
それでも、テレビに紹介されたりと、繁盛しているようでした。
理由はカンタン。他にモルドバ料理を出すお店がないからです。
あなたがごく平均的な料理のレベルであっても、遠い国で日本料理店を開けば、そこそこ繁盛するでしょう。あなた以外に、それを売る人がいないからです。
ハンドメイド作品でも同様です。その作家にしか作れない作品なら、多少下手でもその作家から買うしかないのです。これは強いですよね。
絶対にマネして!
競合不在のフィールドを選ぶのは、小規模ビジネスの鉄則です。あなた以外にプレイヤーが存在しない場所で、「お山の大将」として振る舞うのが鉄則なのです。
「ぜひ」というより、「もれなく」実践してください。
ここであなたの疑問は、「ごく普通のわたしに、誰とも被らない、わたしにしかできない作品なんて作れるんだろうか?」ですね。
答えは、「Yes」。競合不在で、あなたしか作れない作品は作れます。
要するに「差別化しようぜ」という話です。差別化のコツは、「ターゲットを絞って、絞った相手だけが喜ぶ作品」にすること。
ハンドメイド作品の場合は、ユニークなデザインを施して、そのデザインを好むごく一部のお客さんをターゲットにするケースが多いですね。
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パターン7. お客さんの理想を的確に捉えている
ひとつ重要なビジネスリテラシーをお教えしましょう。
実は、お客さんは、「作品(商品)」にお金を払っているのではありません。
その作品や商品を使うことで手に入る「理想の未来」を買っているのです。作品や商品は、理想の未来をもたらす手段でしかありません。
あなたは、「傘」が欲しいと思っているかもしれませんが、実際に欲しいのは、「雨から身を守ること」ですね。傘の形をしているかどうかは、どうだって構わないのです。
そして、お客さんが手に入れたい「理想の未来(上記の例では、雨から身を守ること)」を、ビジネスの世界では「ベネフィット」と呼びます。
いったんまとめると、お客さんがお金を払っているのは、「作品(商品)」に対してではなく、その作品や商品がもたらす「ベネフィット」に対してなのです。
お勉強はここまでにしておきましょう。
下手でも売れる作家は、制作スキルこそ拙いかもしれませんが、お客さんが欲しがる「ベネフィット」を秘孔の如く、ドンピシャで突いているのかもしれません。
もちろんマネしよう
お客さんの「ベネフィット」を突くのは、小手先のテクニックではなく、商品設計の本丸中の本丸です。絶対に取り組まねばなりません。
実はベネフィットを突くのも、やることは先の「差別化」と同じです。「ターゲットを絞って、絞った相手だけが喜ぶ作品」にするのです。
例えば、あなたがネイルチップ作家だとしましょう。よくある感じの乳白色のかわいい感じのネイルチップを作っています。もちろん、技術は1人前です。
出来も見た目も良いですし、プロと遜色ないクオリティであることも見て取れます。しかし、これといった決め手がありません。かわいいけど、買うには至りません。
一方で、下手でも売れるネイルチップ作家は、ターゲットを見定めています。例えば、異世界系アニメのセクシーキャラのコスプレイヤーをターゲットにしたとしましょう。
ベネフィットはもちろん、「そのキャラクターになりきる」ことですね。あるいは、周りの仲間にも、「完成度高いね!」と褒めてもらえることまで含むかもしれません。
そこで、そのキャラになりきれるように、チップに特徴的な模様を施して、長さも通常の3倍くらいにします。大多数のお客さんは色物扱いですが、ごく限られたターゲットのお客さんは、欲しくてたまりません。
こうなると、ちょっとやそっと上手いか下手かは、どうでも良くなるのです。
もしどのパターンにも当てはまらなかったら?
さて、ここまで紹介した「下手でも売れる秘密」のどれにも該当しないとしたら?
どう見ても、あなたと変わらない環境なのに、制作スキルはあなたよりも劣っているのに、売れている作家がいたとしたら?
素晴らしい!これは、チャンスです!
あなたがもっと上手に作れば、あなたの作品の方が売れますよ。もちろん、どこがどう上手なのかは、お客さんに懇切丁寧に説明してあげてくださいね。
なお、ちょっとの差ではなく、「え?こんなレベルで売って良いの?」と思うほど大きな差があるなら、これはもうごっついチャンスです。
確度の高い商機!見逃さないで!
制作スキルは高い方が良いに決まってる
この記事をここまで読んだあなたは、
- 制作スキルと売上は、必ずしも比例するものではない
- 売り方次第で、ヘタでも売れる
という事実を理解しました。
ある意味で、「ヘタでも売れる方法」を解説してきたわけですが、だからといって、「スキルを磨くよりも、売り方に全振りしよう」と靡かないでほしいのです。
これは「売れるか?売れないか?」という、ちゃちな話をしているんじゃありません。あなたが「幸せな人生を生きられるか?」というもっと高いレベルの話をしています。
やっぱり制作スキルは磨いてった方が良いよ?
ヘタなまま売って楽しいのか?
例えば、料理ができないボクが、飲食店を開こうとしたとしましょう(もちろん、ヘタな作家が、ハンドメイド販売を始める比喩です)。
料理ができないわけですから、できることは限られます。おそらく、「卵かけご飯屋さん」が限界ですね。
「卵かけご飯屋さん」で売っていこうとしたら、
- 最高級の食材を揃える
- 変わり種のフレーバーを選べるようにする
- オシャレな人が集まる立地に出店する
- 映える内装にする
- 演出に凝る
- SNSで積極的に発信する
- メディアに取り上げてもらうように打診する
とかするんでしょうね。
卵かけご飯なんて誰でも作れますから、主な努力の矛先は、イメージ作りだったり、SNSの発信になってしまうでしょう。もはや料理はバイト任せです。
さて、それが楽しいかって話よ
う〜ん、「これがやりたかったんだっけ?」って思い悩みそう
この例は、「ハンドメイドが好きだけどヘタな作家」の比喩ですから、ボクは料理は好きという設定です。でもヘタだから、卵かけご飯屋にせざるを得なかったわけです。
本当にやりたかったのは、料理だったはずなんですが…。
もしボクがちゃんと料理の修行をすれば、日本料理の懐石を提供したり、フレンチのフルコースを提供したり、石窯で本格的なピッツァを焼くこともできたわけです。
そうすれば、料理そのもので、お客さんを満足させられたはずです。
マーケティングを全くやらないことはないでしょうが、少なくとも活動の主軸は料理にできるでしょう。本当にやりたかった活動で生きていけたはずです。
上手い方がマーケティングを頑張らなくて済む
ヘタなまま売上を伸ばすということは、ハンドメイドよりも、マーケティングを主軸に活動するということです。
それだったら、わざわざ面倒くさい上に、売上の天井が低いハンドメイドなんてやる必要ありません。YouTuberでも、インスタグラマーでもやったら良いと思います。
モノづくりが好きだから、ハンドメイド作家になったんですよね?
そうだよ!作るのが1番好きだ!
だったら、制作スキルを伸ばして、表現力を磨いて、あなたにしかできない作品を堂々と送り出せば良いのです。マーケティングは、ほどほどで良いのです。
これは断言しますが、上手な作家ほど、マーケティングは頑張らなくて済むんです。
だってお客さんを満足させるクオリティの作品は作れるんですから、あとは売れるようにちょっと向きや身だしなみを整えるだけ。モノが良いので、少ないインプレッションでも、欲しがるお客さんは見つかります。
ある程度歴のある作家さんを売れさせるのは、ボクからしたらカンタンです。
これがド素人作家だと、お客さんを満足させられるクオリティになりません。ショボいまま売る方法もありますが、最終的にはインプレッション稼ぎに頼ることになっちゃうかなと。これはとっても面倒なんですよ。
ハンドメイド軸で生きていきたいなら、制作スキルを大事に!
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