
本サイトでは、「アイデンティティに刺さる作品を作れ!」という趣旨の話が何度も登場します。クリエータービジネスの「本質中の本質」だと確信しています。
なんですが…
以前にお話しした作家さんから、「”アイデンティティに刺さる“ってのがよくわからない。どういう感覚なの?」と質問をもらったことがあります。
おぉ。確かに。
言葉遊びみたいな響きになっていました。
そこで、
- 「アイデンティティに刺さる作品」とは、つまりどういうことなのか?
- そもそも「アイデンティティ」とは何なのか?
- なぜ、「アイデンティティ」がそんなに重要なのか?
を解説していきましょう。
この記事、めっっっっっちゃ大事。
お客さんの心に刺さる作品を作るためには、まず、お客さんのアイデンティティを特定しなければなりません。当てずっぽうで針の穴に糸を通せないのと同じ。狙って刺しにいかなければ刺さりません。
「アイデンティティ」について、これ以上わかりやすい説明はないかと。ざっとネットで他所の記事に目を通しましたが、「本質」と「わかりやすさ」が両立する記事は見当たりませんでした。
骨太なので、1回読んだだけでは理解しきれないかもしれません。ぜひ、ブックマークして、繰り返し読んでみてください。
内容的には、↓の記事とリンクします。どちらも長文ですが、有益であることは保証します。
前半はお勉強なんだけど、予習しないと後半のノウハウが腹に落ちない!
頭から飛ばさず読もう!
アイアイサー!
アイデンティティとは?

「アイデンティティ(identity)」は、心理学者のエリク・H・エリクソンが使い始めた概念で、日本語では「自己同一性」と訳されます。
多くの人は、
- 「自分は何者か?」
- 「自分らしさとは何か?」
という問いの答えになるものが、アイデンティティであると思っています。
間違いではありませんが、理解からは遠い。この考えで止まっている限り、モヤっとしたまま先には進めません。
ロジカルに解きほぐすと、本質が見えてきます。
ずばりコレ!
さっさと種明かしすることにしましょう。
ズバリ、アイデンティティとは、
- 時間的連続性
過去と現在の自分がつながっている感覚 - 集団への帰属意識
ある人たちの集団に、自分が属しているという感覚 - 集団内での役割
上記の集団内で、自分がどのような役割を担っているか
です。
「ズバリ」と言いつつ、3つ!
この辺が精進が足りないところ!
今回は3つで許して!
最初にアイデンティティと言い始めたエリクソンは、主に①の意味で使っていました。
後に社会学者たちは、②③を付け足しました。②③が関連しているのは、一目見てわかりますね。
原則1. 時間的連続性

自分が、主人公の物語が続いていて、
- 子供の自分
- 青年期の自分
- 大人の自分
が、同一人物として心理的につながっている。
「あの頃の自分があって、今の自分がある」
「現在の”わたし”に向かって、1本の線がつながっている」
という感覚。
これが、本来のアイデンティティが意味しているところ。
ふむ…。なるほど
この感情が、なぜそれほど尊いか。説明が必要だね
一貫性の法則
人間は、過去に取った態度を繰り返し踏襲しようとします。心理学で、「一貫性の法則」と呼ばれる性質です。
- 過去に「わたし、菜食主義なの」と言ったら、今の自分がどうあれ、肉は食べずに野菜を食べようとします。
- 過去に、「あえて快速を使わず、鈍行の電車に乗った」ら、今の自分がどうあれ、理由がなければ次も鈍行に乗ろうとします。
そうなる理由は、大きく2つ。
思考リソースを節約するため
人生には似たようなシーンが繰り返し登場するわけですが、毎回0から考えるほど、脳みそには余裕がありません。そこで、過去と同じ行動を取ろうとするわけです。
意思決定をする際に、必ず過去の自分を参照します。ITに明るい人は、「キャッシュ」みたいなものだと思ってください。
ドラマでよく出てくる「証人保護プログラム」のように、
- 全く新しい名前
- 全く新しい住所
- 全く新しい経歴
- 全く新しい人間関係
で生きることになったら、過去のキャッシュが消えることになります。
脳は、「過去の自分は、正しい判断をしている」という前提で駆動しています。その前提は同時に、「過去と現在の自分が、同一人物である」という前提も包含しています。
過去の自分とは別人となると、意思決定の前提が崩れてしまうんですね。
他人の評判を気にして
会うたびにあなたの態度がコロコロ変わってしまっては、他人はあなたを、「一貫していない人」とマイナス評価を与えることになります。
信頼できる人は、ずっと同じ態度を取れる人。常に約束を守る人は信頼に値しますが、一貫して約束を破る人も、逆の意味で信頼できます。
協力も協調も駆け引きも、態度が一貫した相手としか成立しません。一貫して「悪」よりも、一貫しない方が、よほど接しづらいのです。
守備一貫した人物であるためには、過去から現在まで、人格がつながっていないといけないよね
予測可能な世界へ
上記の話と通じるところがあります。
人間の脳は、しばしば「予測機械」と呼ばれます。これから起こる事態を予測することで、危険を回避したり、首尾よく対処したりしようとするわけです。
逆に言えば、脳は「予測不能 = 怖い」と認知します。
世界が、何の法則もなくランダムに動いているとしたら、怖くてたまりません。だから何かしらの因果を見出して、世界を予測可能にしようとしているのです。
手近な手がかりで因果が掴めない場合は、「神様」や「祟り」という因果を持ち出します。そう結論づければ、儀式やお供えで対処できるようになるからです。
人間の面白い性質ですね。見出した因果が間違っていることよりも、何の因果も見出せない方が怖いのです。
過去と現在の自分が、因果の線がつながっていなかったら。
世界はおろか、自分の行動すら予測不可能になります。
これは、とっても怖いこと。
理屈はわかる。けど、何となくピンとこない…
OK!最高にわかりやすい例だす!
朝起きたら別人になっていたら…?
目が覚めたら、全く別の人間だったと想像してみてください。
ちょうど、『君の名は』みたいに。
- ここは安全な場所?危険な場所?
- あの人は味方?敵?
- どこへ行けば良い?
- …てか、わたしは誰?
「今日の自分」が「昨日の自分」と同じだと確信できる。
これが、どれほど尊いことか。
そう確信できるから、あなたは安心して玄関を開けて、いつもの道を迷いなく歩くことができるんですよ。
完全に理解したわw
原則2. 集団への帰属意識

「どこかのグループに属している」という認識が、アイデンティティであるという話です。ここ、肝中の肝です。
あなたも、色んな集団に属していますね。
- 家族
- 女性/男性
- 20代/30代/40代/50代/60代/70代
- 会社員/個人事業主
- クリエーター
- 〇〇町の町民
などなど。
あ、そうそう。ここで、あなたの常識が1つ壊れます
えっ!!!
何か怖い!
求めているのは「唯一無二の自分」ではない
アイデンティティは、「唯一無二の自分を形作るもの」だと思っていますよね。「世界でたった1人」の自分を定義するものだと。
全っ然、違います。
勘違いするのも無理ありません。同じ語源の「ID」は「識別子」の意味ですし、「identify」は「特定する」ですからね。でも違うんですよ。
例を出してみましょう。想像してみてください。
(あり得ない仮定ですが)もし、過去・現在を含めて、地球上で「日本人」があなた1人しかいなかったとしたら?
「日本人であること」は、あなたのアイデンティティにはなりません。
そうではなく、
- 「東洋人」
- 「モンゴロイド」
- 「漢字圏」
のようなアイデンティティを見出すことになるでしょう。
矛盾するようですが、「たった1人」はアイデンティティとして成立しません。同じアイデンティティを持つ人が他にもいないと、アイデンティティにならないのです。
「誰と同じなのか」が本質
むしろ逆で、「誰と同じなのか」が、アイデンティティの本質です。
人間は、社会的動物です(このフレーズ、当サイトでもう何回目ですかね)。つまり、群れで助け合って生きていくタイプの動物なんです。
群れから追い出されたら死んでしまう。それが、社会的動物の基本原則です。
だから、
- どこかの集団に属していないと不安になる
- 自分を迎え入れてくれる集団があることで安心する
これが、太古の昔からDNAに受け継がれている思考回路です。
「アイデンティティを希求する」とは、「どこかの集団にきちんと属したい」という欲求です。
「アイデンティティが満たされた」とは、「どこかの集団の仲間入りできた」という安心感です。
これは…、確かに常識ひっくり返されたわ!
1人では機能しないけど、広すぎてもダメ
1人では機能しないアイデンティティですが、広すぎてもやっぱり機能しません。
例えば、あなたは「地球人」というアイデンティティを持っていないと思います。なぜなら、あなたが暮らす社会には、地球人しかいないから。
宇宙人と交流する時代が来れば、「私は地球人!」というアイデンティティを意識することになるでしょう。
「日本人」というアイデンティティは持っていますね(あなたが日本人ではない場合は、自分の故郷の国をイメージしてください)。
範囲を狭めていきましょう。
- 地球人
- >アジア人
- >>東洋人
- >>>日本人
- >>>>関東人
- >>>>>都民
- >>>>>>下町の江戸っ子
範囲が縮まるほど、より「自分らしい」と思えてくるのではないでしょうか?
「九州男児」とか「道東民」とか「浜っこ」の方が、該当する人にはグッと来るでしょう?
結局、周りにいる「自分とは違う人達」を意識できて、初めてアイデンティティとして認識するわけです。海外旅行から帰ってきて、初めて日本の良さを実感するのと似てますね。
少数派であるほど、周りとの違いを意識する機会が多い。よって、より小さな集団への帰属意識ほど、より強いアイデンティティとなるのです。
自己認識と他者承認で完全に

ここで押さえておきたいのが、
- 「自分がこの集団に属している」という自己認識だけでなく、
- その集団の仲間から「あなたは私たちの仲間だ」と承認される
という双方向のベクトルがある点。
自己認識だけでも、ある程度はアイデンティティを満たすことはできます。しかし、他人から承認されないと完結しません。
『みにくいアヒルの子』に学べ
『みにくいアヒルの子』を思い出してください。
本当は白鳥だった主人公が、アヒルの群れの中でアイデンティティ・クライシスを起こした末に、本当のアイデンティティを見つける物語です。
主人公は、
- 自分が「白鳥」だと自己認識して、
- 他の白鳥から「仲間」だと承認されて、
安心した心地になったのです。
どちらかが欠けていたら、本当の安心には至らないでしょう?
うわっ、ホントだ!これ、アイデンティティの話だったんだ!
原則3. 集団内での役割

集団の中で、ちゃんと役割を与えられていると、安心が揺るぎないものになります。
- 役割がある
- = 仲間の役に立っている
- = 尊重される/無碍にされない
- = 群れ内での生存/繁殖確率が上がる
というロジックです。
役割のない居心地の悪さ
考えてもみてください。
家でも、会社でも、何の役割も与えられていない。誰の役にも立っていない。
この状況、耐えられます?
あーーー、ちょっとシンドいかも
今どきは減ったと思いますが、昔ながらのおとっつあんは、家庭では肩身が狭い。休日も居心地が悪くて、パチンコか打ちっぱなしに出かけてしまうと。
なぜ肩身が狭いかと言えば、家庭を奥さんに預けっぱなしで、家庭内での役割がないからです。
「居場所 = その集団内での役割 = アイデンティティ」というわけですね。
PTAや地域のお祭りに「参加したいorしたくない」は、単に「忙しいか」だけでなく、「現在担っている社会的役割」が密接に関わってきます。
前向きになるのは、現在役割を持っていない人。あるいは、地域内ヒエラルキーの向上が利益になるローカルビジネスオーナー。
一方で、会社員のように、地域ヒエラルキーの外で役割を担っている人は、地域活動に割くリソースが惜しいと考えます。
内部告発した人が、業務のない閑職に追いやられることがあります。人によっては、「仕事せんで給料もらえてホクホクやん」と思うところですが、立派なパワハラです。
集団の中で、自分にちゃんと役割があることが、強固なアイデンティティになるのです。
謎に正社員がありがたがられるのも、こうした背景があるからだろうよ
役割がカチッと確定した感じがするもんね
ヒエラルキーも社会の役割
社会的動物について回るのが、ヒエラルキー。動物は群れると、必ず階層構造が出来上がり、格差が生まれるようになっています。自然の摂理です。
集団の人数が多いほど、ヒエラルキー構造が深くなっていきます。詳細はハショりますが、大企業ほど役職の階層が深くなる理由と同じです。
一応ヒエラルキー内に収まれば、アイデンティティとして機能はします。逆に、ヒエラルキーから外れた「ニート」や「浮浪者」は、アイデンティティになり得ません。
「族長」「神官」「将軍」「王」「議員」のような高位ヒエラルキーは、より大きな社会的役割をになっているため、より強いアイデンティティとして機能します。
鼻につく表現をしますが、
- 「東大卒」は、アイデンティティ
- 「社長」や「部長」のような肩書きも、アイデンティティ
- 「商社マン」も「外コン」も、アイデンティティ
- 「高年収」も、アイデンティティ
- 「タワマン」も、アイデンティティ
- 「万垢」も、アイデンティティ
ということになりますね。
だから、「早稲田」や「慶應」のクラッチバッグを持つ学生が多い一方で、「Fラン大」のクラッチバッグを持つ学生は滅多にいないわけです。
その称号を奪われたとき、どっちが傷つくかを考えてみれば、説明は不要かと。
「港区女子」みたいなやつか
あんま言うなよ。そのアイデンティティにしがみつかないと、自我崩壊するんだから
エリートに縛られる必要はないですよ。
集団の中には、ちょっとしたヒエラルキーが無数に存在します。
- 小数点めっちゃ言える
- 美味しい店たくさん知ってる
- パソコン自作できる
- ぷよぷよめっちゃ強い
- 回文(上から読んでも下から読んでも同じ文)が得意
- ハーゲンダッツ全味制覇した
なども、ある集団においてはヒエラルキー上位です。
こういった「他者との相対的優位性に、人はアイデンティティを感じている」ということだけ理解してもらえればOKです。
アイデンティティは最強の動機づけ

ここまでで、「アイデンティティなんぞや」は説明できました。朧げでも理解できていれば、この先の話がスッと入ってくるはずです。
なんでこんなけったいな話をしているかといえば、「アイデンティティ」が、最強の購買動機になるからです。
そうですね。「命を守るための買い物」の次くらいに強いです。
最強じゃなくて、2番目ってこと?
クリエータービジネスだったら、1番だから!
みんな勘違いしてますが、「かわいー」「キレイー」じゃ、財布の紐は緩まないんですよ。そう言いながら、足も止めないじゃないですか。
- 「あ…」と立ち止まって、目が離せなくなる
- 値の張る代物でも、抗えない衝動に襲われる
- そのアイテムが、寝ても覚めても頭から離れない
そんなアイテムがあるとしたら、アイデンティティを満たすアイテムに違いありません。
そのアイテムを持つことで、仲間を見つけたり、仲間に見つけてもらったりできる。本能レベルでは、命に関わること。だから、いくらだって払う用意がある。
命すら差し出せる
買い物ではない文脈ですが、アイデンティティがどれだけ強い「行動の理由」になるかが垣間見える話をしましょう。
あれは、広島か岡山のどちらかに行ったときのこと。
戦時中に、広島の原爆投下か岡山の空襲に見舞われた少年の作文が展示されていたんですね。時間があったので、じーっと読んでみたんです。
その少年は、1945年当時で7歳でした。
犠牲になった親族や友達は大勢いたでしょう。家も学校もなくなって。そもそも、街が跡形もない瓦礫の山となって。
「戦争は絶対にやっちゃいけないんだ」と思ったそうです。
実はこの作文、少年がもっと大きくなってから書いたもので、続きがあります。
その7年後、「李承晩ライン」が引かれたときには、「李承晩をやっつけるためなら戦争に行っても良いと思った」と、書かれていました。
李承晩(りしょうばん)は韓国の初代大統領。戦後、日本が軍隊を解散させられて、一切自衛ができないドサクサで、勝手に国境線を引いたんですね。それが「李承晩ライン」です。そのときに、韓国領と主張されたのが竹島です。
あぁ…。何て言えばいいか、難しいな
これが人間という生き物なんだと、深く思ったよ
少年は、おそらく竹島とは無縁でしょう。竹島に親族がいるわけでもない。竹島が韓国に取られても、少年の生活には何の影響もないはずです。
にも関わらずですよ。自分の利害とは無関係にも関わらず、絶対にやっちゃいけないと確信した戦争に赴いて、命懸けで戦っても良いと思った。
ものすごい動機の強さだと思いませんか?
購買動機どころじゃないですよ。どうやったら、こんな強い感情を引き出すことができるのでしょう?
彼の「日本人」としてのアイデンティティが、そう思わせたんです。
「名誉のために」「誇りのために」と言われることが多いですが、その実は、「アイデンティティを守るため」に命をかけるのです。
アイデンティティが奪われることは、自分の体の一部を奪われる感覚。人に命をかけさせられるのは、「命を守る」か「アイデンティティを守る」のどちらかくらい。
だから戦争の単位は、基本「民族」や「宗教」になる
アイデンティティは1つじゃない
1人の人間が属する集団は、1つではありませんね。
多くの集団に属しています。
- 日本人
- ブロガー
- 男性
- 30代
- ホイ卒
- 子育てパパ
- 元営業マン
- ベンチャービジネス
- Appleユーザー
- 読書好き
- 歴史好き
- スニーカーオタク
- ラーメン好き
などなど。
どれもがアイデンティティです。
君の話だね
おや?元アニオタが抜けてやいないか?
せやな
上記は、ほんの一例。
1人の人間には、何十か、ことによっては何百ものアイデンティティがあリます。各アイデンティティの円が全て重なるところに、1人の人間がいるわけですね。
後で、「作品でお客さんのアイデンティティを刺しにいけ!」という話をしますが、どのアイデンティティを刺してもOKです。
もちろん、効果的なものとそうでないものがある。見分け方は後ほど
「アイデンティティに刺さる」ってこういう感覚

「アイデンティティに刺さる」ってのは、「ただ好き」とは全く別物。
ボクもパンケーキ大好きですよ。美味しいですよねぇ。でも、アイデンティティには刺さってません。食欲に刺さってるだけです。
「最近、呪術廻戦にハマってる!」とか「今期のバカリズムのドラマが面白い!」とか、そういう話じゃないです。
- 過去の自分を思い出させてくれる
- ある集団への帰属を認識(あるいは再認識)させてくれる
が、「アイデンティティに刺さる」という感覚です。
感情がよく伝わるように、エピソード込みで具体例を出します。あなたも、こういう感覚に浸れるものを想像してみてください。
「ラスゴTシャツ」があったら?
ボクは、小学生から中学生まで、「MTG(マジック・ザ・ギャザリング)」にとってもハマっていました。米国発で、世界初のトレーディングカードゲームです。
きっかけは、小学5年生。コロコロコミックで取り上げられて、その存在を知りました。それ以前は、おそらく大人が遊んでいたんだと思います。
それまで知っていたカードといえば、「ポケモン」や「ドラゴンボール」のようなキャラクター物。レアはキラキラしてるとかそんなやつ。
でもMTGは、キラカードとかないです(後から出たけど)。西洋絵画のようなイラストが施されていて、神話や宗教モチーフのカードも多くて。
あと、流通しているカードの半分が英語。
衝撃的にカッコよくて、寝ても覚めてもMTGが頭から離れず、友達に「MTGやってみない?」と。友達も気になってたらしい。みんなコロコロ読んでましたからね。
あれは、夏休みだったかな?
友達と一緒にプールに行った帰りに、商店街のおもちゃ屋に行きました。
壁じゅうにぎっしり模型やプラモが積まれた店内で、そいつはカウンターの上にポツンと置かれていました。
小学生には大金の1,500円で、60枚のスターターセットを買いました。
引き戸のドアを開けて外に出て、速攻で開封。
そしたら、なんかクサいw
古本の匂いを濃縮して、香水にして振りかけたん?みたいな匂い。
「えぇ?俺の不良品?」と思ったら、友達のも同じ匂い。
実は、新品のMTGカードは独特の匂いがあるんですね。初めはクサいが、そのうちフレッシュな匂いを求めて嗅ぎにいくようになるというw
…匂いの話は余談だったな
でも、情景は浮かんでくるね
ルールも複雑で、難しいんですよ。
ポケカやったことある人なら想像してほしいんですが、「5色デッキ」とか「クリーチャー(モンスターカード)0デッキ」が成立して、それが色物じゃなくクソ強かったりする。すんごく深いゲーム性。
ずっとワクワクドキドキが止まらならない。ずっとこの世界に浸っていたかった。ハマりにハマって、中2くらいまでやってたかな?
ボクにとって、とても美しい思い出。その後も、高校や大学でも、たまに引っ張り出して遊んでました。MTG好きは、いるところにはいるので。
やめたきっかけは、中2あたりの頃にカードデザインが一新されてしまって。未来っぽくなって、気に入ってた古い西洋絵画のような雰囲気がなくなっちゃった。
それで、なんか冷めちゃったんです。
ボク的に、ドンピシャなのは1997〜2000のカード。
- この頃のイラストのTシャツがあったら欲しい
- スマホケースがあったら?もちろん買う
- 手に届く範囲の金額なら原画も欲しいな(買えるんかな?)
例えば、「神の怒り」というカード。空がピカっと光って、兵士が雪崩のように倒れているイラスト。英語名が「Wrath of God」なので、「ラスゴ」と呼ばれていました。

知らない人が見たら、「ふーん、そう」。
あの頃にMTGをやってた人には、たまらなく懐かしくて愛おしい。
ラスゴTシャツがあったら?
そんなん欲しいに決まってる!(頼む、販売してくれ)
もうやめて随分経つし、上の子が生まれた頃に売ってしまいました。けど、MTGはボクのアイデンティティを構成する1つのピース。だからこれほど惹かれるわけです。
「ラスゴTシャツ」を着ることで、小5の夏休みにタイムスリップできるのです。
あの時代のMTGに熱狂していた1人であると、世界に表明することができるのです。
これが、『アイデンティティに刺さる』という感覚です。
めっちゃキモい話した気がするけど、イメージは伝わったかな?
キモいよりも、エモい!
Air Max 95 イエローグラデ

www.atmos-tokyo.comより引用
スニーカー好きのボクは、数年おきに同じ現象が繰り返されるのを、ホクホクしながら眺めています。NIKE「Air Max 95 イエローグラデ」の復刻です。
過去の超人気モデルは、5年くらいで復刻されるんですね。で、イエローグラデが復刻すると、毎回オジサン達が熱狂するんですw
このイエローグラデって、かの悪名高い「エアマックス狩り」で狙われてたモデルです。何度かあるスニーカーブームの中で、1番の熱狂だったんじゃないですかね?
20代の人は知らないと思いますけど、イエローグラデ履いてると、知らない人にボコされて、靴脱がされて奪われるんです。
ヤバすぎるwww
どんな世紀末よ。確かに20世紀末の話だけどさ
90年代に、
- 「イエローグラデを履いていた人」
- 「憧れていたけど、手に入らなかった人」
にとって、イエローグラデは美しい思い出なのです。
この靴を手にすると、青春時代が甦ってくるわけですよ。あの熱狂の中にいる自分を取り戻せるんです。なんと耽美な営みでしょう。
これが、『アイデンティティに刺さる』って感覚です。
ちなみに、ボクは、95年当時はまだ小学生なので、世代からは外れてます。イエローグラデ復刻は毎度スルーしてます(AirMax系は、加水分解するから敬遠しちゃう)。
ただ、気持ちはよーーーくわかる。
ボクにとっては、「DUNK SB」ってモデルが美しい思い出。もし、当時の人気カラーが復刻するなら、絶対に手に入れます。手に入らなかったら、多分発狂しますw
「MTG」も「Air Max 95」も権利ものなので、そのまま作品には使えません。
しかし、権利とは無縁のモチーフもたくさんあります。
- 自然にも、
- 神話にも、
- 歴史にも、
- 昆虫にも、
- 恐竜にも、
- 建築物にも、
- 乗り物にも、
- メロンクリームソーダにも、
- パブリックドメインになった古い絵画にも、
権利はありませんから。
ココを刺しにいけ!

あなたの仕事は、お客さんのアイデンティティを満たし、そのアイデンティティを他人に表明する機会を提供することです。
ここが、クリエータービジネスの一丁目一番地ですよ。
と言われても、掴みどころがないと思うので、ヒントを出していきますね。前半で長々説明した原則に当てはめて、とっかかりとして間違いないものばかりです。
人はみな懐古厨
若者は、昔を懐かしむオジン・オバンを「懐古厨」と揶揄します。
何をバカな。そもそも、人は誰しも懐古厨です。例外はありません。
昔の自分を思い起こして、今の自分に至った線を辿るのです。そうして、自分の原点を知る。この営みを求めない人間はいません。
どの時代を狙うか?
提唱者のエリクソンは、社会に出る前の13〜20歳頃の青年期に、成人を迎えるためのプロセスとして、「アイデンティティの確立」を経ると主張しています。
懐古でアイデンティティが強く発現するのは、「物心ついて〜社会に出るまで(18-22歳)」の記憶。若いときの思い出ですね。
あの時代、あの場所で、わたしはそこに立っていた
映画『ALWAYS 三丁目の夕日』は、昭和33年(1958年)の東京の下町を舞台でした。
金ローで初めてテレビ放映されたとき、たまたま見てたんですね。ボクは、昔が舞台の話を普通に楽しんだだけで、特別どうということはありませんでした。
その翌週、いとこの家に遊びに行ったとき、叔父さんがうちの母(ここは兄妹の間柄)に、「なぁなぁ、この間やってた三丁目の夕日見た?」と。
「俺たちの子供んときってさ、本当にあんな感じだったよなぁ。俺さ、なんかウルッときちゃってさぁ」と言ってたのが、すごく印象深かったんですね。
母は子供の頃、新宿に住んでたんですが、今みたいな大都会じゃなくて、本当に『三丁目の夕日』みたいな感じだったそうです。
え、新宿あんな感じだったの!?
そうそう。普通の庶民よ。庭で鶏飼って、〆てたらしいよ
- 「普通に面白い映画だったね」なボク
- 「懐かしさで涙が出てしまう」叔父さん
この温度差ですよ。
『三丁目の夕日』は、叔父さんのアイデンティティに刺さりまくったわけです。
「あの時代、あの場所で、俺はあそこに立っていたんだ」という感覚。過去と現在の自分をつなぐ1本の線を見つけた、という確かな感触。
映画のストーリー云々の話じゃないのはわかりますね。ハンドメイド作品でもそうですよ。別のところで、決定的な違いが生まれるのです。
アイデンティティを思い出せるものを手元に残したい
「〇〇コレクター」と呼ばれる人たちが収拾しているモノには、ある共通点があります。
子供の頃や青春時代に憧れていたものを、大人の財力で買い漁っているのです。良い歳した大人が、ブリキのおもちゃやソフビ人形を眺めて恍惚とする。
冷静に考えてください。集めて何するんですか?
何もしませんよ。ただ飾るだけです。
正味のところ何を買っているかと言えば、「過去の思い出」なんですね。
今の自分につながっている何か。アイデンティティを思い出せるアイテムを、手元に残しておきたい。それだけなのです。
確かに…。集めているのは、思い出なんだね
ひとつ、未来予知をしてみましょう。
宇宙時代になって、地球から飛び出していく宇宙移民第一世代は、こぞって地球儀を買っていくでしょう。賭けても良いですよ。
思い出の回収
「思い出の回収」というキャッチーな言い方もできますね。
ボクにも覚えがあります。
ボクが保育園児だった頃、うちには福音館書店の定期購読の絵本がありました。それで、すごく気に入っているのが2冊あったんです。
うち1冊は実家にあったので回収しました。娘も気に入ってくれたようです(もちろん、ボクのような思い入れはなく、数ある絵本のうちの1冊としてですが)。
もう1冊はどうしても見つからない。絵本のタイトルは覚えておらず、絵の雰囲気が朧げに記憶に残っているくらい。
そこで、福音館書店のバックナンバーを調べていくと、「あ…。これだ」と見つけました。

『サンタさんのうちへいけるかな』というタイトルでした。メルカリで安く出品されてたので、速攻ポチりました。
正味のところ、ボクが買ったのは「本」ではなく、「思い出」の方。この買い物は、「思い出の回収」だったんですね。
この世からその存在がなくなると、「寂しい」と思うもの
この世界から「それ」が消え失せてしまったと想像したときに、たまらなく「寂しい」と思うもの。それは、きっとアイデンティティの一部です。
こう考えてみましょうか。
アイデンティティは、見えないけれど体の一部であると。アイデンティティを含めて自分であると。失ったら、幻肢痛のような痛みを覚える。
そう考えると、「自己同一性」という変な訳語は、的を射た表現かもね
アイデンティティは消えていく
実は、多くのアイデンティティは、放っておくと消えていきます。
ボクが通っていた小学校は、統廃合でなくなってしまいました。あの学舎も、プールも、校庭も、もうどこにもない。そう思うと、心臓の奥がキュッとします。
実家や、田舎のおじいちゃんおばあちゃんの家を取り壊した経験がある人は、どんな気持ちだったでしょう。思い出が、ピュウと風に飛ばされてしまった心持ちでしょうか。
ボクが育った東京下町も、マンションだらけになって様変わりしました。昔の見ていたあの広い空がもう拝めないと思うと、急にセンチメンタルになります。
あまり意識しませんが、
- 神社やお寺の風景がなくなったら?
- 田んぼも畔道もなくなって、ショッピングセンターになったら?
- 和装が、教科書の中だけでしか見られなくなったら?
意識したことなかったけど、寂しいなぁ
都会っ子だったけど、それでも寂しく感じるよ
「寂しい」と思ったら、そこにあなたのアイデンティティが隠れているということ。
放っておいたら失われていくアイデンティティを、何かしらの形で浮世に留めておく。これもまた、クリエーターに求められる仕事だと思いませんか?
失われていくアイデンティティを保存したい
3,000年以上昔、バビロン王ネブカドネザル1世は、敵国エラムに奪われたマルドゥク神像を奪還しました。歴史に刻まれた中で、彼の最大の業績です。
石像を持って帰ってきて、大興奮する民衆の姿が思い浮かばないかもしれませんね。
しかし、当時のバビロン民には大切なことだったのです。なにせ、一度は失われたシンボル、体の一部にも等しいアイデンティティが、返ってきたのですから。
今にも失われようとしているアイデンティティを保存することは、ある範囲の人たちの心の救いになります。
日本という国が消滅して、日本人が絶滅危惧民族になったと想像してみましょう。わずかな生き残りであるあなたは、どんな態度を取るでしょう?
- どんな様式の家に住んで、
- 何に手を合わせて拝み、
- どんな服に袖を通すでしょう?
急に、和のテイストが恋しくなりますね。
今にも消えそうになっている何かに焦点を当てる。それは文化かもしれませんし、自然かもしれません。
一度は失われたアイデンティティを復活させるという発想もあるでしょう。人は、失ってはじめて、その大切さに気づくものですから。
記憶喪失になって、自分を思い出せる足跡
あなたが、「記憶喪失」になったとしましょう。
自分の名前も、家族も、故郷も、経歴も、何もかもわからなくなってしまった…。
さて、「何」を辿っていったら、記憶を取り戻していけそうか?
その「何」にノミネートされる一つ一つが、あなたのアイデンティティの構成要素です。色々ありますね。1つじゃなく、結構たくさんあるはずです。
もし、「旧式ミシン」を手に取って記憶が蘇るなら、旧式ミシンに絡むアイデンティティが、あなたの中にあるということです。
ボトルシップ愛好家のおじいちゃん達は、若い頃に船乗りをやってた人が多いそうです。「船」は、自分を思い出せる足跡。だから惹かれてしまうんですね。
あなたは、「何」を辿ったら、記憶を取り戻せるだろう?
誇らしい職業や技能
社会から与えられた役割も、アイデンティティの1つでしたね。
武士にとって、日本刀は最大のアイデンティティだったでしょう。江戸時代においては、帯刀は武士階級の特権でしたから。
日本刀を持つことは、「自分自身が武士である」というアイデンティティを満たしつつ、同時に、周りの人にも武士であると表明することになります。
極めて強い購買動機ですね。だから、大枚叩いても名刀が欲しいわけです。
アイデンティティとして機能する職業
とはいえ、職業ならなんでも良いわけじゃありません。
「わたしはコンビニ店員である!」と、積極的に表明したい人はいないでしょう。
社会的に地位が認められていて、排他的(簡単にはなれない)な職業でないと、アイデンティティにはなりません。
「東大卒」はアイデンティティになるけど、「Fラン卒」はアイデンティティにならないのと同じ話です。
努力して勝ち得た職業が良いですね。
- 医者
- 料理人
- 教師
- 警察官
などは、筋が良さそうです。
そのために人生のリソースを費やして、努力の末に勝ち得た社会的役割です。こういう職業が、アイデンティティとして機能するわけです。
職人系やスポーツ選手も合っていますね。デザイナーや大工やラッパーなども、筋の良いターゲットになるでしょう。
好きな職業じゃなくても良い?
「好きでなった職業か」は、必ずしも条件ではないと考えています。
ボクの例でいくと、新卒でやった営業マンは、全くなりたかった仕事ではありませんでした。在職中も、一度も好きにはなりませんでした。
でも、成果は出て、身に余る評価を受けました。そうすると、「よっ、営業マン」と呼ばれる自分は、意外なことに「自分らしい」と思えるのです。
「軍人」も、好んでの入隊ではない人も多いと思います。それでも、「自分が軍人である」というアイデンティティは感じていそうですね。
ここでの本質は、あくまで「社会的役割」です。社会から重宝されている役割なら、アイデンティティとして機能するのだと考えています。
それを好きな自分が好き
「ただ好き」はアイデンティティになりませんが、「それを好きな自分が好き」まで行くと、アイデンティティになります。
あるいは、「この素晴らしさを、たくさんの人にも教えてあげたい」という利他精神まで昇華していると、アイデンティティとして機能します。
ボクはラーメンが好きですが、「ラーメンを好きな自分が好き」まではいきません。みんなにラーメンを広めたいとも思っていません。
ただ、個人的に美味しく食べられればそれで良い。このレベルでは、アイデンティティとして弱いです。
ボクのいとこは、中学生の頃からずっと「ギター」をやってて、腕前はプロ級(というか、一応プロ)。間違いなく、ギターはアイデンティティでしょうね。
「ピック」を使ったアクセサリーや、「ギターストラップ」を再利用したショルダーバッグは、アイデンティティを刺激するかもしれませんね。
廃棄されたスキー板やスケボー板は、しばしば再利用されて、ベンチに生まれ変わります。座り心地は最悪ですが、コアなスキーヤーやスケーターにとっては垂涎もの。
大好きな板の上に腰かける自分の姿は、いかにも自分らしい。その自分らしい自分像を手に入れるために、プレミアム価格を払うのです。
レアな属性
- 「普通免許」は、アイデンティティになりません。「小型船舶免許」は、アイデンティティになっていそうです。
- 「東京都出身」は、あまりアイデンティティになりません。「父島出身」は、アイデンティティになるでしょう。
これまでの復習。
父島で一生を過ごし、島民としか接したことがない人は、アイデンティティとして機能しません。父島から本州にやってきて、「へぇ、父島から!」と言われて初めて、アイデンティティとして機能します。
レアな属性が、なんであれアイデンティティとして機能するのは、それがヒエラルキーで有利になるから。その社会で、注目を浴びることになるからです。
狩猟採集民だった祖先の暮らしを想像してみましょう。150人ほどの集団の中では、各自がそれぞれの役割を果たして、助け合って生きています。
「狩り」は重要な役割なので、要員が20人いたとしましょう。重要ではありますが、1人1人の重みは、20分の1です。1人減っても補充できるでしょう。
集団に1人だけ「キノコ見分けマスター」がいたとしましょう。狩りほど重要な役割ではないかもしれませんが、この1人は替えが効きません。
集団の中で、どちらが有利な立場か。シビアな話をすれば、人身御供を1人出さなきゃいけないとして、どちらが回避しやすいか。
本当におかしな話で、自分1人だけが「昔のガラケー」を使っていたら、それもアイデンティティになり得るんですね。
「三つ子」を産んだお母さんは、きっとアイデンティティに感じているんじゃないでしょうか?
軽々しく言えませんが、ある種の「不幸な出来事」ですら、それが過去のものとして消化済みであれば、アイデンティティになり得るのです。
アイデンティティを刺す4ステップ

新規事業の世界では、「優れた製品を作ること」よりも「解決される価値のある課題を見つけること」の方が重要と言われます。
どういうことだ!?
「製品そのもの」よりも「製品を求める理由」の方が、より上流だからよ
クリエータービジネスでも、同じことが言えます。
お客さんが、「表明する価値あるアイデンティティ」を特定することは、作品作りそのものよりも重要なのです。
そのための、実践的な4ステップを紹介しましょう。
- 帰属集団を洗い出す
- ヒエラルキーが気になる集団をピックアップする
- ヒエラルキーを上下する評価軸を特定する
- ヒエラルキーの高さを表明できる特徴を備える
この通りに考えると、お客さんが「優先的にお金を払って満たしたいアイデンティティ」に当たりをつけられます。
ステップ1. 帰属集団を洗い出す
まず、ターゲットのお客さんが帰属している集団をリストアップするところから始めましょう。
ペルソナ設定とも似ています。というか、ペルソナを設定する大きな理由の1つが、お客さんが属する集団を把握することにあるのです。
| 日本人 | 「日本人」という集団に帰属 |
| 北海道出身 | 「どさん子」という集団に帰属 |
| 30代 | 「30代」という集団に帰属 |
| 女性 | 「30代女性」という集団に帰属 |
| 個人事業主 | 「個人事業主」という集団に帰属 |
| デザイナー | 「デザイナー」という集団に帰属 |
| バンギャ | 「あるバンドのファングループ」という集団に帰属 |
という具合に、帰属集団に置き換えて考えるクセをつけると良いですね。
「年代」がわかると、どんな少年少女時代を過ごしていたかも特定できます。そうすると、「”モー娘。”や”GLAY”を聴いて育った集団」という帰属も見出せます。
1人の人間は、かなり多くの集団に帰属しています。AIの助けも借りて、うわっとリストアップするのがオススメ。
階層構造を意識しよう
↓のような階層で整理できると、なお良いですね。
- 日本人
>どさん子
>>道東民 - 個人事業主
>デザイナー
>>グラフィックデザイナー - 仏教徒
>浄土系
>>浄土真宗
原則として、より範囲が狭い集団が、より強いアイデンティティになるからです。
属性の掛け合わせ
ここで、「道東出身のグラフィックデザイナー」のように、掛け合わせた集団を作れることも注目に値します。
「道東に関するモチーフ」と「グラフィックデザイナーに関するモチーフ」を組み合わせたら、何が生まれるか?
クリエイティブな思索でしょう?
ステップ1の時点で、もうアイデア出そう!
ステップ2. ヒエラルキーが気になる集団をピックアップする
次に、ターゲットが帰属している集団の中で、特に「ヒエラルキー」が気になる集団をピックアップします。候補は、3〜5個程度で良いでしょう。
理由は、内輪でヒエラルキーが気にならない集団だと、アイデンティティを表明する動機が弱くなるから。ちょっと難解な日本語ですね。
要するに、ええカッコを見せたい欲が出ないと、購買意欲が起きないのです。
人が属するもっとも小さい集団は、「家族」です。が、家族内でヒエラルキーを上げたいとは思わないでしょう(お家騒動が起こるような上流民でない限り)。
だから、パジャマやバスタオルに、高い金を払おうという動機が起きづらい。ここを狙ってもしょうがない。
ま、それが家族の良いところなんだけどね
そう考えると、上流貴族は身内と一緒でも心休まらないんだね
ただ、こういう機微もあります。
「家族」の中でヒエラルキーを上げたいとは思いませんが、「ママ友」や「子育てインフルエンサー」の中でヒエラルキーを上げたい人は、ボチボチいます。
家庭内で使うアイテムでも、「ママ友」や「フォロワー」に見られるアイテムなら、見栄を張る対象になります。ここは狙ってOKです。
注目されたい集団か?
「ヒエラルキーを気にする集団はどこ?」と言われても、ピンとこないかもしれませんね。
わかりやすく、「その中で注目されたい集団か?」と言い換えてみましょう。ある種の「社交界」が、そこで繰り広げられているかということです。
うちのお寺は、父方が曹洞宗で、母方が真言宗です(逆だったかも?)。
しかし、曹洞宗や真言宗に属する1人として、注目されたいとは思いません。なので、道元や空海のTシャツを着たいとは思いません。
いや、「歴史好き」というアイデンティティもあるので、ちょっと着たい気もするが
↓の質問で、注目されたい集団を特定できます。
- おニューの服を着て行きたくなるのは?
- 化粧に気合いが入るのは?
- そこに行くのに、奮発して見栄を張りたい気持ちになるのは?
- 排除されるリスクが高いのは?
ある20歳の女子が、原宿に思いっきりおめかしして行くのなら、「原宿女子」は、ヒエラルキーが気になる集団ということです。
「港区女子」や「ヒルズ族」は、その最上級でしょうね。もう、内輪のヒエラルキーしか関心がないんじゃないんですか?知らんけど。
「排除されるリスク」って、なんだ?
「排除リスク」は、「集団から排除される可能性 × 排除されたときのダメージ」です。
小〜高校生にとって、学校内の集団は、排除される可能性がそこそこあり、かつ排除されるとツラいです。排除リスクが高いために、ヒエラルキーがとても気になります。
家庭内でヒエラルキーが気にならないのは、排除される可能性が基本ないから。
ホイ卒同士でヒエラルキーが気にならないのは、排除されても痛くも痒くもないから。
ステップ3. ヒエラルキーを上下する評価軸を特定する
その集団内において、何がヒエラルキーを上下するのでしょうか?
集団内で、「こういう人が尊敬される」「こういう人が注目される」の「こういう」に当てはまる評価軸を特定しましょう。
- スコアや順位か?
- 容姿か?
- 知識量か?
- 愛の強さか?
スポーツ(※選手の方)の世界は、スコアや順位が1番でしょうね。藤井聡太さんみたいに、強さを示す「タイトル」や「段位」が、上下する評価軸になるでしょう。
ある種のファン集団では、「愛の深さ」が評価軸になります。そこで、「推しの缶バッジを何個つけられるか?」というレースが起こるわけです。
趣味の集団だと、「知識の深さ」や「歴の長さ(古参か)」が評価軸になるでしょう。マニアックな知識を披露できることは、ヒエラルキー向上につながります。
評価軸は1つとは限らない
ある集団内で、ヒエラルキーを上下する評価軸は、1つとは限りません。
例えば、「ミニ四駆ファン」の集団を考えてみましょう。
普通に考えると、「レースでの速さ」が、唯一の評価軸。しかし、「カッコいいマシンにカスタマイズできる」という評価軸も、確かに存在します。
「お前の作るマシン、いっつもカッケーよな。レースは普通だけどさ」と。
戦国〜江戸時代の大名の「お城」にも当てはまります。
荘厳さで言ったら、信長の安土城や、秀吉の大阪城には勝てません。
そこで、
- うちの城は、「真っ白」でキレイだぜ
- うちの城は、「真っ黒」でクールだぜ
- うちの城は、とにかく「形が美しい」んだ
- うちの城は、本来の用途である「要塞」として優れているんだ
など、別の評価軸を持ち出して、注目を集めようとするわけです。
クラスの中もそうでしょ?
テストの点!足の速さ!背の高さ!スカートの長さ!
ステップ4. ヒエラルキーの高さを表明できる特徴を備える
では、どうやったら、その評価軸の高さを可視化できるでしょうか?
- 黒帯
- 勲章
- 紫衣(紫の袈裟は、高僧の証)
- 水泳帽につける「級」のマーク(ボクの地元だけじゃないよね?)
のような機能を果たす特徴が欲しい。
お。なかなか難しいな
難しいからこそ、クリエイティブなんじゃ
ITエンジニアは、よくプログラミング言語やフレームワークのステッカーを、PCにペタペタ貼っています。「PHP」とか「React」とか。
- 俺は、「PHP」のプロフェッショナルだぜ!
- 俺は、「React」が得意なんだぜ!
という表明です。
一切のディテールを排除した、研ぎ澄まされたシンプルなアイテムは、「わたしは本物のミニマリスト!」という表明に一役買っています。
- 登山愛好家なら、踏破した名峰のモチーフを身に付けたいのでは?
- 激辛愛好家なら、お気に入りのデスソースにちなんだアイテムを身に付けたいのでは?
こういう風に考えると、アイデアが出てくるんじゃないでしょうか?
「知識の深さ」は狙いやすい
集団によって評価軸は変わってきます。
と言いつつ、趣味の集団では、「知識の深さ」が注目を浴びること多い。クリエータービジネスでも、ここは狙いやすいかと思います。
「お前、わかってんな」というモチーフ。超メジャーではなく、仲間だけに伝わるような、絶妙なラインを攻めるわけです。
なんとも例が出しづらいのですが、
- ドラクエだと、「スライム」や「ゴーレム」はメジャーすぎ。「ホイミン」や「ゲレゲレ」や「ヘルバトラー」は、「おお、わかってんじゃん」となります。
- 歴史だと、「ナポレオン」や「家康」はメジャーすぎ。「メフメト2世」や「ヌルハチ」は、「え、そこチョイスしてくるんだ」となります。
- 仏教だと、「釈迦(ブッダ)」や「大日如来」はメジャーすぎ。「阿難陀」や「ナーガセーナ」は、「ほぅ、渋いね」となります。
全然わからん!
だからいいんじゃないか!
あなたの同類をターゲットにしよう

記事内で、たくさんヒントを出しました。
アイデンティティを刺しに行くには、お客さんのパーソナルな部分に踏み込んでいく必要があると、わかってもらえたと思います。
これ、他人に対して考えるのは、かなり難しいですよね。
筋が良いやり方は、自分自身のアイデンティティを特定するところから始めて、同じアイデンティティを持っているお客さんをターゲットにする方法です。
あなたの同胞、同類、仲間を、ターゲットにしていく。これが効率の良いやり方です。
だから、自己分析が大事なのだよ
最高に美しい姿
ボクの中には、「理想の作家像」があります。人それぞれ考えがあるので、強制はしませんが、聞く価値はあるかなと。
「あなた」は、あなたのアイデンティティに根差した、あなたらしい、あなたにしか生み出せない作品を作る。その作家としての役割が、あなたのアイデンティティになる。
「お客さん」は、あなたの作品を身につけたり飾ったりすることで、アイデンティティが満たされる。
作家活動を通して、「あなた」と「お客さん」、双方のアイデンティティが深く満たされる。双方が、自分らしい自分になれる。
「あなた」と「お客さん」だけに理解できる世界が繰り広げられていて、外の人には、何がウケているのかサッパリわからない。わからないので、真似のしようがない。
これが、最も美しい姿だと思います。お金では決して得られない、心の充足感をもたらしてくれると信じています。
「その感じ、良いなぁ」と思ったら、気が合うね
ボクはこの記事を書くことで、アイデンティティが満たされています。なぜなら、この記事を書ける人間は、世界でボクだけだから。世界のどこ探したって、こんな話できる人いませんよ。AIにも書けません。
そして、ボクの考えに共鳴してくれるあなたに、このメッセージを届けられている。その事実が、どれだけ幸福感を与えてくれているか。
アイデンティティは過去からサルベージ
なんだかんだ言って、「懐古厨」は強力なキーワードですね。
誰しも、過去の美しい思い出を、
- とっておきたい
- 取り戻したい
- しがみついていたい
と、思っているのです。
あなたが持つ美しい記憶。
それと似たような記憶を持っている人が、必ずいます。
また、古い記憶ほど少なくなっています。それでもなお残っている記憶は、アイデンティティである可能性が高いでしょう。
「サルベージ(salvage)」は、沈没船から遺物を引き上げることを指します。あなたの過去から、あなたのアイデンティティをサルベージしてみてください。
狙い目は、「物心ついて〜社会に出るまで(18-22歳)」でしたね。
青春時代を過ぎた年代だと、ステージが変わります。
思い出よりも、1人の社会人として、「社会の中で果たす役割」や「社会の中で目立つレア属性」の方が、アイデンティティとして機能する。と考えて良いでしょう。
実家に帰ったら、アルバムをペラペラめくってみてはいかがでしょう。過去の記憶が蘇ってくるかもしれません。昔の通学路や通勤経路を歩いてみても良いですね。
なんか、アーティストみたいだね
そのつもりで話してるけど?
ボクのお気に入りのキャップ
最後の最後。ボクの事例をひとつ共有して、終わろうと思います。
ある展示会で、「あ…」と、思わず衝動買いしたキャップがあるんです。計画的な人間なんで、衝動買いなんて5年に1回くらいですよ。
それがこれ↓

昔っからある『すてきな三にんぐみ』って絵本がモチーフ。
この絵本、ボクが通っていた保育園にあったんですよ。かれこれ30年忘れてました。
当時、この絵本が「好き」というよりは、「怖いな」って。一応いい話なんですけどね。当時のボクにとって、あの「三にんぐみ」は恐怖の対象だったのです。
でも、ボクにとっては、美しい思い出の一部。
それを思い出したのです。
高校生の頃は、ストリート系だったので、NEW ERA被ってました。最近はみんな被ってますね。当時はイキってるストリート系かBボーイしか被ってませんでした。
でも、ボクにとって、「ニューヨークヤンキース」も「ロサンゼルスドジャース」も、つながりはありません。そんなに野球好きじゃないですし。
それよりも、『すてきな三にんぐみ』の方が、よほど自分らしいと思える。
このキャップを被ると、幼い自分から伸びる1本の線がつながるのです。「あの時代、あの場所で、ボクはあそこに立っていたんだ」と、確かに思えるのです。

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