現役専業ハンドメイド作家の奥さんのマーケティングやってます♪
作品を購入してくれたお客さんに同封する感謝のお手紙を、「サンキューレター」と呼びます。要は「お礼状」ですね。
カードサイズの場合は、「サンキューカード」とも呼ばれます。
さて、そんなサンキューレターですが、
- どんなメリットがあるのでしょうか?
- 書くとしたら、どんな内容を書けば良いのでしょうか?
- 手書きが良いのでしょうか?印刷でも良いのでしょうか?
そんな悩みにズバッと、キレイに、一切の憂いなく回答しましょう。もちろん、雰囲気論ではなく、いつも通り論理的に。
あと、サンキューレターの同梱の仕方を間違えると違法になるので、この辺りにも触れておきましょう。
一応言っておくと、サンキューレターは間違いなく効果ある。けど絶対にやらなきゃいけないわけじゃないよ
サンキューレターが与える心理効果
まず持って、「サンキューレター」や「サンキューカード」は、書く意味があるのか?という点について疑問に思う人もいるでしょう。
なんせ、ただのお手紙です。何の役にも立ちません。言っちゃ悪いですが、お客さんにとってはゴミみたいなもんです。
しかし、サンキューレターはバッチリ機能します。
心理学の知見を使って、その効果を紐解いていきましょう。
役に立たないけど、意味はあると…?
そう。取引上は何の役割もないから、100%感情の話だ
返報性の原理
人間には、「良くしてもらった相手には、相応に報いなければならない」という、一種の強迫観念があります。心理学では、「返報性」と呼ばれています。
『半沢直樹』で、大和田常務が言っていた「施されたら施し返す。恩返しです」というセリフ。この感情が、まさに返報性ですね。
要するに、「ギブ&テイク」の精神ね
そう!「ギブ」と「テイク」を、イーブンに保っておきたいわけよ
相手から受けた「テイク」が想像より大きかったら、「ギブ&テイク」の比率が崩れます。イーブンに戻すため、相手に「ギブ」し返さなきゃいけない。こういう心理です。
サンキューレターは、本来はなくてよいもの。普通の買い物ではもらいません。だからこそ、「そこまでやってくれたんだ!」という「ギブ」の印象を残せるのです。
結果として、サンキューレターを受け取ったお客さんは、何かしらの形であなたに報いたい気持ちになるでしょう。
ピーク・エンドの法則
「ピーク・エンドの法則」とは、ある体験の満足度が、
- 「ピーク(もっとも感情が動いた)の瞬間」
- 「最後の瞬間」
の2つの印象だけで決まってしまうというものです。
例えば、あなたが「焼肉屋さん」に行ったとしましょう。
実際に食べている間は、さまざまなお肉やメニューに舌鼓を打っていることでしょう。噛み締める度に、満足感を味わっています。
しかし、後になって振り返ったら、
- 1番美味しかった「特上タン塩」
- 締めで食べた「ユッケジャンクッパ」
の印象だけで、全体の満足度が決まってしまうのです。
「キムチ」や「センマイ刺し」や、途中で食べてなかなか美味しかった「ロース」は、記憶としての満足度には、ほとんど影響しません。
逆に言えば、「ピーク」と「最後」だけ良いイメージを演出できれば、あとは平凡でも構わないということにもなります。
さて、ハンドメイド作品を購入するお客さんにとって、もっとも感情が動く「ピーク」の瞬間はいつでしょうか?
それは、届いた作品を開封する瞬間でしょうね。
駅弁の箱を開けた瞬間にも似てるよね
作品との初対面で気持ちがアガっているお客さんに、追い討ちをかけるようにサンキューレターを読ませるわけです。
- この作品、思った通り実物もステキ!
- パッケージもいい感じ!
- おまけに、手書きのメッセージまで!
という感じで、ピークの瞬間の好印象を底上げできるんですね。
で、後から振り返ったときの購買体験の満足度を上げる。これも、サンキューレターがもたらす心理効果です。
サンキューレターで期待できるビジネス上のメリット
サンキューレターが、お客さんの心にどう作用するのかがわかりました。
では、ビジネスの文脈では、どんなメリットに還元されるのでしょうか?
効果1. レビュー率が上がる
サンキューレターをもらったお客さんは、「返報性」によって、あなたに何かしら報いたい気持ちになっています。
わかりやすく言えば、お客さんはあなたに、「ありがとう!」と言いたい気持ちでいっぱいになっているのです。
その気持ちの捌け口になるのが、商品レビューだ!
お客さんはいち早く、「ギブ&テイク」の比率をイーブンにしたいので、すぐにでもレビューをくれるでしょう。もちろん、良いレビューをです。
高評価のレビューが貯まれば、
- これまで以上にお客さんから選ばれやすくなる
- 検索アルゴリズムで優遇されて、上位表示されやすくなる
といった波及効果につながります。
レビューが効率的に積み重なっていく状況は、あなたの売上アップを強力に後押ししてくれるでしょう。
ウマい話があったもんだ〜
効果2. リピートされやすくなる
ややマイナーですが、「SMOT(エスモット)」というマーケティング用語があります。
「Second Moment of Truth」の略で、「2度目の購入(=リピート)を決意する瞬間」という意味で使われています。
最終的には、ポチる瞬間に決意するわけですが、心はもっと早い段階で決まっています。「リピート購入する」という方針を、心が最初に決めた瞬間が「SMOT」です。
で、その「SMOT」なる瞬間は、一体いつ訪れるの?
ヒントはすでに出てるぜぃ
先ほど、その購買体験の満足度は、「ピーク」と「最後」の印象だけで決まると話しました。「ピーク・エンドの法則」です。
お客さんがリピート購入を決意する瞬間は、
- 「ピーク」
作品が届いて開封したとき - 「最後」
最後に作品を使ったとき
の2つのポイントに集約されるのです。
サンキューレターは、前者の「ピーク」の瞬間を盛り上げます。で、購買体験全体の満足度が底上げされるので、「リピート購入につながる」というロジックになるのです。
やるなら手書きで!
サンキューレターは、書き方によって効果がガラッと変わります。
効果が高いものから順位をつけると、次のような具合です。
サンキューレターの効果が高い順
- 手書き+お客さん個人に向けた文章
- 手書き
〜(越えられない壁)〜 - 手書きの印刷
- タイプした文字の印刷
サンキューレターの本質は、お客さんから見たら、「わたしのための特別対応」です。
「わたしのために、そこまでやってくれたんだ!」という感情が全てです。
だからこそ、効果が高いのは手書き。手間がかかりますから、「わざわざ、わたしのために書いてくれたんだ!」という特別感が伝わります。
欲を言えば、通り一辺倒の内容ではなく、そのお客さんに関する個別の内容を含んでいると、さらに効果が上がります。
印刷した時点で、効果はガッツリ下がると思ってください。印刷するくらいなら、もうサンキューレターはやめて、別の施策を打った方が良いでしょう。
ネットショップから同梱されてる手紙って、だいたい手書きでしょう?
確かに。印刷だったら、読む気も起きないまま「ポイッ」だな
【意外】中身は割とどうでも良い?
では、サンキューレターには、何を書けば良いのか?
気になっているのはこれですね。
しかし、ことサンキューレターに関しては、中身は肝心ではありません。
え?こういうのって、「中身が重要!」っていつも言うじゃん!?
うん。でも、サンキューレターだけは例外なんだよね
繰り返しになりますが、サンキューレターの本質は、「わたしのために、わざわざお手紙を書いてくれたんだ!」という気持ち。特別対応への感謝の気持ちです。
もらって嬉しかった体験だけが記憶に残り、中身の文章は、よほど名文でなければ記憶に残りません。手紙を書くこと自体が重要なのであって、中身は重要ではないのです。
あなたの子供が、お母さん(あるいはお父さん)のために、ケーキを手作りしてくれたとしましょう。
そのケーキが甘すぎても、見た目が歪であっても、そんなことは一向に構いませんよね。嬉しいのはケーキじゃなくて気持ちですから。これと同じです。
確かに、中身よりも気持ちが嬉しいんだよねぇ
NGワードだけ気をつけよう
何を書いても機能するサンキューレターではありますが、逆に書いてはいけない内容はあります。
サンキューレターに書いてはいけないこと
- レビューのお願い
- 前のめりな商品の案内
- その他、宣伝行為の全て
サンキューレターは、あくまで「人対人」の関係。気持ちのやり取りです。
サンキューレターを受け取ったお客さんは、あなたから「ギブ」された気持ちになります。だから、あなたに「ギブ」を返そうと思うのです。
しかし、売り手の下心が入ると、途端に、ただの「店と客」の関係になります。
- 「ああ、レビューを書いて欲しくて寄越してきたのか」
- 「ああ、買って欲しくて寄越してきているのか」
と思われれば、それはもうあなたからの「ギブ」ではありません。逆に、お客さんに「ギブ」を求めてしまっています。
年賀状に、クーポン券が付いていたらどう思うでしょうか?
年始の挨拶ではなく、もはやただのチラシです。チラシをもらって、「わざわざありがとう!」と思う客が、どこにいるでしょうか?
お客さんは、自分に「ギブ」を求める相手には、とことん冷めた視線を向けるものよ
いわゆる「テイカー」ってヤツだよな…
サンキューレターの書き方の構成要素
「何を書いても良いよ」と言われても困ると思うので、サンキューレターの構成要素を提示しておきます。
この通りに文章を準備すれば、まず失敗はありません(まぁ、中身は重要じゃないんで、どう書いても失敗はしないんですけどね)。
サンキューレターの構成要素
- お客さんの名前
- 購入してくれたことへの感謝
- お客さんへの個別のメッセージ
- 次回につながる〆
ちなみに、毎回バラバラの内容で手紙を書くのは大変すぎます。高単価ビジネスなら相応の価値がありますが、ハンドメイドの単価はたかが知れていますからね。
毎回全文を考える必要はありません。大まかな「型」を決めて、型からほんのちょっと文章を変えればOKです。
幸いにも、あるお客さんに書いた手紙は、他のお客さんからは見られません。みんなに大体同じ内容で送っても、お客さんの反応は変わりません。
構成要素1. お客さんの名前
1行目はもちろん、宛先として、「〇〇さまへ」とお客さんの名前を書きます。
サンキューレターは、「1対多」「店対お客様各位」ではなく、あなたとお客さんの「1対1」「人対人」のやり取りです。
ならば当然、相手の名前を入れて然るべきですね。
中身よりもずっと大事な話だ!
構成要素2. 購入してくれたことへの感謝
宛先に続くのは、文章本文の最初のパート。一文目は、あなたがお客さんに1番伝えたい内容を書きます。
もちろん、「買ってくれてありがとう!」という感謝の気持ちを伝えるところから始めましょう。
構成要素3. お客さんへの個別のメッセージ
続いて、あなたの作品をこれから使うことになるお客さんへのメッセージが続きます。
作品を通して、お客さんに届けたい理想の未来を伝えると良いでしょう。
できることなら、お客さん個人に宛てたメッセージが望ましいですね。購入前のやり取りで、利用シーンなどがわかっているようなら、ぜひ触れてあげてください。
あなたがの作品を通して、「お客さんにどうなって欲しいか」を書こう!
構成要素4. 次回につながる〆
締めに際しては、
- 「わたしは、今後もあなたと良い関係でありたい」
- 「またご一緒したい」
という気持ちを伝えましょう。
今回で終わりではなく、また次の機会、その次の機会も願っていると。
ただし、「またのご購入お待ちしています」のように、ビジネスライクにまとめないよう注意してください。あくまで、「人対人」の関係ですから。
「またお会いできることを楽しみにしています」とか、「使って気になることがあれば、ぜひ教えてください」など、そういう温かみのあるフレーズを選びましょう。
サンキューレターの例文
前述の構成をつないで、いくつか文面を考えてみました。
あくまで例なので、ところどころ文章を変えて、あなたなりのサンキューレターに仕立ててください。
例文①:個人の情報がないパターン
〇〇さまへ
今回は、数あるショップの中から、△△(あなたのブランド名)を選んでいただき、ありがとうございます。
お買い上げいただいたお財布は、持った人の気持ちが明るくなるように、ビビッドなカラーリングでまとめました。〇〇さまの日々が、今以上に明るく元気になるようにと願っています。
また〇〇さまに選んでいただけるよう、魅力的な作品を作って参ります。またの機会を心より楽しみにしています。
例文②:個人の情報があるパターン
〇〇さまへ
この度は、プレゼント用に、△△(あなたのブランド名)の作品を選んでいただき、ありがとうございます。
お買い上げいただいたグラスセットは、ご友人への結婚祝いでしたね。〇〇さまのご友人を想うお気持ちが伝わることを、心から願っています。
もしご友人さまがお使いになった後で、何か不具合などありましたら、ぜひ遠慮なくご連絡くださいませ。
例文③:リピート客のパターン
〇〇さまへ
△△(あなたのブランド名)を選んでいただき、ありがとうございます。今回は、2度目のご購入ですね。再び選んでいただけて、とっても嬉しいです。
今回お買い上げいただいたピアスは、前回のものと比べるとサイズが大きく、存在感があります。ぜひ、違いを楽しんでみてください。
来年2月頃に新作をリリース予定なので、またご覧いただけると嬉しいです。もし新作へのご意見・ご要望などあれば、ぜひおっしゃってくださいね。
長さ的には、MAXでもこんなもんかと思います。もし紙面が小さければ、もっと短くまとめてもらっても構いません。
ボクの性格上、ちょっと硬めの文章になっていますが、もっと崩して書いてもらっても大丈夫です。語尾に「!」をつけても、もちろんOK。
違法となる同梱方法に注意
これはあまり知られていないのですが、宅配便に手紙を同梱して送るのは違法行為です。手紙は、ちゃんと切手を貼って、ポストに投函しなければなりません。
ただし例外があります。
手紙は、法律用語では「信書」と呼ばれます。次の条件を満たせば、信書の同梱発送が可能となるのです。
信書が宅配便で送れる条件
- 荷物と一緒に送ること
- 荷物が主体で信書が付属(従)であること
- 信書の内容が荷物の送付と密接に関連すること
- 無封(信書に封をしていない状態)であること
えっと、つまり…
難しく考えなくて大丈夫!
- 裸の紙のまま同梱
- 手紙を封筒に入れても封をしない
なら、同梱発送しても問題ありません。
覚えておいてほいて欲しいのは、手紙を封筒などに入れて、封をしたら同梱不可になるということです。
書くのが面倒になってきたら
サンキューレターは、なかなか手間のかかる施策。初めは売れたい一心で、「何でもやってやろう!」という意気込みで始めたかもしれません。
しかし、ある程度売れるようになってくると、サンキューレターを書くのが億劫になってきます。
ヘタに印刷で代替しようと思えば、効果は劇的に下がります。もはや、紙資源のムダにしかなりません。
「書くのめんどくせぇなぁ」と思い始めたら、別の施策を考えた方が良いね
サンキューレターは1つの手段に過ぎない
サンキューレターは、「レビュー」と「リピート」対策の、1つの手段に過ぎません。絶対にやらなきゃいけない施策ではありません。
結局のところ、開封した瞬間の気持ちをアゲさせて、「ここまでやってくれるんだ!」と思わせれば良いわけです。
同じ目的を果たせるなら、必ずしもサンキューレターである必要はありません。
例えば、「インストラクションカード」兼「ギャランティーカード」としてみてはどうでしょうか?
- 「インストラクションカード」
作品の取り扱いやメンテナンスの方法を丁寧に記す - 「ギャランティーカード」
間違いなくあなたの作品であり、故障修理の受け付けを保証する
これらをセットにして、厚手の紙に印刷します。2つ折りの冊子のようにしても良いでしょう。
そして、ギャランティーカードが有効である証として、ブランドロゴのハンコでも押印してみてはどうでしょうか?
おぉー!確かに、これは特別感あるな!
お客さんがハンドメイド作家に期待しているクオリティは、大幅に超えていますね。これなら、サンキューレターの代わりは十分務まるでしょう。
やや値の張る同梱物になりますが、毎回お手紙を書く手間を省けると考えれば、十分に経済的だと思います。
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