現役専業ハンドメイド作家の奥さんのマーケティングやってます♪
ショップやSNSにアップする作品画像は、せっかくだから世界観を伝える魅力的な1枚にしたいですよね。
作品の雰囲気とマッチする「小物」を背景に入れたりなんかして。
SNSでよく見る!
雰囲気でるよね〜
でもちょっと待った!
あなたがやろうとしている「小物」を撮影する行為、著作権の侵害になるかもしれませんよ?つまり、違法かもしれないってことです。
法律というものは得てして、完全に白黒がつけられないケースが多いです。著作権に関する法律もその1つでしょう。
しかしハンドメイド作家のSNSやショップを見ていると、「これは明らかにクロ(違法)だろ」っていう画像が出てきます。
現実的には、問題に発展しないケースが多いと思います。でも、「だからやっちゃえ」は違うと思いませんか?
よく見る洋書を撮影している人も、厳密には違法だと思うよ
え、そうなの!?
ボク自身は法律の専門家ではありませんが、ボクなりに「これ以上は超えてはいけないライン」を決めています。
このラインを守っている限り、違法になる可能性は低いと思われます。
「気づかないうちに犯罪を犯してしまった…」ということがないよう、ぜひ最後までチェックしてみてください。あなたの身を守るために。
*あくまで素人の意見です。この記事を読んで行動した結果について、責任を負うものではありません。厳密な法的解釈を求める場合は、法律の専門家へご相談ください。
そもそも著作権って何?
そもそも「著作権とはなんぞや?」から始めていきましょう。
「著作権」とは、「著作物」を創作した者(「著作者」)に与えられる、自分が創作した著作物を無断でコピーされたり、インターネットで利用されない権利です。
公益社団法人著作権情報センター
つまり著作権とは、オリジナルの作品を、他人に勝手に利用されないための権利ですね。
「著作物」とは何を指すのか?
著作権で守られるのは、「著作物」と決まっています。では、「著作物」とは一体どこまでの範囲が含まれるのでしょうか?
(著作物とは)思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
著作権法第2条第1項第1号
この一文から、「著作物」の定義が見えててきます。
- 「思想又は感情」を
→「単なる事実やデータ」など(人の思想や感情を伴わないもの)が除かれます。 - 「創造的」に
→「模倣品」や「ありふれたもの」(誰が表現しても同じようなもの)が除かれます。 - 「表現したもの」であって
→「アイデア」など(表現されていないもの)が除かれます。 - 「文芸,学術,美術又は音楽の範囲」に属するもの
→「工業製品」などが除かれます。
参考:文化庁ホームページ
というわけで、何でもかんでも著作権の対象にはなりません。
著作権法では、例として以下のようなものが著作物として紹介されています。
この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
著作権法第10条
- 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
- 音楽の著作物
- 舞踊又は無言劇の著作物
- 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
- 建築の著作物
- 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
- 映画の著作物
- 写真の著作物
- プログラムの著作物
ポイントは、「工業製品は著作物ではない」というところですね。
ちなみにこのサイトは、ボクの思想を文章で表現したバリバリの著作物だよ
撮影しただけでも侵害になるのか?
著作権とひと口に言っても、その中にはさまざまな権利に枝分かれしています。
イメージしやすいのは「複製権」。複製権により、その作品を再生産できるのは、著作権者本人だけとなります。だから他人が勝手に、「ドラえもん」のイラスト描いたTシャツを販売することはできないわけです。
うんうん、これがザ・著作権のイメージだよね
インターネット上に画像をアップする権利は、「公衆放送権」に当たります。
そのため、たとえお金を払って購入したものであっても、ドラえもんのグッズを撮影し、SNSやブログにアップロードする行為は、公衆放送権の侵害になるのです。
「ちょっと厳し過ぎない?」と思った人もいるかもしれませんね。
しかしこれが映画やマンガだったら、他人が勝手にアップロードするのはアウトですよね?法律上は、ただのグッズでも映画でも、同じ著作物なのです。
たかが撮影小物であっても、公衆放送権の侵害は成立してしまうんだ
著作権を侵害するとどうなる?
では、もし誤って著作権を侵害してしまったら、一体どうなるのでしょうか?
民事の損害賠償
著作権侵害で訴えられたら、多くの場合は「差し止め請求」を受けることになります。直ちに著作権侵害をやめさせられるということです。
これは当たり前の話で、追加で著作権者は、損害賠償を請求することもできます。
請求される金額は、著作権者がどれだけ損害を被ったかの計算に依ります。一概にいくらというものではありません。
ただし「請求額=被告が支払う金額」とは限りません。法廷で争えば、裁判所が認めた金額が、支払う必要のある金額となります。
以下の弁護士事務所の記事によれば、100万円程度までに収まるケースが多いようです。
記事原稿や画像の無断転載など著作権侵害の損害賠償額について解説
刑事の罰則
もし故意に著作権侵害を行った場合は、刑事上の罰則も科されます。
罰則は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
著作権侵害にならないケース
インターネット上には、他人の著作物が登場する画像や動画が、数え切れないほどアップロードされています。
違法なケースも多いものの、必ずしも全てが違法なわけではありません。なぜなら、著作権侵害にならないケースが存在するからです。
例外①:許可をもらった場合
当たり前っちゃ当たり前ですが、著作権者に「使っていいよ!」と言われていれば、著作権の侵害にはなりません。
そのためには、「どうしても使いたいです!使わせてください!」と、著作権者に問い合わせなければなりません。
ただ現実的には、わざわざ問い合わせなんてしないですよね。だから最初から、危ない素材は使うべきではないのです。
ボクもやったことない
そんなめんどくさいこと
例外②:個人利用
個人的利用の範疇であれば、著作権の侵害にはなりません。
- 子供のリュックサックに手作りの「ミッキー」のキーホルダーをつける
- 友達同士のLINE内のやり取りで、「黒執事」のイラストを見せ合う
は、著作権侵害にはなりません。
ショップの商品画像は、商用利用なので、当然ながら個人利用とは認められません。
加えて、SNSに関しても、個人的利用の範疇には含まれません。
そのため販売はしていなくても、個人が、漫画キャラのイラストを描いてSNSにアップするのは、厳密には著作権侵害になります。
企業側に実害がないから、黙認されているだけ
例外③:写り込み
以前は、家族写真で、子供が履いていた靴下のキャラクターが写っているだけでも著作権侵害でした。
え、なんか理不尽じゃない?
というわけで、法改正でこういう「写り込み」は例外扱いになったんだ!
現在は、次の要件を満たした「写り込み」は、著作権の侵害には当たりません。
「写り込み」が認められる条件
- 分離困難性
:他人の著作物が、映像などにたまたま写り込んでしまい、そこだけ分離するのが難しいこと。 - 軽微性
:他人の著作物が、全体に占める影響(面積など)が小さいこと。 - 利益不侵害性
:写り込んだ著作物によって、著作権者のビジネスに損害を与えることがないこと。
インフルエンサーが、ルームツアーのVLOGを撮影したとしましょう。
その中で、「キャラクターのぬいぐるみ」や「ブランド物のバッグ」が映ってしまっても、著作権を侵害したことにはなりません。
作品画像での写り込みはグレー
しかしハンドメイド作家が、他人の著作物を小物として、作品を撮影した場合はどうでしょうか。
写真のメインはもちろん作品です。他人の著作物は、端っこにちょっと写るくらいでしょう。撮り方にもよりますが、軽微に収めることは可能です。
また、著作権者のビジネスの邪魔になることもないでしょう。
しかし、「分離困難性」には疑問があります。たまたま写り込んだとは言えませんよね?わざわざ撮影するために、その小物を選んで置いたわけですから。
そのため、作品画像内の他人の著作物の写り込みは、黒に近いグレーだと思います。
撮影に含めると違法性がある小物
ここまでの著作権に関する情報を元に、「違法性がある撮影小物」を挙げてみました。
著作権侵害になる撮影小物
- キャラクターグッズ
- 本・ポスター
- ブランドロゴ付き製品
- デザイナーズ〇〇
それぞれ解説していきます。
キャラクターグッズ
キャラクターは、当然ながら著作権保護の対象になります。
作品のイメージにあった、
- ディズニーのぬいぐるみ
- ジブリのフィギュア
などを、作品画像の端っこに置きたくなりますが、違法である可能性が高いです。
これは、まぁ想像通りかな
本・ポスター
本やポスターも著作権に守られています。
よく見るのが、オシャレな洋書を撮影小物として使うシーン。これ、厳密には違法である可能性が高いです。
もちろん、あなたがその洋書をお金を払って買っていたかどうかは関係ありません。
ちなみに、本の表紙だけでもNGです。ブログの書籍レビュー記事で、自宅で撮影した本の写真がアップされています。これも厳密には違法と言えるでしょう。
でもさ、洋書を小物に撮影してる人メッチャいるよね?
みんなナチュラルに著作権侵害してると思うよ
洋書を小物にした人へ
とはいえ、洋書って雰囲気がバツグンなので、撮影には是非とも使いたいところ。
そういうときは、「ダミーブック」とか「ディスプレイブック」と呼ばれている、撮影OKな本を使いましょう。
中身がない、表紙だけのなんちゃっての小道具もあれば、それっぽいダミーページが印刷されているものもあります。興味がある人は、検索してみてください。
ブランドロゴ付きの製品
原則として工業製品は、著作権保護の対象にはなりません。しかし製品についているブランドロゴは、著作権保護の対象になる場合があります。
これは線引きが難しいのですが、ブランドの個性を表現しているロゴは、著作物として認められます。反対に、誰でも思いつくようなロゴだと、著作物とは認められません。
おそらくですが、
- adidasのロゴ
- モンクレールのロゴ
- スターバックスのロゴ
- ヴィトンのモノグラム
は、けっこう特徴的なので、著作物にカウントされるでしょう。
これは確認しているわけではありませんが、「ボッテガ・ヴェネタ」の革を編み込んだデザインは、おそらく著作権には該当しないと思います。
ただ革を格子のように編み込んだだけで、「思想又は感情を創作的に表現した」とは言えないでしょう。実際に似たようなデザインの革製品もよく目にします。
ちなみに文字だけのブランドロゴは、著作物とは認められないと考えられています。文字の組み合わせは、誰だって思いつきますから。
そのためこのサイト内で、いくら有名ブランドの名前をテキストで書き込もうが、著作権の侵害にはなりません。
ただロゴ化されている文字は、アウトなケースが多そうです。マクドナルドの「M」のロゴは、角度や丸みのデザインまで加味すると、著作物とカウントされそうです。
ただこれも難しくて、アサヒビールの「Asahi」のロゴは、特徴的ではあるものの、「美的創造性はない」という判断で、著作物に認められなかった判例があります。
線引きが難しいので、「ブランドロゴは写さない」って割り切っちゃうのがオススメ
応用美術
工業製品は、著作権保護の対象にはなりませんが、デザイナーズ家具などは、「応用美術」という括りで、著作物にカウントされることがあります。
応用美術は、次の3段階のグラデーションの中間に当たります。
- 純粋美術
:「鑑賞する」が想定されている美術品・工芸品。もちろん著作物 - 応用美術
:「使う」と「鑑賞する」の用途が混在している製品 - 工業製品
:「使う」が想定されている製品。著作物とは認められない
基本的には「使う」が想定された製品だけど、機能とは関係ない、機能美の範疇を超えた表現がなされている。こういうのが「応用美術」ですね。
ただどこまでが工業製品で、どこからが応用美術かという、明確な線引きはありません。また、応用美術が必ず著作物とカウントされるわけでもありません。
線引きが難しいですが、すごーく奇抜なデザインが施された製品は、避けた方が無難かもしれませんね。
ただケースとしては稀なので、神経質になるほどではないと思う
撮影してもOKな小物
先に触れた通り、大量生産されている工業製品は、原則として「著作物」にカウントされません。
著作物にカウントされるのは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」でしたね。
例えば、「トートバック」を発案した人が、「トートバックのこの形は、わたしに著作権がある!」とは主張できません。
トートバックの形には、思想や感情は伴っていませんし、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属しませんから。
そのため、ほとんどの工業製品は、小物として写っていても、著作権侵害には当たりません。
ただし、前述の通り、ブランドロゴの写り込みだけは注意しましょう。Apple製品を小物として写す際は、リンゴのロゴは映らないようにするのがベターです。
- 撮影段階で写り込まないようにする
- 画像修正でロゴを消してしまう
- ぼやけさせてロゴ視認できなくする
といった工夫が必要でしょう。
「意匠権」「商標権」は気にしなくてOK
なお工業製品には、著作権とは別に、
- 商標権
:商品名やサービス名、ブランド名、ロゴマークなどに独占権を認める - 意匠権
:製品のデザインについて独占権を認める
という別の知的財産権があります。
「商標権」も「意匠権」も、模倣品(要するにパクリ)を防ぐための権利です。
作品制作でパクってしまうと、「商標権」や「意匠権」の侵害になってしまいますが、撮影するだけなら問題ありません。
ミニマリストが、自宅の家具や家電を撮影してSNSにアップしても、違法性はありません。もちろん、ハンドメイド作品の撮影小物に使っても、問題ありません。
何回もしつこくてゴメンだけど、ブランドロゴは著作権も発生している場合があるから、避けた方が無難だよ
違反しても問題に発展しないケースが多い
著作権法は「親告罪」です。
親告罪とは、被害者が訴えを起こさない限り、罪に問われない類の法律です。窃盗などの非親告罪のように、第三者の判断で、現行犯逮捕にはなりません。
著作権者が、
- 著作権が侵害されたことに気づいていない
- 気づいてはいるが、黙認している
場合は、問題に発展しません。
ディズニーのように、目を光らせて著作権侵害をバッサバッサと切っている企業もありますが、そうでない企業の方が多いのではないでしょうか。
撮影小物に写っている程度でトラブルに発展することは、ほとんどないでしょう。悪意を持った改造や、よほどイメージを汚す使い方じゃなければ、訴える企業は多くありませんから。
ファン行動の一環ってことで、温かい目で見てくれてそうだね
むしろ露出が増えて、実は歓迎しているケースも大いにある
トラブルにならなきゃそれで良いのか?
ここでぜひ、あなたのスタンスを確認してください。
- 一人の社会人として、法治国家の国民として、法を遵守するか
- トラブルに発展しなければ、それで良いか
あなたはどちらでしょうか?
ボクはサラリーマン時代に、とある海外企業と、日本向け新規事業について会話したことがあります。
日本国内の法律がちょっと厳しいジャンルだったんですが、向こうの人は、やたら罰則を気にしていました。
罰則が軽い、あるいは罰則規定がないなら、やっちゃえば良くない?っていう口振りでした。
どこの国かは言いませんが、「お国柄が出ているな」と思いましたね。「日本人はそういう国民性じゃないから」っと返しておきました。
ボクがお客さんだったら、やっぱり真っ当な人から買いたい。だから自分のビジネスも、罰則の有無に依らず、クリーンでありたいと思っています。
これはボクの個人的な意見ですが、責任を持ってビジネスをするなら、トラブル云々の前に法律を守べきだと思います。
子供からピュアな気持ちで聞かれたときに、説明に困るようなことをすべきではないと思うんだ
みんなが嘘つくから自分も嘘つくとか、そういう大人にはなりたくないもんね
(参考)BGMは著作権侵害にならないのか?
撮影の話ではありませんが、Instagramのリールなどで、BGMを挿入することが多いと思います。
「あれは著作権の侵害にならないのか?」と疑問に思った人もいると思います。
結論から言うと、問題ありません。
Instagramで使用可能な音源は、
- プラットフォーム側で使用の包括契約を結んでいる
- そもそも著作権フリーの音源を使用している
のどちらかです。
ちなみにYouTubeやニコ動の「歌ってみた」系の動画も、本来であればバリバリの著作権侵害です。しかしこちらもプラットフォーム側が包括契約しているので、著作権侵害には当たりません。
さすがに、大企業がそんなヘマしないか
安心して使って大丈夫!
まとめ
みんながライトに考えている撮影小物について、注意喚起をしてみた!
気づかないうちに著作権侵害している人がたくさんいるんだね
この記事をまとめます。
著作権侵害になる撮影小物
- キャラクターグッズ
- 本・ポスター
- ブランドロゴ付き製品
- デザイン性が高いデザイナーズ家具など
撮影OKな小物
- 工業製品は原則OK
- ただしブランドロゴの部分が映らないように気を付ける
まずは、一般的な工業製品を撮影小物として使う分には、何ら問題ありません。ここだけ意識すれば、基本的にはOKです。
実際には、撮影小物として使うくらいのレベルだと、著作権者を怒らせない限りは、ほとんどトラブルには発展しません。
むしろ、向こうは露出アップできて、あなたは世界観のある作品画像が撮影できて、Win-Winというケースも結構多いと思います。
とはいえ、訴えられるリスクも0ではない。かなり低い確率であったとしても、危ない橋は渡るべきではないと思います。
ぜひリスクを理解した上で、適切な行動を心がけましょう!
なお本記事は撮影だけの話でしたが、作品そのものでの権利侵害は、ホントにトラブルになります。気になる人は、↓の記事もどうぞ。
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