100均で素材を買うのはアリでしょうか?
競合ハンドメイド作家さんはどこも安く、その値段に合わせてしまうと、なかなか利益が出ません。
そのため、素材を安く仕入れて、少しでも利益を残したいと思っています。
ただ、やはりクオリティはいくらか下がると思うので、それでもお客さんが選んでくれるかが気がかりです。
安い値段で売っても利益を残したいから、素材を妥協しても良いか?という質問ですね。
ただ、質問者さんとしても、ホントにそれで良いのか迷っていると。
よくない思考回路で考えてるね!考え方を180度変えよう!
まずはクイックに結論から。
「100均で素材を仕入れるのはナシ」です。
ウチの奥さんは、お花系の作家です。
100均でも造花は売っていますが、ウチの奥さんはプロ用の資材を問屋から仕入れています。100均の造花を使ったことはありません。
「最高品質の素材だけを使う」と、初めから決めていたからです。
良い素材を使って高く売れ
「ハンドメイド」というビジネスの特徴を顧みると、そもそも「高く売る」という選択肢しかありません。
100均の素材で高く売るのは困難ですから、必然的に質の高い素材を使うことになるでしょう。
まずは、シンプル算数を使って、その事実をお伝えしよう
シンプルな算数で考えよう
「ショボい素材で安く売る」と、「高品質素材で高く売る」の2つを比べて見ましょう。
次の通り、同じ原価率(シンプルに考えるため、人件費は除く)で考えてみます。
「ショボい素材」パターン
- 仕入れ先:100円均一
- 材料費:1,000円(100円×10個)
- 販売価格:4,000円
- 原価率:25%
- 粗利額:3,000円
「高品質素材」パターン
- 仕入れ先:プロ用の問屋
- 材料費:3,000円(300円×10個)
- 販売価格:12,000円
- 原価率:25%
- 粗利額:9,000円
*話をシンプルにするために、同じ「原価率25%」としましたが、実際には、高価格帯の方が原価率は低い(=利益率が高い)傾向にあります。
注目して欲しいのは、「粗利額」です。
- 100均で仕入れた場合、1作品あたりの手残りは「3,000円」です。
- プロ用資材で仕入れた場合は、1作品あたりの手残りは「9,000円」です。
もちろん、素材が違うだけで作り方は一緒ですから、工数は同じです。
まぁまぁまぁ、そうなるわなぁ
安くても高くても、売れる数は変わらない!?
最適な値付けは、当たり前ですが「もっとも利益が残る値段」です。
工業製品(規模の大きいものを想像して欲しい)であれば、よほど需要が爆発していない限りは、事実上は青天井で生産できるでしょう。
その場合、「1商品あたりの利益 × 買ってくれる客数」が最大になる値付けを考えます。
ポイントは、いくらでも生産できる工業製品の場合、「高く売って、お客さんの数が減ってしまうことで逸失する利益も、考慮に入れて値段をつける」ということです。
あ、えーと…
ここで止まって考えなくて良いよ。次を読めば、理解できるから
一方で、ハンドメイド作品の生産数には限りがあります。それも、かなり少ない数です。
ちょっと人気が出るだけで、あっという間に稼働が逼迫します。手作りですから、それくらいか細いキャパシティなのは無理もありません。
ある一定のレベルに到達したハンドメイド作家(いずれはあなたもそうなる)の場合、安くしたところで、販売数は増やせません。生産数の天井に届いてしまうからです。
逆に高い値段をつけた場合、もちろん需要は減っていきます。しかし、そもそも相手にできるお客さんの数が少ないので、よほどバカ高くない限りは、生産数上限を割るほど減りはしません。
言い換えると、安く売ろうが、高く売ろうが、売れる数は変わらないということです。
例えば、「1日2個×20営業日=月40個」生産できるとしましょう。ある一定のレベルに達せば(繰り返すが、いずれあなたもそうなる)、売れる数は月40個前後で固定です。
こうなると、可能な限り「高価格&高利益」な作品に仕上げていくことが、ハンドメイドで稼ぐためのセンターピン(最重要ファクター)であることがわかります。
先ほどの例に戻りましょう。
- 100均で仕入れて、
「粗利3,000円」の作品を「月に40個」売れば、
手残りは「12万円」です。 - プロ用資材を仕入れて、
「粗利9,000円」の作品を「月に40個」売れば、
手残りは「36万円」です。
収入は、かたや「アルバイト並み」、かたや「フルタイムのサラリーマン並み」です。
繰り返しになりますが、どちらも工数は変わりません。違うのは、素材だけ。
あなたは、どちらを選ぶかな?
もちろん、「フルタイムのサラリーマン並み」で!
高く売るなら、質の高い素材を
ここまでのハイライトは、「高い値段で売ろう」です。一言にまとめると、たったこれだけの話です。
しかしやはり、安い素材を使って高く売るのは、至難の業でしょう。
銀座の高級寿司屋は、客単価5万円、高いと10万円もあるのですが、安いネタでそれだけの値段をつけられるでしょうか?難しいですよね。
やっぱり、高く売るには、どうしても良い素材を使うことになるよね
値段が高い素材は、やっぱり質も高い
必ずしも、「値段が高い=質が高い」という等式は成り立ちません。中には、高くても粗悪なものはあるし、安くても質の良いものはあります。
しかし、やはり傾向としては、「値が張るものは、質も高い」ことがほとんどです。
世間の人は、「供給が少ない」、すなわち「希少だから値段が高い」という考え方をしがちです。しかし、相応に「需要」がなければ、高くても売れません。
うなぎが、「希少だから高い」という意見は、一つの側面しか見えていません。もう一つの側面は、「高い値段を払ってでも食べたいほど美味しい」ということです。
もし、うなぎが全く美味しくなかったら、1円の値段もつかないでしょう。また、イワシと同じくらいの美味しさなら、イワシより少し高いアジくらいか、せいぜいタイくらいの値段に落ち着いたはずです。
それだけ美味しいからこそ、お祝いの日に奮発して鰻重を食べたいと思うわけです。
ボクがうなぎを食べたすぎて、うなぎを例に出しましたが、どんな素材でも同じことが言えます。
もし輝かなかったら、ダイヤモンドに価値はありません(そもそも鉛筆の芯と同じ炭素ですからね)。美しい輝きに魅了されるから、高い値段がつくのです。
アイスクリームがラクトアイスより高いのは、より美味しくて、より体に良いからです(ラクトアイスは、ミルク以外に相当な量の油が入っている)。
確かに。高いものは、お値段なりに良いものが多いよね
高い素材が、高くても売れるのは、
- 丈夫だったり
- 光沢があったり
- しなやかだったり
- 色鮮やかだったり
- より風合いがあったり
するからですね。
それだけ質が高いから、ということです。何も、希少だからとか、手間がかかっているとか、供給サイドの話だけではないのです。
当然、そんな質の高い素材を使えば、あなたの作品の質も良くなります。質が上がれば、もっと高い値段を払ってもらえるようになります。
高くしても売れるのか?
質問者さんの元々の話は、「周りが安く売っているから、それに合わせても利益を取るために、100均の素材を使おうか?」という悩みでした。
それに対し、「いや、100均とかありえないから。良い素材で高く売れ」と、カウンターパンチを喰らわした格好になっています。
「いや、周りより高くして売れんの?」というのが、今のあなたの疑問でしょう。
そうだよ!高くしてホントに売れんの?
欲しければ高くても買う
答えは、「YES」です。
高くても売れるので、心配しないでください。
疑うなら、あなたの過去の買い物を振り返ってください。
- 1番高かった洋服ないくらでしたか?
- 1番高かったバッグはいくらでしたか?
- 1番高かったアクセサリーはいくらでしたか?
- 1番高かった贈り物はいくらでしたか?
あなたがどの程度の階級かはわかりませんが、確率的には、ごくごく普通の中流階級である可能性が高いでしょう。そうだとすれば、ボクと同じです。奇遇ですね。
そして、あなたがターゲットとするお客さんも、きっと中流階級が多いと思います。
さて、そんな中流階級のあなたでも、商店街で2,000円で買えるバッグもある中で、百貨店で5万円のバッグを買っているわけです(勝手に決めつけてすみません)。
ほら、それだけ払ってるじゃないですか。
なら、あなたの作品だって高く売れるよ
えーっと、そうなのか…?
ブランド物との違いは「ステータス」くらい
え?ブランド物とハンドメイド作品じゃ話が違うって?
いや、そんなことはありません。
ハンドメイドを求めるお客さんは、ハイブランドを含む既製品では満足できなかった人達です。別にお金がなくて、ブランド物を買わないわけではなありません。
お客さんは、気に入った品物であれば、かなり高いプレミアムを払ってでも買おうとします。他にもっと安い選択肢がない限りは、高くてもあなたから買うのです。
もちろん厳密に言えば、ブランド物が持っている「ステータス」という価値は、ハンドメイド作品にはありません。その分は、価値を割り引くのが妥当でしょう。
しかし、ステータス以外の「素材」や「作りの丁寧さ」や「デザイン」は、あなたも負けていません。あなたは、ハイブランド専属の一流のデザイナーではないかもしれませんが、少なくとも、お客さんにはあなたのデザインの方が好まれています。
そうですね。ステータス代を割り引いて、ハイブランドの「3分の1」くらいなら、ハンドメイド作品でも買ってもらえる金額じゃないでしょうか?
ハイブランドにもランクがあるので、ちょっと雑でしたね。言いたかったのは、「アクセサリーで2万円」や「バッグで4万円」は、十分狙える範囲ということです。
どう?悪くない金額でしょう?
そんだけ貰えたらハッピーだなぁ!
高く売るなら、ちゃんと差別化しよう!
重要なことをサラッと言ってしまいました。ちょっと巻き戻しましょう。
「他にもっと安い選択肢がない限りは、高くてもあなたから買う」の部分です。
お客さんは、高く買う用意はあります。しかし、散財したいわけではありません。他にも同じような作品で、もっと安いモノがあれば、安い方になびいていきます。
「どっちにしようかな?」と、比べられるような作品ではダメってこと
「これしかない!」と指名買いされるような作品なら、他の作品と値段を比べられることはありません。お客さんは、高くてもあなたから買うことになるでしょう。
例えば、「ディズニーランド(シーでも良いですよ)」を想像してください。
入場料が、どんどん値上がりしてますよね。ボクが子供の頃は、4,500円くらいだった気がするのですが、今や曜日によっては1万円とか。
しかしそれでも、ディズニーランドはいつでも、お客さんでごった返しています。ごくごく普通の家族連れや、アルバイトかお小遣いで来ている中高生がわんさかいます。
これだけ値上がりしてもお客さんが来るのは、ディズニーランドが他のテーマパークとは比べられない存在だからです。お客さんは、迷いなくディズニー一択で来ています。迷っているのは、「ランド」か「シー」かの選択でしょう。
だから強気で、「1万円でも来る?来ない?どっち?」と迫っても、お客さんは来てくれるのです。他の安い選択肢で代替できない以上、従うほかありませんから。
ハンドメイド作品も同じです。他の作品で代替できないなら、お客さんはあなたから買うしかありません。
だから、あなたの言い値で買ってくれるのです。もちろん常識の範囲内ですが、あなたが生活するのに十分な額はつけられます。
質問者さんは、「競合ハンドメイド作家さんはどこも安く、その値段に合わせてしまうと、なかなか利益が出ません」と言っていましたね。
この時点で、考え方がズレています。そもそも、競争しようとしてはいけないのです。
他の作家と同じような作品を作り、その値段に合わせようとするのではありません。他の作家とは違う作品を作り、値段を離す(=高くする)のです。
しっかり差別化した作品を企画して、良い素材で品質良く仕上げて、高い値段をつける!以上!
ラジャー!
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