昔に適当につけてしまったブランド名を、今もずっと使い続けています。
コンセプトのことを考えると付け直したいのですが、これで何年もやってきて、お客さんからも認知もされている状態で、今さら変えるべきか悩んでいます。
ブランド名を「変えるor変えない」の判断基準などはあるのでしょうか?
デビューしたての頃は、深く考えずにブランド名をつけてしまいますよね。
しかし、いろいろ学ぶと、ブランディングにおけるブランド名の重要性が見えてきます。そうすると、「変えるべきか?」という悩みが出てきますね。
OK!バッチリ答えるよ!
まずは結論から。
「まだ認知されてないなら変えてもいいが、一旦認知された後は、リスクの方が大きい。ブランド名は据え置きにしておこう」です。
ブランド名の本来の意義
「名は体を表す」と言うように、ブランド名は本来、あなたのブランドの本質を言い表さなければなりません。
ここで言う本質とは、「ブランドコンセプト」です。
そして、ブランドコンセプトとは、「誰に何を届けるか」です。あなたが相手にするのはどんなお客さんで、その人達に、作品を通してどんな理想の未来を届けるか。
ブランド名の字面に、このブランドコンセプト言い表す必要があるということです。
- Amazon
:世界最大のエブリシングストア。その圧倒的な規模や広大さを、世界最大河川の「アマゾン川」に喩えた - NIKE
:ギリシャ神話の勝利の女神「ニケ」から。ブランドが持つ「スピード感」や「躍動感」を、女神ニケの翼に喩えた - メルカリ
:ラテン語で「商いする、マーケット(市場)」の意味
最終的にブランド名は、ただの字面の意味だけでなく、それ自体が記号と化します。文字の意味を超越して、その記号を見聞きしただけで、ブランドコンセプトが思い出されるようになります。
NIKEは、初めのうちは女神ニケの翼のイメージにあやかっていたかもしれません。しかし現在は、「NIKE」という4文字そのもの、あるいはスウッシュロゴそのものに、イメージが宿っています。
ナイキはホテルを経営していない。だが、経営していれば、おそらくどんなホテルか想像がつくだろう。それが、ナイキのブランドだ。
セス・ゴーディン『THIS IS MARKETING』より
この状態まで持っていくことが、ブランディングの目標と言えるでしょう。
ここまでは前段。教科書通りの話だ
ブランド名変更のリスクを知ろう
というわけで、ブランド名は、ブランドコンセプトを体現するための1つの装置です。
質問者さんは、その事実に気が付いたからこそ、ブランド名の変更を思い立ったのでしょう。昔より、ビジネスセンスが磨かれたことの現れだと思います。
しかし、一定のお客さんがついている状態でのブランド名変更は、リスクを伴います。
「Twitter」が「X」に改名した際、多くのユーザーはスッと気持ちが切り替わりませんでした。「X(旧Twitter)」という併記もよく目にしました。
ブランド名変更が浸透するには、一定の時間がかかるものと考えよう
とはいえ、Twitterは影響力のあるメガブランドですから、いつかは新しいブランド名の「X」に、名実ともに切り替わるでしょう。
しかしこれが、そこまで影響力のないブランドだったらどうでしょうか?
例えば、日本酒で人気のある「獺祭」というブランドがありますね。このブランド名が、急に「ぽんぽこ」に変わったとしましょう。
相当数のお客さんが、「ぽんぽこ = 獺祭」と認知しないまま、離れていってしまいます。次のブランド名に引き継げなかったお客さんは、今頃別ブランドのお酒を楽しんでいることでしょう。
全国的に知られてる「獺祭」のレベルでもこうなっちゃうかぁ
まぁ勝手に想像してるだけだけどね
でも、当たらずとも遠からずだと思うよ
ブランド名を変えない企業は多い
そんなわけで、ブランド名を変更するのが適当な場合でも、ブランド名を変えないケースはかなり多いのです。
「Google」は、本当は「Googol(10の100乗)」というブランド名にするつもりが、うっかり誤字で設立されてしまいました。
「でも、まぁいっか」で、今に至っています。
「DHC」は、元々の事業であった「大学翻訳センター」の略です。事業内容は全く変わってしまいましたが、今でもDHCのままです。
これまで大事に育て上げてきたブランドに「あえて」メスを入れ、既存のお客さんの何割かを失うかもしれないリスクをとってまで、改名すべきか。
彼らの答えは「NO」だったわけです。
彼らの懸命な判断は、正しかったと思う
どんなブランド名でも、行動次第でイメージは変えられる
「Apple」の意味は、「リンゴ」です。込められた意味は色々あるのかもしれませんが、ただの「リンゴ」ですよ?こんなふざけたブランド名があるでしょうか?
しかしAppleは、今や時価総額世界一のブランドです。「Apple」という記号は、すでに果物のリンゴではなく、Apple社のクールなイメージに結びついています。
さっきの「NIKE」の例と同じだ!
ブランド名が「記号」になっている状態だね
明確なブランドコンセプトを掲げ、それを実直に守り、決して裏切ることがなければ、あなたのブランド名もいつか記号になります。
もちろん、個人でやってる規模なので、世間のみんなにとはいきません。しかし、あなたのファンは、あなたのブランド名に特別なイメージが結びつくでしょう。
仮にそれが、どんなにトンチンカンなブランド名であってもです。
あなたの行動次第で、ブランドのイメージは作れます。それこそが、「ブランディング」の真に意味するところです。
ブランド名を切り替えた方が良いケース
とはいえ、ブランド名を変えた方が良いシーンも、ないわけではありません。
該当する人は少ないと思いますが、3つのシーンを挙げましょう。いずれも限定的なシーンです。
まだファンがほぼいない
まだあなたにファンがついていないなら、改名によるリスクはありません。
不幸中の幸いというと失礼ですが、ともかくまだ改名できるチャンスです。いい加減なブランド名をつけてしまっているなら、改名を検討してください。
特に目安があるわけではありませんが、月1万円以下の売上なら、改名のリスクはほぼ皆無と言って良いでしょう。
あまりにもネガティブなイメージがついてしまったとき
現ブランド名に、ちょっとやそっとでは拭いきれない汚点がついてしまったときは、改名せざるを得ないかもしれません。
「ジャニーズ事務所」がこれに当たります。あの状況下では、「ジャニーズ」というブランド名に、反社会的イメージがこびりついてしまっていました。
「ビッグモーター」も、もうマイナスのイメージの方が強くなってしまいましたね。
リブランドの必要に迫られたとき
「Twitter」が、まさにこのパターンでした。
Twitterを買収したイーロン・マスクは、テスラやスペースXの親分で、世界一尊敬を集めている起業家の1人です。
イーロンは、ネット上の「言論の自由」を、非常に大事なものと考えていました。そいういう背景から、イーロンはTwitterが大のお気に入りでした。
しかし、アメリカのTwitterは、日本以上にスパムが横行し、ゴミ溜めのような場所になってしまっていました。これでは、ネット上の言論の自由は達成されません。
そしてイーロンは、キラキラした(チャラついた)感じのスタートアップを好みません。男くさいエンジニア中心の世界が、大のお気に入りです。
要するに、彼は買収したTwitter社を、自分の理想の世界にリブランド(ブランドイメージの一新)したかったんですね。
「ブランド名」を変えたかったのではなく、その上位にある「ブランドイメージそのもの」から変えたかったのです。
改名とリブランドには、天と地ほどの差があります。リブランドは、もっとずっと重い意思決定です。
個人のハンドメイド作家がリブランドまでするケースは、ほとんどないでしょう
参考記事
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