ご質問いただきました!
ハンドメイド作品は高く売るべきという意見は、よく理解できます。
そこで気になるのが、値上げするタイミングです。
いきなり欲しい金額まで上げてしまって、これまで買ってくれたお客さんが離れていってしまわないかが心配です。
値上げは、少額ずつ刻んだ方が良いのか、あるいは思い切って欲しい金額まで上げてしまった方が良いのか。
アドバイスをいただけないでしょうか?
値上げしたい作家さんには、次の2パターンあると思います。
- 今まで安売りしていたので、適正な価格まで上げたい
- 需要が供給を上回ってきた(売れてきた)ので、需給の調整のために値上げしたい
今回は、前者の「安売りからの値上げ」を想定して回答しましょう。
*ちなみに、後者の「人気が出てきたからその分値上げ」は、10〜20%ずつ値上げしていくのが妥当です。需給のズレが調整できるまで、小まめに、何回値上げしても構いません。
これはめっちゃ「あるある」な悩みだね!
その迷い、断ち切ってあげよう!
まずはクイックに結論から。
「今すぐ欲しい金額まで値上げしよう!」です。
なお、高く売らなきゃいけない理由は、色んな記事で口酸っぱく言ってきているので、ここで深くは語りません。値上げの「タイミング」や「金額」にフォーカスします。
お客さんが減る可能性はある
ボクのアンサーは、「今すぐ思いっきり値上げしよう!」でした。
ただ、質問者さんが心配している通り、値上げをすればお客さんが減る可能性はあります。そうだとしても、結論は変わりませんがね。
まずは、減るお客さんについて話そうか
値上げでお客さんが「0」になることはない
あまりに市場をムシした非常識な値段、例えば、「スマホケースを5万円で!」のような値上げじゃなければ、お客さんが「0」になることはありません。
こう考えてみましょう。
スーパーで、「10個入りの卵」が「150円」で売られていました。
これが次の日に、倍の「300円」に値上げされたら、どうなるでしょう?
お客さんは「0」になるでしょうか?
減りはするだろうけど、「0」にはならないでしょう?
確かに。何割かは減るだろうけど、10割減はないな
仮に、これまで卵を買っていたお客さんが1日「100人」いたとして、値上げ後は「50人」まで減ったとしましょう。お客さん半減ですから、かなり減っています。
それでも売上としてはトントンですね。お客さんが半分に減った代わりに、単価は2倍になっているわけですから。
ごく単純な需要と供給のモデルで考えれば、値上げによってお客さんは減るでしょう。
しかし、それであなたの売上が激減するかと言えば、そうはならないのです。
ハンドメイド作品の値上げは、卵ほどお客さんは減らない
「卵」を例に出したわけですが、実のところ、ハンドメイド作品の値上げによるお客さんの現象は、卵のそれほどは影響を受けません。
なぜなら、相場の幅が違うからです。
卵のような食品、あるいは生活必需品の類は、用さえ足せれば安く買おうとします。そのため相場は、安い範囲にとどまることになるでしょう。
10入りの卵で言えば、「100円〜せいぜい600円」くらいですかね?
「150円」の卵に、一桁0をつけて「1,500円」で売ったら、それは法外な値段と言えるでしょう。需要は一気に減ってしまうでしょうね。
1,500円だったら、全国の家庭から卵が消えるだろうね
しかし、ハンドメイド作家の作品は、卵や野菜やトイレットペーパーではありません。アクセサリーや洋服のような、「ライフスタイル商品」と呼ばれる類です。
例えば、アクセサリーの相場は「100円〜100万円」くらいまでありそうですね。
「1,500円」のピアスに、一桁0をつけて「15,000円」で売っても、法外な値段になりません。気に入ったお客さんは、その値段でも買っていくでしょう。
ハンドメイド作品の値上げは、あなたが思うほど怖いものじゃない
それでも値上げが怖い人は別の問題がある
ひょっとすると、あなたはまだ、値上げに不安に感じているかもしれません。その直感は、ある意味で正しいかもしれません。
なぜなら、先ほどの「卵」の例では、競合の話をしていなかったからです。
「卵」は、他の食品で代替できないので、競合らしい競合がいません。卵を諦めたら、成立しないメニューはかなり多いですから、ある程度高くてもガマンします。
しかし、これが「ほうれん草」だったらどうでしょう?
「ほうれん草」が2倍に値上げされたら、相当数のお客さんが、隣にある「小松菜」に流れるでしょう。味は違いますが、使い道はどちらも似たようなものですから。
そうだよ!値上げしたら、やっぱ売れなくなるんじゃない!?
競争したら負け
あなたが値上げに必要以上の恐怖を感じているなら、「わたしが値上げしたら、お値段据え置きの似たような作家にお客が流れるのでは?」と思っているに違いありません。
もし図星であれば、プライシング以前に商品設計をミスっています。
- 「ほうれん草」と「小松菜」のように
- 「UFO」と「一平ちゃん」のように
- 「ニトリ」と「アイリスオーヤマ」のように
競合がいるような場所で戦っていること自体が、そもそもの間違い。ハンドメイド作家は、競争してはいけないのです。
ハンドメイド作家は、「競争したら負け」と頭に叩き込んでほしい
いや、企業が競争するのは仕方ないですよ。だって、企業の大きな図体を維持するためには、かなり大きな市場規模が必要ですから。
複数のプレイヤーがひしめき合って、同じ魚の群れを狙って、1箇所に釣り糸を垂らさなければなりません。好き好んでではないが、承知の上の必要な競争です。
しかしハンドメイド作家は、大抵は個人の商売です。あなたが生活費を稼ぐ程度の話なら、市場規模は「0」じゃなければ十分です。
何も、みんなが群がるところで釣り糸を垂らして、お互いを肩で押し合う必要はない。ずっと遠く、ひっそりとした入江で、1人マイペースに釣りを楽しめば良いわけです。
競争相手がいなければ、作品の値段は、「作家」と「お客さん」の間だけの話です。他に流れる先のない「卵」の例のように、値上げしてもお客さんは残ります。
じゃあ、どうすれば競争せずに済むの?どうやって差別化すれば?
それは一言では語り尽くせないから、↓の記事で学んでみて
値上げ幅がかなり大きい場合
自信がない、あるいは練習のつもりで、かなり安い値付けをしている作家さんもいます。実は、こういう作家さんはとっても多いんですね。
ホントに欲しい金額だと、5倍や10倍の値段をつけるケースも出てくるでしょう。
例えば、今まで「1,000円」でアクセサリーを売っていたとしましょう。でも本音では、「5,000円」や「10,000円」で売りたい。酷い話ですが、よくある話です。
これほど大幅に値上げすると、過去のお客さんは引き継げない可能性が高いですね。
安売りしてた頃のお客さんは、「安くしか買ってくれないお客さん」である可能性が高いでしょう。彼ら彼女らは、値上げしたら買ってくれなくなると思ってください。
客単価1,000円のファミレスと、客単価10,000円の小料理屋では、客層が違うでしょ?
そりぁ、そうだ。ごもっともな話
それでも結論は変わらない
勘違いさせたかもしれませんが、そうであったとしても、「今すぐ欲しい金額まで値上げしよう」という結論は変わりません。
例えば、作品あたり「単価1,000円」で、「粗利500円」だったとしましょう。
月に「100個」売って、やっと「手残り50,000円」です。パート以下ですね。
いやこれでも大分マシな方でしょう。
1日1個程度、月に「30個」売れて、「手残り15,000円」。これが現実だと思います。
もし、あなたがこういう売り方をしているなら、そろそろ目を覚ました方が良い。
月に「1,000個」売って、「50万円」稼ぎますか?
それはもう、ハンドメイドのビジネスモデルを逸脱しています。OEMでもやったらよろしい。安売りの先に、あなたが手に入れたい未来はつながっていません。
言い方は最悪ですが、安くしか買ってくれないお客さんは、あなたが相手にすべきお客さんではありません。残念ながら、これが真実なのです。
- あなたが欲しい値段をつけて、
- その値段でも買ってくれるお客さんを相手にして、
- その値段でも売れる作品に仕立ててください。
これが、ハンドメイドのビジネスモデル。これがハンドメイド販売の王道なのです。
ちょこまか段階を踏んで値上げしたところで、あまり意味はありません。さっさと値上げして、早々に次のステージに進んでください。
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