ご質問いただきました!
ネット販売と、委託やポップアップやイベント出展などの実店舗系販売では、手数料に違いがあります。
手元に残る利益を考慮して、手数料が低いネット販売は安めに、実店舗系販売では高めに値段をつけても良いのでしょうか?
販路によって、販売価格を変えても問題ないかというご質問ですね。
法律的には問題ないけど、ビジネス的にどうかって話で答えるね
まず結論から。
「販売価格は、販路によって変えるべきではない」です。
つまり、お客さんはどこでも同じ値段で買えるべきということです。
高く買ってくれるお客さんの満足度を下げるの?
逆にお客さんの気持ちになって考えてみてください。
ポップアップで気に入った作品を見つけて、「4,800円」で購入したとしましょう。
その作家さんの作品をもっと知りたいと思い、ネット販売のサイトに行ってみたら、同じ作品が「3,800円」で売られているのを発見してしまいました。
いやこれ、めっちゃ気分悪くなりませんか?
あー、ないわ。あり得ない
お客さんは、「UX(User eXperience = 購買体験全体の満足度)」の良し悪しによって、リピートしたり、お友達に紹介したりします。
UXは、単に商品の良し悪しだけでなく、購入するときの楽しさだったり、高揚感だったりも含んだ概念です。「満足度」の話ですから、気持ちの問題なんですね。
価格差をつけるということは、高い値段で買ってくれたお客さんのUX(満足度)を、わざわざ下げにいく行為です。悪手でしかありません。
高く買ってくれそうなファン候補のお客さんに、苦い体験を残してどうする?
価格差はクレームの火種になるかも?
ただ満足度を下げるだけでは済まず、「高く買わされた!」とクレームを入れてくるお客さんもいるかもしれませんね。
対応のためにかかる時間的コストと、精神的な負担はムシできません。
また、高く売っている場所がポップアップや委託販売だったら、相手方にも迷惑をかけてしまいます。
統一価格をどうやってつけるか?
価格はコストで決めるものではない
そもそもですが、コストから逆算して値段をつける発想自体がナンセンスです。売り手の都合を、お客さんに押し付けないでください。
「え?コストから考えなきゃ、利益出せないでしょ?」と思われたかもしれません。もしそう思ったなら、ぜひ今日から考えを改めてください。
売る値段は、お客さんの需要からつけるのが鉄則です。お客さんが買ってくれる値段こそが、正しい値段だと心得ましょう。
コストとは、まずお客さんが買ってくれる値段ありきで、その値段で売っても利益が残るように抑えるものです。
「コスト→値段」の順番じゃない!
「値段→コスト」の順番だよ!
お客さんは、あなたの「クリエーターとしての人柄」や「作品」で価値を判断しています。「売る場所」で、価値を判断しているわけではありません。
(直筆サイン入りが欲しがられるなら別ですが)どこで作品を買おうが、お客さんからしたら同じ価値です。どこであっても、同じ値段で買えるべきだと思っています。
手数料が違うからと言って、売る場所で価格差をつけることのナンセンスさを理解してください。
高い手数料でも赤字にならないラインを見極める
では、どうやって値段を割り出せば良いでしょうか?
いや、値段はお客さんの需要ありきで決めるので、厳密には、「どのくらいの粗利率を残すべきか?」という話ですね。
ここは、手数料が高い売り場を基準に考えるべきですね。MAXの手数料率を想定して、その分だけ粗利が出るようにしておくことです。
手数料が高いのは「委託販売」と「ポップアップ(催事)」です。大体、販売価格の半分を徴収されてしまいます。
ここでは仮に、「手数料50%」を基準に考えてみよう
あなたの作品の適正価格が10,000円だとしたら、
- 単価:10,000円
- 手数料(50%):5,000円
- 制作コスト(主に材料費+人件費):5,000円
- 粗利:0円
がギリギリの値段とコストの塩梅になってきます。
仮に、8,000円で売ったら、
- 単価:8,000円
- 手数料(50%):4,000円
- 制作コスト(主に材料費+人件費):5,000円
- 粗利:-1,000円
と赤字になってしまいます。売れば売るほど、お金が減っていきます。
粗利率を50%以上にしておけば、ほぼどこで売っても手数料負けしなくなるので、赤字にはならなくなります。
ここが1つの基準になってくるでしょう。
委託とポップアップで利益を出すのは難しい
実際のところ、粗利50%は、ハンドメイド作家としてはなかなか高めの値付けです。この数字で売れている時点で、かなり優秀です。
裏を返せば、委託販売やポップアップでは、ほとんど利益が出ないことになりますね?
前は委託やってたけど、全然お金残んないからやめちゃったよ!
そもそも、委託販売やポップアップは、利益を稼ぎにいくところではないんですね。
作家の知名度を上げたり、作品を知ってもらったりする、プロモーション的な位置付けです。だから、利益を出そうと考えること自体、ちょっと無理があります。
つまり、考え方はこう。委託販売やポップアップは、赤字にならければ良し。ネット販売でガッツリ稼げば良いのです。
(補足)価格差が許容される業界とそうでない業界
とはいえ、売る場所によって価格に差がついているケースは存在します。
なぜそれらは価格差が許されて、ハンドメイド販売では許されないのでしょうか?
確かにそうだよね
スーパーとかマックとか、当たり前のように価格差つけてるもんね
気になる人もいるでしょうから、一応解説しておきましょう。
一般的に価格差が許されているには、表面的には同じ商品を売っているが、実際には商品そのもの以外の価値がセットになっている場合です。
別の言い方をすれば、商品そのもの以外に、需要を上下させる要因があれば、価格差は許容されるという話です。
字面だと伝わりづらいので、例を見てみてください。
例:「立地」による価格差
マクドナルドやスシローなどは、商品は全く同じでも、都会と郊外で価格差をつけています。外食の需要は立地に左右されるので、問題になりません。
商圏があるビジネスは、概ねこのパターンに当てはまります。
同じイオンのスーパーでも、場所によって値段は変わりますが、別におかしいことにはなりません。
例:「早さ」による価格差
同じ郵便でも、速達は料金割り増しです。
Amazon Primeでは、後になれば無料で見れる映画も、公開したての時期は有料です。
同じ商品でもコンビニなら割高で買うのは、より近い距離にあって、より早く手に入るからです。
現実世界を見ると、価格差の大半は「立地」による需要の違いが反映されているね
さて、ハンドメイド販売はどうでしょうか?
インターネットが登場して以降は、相当な数の業界から商圏が消え去りました。
- 持ち帰って使う商品
- かつ、買い急ぐ必要のない商品
は原則として、売る場所で需要が変わらなくなってしまいました。
売る場所で需要が変わらない以上は、売る場所による価格差は許されません。
家具も、洋服も、アクセサリーもそう。当然ハンドメイド作品もそうです。
日本全国どこにいてもネットで買えるものは、どこでも同じ値段が当たり前だもんね!
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